ジョブローテーション制度とは
ジョブローテーションとは、一定期間で社員の部署や職務を変更する制度です。キャリアアップなどの人材育成のほか、各部署の仕事内容の把握や、仕事の属人化防止を主な目的としています。
異動期間は企業によって異なりますが、社員は短期間では半年ほど、長期間では数年といった単位で各職場を異動します。
ジョブローテーションは、多様な業務を経験しながら社員のキャリアアップを行う制度として、多くの企業で導入されています。
ジョブローテーション事例7選
ジョブローテーション制度は日本の企業でも多く取り入れられるようになってきました。ここからは、ジョブローテーション制度を採用している企業の事例をご紹介します。
ご紹介する多くは大企業の事例ですが、中小企業でも業務内容によってはジョブローテーション制度が導入可能です。制度の導入目的も企業によりさまざまなので、各事例を参考に、自社でジョブローテーション制度が導入可能かどうか検討してみましょう。
ジョブローテーション事例1:三井ホーム
三井ホームは、社員を総合職で採用後、「営業担当」「社内設計」「設計担当」「工事担当」「本社技術スタッフ」「本社事務スタッフ」といった、幅広い職場をジョブローテーションさせます。
入社後に「工事担当」から「営業担当」に異動し、その後「設計担当」に配置された事例も多く存在します。
社員は家づくりに関わる一連の職務を経験することで、顧客満足度の高い家づくりのプロを目指すことができます。
ジョブローテーション事例2:双日
総合商社の双日では「人材育成・組織力の向上・社員の活性化」のため、ジョブローテーション制度を導入しています。社員は入社後、2~3年に1度の異動で多様な職務経験をしてゼネラリストを目指します。
双日は制度導入前、異動機会が多い社員と少ない社員がいることが課題でしたが、制度導入後は全社員が異なる職務経験を積めるようになりました。
双日の事例のように、異動のない社員に転属機会を与えるという考え方もあります。
ジョブローテーション事例3:ヤマト運輸
クロネコヤマトで御馴染みのヤマト運輸も、新入社員を対象としてジョブローテーションを導入しています。
新入社員は入社してから2年かけて、現場の主な業務である「配送物の集配」「配送サポート」「営業」といった現場の業務を経験します。現場で経験を積んだ後は、本配属となった部署へ異動して業務に励みます。
ヤマト運輸のように、現場を知ることが重要と捉える事例は他にも多くあります。
ジョブローテーション事例4:富士フイルム
富士フィルムも、幅広い経験を社員にさせるため、事業や職種を超えたジョブローテーションを若年層を対象に実施しています。
人事担当者は社員の育成状況や成長計画に寄り添って異動先を決めます。各仕事を経験することにより、社員は幅広い価値観を持てるようになります。
富士フイルムの事例のように、社員の成長計画を配慮することがジョブローテーションでは大切です。
ジョブローテーション事例5:日本郵船
国際的な総合総合物流事業を行っている日本郵船も、約3年に1度ジョブローテーションを行っています。
日本郵船の社員は船の知識だけでなく、世界中でビジネスを推進していく力が必要です。そこで「陸上職事務系」「陸上職技術系」「海上職」の全部門横断型のジョブローテーションを行い、幅広い分野の業務を経験させます。
日本郵船の事例のように、社員にすべての部門を余すことなく経験させるジョブローテーションもあります。
ジョブローテーション事例6:電通
大手広告代理店の電通では、社員の希望があればジョブローテーションすることができます。一般的なジョブローテーション制度は会社の辞令を伴いますが、電通では社員が希望を出して了承されれば他部署へ異動することができます。
例えば、営業部門から専門部門へジョブローテーションに成功した事例もあります。社員のやってみたいという気持ちを大切にし、新たなチャレンジを後押しする企業の事例です。
ジョブローテーション事例7:ドリコム
ドリコムの事例は、「社会人交換留学」という名のジョブローテーションを実施しています。これまでにご紹介した事例ではジョブローテーションは社内で行うのが一般的でした。しかし、ドリコムでは他社に社員を留学させる形式でジョブローテーションを行っています。
交換留学により他社視点で自社を見ることにより、広い視野を持った社員の育成に繋がります。ドリコムのように、他社と協力することで社員を育成する事例もあります。
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ジョブローテーションのメリット3つ
ここまで、ジョブローテーションを導入している企業の事例をご紹介しました。ジョブローテーションの範囲や目的などは、企業によって多種多様であることが分かったのではないでしょうか。
では、企業が社員にジョブローテーションを経験させる主なメリットは何でしょうか。ここからはジョブローテーション制度のメリットをご紹介します。
ジョブローテーションのメリット1:部署間のコミュニケーションが向上
ジョブローテーションにより社員が部署間を異動することで、今までは交流のなかった部署間や社員同士に繋がりができ、コミュニケーションが向上するというメリットがあります。
社員同士の繋がりにより社内ネットワークが構築されると、仕事での連携も取りやすくなり、生産性の向上にも大きく影響を及ぼします。社内に一体感がうまれやすく、職場内の雰囲気も良くなる傾向にあります。
ジョブローテーションのメリット2:幅広い業務の理解
ジョブローテーションでさまざまな業務を体験することにより、社員は幅広い業務知識を得ることができます。幅広い業務内容を理解していることで円滑に仕事ができるだけでなく、顧客の信頼も得やすいというメリットがあります。
また、社員が現場を経験しておくことで、将来現場をよく知る幹部に成長できるため、幹部候補育成が課題である企業にとっても、ジョブローテーションのメリットは大きいと言えます。
ジョブローテーションのメリット3:モチベーションの維持と向上
ジョブローテーションは、社員のモチベーション維持と向上にも役立ちます。さまざまな職場や職務を担当することで、各職場から刺激が得られ、社員のモチベーションアップに繋がるというメリットがあります。
また、ジョブローテーションをすることにより、企業が社員の適性を把握できたり、本人の能力開発の手助けになるといったメリットも考えられます。
ジョブローテーションのデメリット3つ
ここまで、ジョブローテーションには企業や社員にとってさまざまなメリットがあることをご紹介してきました。ジョブローテーションを行うことは、企業や社員にとってWin-Winの関係だと感じられた方もいるでしょう。
しかし、ジョブローテーションによって引き起こされるのは、メリットばかりではありません。ここからは、ジョブローテーションによるデメリットをご紹介します。
ジョブローテーションのデメリット1:スペシャリストが育ちにくい
ジョブローテーションでは、スペシャリストが育ちにくいというデメリットがあります。多種多様な職務を経験することで、どの業務にも精通したジェネラリストに成長することができますが、裏を返せばそれは特定分野の専門家にはなりにくいということです。
ソフトウェア会社などのスペシャリストが主体の企業の事例では、そもそもジョブローテーションを導入すること自体が難しいと言えるでしょう。
ジョブローテーションのデメリット2:モチベーションが下がることもある
ジョブローテーションは、モチベーションアップに貢献する場合もありますが、社員によってはモチベーションが下がる場合もあります。
例えば、社員が希望した部署へのジョブローテーションでなかった場合や以前の業務を続けたいと願っていた場合などです。
職種によって給与や業務量が異なる会社では不平や不満が出たり、「どうせすぐに別の部署へ転属になるから」と業務に真摯に取り組まない社員も出てくる可能性があります。
ジョブローテーションのデメリット3:教育コストがかかる
ジョブローテーションには、教育コストがかかるデメリットもあります。受け入れ部署では引継ぎや教育の期間が必要となり、社員が新しい業務に慣れるまでは生産性も低下します。
また、せっかく時間をかけて育成しても、社員が退職してしまう可能性もあります。ジョブローテーションによって社員のキャリア志向が高まると転職者も増えるでしょう。コストをかけて育て上げた社員が辞めてしまった場合、損失額が大きいのが難点です。
ジョブローテーションの事例を参考にしよう!
ジョブローテーション制度は、業務内容によって向いている企業と向いていない企業があります。制度の導入を検討している際は、自社の業務内容と照らし合わせて導入が可能かどうか精査する必要があるでしょう。
制度導入後に、良い方向へ成長を遂げている事例も多くあります。ジョブローテーション制度を導入している企業の事例を参考にして、本当に自社に合う制度かどうか、よく検討しましょう。