MOTとは何か
これまで以上にグローバル化が拡大する中で、イノベーションを中心とした高い技術力を重視する企業が増えています。企業が存続し続けるには、MOTの品質を高くすることが求められると言われていますが、このMOTとはいったい何のことを意味しているのでしょうか。
この記事ではMOTの意味や導入のメリット、MOT人材を確保する方法などについてご紹介していきます。
MOT何の略?
MOTとは、Management of Technologyの略称で、日本語にすると技術経営のことを意味しています。企業が持つ独自の技術を経営の観点から管理し、商品化や事業化へ推進するための能力を指しています。
技術経営とは
では、技術経営とはどういう意味でしょうか。
日本では独自の高度な技術力をコアコンピタンスとして位置付けている企業が多く、そのため、MOTを重視する必要のある企業も多いです。
どれだけ優れた技術力を持っていても、その技術を製品化、事業化して経済的な価値を生み出せなければ意味がありません。そのため、自社が持つ独自の技術を経営資源と捉えて、戦略的かつ効率的に活用することを技術経営と呼びます。
MBAとの違い
MOTと同じような略語でMBAがありますが、違いは何でしょうか。
MBAとは経営学修士のことを表し、経営者としての姿勢や経営管理プロセスを重視し、経営課題に対して経営資源を最適に配分することで解決する役割を担っています。
一方、MOTでは高い技術知識を活かし戦略的にマネジメントを実行する技術経営能力が求められます。以前はMBA取得者を重宝する風潮がありましたが、最近はMOTがより注目されています。
MOT人材に必要なこと
技術経営と一言でいってもイメージのが分かりにくいMOTですが、MOT人材として技術経営を行っていくにはどのような実際に能力が必要になるのでしょうか。
MOT人材に求められる技術経営のスキルとしては大きく分けて、技術革新に導く能力、組織を超えた事業促進力、知識と実践の総合力が必要になります。
1:技術革新に導く能力
MOTでは、技術の実用化までを一貫してマネジメントできる能力が必要です。高い技術力は技術革新と結びつくことが多く、新たな価値観と技術をどう結び付けるかが重要です。
MOTには市場が求める新たな価値を見出す洞察力、技術革新を構築する上で重要な新たな価値や技術をどう提供するのかという構築力、そして技術革新を実現できる実践力が必要となります。
この洞察力、構築力、実践力が技術革新に導く技術経営力となります。
2:組織を超えた事業促進力
これまでは部分最適が主流であった経営スタイルですが、ここ最近では全体最適を前提とした組織力の向上を目指した経営に移っています。
そのため、イノベーションをおこすためにはまず、組織間の壁や軋轢をなくす変革対応力や対人折衝力が必要となります。そのうえでさらに、事業を推進する目標管理力や業務遂行力などが必要です。これらが技術経営を行う上で必要な事業促進力です。
3:知識と実践の総合力
MOTには、技術と経営の総合力が必要とされます。特に自社の技術をビジネスに変えるだけの実践力や、技術経営における高度な知識が必須となります。
さらに、技術を実用化させる上では、開発した技術が科学的な実証を得られている状態が望ましいため、分析や研究による効果を担保できることも重視されます。MOTは社会的要素が強いMBAよりも、実践が伴う総合力を向上させなければいけません。
MOTを学べる機関
MOT人材として活躍するためには、MOTの知識を得る必要があります。それでは実際にMOTはどこで学ぶことができるのでしょうか。MOTについて学ぶことのできる機関をいくつかご紹介します。
1:東京理科大学大学院イノベーション研究科MOT技術経営専攻
東京理科大学のイノベーション研究科には、MOTとMIP(知的財産戦略専攻)の2つの専門職学位課程とINS(イノベーション専攻)博士後期課程の3専攻があります。
この研究科の理念は「技術経営と知的財産の戦略的活用により、社会にイノベーションを興すことのできる人材の育成」です。専門職学位課程では、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識と卓越した技術経営能力を養うことを目的としています。
2:立命館大学大学院テクノロジーマネジメント研究科
立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科は、技術の価値を理解することで社会発展に寄与できる人材を養成することを目的とした研究科です。
前期課程では技術経営の概念と方法論を学び、企業や社会での価値創造に指導的役割を果たせる人材へと育成します。後期課程では、さらに技術経営の実践者として経験を学問の場にフィードバックし、実践を体系的概念に昇華することで、グローバルに活躍できる人材を育成します。
3:東京工業大学環境社会工学院技術経営専門職学位課程
東京工業大学の環境社会工学院には、技術経営専門職学位課程とイノベーション科学系があります。
この技術経営専門職学位過程では、技術経営を実践する総合型リーダーとして幅広い視野をもつ人材を育成することを目的としています。高い倫理観の下で科学技術を活用し、事実に基づきながら自ら構築した論理に立脚して責任のある決断ができ、産業や社会の発展に貢献する実務家を養成します。
4:東京農工大学大学院工学府産業技術専攻専門職学位課程
東京農工大学工学府の産業技術専攻では、まず基盤科目で技術経営の基礎を、マネジメント科目では知的財産を中心とした戦略的技術開発を進める上での知識と展開を学びます。また、イノベーション科目は産業技術分野に特化した技術開発動向や市場動向について学ぶ科目です。
プロジェクト研究になると、それまでに学んだ知識を実践する能力を身に付ける内容になります。
MOT導入の企業へのメリットと方法
MOTを導入することで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
MOT、すなわち技術経営を導入することで、企業は新規事業の創出・収益化や、研究開発マネジメントの効率化、知財・外部資源との連携強化などができると考えられています。これらは具体的にはどういうことなのかを1つずつ見ていきます。
また、MOT人材を確保する方法についてもご紹介していきます。
メリット1:新規事業を創出して収益を計る
MOTでは、自社の技術と社会のニーズを結び付けることを前提に製品開発を行ないます。戦略的かつ横断的にマーケティングを実施できるので、新製品や新サービスの創り出すのための専門組織を立ち上げる戦略を取ることも可能になります。
これらによって、新規事業を創出するための環境整備や、自社の技術が収益化につながる可能性が高まります。
実際に社内ベンチャーを設立したり、分社化を行った例もあります。
メリット2:研究開発の効率化とリスクを低減させる
ここ最近はプロダクトライフサイクルが短くなり、以前よりもスピード感のある研究開発が求められるようになりました。そのためにM&Aが主流となり、自社内での研究開発が衰退するというデメリットが生まれました。
MOTでは、アイデアのテーマ化や分析、事業性検証などの研究開発プロセスを適切にマネジメントでき、研究・開発も効率的に管理ができます。またそれによって、リスクを低減させることもできます。
メリット3:知財保護と外部機関との連携の強化ができる
技術を事業戦略として活用するには、知的財産として特許出願し、価値を高める必要があります。特に将来性の高い技術に関しては、研究開発部門と知財部門が適切に連携し、多方面での活用を検討しながらの知財保護が重要です。
また、大学やベンチャー企業などの外部機関との連携を強化することで、新たな技術の模索と開発も可能になります。MOTでは、パートナー企業の技術力を適切に判断し、活用の有無を判断することも必要です。
方法1:スキルを持つ人材を確保する
企業に導入するメリットの高いMOTですが、そのMOTを導入するには、MOTの理解できる人材を企業内に確保する必要があります。そのように確保すればよいでしょうか。
スキルを持つ人材を確保する方法としては、採用と育成があります。採用の場合はMOT大学院などで学んだ人材を企業の人事部が直接探すこともできますが、MOTスキルに特化して人材紹介会社に依頼することもできます。
方法2:育成プログラムを利用する
MOTのスキルを持つ人材を企業に導入する方法の方法として、企業内で育成することもできます。
1つ目は、大学院へ社員を企業から派遣する方法です。大学院によっては社会人が通いやすい時間帯に授業をおこなっているところもあります。2つ目は、MOTスキルを指導できるスクールに来てもらい、育成プログラムを実施してもらうことです。
どちらも、内容によっては専門実践教育訓練給付制度の対象になっているものもあります。
MOTは自社の技術を収益化する経営能力
自社の持つ技術をスピーディーに商品や事業として形にすることを求められるようになりました。製造業の多い日本でMOTはこれまで以上に必要であり、MOTスキルを持つ人材が増えることで技術から収益化するスピードも早めることができます。
MOTの知識やスキルはまた、中堅社員であっても活用できるものであり、働く上で非常に役に立ちます。
MOTに関心があり、学んでみたいという方はぜひこの機会に勉強してみましょう。