人材育成におけるリフレクションの意味
人材育成における「リフレクション」とは、「一度自分自身の業務から離れ、自分の過去の行動や考え方を振り返り、客観的に深く考察すること」を言います。
失敗したことだけはなく、成功したことも含め、その経験における自分の在り方を見つめなおすことは、それまで気づかなかった新たな行動につながり、仕事への取組みかたを根本的に改善することができます。
リフレクションが必要な理由
社員の成長をもたらす未来志向の「リフレクション」は、会社を発展させるうえでとても重要な位置を占めるようになりました。なぜなら、社員の成長が会社の成長をもたらすからです。
普段何気なく行っている自分の行動や考え方は、振り返えなければ癖になり、それが成長の邪魔をしている可能性があります。
リフレクションを1人1人取り入れ未来志向で改善していくことは、いずれ会社全体の成長に大きく影響するでしょう。
反省とは違う?
では、「反省する」とはどう違うのでしょう。
反省は、業務の中でミスをおかしてしまった後、なぜそうなったのか原因を探り、同じミスを繰り返さないよう自分の行動や考え方を正すことです。振り返る対象が「ミス・誤り」になります。
一方で、リフレクションはミスしたことだけではなく、成功したことも含めあらゆる経験において客観的に自分を見つめなおします。
リフレクションの取り入れ方
リフレクションは、適切な手法や考え方に基づいて進めることが大切です。
個人がリフレクションを学びすぐに実践するこは可能ですが、より効果的にリフレクションを実施するためには、企業によるリフレクション教育など適切なサポートが重要になります。
リフレクションのプロセス
ここでは、人材育成におけるリフレクションのプロセスについて順を追って解説します。
リフレクション導入を検討されている人事担当の方は、リフレクションを効果的に実施するため、下記3つのプロセスを参考にして下さい。
出来事を振り返る
リフレクションのプロセスとして、まずは単純に体験した出来事だけを振り返っていきます。ここでは難しいことは考えず、淡々と起こった出来事をそのまま思い返す作業をします。
例えば、「〇月〇日、AさんからB商品に関する問い合わせ」「同日、AさんへB商品のパンフレットを送付」などです。
他者や環境を振り返る
過去の出来事を振り返ることに慣れてきたら、次のプロセスとして、他者や環境も一緒に振り返っていきます。上記で振り返った過去の出来事に関連している人物、人間関係、その時の状況や環境などを肉付けしていきます。
例えば、「問い合わせをしてきたAさんは最近新しく担当になった」、「B商品は最近受注が減少している」などです。
自己を振り返る
上記2つのプロセスは事実を並べるだけでしたが、そこに自分自身の考え方や行動を加え、その時の自分を振り返ります。
「Aさんへの対応は適切だっただろうか」「不安な様子もあったが、もっと力になれることがあったのではないか」「最近B商品の受注数が減少していることと関係しているのか」などです。
このようにリフレクションでは、業務における自己の行動を意識して振り返り、改善点を探っていきます。
リフレクションの効果4つ
ここでは、リフレクションによって得られる具体的な効果を解説します。自己を振り返るリフレクションが個人を超え、企業全体にもたらす効果はとても大きいといえるでしょう。
人事育成におけるリフレクション効果は、主に下記の4つがあげられます。
リフレクションの効果1:新たな発見や気づきがある
リフレクションでは、振り返りにより客観的に自己を見つめ直すことで、気づかずにいた新たな発見をもたらす効果があります。
気づかずにいた未知の扉を開けることは、個人を成長させ、それは部署においても全体を活性化させることにつながります。
リフレクションの効果2:考え方や行動に変化が出る
リフレクションでは、個人の新たなは発見や気づきがあることで、考え方や行動に変化をもたらす効果があります。
リフレクションにより、過去の経験を振り返り、自己の改善点、伸ばすところが発見できれば、考え方や行動も未来志向でポジティブに変化していきます。
リフレクションの効果3:仮説→検証の思考が定着する
リフレクションでは、自己を振り返るクセがつき、仮説→検証の思考が定着する効果があります。
リフレクションでは、普段の業務に関わるすべてのことを振り返るため、日常的に、「どんな考え方からこの行動になったのか」など仮説を立てるようになります。
その仮説をたてるクセが表に出ていない問題点を導き出し、より効率的に仕事に取り組めるようになります。
リフレクションの効果4:改善策を明確にできる
リフレクションでは、過去の経験に対し仮説を立てて検証する思考が定着しているため、その過去の経験に対する改善策を明確にできる効果があります。
リフレクションは日々の繰り返しです。継続的にリフレクションすることによって業務の継続的な改善につながります。結果、会社の生産性を向上させることになります。
間違ったリフレクションの方法も!
リフレクションのいいところは、悪い点だけはなく良い点も含めて客観的に振り返り考察することです。しかし、視点を他者に向けてしまったり、自己弁護のためにリフレクションしてしまうケースもあります。
間違ったリフレクションは、業務の改善が望めないどころか、人間関係を悪化させることになりかねません。
ここでは、間違ったリフレクションの方法を解説しますので参考にして下さい。
原因を他者や環境のせいにする
過去の経験を振り返る際、失敗の原因を他者や環境のせいにするという誤ったリフレクションの考え方をしてしまう場合があります。
間違ったリフレクションでは、「起こったミスは誰のせいなのか」「自分が責任を負わずに済むためにはどうしたらいいか」など自己弁護の視点で思考が進みます。
一方で、正しいリフレクションでは、「実際求められていたものは何だったのか」「どのような改善方法があるか」という視点で思考が進みます。
失敗にとらわれ学習しない
振り返る対象が「失敗・間違い」だけにとらわれてしまい学習しない場合があります。
間違ったリフレクションでは、「どんな間違いが、なぜ起きたのか」「同じ失敗を回避するために何を避ければいいのか」という「誤りを正す」視点で思考が進みます。
一方、正しいリフレクションでは、「誤りを正す」ことだけに視点をおかず、「今後、効果的に業務を進めるため、このようなやり方があるのではないか」と大きな視点で思考が進みます。
具体的な改善策を立てない
間違ったリフレクションでは、過去の事実関係を整理することで満足してしまい、具体的な改善策を立てない場合があります。
これでは、具体的な改善策を立てるまえに思考が止まってしまうので、自己成長にもならず、業務も一向に改善されません。
その先の「どのようにすればもっと改善されるか」「どこに改善を加えればよりよくなるか」といった建設的な思考が加われば、リフレクションの効果を最大に生かせるでしょう。
失敗の原因に着目してしまう
業務で失敗した時、「なぜ、どのようにして問題が起こってしまったのか」と失敗の原因に注目してしまう場合があります。
間違ったリフレクションでは、失敗の原因だけに着目してしまい、限られた視点で思考が進みます。
失敗の原因を考察することは大切なことですが、振り返るスポットを広げ、そこから対策を生み出す思考を育てる必要があります。
リフレクションの考えを人材育成に活かそう
今回は、人材育成におけるリフレクションについて、その効果や取り組み方について解説しました。リフレクションを取り入れた人材育成は、企業を活性化させ生産性を向上させるでしょう。
自ら率先して経験を学びにし知恵に変える人材の育成のため、企業はリフレクションの正しい手法を学び、社員が効果的にリフレクションを実践できる環境作りのサポートするようにしましょう。