パート・アルバイトの昇給の基準となる人事評価制度
アルバイトなど現場で働くスタッフのモチベーションの維持は、店舗の売り上げを左右します。このモチベーション維持にもっとも効率的なのは、昇級制度の導入でしょう。
昇級のための最も大きな基準になるのが「人事評価制度」です。正社員にしかないと思われがちですが、実はパート・アルバイト用の人事評価制度も存在します。
昇給の基準となる人事評価制度
パートやアルバイトといった非正規雇用であっても、働きを評価する仕組みが存在します。この評価を人事評価制度といい、最も昇給に繋がりやすい基準です。
例えばアルバイトの中でリーダーやコーチなどといったポジションを設定し、ポジションに応じて昇給の基準を設定します。最初はポジションに就いていなかったアルバイトも、働きに応じてポジションに任命され、それによって昇給されるというものもあります。
昇給の基準となる人事評価制度の役割
アルバイトが仕事を続ける基準としては「給料」と「評価」であると認識されています。昇給によって生活が豊かになるのはもちろんですが、ある程度自分の働きが評価されたいという承認欲求もあわせて持っています。
この承認欲求を満たすように設定された評価基準が人事評価制度です。この他にも承認欲求に注目した手段はありますが、もっとも現場に取り入れやすく、昇給に反映されやすいです。
人事考課との違い
一般的に、正社員に対して用いられる人事評価制度「人事考課」は、各社員の能力を評価し、昇給や昇進などの人事施策に反映させる基準になります。主に会社全体の業績のアップを目的として用いられています。
対してアルバイトの人事評価制度は、スタッフのモチベーションアップが一番の目的となっています。アルバイトの働きをきちんと評価して、より長く働いてもらうために用いられています。
人事評価制度の種類3つ
多くの企業が、今から上げる3つの基準で人事評価をしています。正社員はもちろん、アルバイトにとっても特に昇給に関わってくる評価基準です。
ご自身が働く店舗がどのような基準で評価をしているのか、確認することでより今後の力の入れ方が分かってくるでしょう。
人事評価制度の種類1:能力評価
能力評価とは、仕事をする能力が評価の基準になります。アルバイトの人が、現在どのくらい仕事ができるのか、また長期的に見てどのような仕事ができそうかを判断します。
一般的に、潜在能力以上に一定期間における行動が判断基準とされる事が多いです。よって、もし昇給を目指しているのであれば、積極的に仕事を覚えて、できることを増やして更にアピールするとより評価されやすいでしょう。
人事評価制度の種類2:業績評価
業績評価とは、会社あるいは店舗の利益がどれだけ出たかを表すものです。また、各従業員がその業績にどれほど貢献したかが評価基準となります。
この業績評価は、個人のみならず、グループや事業部単位で評価されることもあります。後者の評価基準である場合、昇給を目指すならばアルバイト一人では難しいでしょう。いかに周囲と連携してモチベーションを上げ、維持していくかが評価基準のポイントになります。
人事評価制度の種類3:情意評価
情報評価とは、情報化社会になるにつれて重要視されるようになった評価基準です。世間一般からの事業所に対する評判が、会社や事業所全体の評価に繋がります。
この評価基準において、たとえ利益をすごくあげても、ユーザーからの評判が低ければ、当然評価は上がりません。アルバイト一人ひとりの行動を意識するのはもちろん、こまめにユーザーの評判をチェックし、改善点を見つけていくのも昇給への道です。
人事評価制度を補う評価手法3つ
では、これらの人事評価はどのような形で判断されるのでしょうか。いくつもの評価手法がありますが、一般的にアルバイトに対する評価で使われているものは3つであるとされています。
それぞれの評価方法と、どのように使われているか、あるいは昇給に影響している例を紹介します。
人事評価制度を補う評価手法1:コンピテンシー評価
「コンピテンシー評価」とは、仕事において特に優秀な成果を発揮しているかを評価の基準にしています。コンピテンシー評価には定まった目標が無く、業種や職種に応じて最高のパフォーマンスをしているかが求められます。
例えば、某コーヒーチェーン店では接客態度、オーダーの正確さ、店内を清潔に保てるかを評価の基準にしています。この基準を大きくクリアしているアルバイトが評価され、昇格・昇給される仕組みになっています。
人事評価制度を補う評価手法2:目標管理制度(MBO)
個別またはグループごとに目標を設定し、達成度合いが評価基準になるのが「目標管理制度(MBO)」です。アルバイト一人ひとりが持つ目標と組織の目標のベクトルを合わせるという方法です。
例えば、アパレルショップではよくこの制度が取り入れられ、従業員がショップの一員としていかにショップに貢献したかが昇給・昇格に反映されます。組織を尊重しすぎてアルバイト個人が軽んじられる事例もあり、加減が重要とされています。
人事評価制度を補う評価手法3:360度(多面)評価
360度評価とは、該当アルバイトとの関係性が異なる複数人の声が評価基準になる方法です。上司、同僚、部下などの声を評価に取り入れることにより、仕事の能力だけではなく、人間性も評価することが可能です。
上司が個々の部下とコミュニケーションが難しいような現場では、よくこの評価基準が用いられています。一方、評価者が不当な扱いを受けることがないよう、十分に考慮してこの評価基準を用いる必要があります。
パート・アルバイトの人事評価・賃金制度の現状と課題
昇給につながる人事評価を、アルバイトに反映させている店舗はまだまだ少数だという現状があります。また、人事評価があるような店舗であっても、まだまだ正常な運営ができているところは少数です。
例えば、店舗によって人事評価の認識にバラつきがあり、昇給の基準も曖昧、更に評価がモチベーションを下げるものになっているところがあります。これでは人事評価制度の意味がありません。
パート・アルバイトの評価・賃金のあり方
アルバイトの賃金・評価は、上記のように軽く見られがちな店舗もあります。しかし、アルバイトの評価をしっかりとして昇給をすることは、店舗にとっては採用力を強化するひとつの手段です。
現在は採用難の時代であり、従業員がいなければ店舗を運営する事はできません。評価・賃金はアルバイトの志望の動機にもなりますし、より長く働いてもらうためにも必要です。
パート・アルバイトの評価
アルバイトの昇進・昇給は、そのポジションに応じた仕事が出来たかが判断基準になります。ポジションごとにチェックリストがあり、はっきりと可否で判断する方法がアルバイトの評価で多く採用されています。
仕事のみならず、無断欠勤や遅刻、身だしなみなども評価基準となります。ほかにも特別に店舗に貢献していた、積極的にコミュニケーションをとるなどの努力が見られたなど、評価外項目も重要視されます。
パート・アルバイトの賃金
アルバイトのモチベーション維持には、この人事評価がどう給料に影響しているかが鍵になっています。スタート価格を決め、ランクが上がるごとに昇給する値段を設定するとよいでしょう。
また、繁忙期の勤務やリーダー的な役割を担ったアルバイトには、進んで昇給を設定するようにするとよいでしょう。また店舗の月次の売上目標を達成した際には報奨金を設定すると、個人のみならず店舗全体のモチベーションが上がります。
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人事評価制度を導入したときに起こりうるミス
昇給に欠かせない人事評価制度ですが、上手に運用しないと意味はないどころか、アルバイトのモチベーションを下げてしまいます。
評価基準を明確にし、成果の振り返りをきちんと行わないと、ただ存在するだけの人事評価制度になります。また評価者の私情や主観が入るだけではなく、公平に目標を設定することが、ミスを防ぐポイントになります。
起こりうるミス:人事評価エラー
人事評価において、「公平」「納得」「適正」の三つが重要ポイントになりますし、人事評価を元に昇給をするのならば、先述の通り明確な基準が必要になってきます。
しかしこの基準が不明確なまま人事評価を運営していくと、評価者の私情や主観による様々なエラーが生じてしまいます。アルバイトの昇給において、起こりうる人事評価エラーをいくつかご紹介します。
人事評価エラー:ハロー効果
「ハロー効果」とは、ある対象の優れた点を見つけると全てが優れていたり、またその逆で、一点が劣っていると全てが劣っているように見えてしまうことです。例えば、顔がいい人は全体的に基準がよくなり、実際よりも仕事ができるとの評価をされがちです。
公平に評価をせず、個人の趣向を基準として評価をしているのでは、きちんと働いている人はいつまでたっても働きに応じた昇給ができず、不満が溜まります。
人事評価エラー:寛大化と厳格化
評価者が自分に自信がないと、対象者全体の評価が甘くなってしまいます。これにより、仕事ができないアルバイトを甘い基準で昇進・昇給させてしまい、結果として店舗のクオリティが下がってしまう問題が起こります。
また逆に、評価者が自分の力を過信しすぎると、対象者全体の評価が厳しくなってしまいます。これではどんなに働いていても正当な評価がされず、不満が溜まります。
人事評価エラー:中心化傾向
アルバイトに対して適正な基準で評価するのではなく、すべて中心に、あるいは平均に近づけるような評価の仕方をしてしまう問題があります。例えば、5段階評価の場合、どのような働きをしても5、1ではなく、2、3、4といった中間の評価しかされないということです。
これではアルバイトがいくら自分の得意分野を伸ばそうと頑張ったところで、結局最大でも4の評価しかされません。これでは不満が溜まってしまいます。
人事評価エラー:論理誤差
平均的な基準で評価することも問題ですが、逆に、評価が極端に二極化してしまうことも問題があります。この場合、例えば5段階評価が適用されている店舗では、どのような働きをしても、5、1の評価しかせず、2、3、4といった中間の評価はされません。
アルバイトに苦手な分野があり、なんとか評価がされて昇給されるように頑張っても、いつまでたっても1の評価に留まってしまうので、不満が溜まってしまいます。
人事評価エラー:近隣誤差
ハロー評価と少し似ていますが、評価項目が似ているところに関し、全て似ている評価をしてしまう場合があります。適正な基準ではなく、評価者が主観的に見てしまい、評価が偏ってしまいます。
例えば挨拶ができるアルバイトは、接客態度も良いと実態を見ずに評価してしまうパターンです。これが蔓延してしまうと、うまく利用して昇給に繋げ、サボるところはサボるようなアルバイトも存在するようになります。
人事評価エラー:対比誤差
評価基準を評価者自身にしてしまい、アルバイトの評価を過大・あるいは過少評価してしまうことあります。評価者の能力や経験のみならず、単純な好き嫌いも加味されてしまうことがあります。
例えば評価者がアルバイトと仲が良いから過大評価をしてしまったり、自分の時はこのアルバイトよりできていたと過小評価をしてしまうことです。これもまた自分の適正な評価がされず、昇給につながらないのでアルバイトの不満が溜まります。
起こりうるミス:評価者としての適性
これらの失敗が起こるのは、評価者の適正不足が最大の原因と言えます。評価の基準を自身の主観や経験のみにとらわれているようでは、評価者として適しているとは思えません。
そこで定期的に評価者が適正な評価をしているかを判断し、見直しを行うことが必要とされます。場合によっては評価者を選び直すことも必要とされます。「評価者の評価」があるということも忘れず、きちんと人事評価制度を運用させましょう。
起こりうるミス:フィードバック
また、評価者からの一方的な評価のみではなく、アルバイトからのフィードバックが足りないと、適正な人事評価がされているとは言えません。アルバイトに対して昇給と評価の基準を明確にし、その基準の認知を確認するためにも必要とされます。
アルバイトが仕事に対してどのような意欲を持って取り組んでいるのかを確認しましょう。その上で評価に対し、アルバイト本人が納得・理解できているのかをきちんと意見を聞きましょう。
パート・アルバイトの昇給の基準となる人事評価制度についての理解を深めよう!
上手な人事評価の運用は、人事評価やその評価基準に対する理解がきちんとされているかが鍵になります。いくら人事評価制度を適用したところで、その基準が明確にされて守られていなければ意味がありません。
評価者はもちろん、そこで働くアルバイトなどの従業員に対してもその評価基準を明確にし、ここまで頑張ればきちんと昇給に反映する、とすれば、モチベーションアップにもつながります。