物流業界の現状
ネットショッピングの急速な普及に伴って、物流業界は近年大きく変化してきました。今まではネットでの購入は不安だと敬遠していた年配者ですら、簡単で手軽に注文することができ、また自宅まで配送してくれる便利さを、実感しはじめています。
物流業界はこれを受けて急速な発展を遂げたのですが、このことで多くの問題を抱えることになりました。物流業界の現状は人材不足と高齢化、そして差別化の難しさによる利益率の低さです。
物流業界は差別化が難しい
物流業界の差別化が難しいというのは、そもそも物流業界の仕事自体がシンプルなため、それぞれの企業の個性や特徴を出しにくい業種であるといわれています。
物流業界のビジネスモデルは、モノを入荷し、保管し、管理し、出荷、そしてその手数料をもらう。またはモノを運んでその手数料をもらうといったもので、他社との差別化をするなら、どこよりも早く届けるか、料金を安くするか、丁寧であるか、この3点のみとなっています。
物流業界の将来性
物流業界全体の将来性について俯瞰してみると、見えてくるのは中小企業の倒産そして業界の再編、また海外進出、その展開です。
そして物流業界を今後大きく変えるだろうといわれている、運送手配や在庫管理、流通加工などを一括して一元的に行ってくれるという「サードパーティロジスティクス」と呼ばれる事業者があらわれ、現在需要が拡大しつつあります。
こういった流れが物流業界の将来的な展望となっています。
物流業界から転職を考える5つの理由
転職するという意識のハードルが下がっている現在、キツイ仕事というイメージの物流業界では人材が定着せず、常に人材不足であることが大変大きな問題となっています。
物流業界から転職を考える理由を5つ以下にあげてみました。ここから見える物流業界の深刻な現状を考えてみます。これで物流業界への転職が少しでも理解できるでしょう。
転職理由1:ドライバー不足
物流業界で深刻な問題が、ドライバー不足による転職です。
物流業界のドライバーはそもそも変則的な勤務時間や、積み荷の上げ下ろしなどの肉体労働など、過酷な労働環境に加えて、そもそもドライバーが不足していることによる、さらなる労働環境の悪化といった負の連鎖による転職者の増加です。
しかし、屈強な男性の職場と考えられてきた物流業界ですが、最近は女性や高齢者などの活躍にも期待できるようになりました。
転職理由2:労働環境
物流業界の作業は昼夜を問いません。勤務時間もドライバーなどは変則になりがちで、拘束時間が長くなることも多くあります。また積み荷の上げ下ろしもドライバーが自ら行わなければならず、肉体労働を余儀なくされます。
これらの労働環境から、物流業界の仕事は長くは続けられず、転職を希望する人が後を絶ちません。
転職理由3:給与
物流業界の中でも大手の企業大型トラック運転手や引越し業のドライバーなどは、給与が高い傾向にあります。年収にすると約800万円程度の時もあります。通常平均年収は400万円程度で多くても600万円程度です。
肉体労働がきつく精神的にもハードなわりに給与はそれほど高くはありません。常に人材不足のため、どこもギリギリの人材の中シフトをまわしているため、タフな人でないと続けていくのは難しい環境です。
転職理由4:ワークライフバランス
物流業界の、特にドライバーの勤務時間については変則的であること、また、転職者が多く常に人材不足という問題を抱えているため、ドライバー自身が積み荷の上げ下ろしもしなければならなく、自ずとひとりに対する拘束時間も長くなっています。
そのため、ワークライフバランスの充実しているところは少ないのが現状です。自分の時間がなくてストイックな生活を余儀なくされるため、転職者は増加する一方です。
転職理由5:高齢化
物流業界でも今問題になっているのが高齢化です。長い間企業を支えてきた労働者たちが高齢化し、次々と定年を迎えています。高齢者たちは定年退職をしたあと、もっと安全で楽な転職先を探します。
今、このような高齢者が大変多く、物流業界はますます転職者が増え人材不足になっています。素早い解決策は必要な中、なかなかその方法が見つけられずに悪循環に陥っています。
物流業界から転職しやすい業界
物流業界から転職した人たちは、次はどのような職業に探したり就いたりするのでしょうか。また転職しやすい業界というのはあるのでしょうか。
物流業界で培った経験は、物流業界以外ではどのような業種に生かせることができるのか、いくつかあげて検証してみることにしました。
物流業界から転職を考えている人、あるいはすでに決断している人にとって少しでも参考になるでしょう。
警備業
物流業界はとにかく体力勝負でタフな人でないと務まりません。そもそも物流業界に入るときにそれを意識したうえで入社しているはずですから、当然運動能力または体力に自信のある人が多いはずです。
そういった人に向いているのが警備業です。警備業にもさまざまありますが、主に施設警備や交通誘導などの仕事に大別されます。また体育会系出身の多い物流業界経験者は、警備員の重い責務を担った業種は転職に向いているでしょう。
ビルメンテナンス業
ビルメンテナンス業への転職は、資格や経験がないと難しい面はあります。
しかし、それはあとでいくらでも学ぶことはできますし、必ずしも資格がないと転職することはできないということもありません。もちろんこの仕事も通常の仕事よりも体力は必要ですし、努力次第では自分の能力を発揮することができます。
資格があれば、長く続けていくことのできる仕事なので、決断は少しでも早くして経験を積んでいくことをおすすめします。
製造業
製造業とひとことで言っても、さまざまな形態に分かれます。確かにどの分野でも力仕事は多く、また工場などでは手際の良さや素早い判断などを求められることもあります。
物流業界ではドライバーから荷物の上げ下ろしなど、ただやみくもに行っているわけではなく、段取りの設定や、突然の変更などに対応する機転を利かせた行動など、知らず知らずのうちに身についた経験を、製造業への転職で、存分に発揮することができます。
建設業
建設業も危険で過酷な職場というイメージがありますが、大きなビルを建てたり橋をつくったり、また住宅を建てたりなど、夢のある仕事には違いありません。
これも部署によっては体力を非常に求められますが、だからといって簡単ではありません。転職先としては、気楽な気持ちではなかなか務まりませんが、大きなやりがいは感じられるでしょう。
営業職
営業職は人と話すことが好きな人であれば、転職にはおすすめです。企業によって営業職にもさまざまありますが、基本的には外に出て、いろんなところを訪問しなければいけません。
体力も必要ですし、メンタルもタフでないと務まらない職業です。しかしこの仕事も、深く知ればとてもやりがいを感じることのできる仕事です。どんな仕事でも勉強をして知識を身につけておかなければ、楽しいと感じながら仕事をすることはできません。
転職をやめるべき5つのポイント
誰もが一度は転職を考えたことがあるでしょう。しかし実際に転職となると、やはり躊躇してしまうのも当然と言えるでしょう。
もし少しでも転職するかどうかを迷ったなら、転職はしない方がいいでしょう。以下に転職をやめるべきポイントを5つあげてみました。当てはまるものがあったら、とりあえず今回は転職をとどまってください。
転職をやめるべきポイント1:現職の待遇に不満がない
同僚が転職したりすると、ふと自分もつられて転職してみたくなったりすることがあります。また転職すれば、今よりもっと素敵な未来が開けるような幻想を抱いてしまうこともあります。
しかし今の自分が置かれている現状について振り返ってみましょう。現職にまったく不満がない場合、転職する必要があるでしょうか。あえて過酷な道を選ぶ人もいますが、特に今自分が何かをしたいわけではなかったら、転職する必要はありません。
転職をやめるべきポイント2:生活に支障が出るくらい給与が下がる
どうしても転職したいと検討した結果、転職先の給与が今より激減し、生活が維持できないほど支障をきたしてしまうようなら、とりあえず転職はやめにしましょう。
夢を追いやりたいことを貫くことも大切ですが、それは生活がきちんとできたうえでの話しです。もし家族がいるならなおさらです。家族を守っていかなければならないという自覚も大事です。
転職をやめるべきポイント3:転職後の自分をイメージできない
もし転職したあと、その転職先で自分がどう働いているのか、具体的にイメージができないなら、転職はやめたほうがいいでしょう。
それは転職先で何をしたいのかまだ見つけられていないからです。そんな感じで転職をすれば転職先にも失礼になりますし、まだよく考え直す機会があるとおもって、今回はとどまってみてください。
転職をやめるべきポイント4:自分の年齢で転職成功できるか不安
若いうちなら転職をしてもやり直すことはできます。しかしある程度の年齢に達すると、若いころのような体力や力はありませんし、能力も鈍くなってきています。同じ業種ならまだしもまったく新しいところに入って、一から勉強なんてできるかどうか不安になります。
しかしやる気になればいくつになってもできるはずです。プライドを捨てて自分より年下のものに教えてもらうのを屈辱だと思わずにできるなら転職はできます。
転職をやめるべきポイント5:自分の能力で転職成功できるか不安
まったく新しい業界への転職であれば、自分がそこでどの程度能力を生かすことができるか不安になります。
それは結局のところ転職してみなければわからないことです。どうしても不安が拭いされないのであれば転職はしないでおく方が無難ですが、誰にでもはじめての時は何もできないのが当然です。プライドを捨てて割り切ることができるかできないか、それだけの問題です。
物流業界からの転職も視野に入れましょう
物流業界は現在さまざまな問題を抱えています。その問題を解決させるためには、業界全体を俯瞰してみて、少し痛みを伴う治療も必要となるでしょう。
現在過酷な条件で働いている人々も、このまま何も変わることなく続けていけるとは言い難いですし、将来を見据えると、転職も視野に入れて自分の身の振り方をしっかりと考えておくべきではないでしょうか。そのための準備もそろそろはじめておきましょう。