パワハラと指導の違い
まず最初に、パワハラと指導の基本的な違いについて紹介します。パワハラは同じ場所で業務をする人に対して、職場における優位性を背景に、適切な範囲を超えて心身的に苦痛をを与える、もしくは職場内の雰囲気を悪循環させる事です。
指導の根本的な意味は、成長をサポートする事です。時には厳しくなったり、怒鳴りつけるようなことがあっても、本当は成長してもらいたいという気持ちが隠れています。
違い1:目的
例えば上司の人が、同じ社員に厳しく指導するのは良いとは言えないでしょう。パワハラと指導の違いが理解できていなければ、周りからは嫌いだから一方的に虐めているという風に誤解を招く場合があります。
部下に厳しく指導している事を自覚している人は、どの部下にも厳しく指導することでパワハラと見なされなくなるでしょう。しかし心身的な暴力が目立ってしまうと、それはパワハラになってしまいます。
違い2:態度
業務中は厳しくしても、業務が終わると優しくなっているという風に、業務中と業務後の態度の違いを大切にしましょう。常に周りの社員の悪口を言っていたり、社員同士の仲が悪い場合も問題になりやすいです。
部下を指導する際は、その必要性があるかどうかをしっかり確認しましょう。そこまで問題になっていない場合と、何が起こったかをよく判断せずに指導するとパワハラと見なされる場合があります。
違い3:結果
パワハラは主に、相手に心身的な苦痛を与えてしまったり、周りの環境を悪くする行為を指します。暴力や暴言を繰り返し受けていた社員はうつ状態に陥る事もあり、酷い場合は訴訟を起こされる場合もあるでしょう。
一方で指導は、時には厳しくしたり大声を上げることがあっても、本質からブレていないので適切に正しい方向に導いていけます。そこには部下を監督するという思いを強く持っていなければ、部下は正しく成長しません。
パワハラにあたらない指導方法8選
パワハラをしていたとしても、自分では気付かない人がほとんどです。パワハラではなく指導と見なされるには、どんな点に気を付ければ良いのでしょうか。
指導をいつまでもパワハラと勘違いしていては、いつまでも適切に部下を指導できないため成長させることができません。ここからは、部下をどのように指導すればパワハラにならず、適切に成長させられるかを紹介しますので、気になる方は参考にしてください。
方法1:感情任せの言動を控える
部下にイライラした時も、感情任せにならずに冷静になり、適切な評価をすることが大切です。感情をコントロールする中で、感情任せになって怒ってしまいそうな時は、まずは深呼吸をして数秒数え、自分を客観的に見ましょう。
暴力や暴言を行うとパワハラになってしまうため、行動や言動に気を配りながら適切に部下を導きましょう。パワハラと指導の違いは、行動や言動が適切であるかどうかです。
人格否定や暴力はしない
指導がパワハラにならないようにするためには、社員をバカにしたりクビにするなどと言って脅す行動は避けましょう。また大勢の人が見ている所で必要以上に叱ったり、教育と呼んで強制的に始末書を書かせたりという事も厳禁です。
パワハラは心身的な暴力を社員に振るう事、指導は多少はキツい言動になる時があってもそこには愛情があります。この違いに気付かなければ、一方的に暴力になってしまいます。
アンガーマネジメントで怒りをコントロール
指導がパワハラにならないようにするためには、アンガーマネジメントを行う事が大切です。アンガーマネジメントは怒りの感情と上手に向きあう方法で、怒りの感情にあまり左右されず、感情を上手にコントロールすることで人生を快適にしていく方法です。
全く怒らないようにするのではなく、感情をコントロールするスキルなので、アンガーマネジメントができるようになれば指導の仕方に違いが出てくる事は間違いありません。
方法2:人前で叱ることは控える
社員を注意する際に、大勢の人がいる前で大声で怒鳴りつける事は、指導ではなくパワハラになってしまいます。どんな指導の仕方でも大声を出す事は厳禁で、ここはこうするべきだというようにまずは優しく指導しましょう。
社員を責めるような言動は慎み、なるべくアドバイスに近いような感じで指導する方法が適切です。言動におけるパワハラと指導の違いは、言動で相手を怖がらせているかどうかになるでしょう。
方法3:指導が相手に伝わったか確認する
社員を指導した後に、教えた内容を覚えたかどうかを確認するために復唱させます。それで理解されていなければ、最初からまた教えれば良いだけの事ですが、感情的になったらパワハラになるので注意しましょう
普段の言葉遣いを指導する事も大切です。高圧的になったり複数で取り囲むという事はしてはいけません。すぐに感情的になるかどうかの違いですが、怒りっぽい人は日頃から感情的にならないようにしましょう。
相手が理解しなければ指導の意味がない
社員を指導した際に、伝えた内容がしっかり伝わっていなければ意味がありません。また指導する回数に気を配る必要もあり、回数が無駄に多いとパワハラになってしまう可能性があるでしょう。
問題点を明確にし改善策を提供したら、しばらくは何もせずに部下を見守りましょう。同じ内容の事をずっと注意していると精神的にダメージを与えてしまうため、定期的に面談したりして社員が安心して相談できる信頼関係を築くことが大切です。
相手の理解を確認する方法
指導した内容を理解したかどうかを確認する方法として、自分が話した内容をメモに取らせ、全部伝え終わった後に社員に復唱させる方法が良いでしょう。内容に違う部分があれば、訂正箇所を教えて理解を深めさせます。
その他の方法として、まずは自分の伝えたいことが伝わるように、社員と一緒に改善点を見つけることが大切です。相手を尊重する気持ちがある人はパワハラをする人とは違い、適切な指導ができる人の特徴です。
方法4:叱る目的を考え直す
指導をする際に、パワハラと指導の違いが分からない行動が叱る事です。部下を叱る際は、叱る目的がどこにあるかをまずは見直してみましょう。指導の主な目的は、業務が上手くはかどっていなかったり、同じ箇所でミスを繰り返したりなどを改善させる事です。
ここで部下に対して、暴力を振るったり暴言を吐いても逆効果です。叱るというのは相手を正しい方向に進ませる事が目的なので、パワハラとは違います。
方法5:具体的な行動や内容に焦点を当てる
大まかだったり遠回しだとなかなか伝わりにくく、ただ単に相手を傷付ける言葉を投げかけたり、社員のダメな部分を指摘するのは間違いです。例えば遅刻が多い人に対して、遅刻をすると顧客に迷惑がかかるという風に問題点を伝える事が大切です。
売上で有数を狙う人より、ルールを守る事が大切だというような重要なポイントを伝えたり、遅刻を続けると減給するなどというように、今後の対応を話しておく必要もあります。
方法6:業務を段階別に分割する
社員に任せている業務内容を、一度細かく分類してみましょう。自分はすらすらとできていても、新人社員や他の社員では難しく感じる場合もあります。業務を覚えやすいように分けることで、相手はどこを覚えるべきかに焦点を当てます。
営業職であれば、顧客にアポイントを取る事や名刺交換だけでなく、顧客と世間話をするといった接客術も大切です。他にも商品の説明や売り込み、挨拶のメールの送り方もしっかり覚えさせましょう。
方法7:どこまでを社員に任せるかを決める
業務内容を分けたら、どの部分を相手に任せ、どこを自分が担当するかを決めましょう。営業に例えるなら、商品の説明は相手に任せ、顧客とのコミュニケーションは自分が受け持つという体制です。
仕事が上手くできない人からすれば、指導する人がいるととても助かるでしょう。できない部分をしっかりフォローする事で、仕事が円滑に進む事は間違いありません。仕事における役割分担は、新人社員が入ってくるごとに行いましょう。
方法8:やり方や方法を変えながら根気強く教える
人間にはそれぞれ能力に違いがあるため、仕事の進み具合にはバラつきがあるでしょう。同じ場所で何度も躓く人もいるため、見ていてイライラしたからと言って感情任せに怒りをぶつけてはいけません。ミスを発見しても、できるまで根気よく指導しましょう。
口で言ってもなかなか伝わらない場合は、一緒にやってみたりマニュアルを作成するなどの対策をする事が大切です。どこが分からないのか、何が不安なのかは一人一人違います。
パワハラの裁判事例
パワハラは基本的に社員同士の問題です。上司からのパワハラに耐えられなくなって訴訟を起こしたら、会社にも影響が出ることを覚えておきましょう。パワハラの被害を受けた場合は、訴訟を起こす前に相談窓口に届け出たり、他の上司の人に相談しましょう。
パワハラで訴訟になったケースはたくさんありますが、どんなに酷い場合でも必ず勝訴するとは限りません。ここからはパワハラが認定された裁判とされなかった裁判を紹介します。
事例1:パワハラ認定された事例
2日間の研修の後に、社員全員の出席する懇親会が開かれました。懇親会の最中に、T社長が社員Xに関して陰口を叩いていました。Xは懇親会が終了した後に、妻に通話で「死にたくなった」と述べ、翌日に宿泊先のホテルから飛び降り自殺したという事件です。
パワハラが認定されたポイントは、懇親会は業務中に行われており、社員Xのプライベートについて許可を得ずに勝手に他の社員の前で話した所です。
事例2:パワハラ認定されなかった事例
当時43歳のゆうちょ銀行に勤めていた男性が、ミスを指摘された上にパワハラを受け自殺をしました。男性の母親が上司からのパワハラがあったためと約六千万円の損害賠償を求める訴訟を起こしましたが、「業務上相当な指導の範囲」としてパワハラと認めませんでした。
しかし自殺願望があるほど不安定な人に対し、企業側がケアを何もしなかった事が問題視されたため、「安全配慮義務違反」に反しており支払い命令が下されています。
パワハラと指導の違いを意識しよう
パワハラと指導の違いは、社員に暴力を振るっているかどうかが分かれ道となります。パワハラは暴力や暴言で社員を威圧する事で、指導は厳しくする事はあっても適切に社員をサポートする事です。
上の立場になるほど指導をする機会は増えますが、パワハラを恐れて優しくし過ぎても、会社に不利益をもたらす場合があります。お互いが快適に仕事をするために、パワハラと指導の違いを理解して適切な指導方法を身に付けましょう。