OJTとは?
OJTとは、On-the-Job Trainingの略称で、実際の職務現場で作業者に指導者がついて、業務を一緒に行いながら仕事を覚えていく教育訓練の方法です。
作業者に実務を早く覚えてもらうために、実際の業務を作業者に行ってもらいながら、指導者が適宜必要な知識やスキルを教えます。
指導者のスキルによって教育効果が変わってしまうので、テンプレートに基づくOJT計画書などを準備する必要があります。
OJTに計画書は必要?
OJTは現場で実際に作業をすることで、指導員が作業者に直接やり方や注意すべきところを指導しながら訓練していく方法なので、計画書は要らないと思う方もいるでしょう。
しかし、OJTを無計画に実施すると、実際に行う必要が生じた業務しか訓練することができません。
必要な業務すべてを計画書に落とし込んで実施しなければ、実際に1人で業務を始めた際に分からない業務があると、大きなトラブルにつながる可能性があります。
計画的な人材育成
OJTは、実際の業務や作業をトリガーにして行う教育訓練ですので、教育期間中に発生した業務しか訓練されません。
当然のことながら、実際の業務を任せるためには、その業務で発生しうるすべてのタスクについてトレーニングする必要があります。
テンプレートに基づくOJT計画書を用意して、タスクの漏れのない計画に基づいてトレーニングを実施することで、人材を計画的に育成することができます。
会社への報告
教育訓練を実施する場合に、実施責任者は、会社に対してどのようなトレーニングを行い、どのような成果が上がっているかを報告しなければなりません。
OJT計画書に挙げられているすべての業務について、トレーニングの進み具合を報告することで、人事計画との整合を保つことができます。
教育訓練に対する計画と実績を報告する際に、全社共通のテンプレートに基づくOJT計画書があると、それをベースに報告できるので便利です。
指導を受けた人への評価フィードバック
OJTで教育訓練を受けた人にとって、自分が受けたトレーニングがマスターしなければならない業務全体の何割に当たるのか、これからどれくらいの期間トレーニングが続くのかがわからないのはとても不安です。
共通テンプレートに基づくOJT計画書があると、それを共有してもらうことで、自分が学ぶべき全体像とこれからのプランが把握できるので、不安をなくすことができます。
指導評価内容の明文化
OJTは実施作業ベースのトレーニングなので、同じ作業を何回もやったり、発生しなかった作業があったりして、評価されるべき作業の指導内容の管理がばらついてしまいます。
きちんとしたテンプレートに基づくOJT計画書を作成すると、その過程で指導対象項目をピックアップすることになり、指導内容や評価内容を明文化できます。
明文化された指導・評価内容は、そのまま人材評価の指針として利用することができます。
来年以降の指導にも使える
ある職場で業務を行うためのタスクは、業務が大きく変わらない限り、1度設定したトレーニングをそのまま何年も使い続けることができます。
社内の共通テンプレートに基づくOJT計画書は、1人のために作成したとしても、来年以降の新人教育にも使用できます。
実際に作成されたOJT計画書を使って教育訓練を行い、不具合などをその都度修正していくことで、OJT計画書の精度を向上させることができます。
OJT計画書作成に必要な準備
ここまでの話で、OJTによる教育訓練を行う場合には、OJT計画書を作成した方がよいということはご理解いただけたでしょう。
実際にOJT計画書のテンプレートを作成する場合に、OJTを有効にするためには具体的にどのような準備をすればよいのでしょうか。
ここでは、OJT計画書のテンプレートを作成するときに行うべき準備についてお伝えします。
指導対象者の確認
OJT計画書を作成する際に、まず確認しなければならないのは、指導を受ける人が行う予定の業務や能力の確認です。
指導対象者に任せる予定の業務範囲と現在できること、能力の見積もりがわからないとOJT計画書が作成できません。
あまり詳細な情報を計画書に載せる必要はありませんが、テンプレートには大まかな項目を明記できるようにしておくとよいでしょう。
経営方針や育成方針の確認
OJT計画書を作成する際に、会社の経営方針や教育方針が反映されているかどうかを確認しておく必要があります。
会社から求められている教育訓練の結果を出すためには、OJT計画書のテンプレートに、これらの方針が反映されている必要があります。
OJT計画書を作成する時には、会社の経営方針・教育方針を意識して作ることが必要です。
指導内容の確認
OJT計画書には、実際にどのような指導を行うのかといった内容を明記しなければなりません。指導内容がわかる形になっていないと、指導される側も、最終目標と現状がわからず、トレーニングを受ける際に混乱してしまいます。
テンプレートには、OJTするべき項目一つ一つについて、具体的に行う指導のトレーニング名、ヒントなどを書いておきましょう。
評価方法の確認
OJTを実施し、トレーニングが完了しても、評価方法が決まっていなければ、トレーニングの効果が実際に上がっているのかどうかを判断できません。OJT計画書のテンプレート には、実施するOJTの評価方法も明記しておくとよいでしょう。
テンプレートに書いておくことで、同じOJTを受けたメンバーの評価方法が統一され、個々のメンバーの課題を明確にすることができます。
目標の確認
OJT計画書に最も必要な内容は、OJTで達成されるべき目標です。OJTを行うことで、OJTを受けるメンバーがどのようなスキルを持つことができればいいのかを明確にすることで、途中で問題が発生しても、簡単に軌道修正をすることができます。
OJT計画書テンプレートの中で、すべてを包括する形で表現しておく必要があります。
会社への報告方法の確認
OJT計画書は、指導者だけでなく、OJT受講者の上司にあたる人間に報告し、どのような状況かを都度理解してもらう必要があります。
受講者の身につけるべきスキルを理解しているOJT受講者の上司に、トレーニングの方向性が間違っていないかを確認してもらうことが重要です。
報告サイクルごとに誰に報告し承認を受けたかがわかるように、OJT計画書のテンプレートの中に報告チェックシートが入っていると間違いありません。
指導を受けた人へのフィードバック方法の確認
OJT計画書には、評価結果を受けて、指導を受けた人に「どこがうまくいっていて、どこにもう少し注力をするべきか」をフィードバックする仕組みをテンプレートレベルで織り込まなければなりません。
せっかく受けた指導も、伸ばすべきところと足りないところが分からないと、努力を注ぐ方向が見えませんし、モチベーションも上がりません。PDCAサイクルを回して、個人の能力を高めるOJTを実現しましょう。
テンプレートを参考にOJT計画書をつくってみよう
OJTを実施する際に、OJT計画書を作るのが有効だとわかっても、実際にどのような形式で要素を盛り込めばいいのか分からない人も多いでしょう。
既に自社にOJT計画書のテンプレートを持っている場合はそれを使えばよいのですが、ない場合は、外部で作成しているテンプレートを導入する方法もあります。
ここでは、OJT計画書の外部テンプレートを導入するやり方についてご紹介します。
テンプレートの入手
OJT計画書のテンプレートを入手するには、取引のあるコンサルティング会社などに依頼して提供してもらうやり方があります。
しかし、そこまでコストをかけなくても、OJT計画書のテンプレートを入手する方法はいくつかあります。ここでは、OJT計画書のテンプレートを入手する方法をご紹介します。
インターネットから
1つ目は、インターネットでOJT計画書のテンプレートを入手する方法です。
インターネットで「OJT計画書 テンプレート」のよう語句で検索すれば、たくさんのテンプレートを見つけることができます。有料のものも多いですが、無料のテンプレートもあるので、まずはそれで勉強してみるとよいでしょう。
人材育成や研修を事業とする会社から
2つ目は、会社と取引のある人材育成や研修サポート会社から、OJT計画書テンプレートを提供してもらう方法です。
取引状況によっては、無償で提供してもらえる可能性もあります。せっかく人材育成をサポートしてくれる相手なので、各部門のリーダーを集めてOJT計画書の研修などをしてもらうと、導入のハードルをかなり下げることができます。
他社から
あなたの会社が同業他社と業界団体のようなものに参加していれば、そこで他社のOJT計画書テンプレートをもらうこともできます。特定の会社のものをもらうのは難しいですが、業界自体の競争力向上のために、業界団体標準のテンプレートを策定することは可能です。
一社だけでなく、業界グループ全体の知恵を集めれば、よりよいOJT計画書のテンプレートを作ることができるでしょう。
テンプレートのカスタマイズ
OJT計画書のテンプレートを手に入れても、それをそのまま使用していたのでは大きな効果は望めません。OJT計画書のテンプレートは、自社に合わせてカスタマイズする必要があります。
自社の方針や部門のやり方、自社の人材育成の方法に合わせてカスタマイズして、OJT計画書を使いやすいものにしましょう。
OJT計画書に盛り込むべき項目10個
OJT計画書のテンプレートには、どのような項目を盛り込む必要があるのでしょうか。ここからは、OJT計画書のテンプレートに必ず盛り込む項目を紹介します。
必須項目を理解していると、OJT計画書のテンプレートを手に入れた場合にも、そのテンプレートがどの程度有効なものなのかを判断することができるようになります。
OJT計画書に盛り込むべき項目1:指導者と指導を受ける人の基本情報
OJT計画書のテンプレートに盛り込むべき項目の1つ目は、指導する人と指導を受ける人の基本情報です。
指導される人は指導者がどのような立場の人間であるかを理解している必要がありますし、指導者は指導される人間がどのような能力を身につけることを期待されているかを意識して指導を行わなければなりません。
指導者は複数のOJTを引き受けている場合もあり、目の前にいる人間の現状と目標を常に確認する必要があります。
OJT計画書に盛り込むべき項目2:実施期間
OJT計画書のテンプレートに盛り込むべき項目の2つ目は、実施期間です。OJTはそれほど長期にわたるケースはありませんが、どのくらいの期間で求められている成果をあげなければいけないかを意識してOJTを計画・実施する必要があります。
短い期間で成果を上げるためには、密着して指導する頻度を多くする必要がありますし、比較的長期であれば、自分で考えて行動した結果を見てフィードバックする方法がよいでしょう。
OJT計画書に盛り込むべき項目3:達成目標
OJT計画書のテンプレートに盛り込むべき項目の3つ目は、達成目標です。OJTを行うことで、どのようなスキルを身につけさせるかが計画書に明示されていれば、指導時のブレを常に補正することができます。
スキルを身につけることだけが目的であれば、テクニカルな部分を重視して指導し、担当者としての自覚や問題意識を持たせるのが目的であれば、仕事全体の目的を意識しながら自分で考えて行動してもらう必要があります。
OJT計画書に盛り込むべき項目4:指導方法
OJT計画書のテンプレートに盛り込むべき項目の4つ目は、指導方法です。個々の項目について、会社が用意しているトレーニングや外部講習、現場での指導などが明記されていれば、OJTの計画も立てやすくなります。
また、指導方法をテンプレートに明記しておくことで、指導者の違いによるトレーニングの品質のばらつきを減らすことができ、OJTの品質を向上させることができます。
OJT計画書に盛り込むべき項目5:評価方法
OJT計画書のテンプレートに盛り込むべき項目の5つ目は、評価方法です。評価方法が明確になっていないと、評価の妥当性がはっきりせず、OJTを受ける側のモチベーションが上がらず、会社へ報告する際にも評価が妥当かどうかの情報共有がされません。
個々の項目ごとに評価方法を明確にしておけば、評価の仕方について悩んだり考えたりする時間も減らせます。
OJT計画書に盛り込むべき項目6:指導者の評価やコメント
OJT計画書のテンプレートに盛り込むべき項目の6つ目は、指導者の評価とコメントです。OJTを進める中で、あとから見直したい項目を再度自習したい時に、指導者の評価とコメントは大いに参考になります。
会社への報告の際にも、スキルの習熟状況が把握できるので、進捗状況の理解の不一致をなくすことができます。
OJT計画書に盛り込むべき項目7:指導を受けた人のコメント
OJT計画書のテンプレートに盛り込むべき項目の7つ目は、指導を受けた人のコメントです。OJTで指導を受けた人のコメントを入れることで、受講状況の共通認識を得ることができ、指導者も理解のサポートをしやすくなります。
指導を受ける側からのフィードバックをもらうことで、OJT計画書の見直しや今後のOJTのテンプレート作成に、新たな知見を得ることができます。
OJT計画書に盛り込むべき項目8:会社への報告日と承認結果
OJT計画書のテンプレートに盛り込むべき項目の8つ目は、会社への報告日と承認結果です。OJTは部門内で完結するものではなく、「指導が有効かどうか」「かける時間は適正か」などの評価は、社内すべてにおいて有効な情報になります。
部門での指導状況が全社の方針から見て適正かどうかなども確認できますので、会社への報告タイミングと承認結果はテンプレートに入れておきましょう。
OJT計画書に盛り込むべき項目9:OJT全体へのフィードバック
OJT計画書のテンプレートに盛り込むべき項目の9つ目は、OJT全体へのフィードバックです。個々の項目に対する評価だけでなく、OJT全体へのフィードバックを得ることで、OJT自体が有効であるかどうかを検証することができます。
OJT計画書の各項目で不必要なものがあるか、不足していると思われる項目があるかなどのフィードバックをしましょう。
OJT計画書に盛り込むべき項目10:各OJT項目の有効性の確認
OJT計画書のテンプレートに盛り込むべき項目の10個目は、各OJT項目の有効性の確認です。同様のスキルを必要とする訓練の際に、この計画書によるOJTが有効かどうかを会社で評価してその結果を明記することで、次回のOJTに活かしていきましょう。
ブラッシュアップされたOJT計画書は、人材育成のための財産になります。
OJT計画書のブラッシュアップ
OJT計画書は、1度作ったらそれで終わりではなく、会社のトレーニングプランの一環として活かしていくことが求められます。他のすべてのトレーニングと同じように、人材育成のためによりよくしていかなければなりません。
ここでは、OJT計画書のテンプレートをブラッシュアップする際に注意すべきポイントを見ていきましょう。
記載項目の見直し
OJTを実際に行っているうちに、必要なトレーニングの過不足があることがわかってくるので、OJT計画書の記載項目は見直しするほどに完成度が上がります。
OJT開始時のテンプレートをどれだけブラッシュアップできるかで、トレーニングアイテムの改善に貢献することになるので、変えることを恐れずに、必要な変更は積極的にしていきましょう。
指導方法の見直し
OJTの指導方法も、指導される側のフィードバックなどから有効性を見直すことができます。
時間をかけても効果が上がらない場合や、外部の講習を受けた方が効果が上がる場合、Off-JTの方がふさわしいトレーニングもあるので、常に見直しを意識してトレーニングを実施しましょう。
評価方法の見直し
OJTの結果の評価についても、わかりやすい指標を作っていくことでトレーニングの効果の向上が望めます。
計画書のテンプレートを使って、指導者が評価を記入する際に悩んだり、時間がかかるような場合は、評価の方法が正しくない可能性があります。誰が記入してもわかりやすく、簡単に記入できるように見直しをしていきましょう。
社員の階層に合わせたテンプレート作成
同じようなOJTでも、トレーニングを受ける社員の力量や階層によって必要な項目や評価方法は変わってきます。
計画書のテンプレートを作る際に、マネージメント部門やリーダーについては、一般社員とは別のものを準備した方がよいでしょう。
業務に合わせたOJT実施期間を
OJTを行う場合、訓練される業務によって実施期間は変わってきます。決まった業務でそれほど複雑なものでなければ、短期で実施することができ、複雑で他業務との関連によってアクションが変わるようなものについては、ある程度長期で習熟する必要があります。
ここでは、OJTでトレーニングする業務の種類と実施期間の関係についてご説明します。
1年間
OJTを1年間続けるというのはかなり長いですが、年間でサイクルが回る業務の場合は、このような対応が必要なケースもあります。たとえば、会社のファイナンシャルプランニングで、年度予算から決算までの流れをすべてOJTで行うような場合です。
実際は1年間ずっとその業務だけを行っているわけではないので、長いスパンの中で要所要所にOJTを織り込むという形になります。
数か月
一連の業務を丸ごと習得する場合は、数ヶ月かけてOJTを行っていくのが普通です。1ヶ月サイクルで業務が完了する場合なら、数サイクル回して経験を積む必要があり、3ヶ月くらいがOJTの実施期間になります。
業務の必要なポイントを理解するためには、机上だけでなく、実際の仕事を通しで行ってみるのがもっとも確実です。
1か月
業務の中の一部を習得する場合は、1ヶ月でOJTを終えるように計画します。1ヶ月の間に数回のサイクルを回し、そこで業務を理解し、問題なく仕事を進められるようにします。
ある程度仕事の仕方を理解している人間に、追加で新しい業務をアサインする場合などに、このようなやり方でOJTを行います。
テンプレート活用で効率的にOJT計画書を作成しよう
OJTは現場で仕事をやりながら覚えていくものですが、必要なタスクは決まっているので、漏れなくトレーニングするためには、タスクを網羅した計画書に基づいてトレーニングすることが必要です。
業務を実際に運用できるようにするためのトレーニングとして、OJTは有効です。いろいろなやり方で手に入るテンプレートを利用して、自社に合ったOJT計画書を作成し、業務トレーニングの精度を上げていきましょう。