同一労働同一賃金とは?
同じ企業で働き同じ業務を行うのであれば、雇用形態を問わず同じ賃金を支払わなくてはならない、という新しい働き方のルールが「同一労働同一賃金」です。
同じ仕事をしている正規雇用労働者(正社員)と非正規雇用労働者(パートや派遣社員など)の間に不合理な待遇格差があってはならない、という趣旨のもと「働き方改革」の大きな柱の一つとして進められています。
いつから施行され、いかなる内容かを中心に解説していきます。
同一労働同一賃金はいつから?
同一労働同一賃金はいつから行われるのでしょうか。いつから施行されるのかについては、実は既に決定しています。
同一労働同一賃金に関わる法律案は2018年6月の国会で可決しており、大企業が2020年4月1日より、中小企業が2021年4月1日より施行されることが決まっています。
まだ少しだけ時間はありますが、いつから行っても良いように導入準備は進めておくべきです。
同一労働同一賃金について知るための4つのこと
2018年12月、安倍晋三総理が議長を務める「働き方改革実現会議」に「同一労働同一賃金ガイドライン」が提示されました。
同一労働同一賃金を行う目的や基本的な考え方などを4項目にわたってまとめたもので、その後に国会に提出された法案のたたき台となりました。
同一労働同一賃金を知り、いつから導入されても大丈夫なように、このガイドラインの内容をあらためて確認しておきましょう。
1:基本的な考え方
「同一労働同一賃金ガイドライン」を提示した目的は、雇用形態や就業形態にとらわれずに、すべての労働者が公正な待遇を受けることを目指している、としています。
そして、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の待遇に差がある場合、それが不合理なものかどうか、不合理である場合の基準はどのようなものかを具体例を提示して、同一労働同一賃金を目指すことについての考え方を示しています。
2:短時間・有期雇用労働者の場合
短時間、有期雇用労働者の同一労働同一賃金の考え方が具体的に示されます。対象項目としては基本給・賞与・各種手当・福利厚生・教育訓練があります。
基本給や賞与、各種手当については、正規雇用労働者に比して同じ能力や経験、支給要件を満たしている場合は同じに支給しなければならないとしています。
また、同一の事業所に勤務している場合、教育訓練の実施についても差別があってはならないとしています。
3:派遣労働者の場合
派遣労働者の同一労働同一賃金の考え方や項目も、基本的には短時間、有期雇用労働者と同じですが、注意する点は基本給と賞与、各種手当に対しては派遣元事業主が、福利厚生と教育訓練については派遣先に待遇改善義務がある、ということです。
雇用主である派遣元だけが義務を負うわけではないことがポイントとなっています。
4:協定対象派遣労働者の場合
派遣労働者の場合、労使協定方式という待遇決定方式をとることもできます。この方式は、あらかじめ派遣元で労使協定を締結のうえで労働者が派遣されるもので、協定内容に基づいて待遇内容が決定されます。
協定対象派遣労働者の賃金、福利厚生、教育訓練という項目について考え方が示されています。賃金については、厚生労働省令で定めるもの以上であること、派遣先労働者と同じ福利厚生、同一の教育訓練の実施が求められています。
同一労働同一賃金のメリット・デメリット
雇用形態に関わらず、同じ業務をしていれば同じ待遇を受けられるというメリットは同一労働同一賃金の大きな特徴ですが、同時にいくつかの懸念されるデメリットも存在しているということも認識しておく必要があります。
メリット1:非正社員の意欲が上がる
同一の労働に従事していれば、正規雇用労働者(正社員)と同じ程度の賃金の支払いや待遇が受けられるということは、非正規雇用労働者(非正社員)でも賞与や各種手当や福利厚生なども受けられるケースが出てきます。
これらの正社員との間の待遇格差解消により、非正社員の労働意欲が向上し、結果として業務の質の向上につながることも考えられます。
メリット2:様々な社員が活躍できる
同一労働同一賃金は、同じ労働に従事する労働者にはその雇用形態にかかわらず同じ賃金を支給するということで、あくまで労働の内容や成果に応じて賃金が支払われるべきとの原則に立っています。
年齢や性別、国籍などにより賃金が抑制されることがなくなるため、高齢者の再雇用促進や男女の格差是正、外国人労働者の待遇改善につながり、経験や知識の豊富な人材がより活躍しやすいようになります。
デメリット1:人件費が高くなることもありうる
同一労働同一賃金は、非正規雇用労働者の賃金を改善することを主な趣旨としています。これまで非正規雇用労働者を活用することで人件費を安く抑えていたような企業の場合、同一労働同一賃金の原則を適用すると人件費が高騰してしまうというケースも出てきます。
デメリット2:長期的には労働者に不利な場合も
非正規雇用労働者の賃金を改善することにより人件費が高騰すると、能力や評価の低い正規労働者に対して企業側がリストラを行う可能性が出てきます。
給与や賞与の減額、さらには新規雇用を抑えるといったことも場合によっては出てきます。そうすると、長期的にみて労働者にとって不利になるような状況が生まれてしまいます。
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いつから導入されてもいいように準備しておくこと
労働基準法、パートタイム・有期雇用労働法、労働者派遣法の改正、いわゆる「働き方改革関連法」は2018年6月29日成立しました。
同一労働同一賃金の内容を含んでいる法案の成立により、大企業は2020年4月1日、中小企業は2021年4月1日には、対応できるようにしておく義務が生まれました。
しかし、これらの期限に関わらずいつから導入してもいいように準備を進めておくことが重要です。
1:正社員と非正社員の役割を明確にする
同一労働同一賃金では、たとえ業務が同一であっても責任の重さに違いがある場合などは、不合理な待遇格差とは認められないことになっています。
正社員に業務遂行以外の管理責任を負わせている場合も多々あることから、そのうえで、業務全体を通して、正社員と非正社員の役割を明確化しておく必要があります。
すなわち、それぞれの職務範囲がどのくらいなのかを把握して、責任の範囲が具体的にわかるようにしておきましょう。
2:人件費を計算して人数を調整する
同一労働同一賃金の実施により、人件費が高くなるケースも考えられます。
正規・非正規を含め人件費がどれだけかかっているかを計算のうえ、いかにしてコストを抑えるか(生産性を上げるか)、そして場合によっては業務に関わっている労働者の人数を調整することも検討課題となります。
3:商品やサービスの価格を上げる検討をする
業務に関わる労働者の人数を調整することがどうしても困難な場合には、提供している商品やサービスの価格を上げる検討が必要になります。提供価格を引き上げることにより、人数調整をしなくても一人当たりの生産性は上昇します。
しかし、値上げの仕方によっては同業他社に顧客が流出してしまい効果を相殺してしまうことになりますので、導入するときは慎重さが求められます。
4:正社員の賃金を下げる検討をする
同一労働同一賃金を行うとき、非正社員の賃金を上げることが主体となります。正社員の賃金水準を維持したまま同一賃金を実現するために上記の方法を用いてきたがうまくいかない、という場合もあります。そのときは正社員の賃金を下げる検討をせざるを得ないでしょう。
これを行った場合、社員のモチベーション低下、生産性低下といったことを引き起こす危険性もありますので、対応や回避策を含めて総合的に検討する必要があります。
いつから導入しても対応できるように準備しよう
同一労働同一賃金の施行は、場合によっては正社員の待遇悪化を招く危険性もはらんでいますが、一方において非正社員の戦力化加速で、生産性向上、業績向上が図れるチャンスもあるといえます。
2020年(中小企業は2021年)までまだ多少の時間がある、と悠長に行動するのではなく、いつから導入しても対応できるよう、迅速に準備を行うことが肝要といえるでしょう。