契約社員が定年の年齢に達したら?|無期転換ルールの問題点4つ

人事制度

契約社員とは

契約社員とは、期間の定めのある労働契約を結ぶ労働者です。 

いわゆる非正規雇用の一つです。アルバイトとは違い、月給制もしくは日給制で残業代等の手当もつくことが多いです。ただし、正社員のように退職金や賞与はつかないところが多くなっています。

労働契約で定められた期間は余程のことがない限りは雇用者も労働者も守らなければならいので、アルバイトよりは不安定さはないと言えます。

定年とは

定年とは、会社の就業規則であらかじめ定めてあるもので、その年齢に到達すると自動で雇用契約し、退職となる年齢です。

少し前までは60歳定年が一般的でしたが、高齢化が進む日本の現状を鑑み、2013年に「高齢者等の雇用の安定等に関する法律(高齢者雇用安定法)」が改正され、企業は労働者が定年に達しても再雇用をするかもしくは退職年齢を引き上げることが義務付けられました。

契約社員が定年の年齢に達したら?

契約社員の有期雇用契約に定年の概念は原則関係ありません。

期間の定めがある契約社員ですが、その労働契約期間はよほどの事情がない限り途中で止めることができません。では、もしも契約社員が会社の就業規則による定年に達したら労働契約期間と就業規則の定年のどちらを優先すべきでしょうか。

就業規則上で契約社員も対象の場合

契約社員に定年の概念は無関係とさきほど書いたばかりですが、これが就業規則に契約社員の定年について定めがある場合は別です。

就業規則に定年制の対象として契約社員も含まれている場合には契約期間前であっても定年に達すると同時に自然退職となる、と考えられます。

ただし、定年退職となるためにはいくつかの条件が必要とされています。それを見ていきましょう。

事前に周知させることが求められる

契約社員を定年退職の対象とする為には、就業規則に定年についての事項を定めるだけでなく、定めてあることを契約社員に周知させておくことが必要です。

就業規則は労働者がその内容を知らなければ守りようがありません。労働者に周知させて初めて就業規則は効力を有します。

周知の方法
1.労働者が見やすい場所に掲示もしくは備え付ける
2.労働者に書面で交付する
3.磁気媒体に記録し、閲覧可能な機器を設置する

契約更新時に明示しておくことが必要

最近契約社員との雇用関係のトラブルが増加しています。トラブル防止のためにはしっかりした雇用契約書の作成が必要です。

契約社員との契約更新時の雇用契約明示は労働基準法に細かく定めてあります。

労働基準法第15条第1項には雇用契約書に定めるべき内容が細かく定めてあります。その中に退職に関する事項もありますので、細則に沿って雇用契約書を作成し、契約更新時に雇用契約を明示しなければなりません。

一般的に定年制はない

契約社員は労働期間を一定に定めることが条件ですので、労働期間が満了となった時点で契約更新の条件を満たしていれば更新しますし、満たしていなければ雇い止めとなります。

その時の年齢が定年と定められた年齢に達していなくても関係ありません。契約社員は特殊な契約形態で、定年の規定が明確ではありません

契約社員の無期転換ルール2つ

平成24年の労働基準法の改正により、有期労働契約を同じ使用者のもとで5年以上更新しつづけている契約社員は、申請により有期労働契約を無期労働契約に変えることができるようになりました。

ルールには色々な制限もあります。

契約社員の無期転換ルール1:契約社員の無期転換ルールとは

契約社員の無期転換ルールが適用されるのは平成25年4月1日以降に開始した有効労働契約からです。これは平成24年に改正された労働基準法第18条の施行に合わせるからです。

契約社員の無期転換ルールによって生じるメリットを紹介します。

1.契約社員には1.雇い止めの不安がなくなる
2.安定した地位を得ることで意欲的に働く事ができる
3.長期的に同じ会社で働く事ができキャリアが形成できる

契約社員の無期転換ルール2:無期転換ルールの問題点

契約社員にとっても企業にとってもリスクがある無期転換ルールですが、問題点もあります。

無期転換ルールには、労使双方から見たメリット、デメリットが存在します。ここからは、無期転換ルールによってどんな問題点が生じるのかを考えてみましょう。

問題点1:問題のある社員の無期転換も強制される

無期転換ルールとは、有期労働契約のうち、平成25年4月1日の時点で5年を超える更新の繰り返しをしているものについては、労働者の申請によって有期労働契約を無期労働契約に変えることができます。

更新期間の条件をクリアし契約社員が無期転換を望めば、会社は無期転換を拒否できません。

問題点2:定年後の再雇用の社員の無期転換も強制される

定年を迎えたのち、嘱託職員として会社に残り技術のノウハウを若い社員に指導する制度は一般的になりつつあります。この嘱託職員も1年更新にしてしまえば契約社員と同じとみなされ、すなわち無期転換できるようになります。

定年後、再雇用された社員も無期転換を申請できます。

問題点3:契約社員が無期転換すると定年がなくなる

正社員が定年を迎え、その後若い社員たちの技術向上をサポートしてもらうなどベテランの技能を生かしてもらうために嘱託職員として会社に残ってもらう制度は今では一般的です。

この嘱託職員を1年契約としてしまうと、有期労働契約の一種となり、すなわち契約社員とみなされます。

契約社員には無期転換ルールが適用され、基本的に定年がなくなります。

問題点4:無期転換後の契約社員と正社員の間に不均衡が生じる

契約社員は無期転換後に正社員になるわけではなく、契約社員の時と同じ労働条件で無期限の雇用契約を結びます。ということは、転勤がないことが労働条件である契約社員であったならば、雇用の期限は無期限なのに転勤をする必要がなくなります。

契約社員が無期転換した後も労働条件は契約社員のままとなれば、正社員と契約社員との間に不均衡が生じることになります。

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無期転換ルールへの3つの対応

無期転換ルールに対しては会社内で早期に対応を決定しておく必要があります。対応の方法については、労基法に反しないように注意しながらかつ、有能な人材を確保し、社員全体の能力引き上げができるようなものを考える必要があります。

無期転換ルールへの対応は以下の3つの方法があります。

1.全員無期転換にする
2.転換を回避する
3.選択的無期転換を行う

無期転換ルールへの対応1:全員無期転換方針

全員無期転換方針とは、有期労働契約の契約社員全員を無期転換契約に変更することです。これによって、契約社員を無期契約社員として確保することができ、企業としては人材の定着を図ることができます。

人材の確保ができることで能力開発にも力を入れることができますし、それによって有能な人材の育成ができます。また、安定した環境の中での労働で社員のモチベーションも上がり、全社員を最大に活用することが期待できます。

無期転換ルールへの対応2:転換回避方針

転換回避方針とは、無期転換ができる時期が到来する前に雇い止めをする方法です。

この方針によれば企業内の契約社員が多くなったり少なくなったりといった比率の変動がなくなり、人件費の増大を防ぐことができます。

ただし、この方針では、すべての契約社員を転換期到来前に雇い止めするのですから、有能な人材も手放さざるを得なくなるというデメリットもあります。

無期転換ルールへの対応3:選択的無期転換方針

選択的無期転換方針とは、契約社員を雇い止めにする社員と無期転換する社員とに分ける事です。

一定の基準に沿って無期転換する社員と雇い止めする社員を選ぶことで有能な社員のみを確保することができます。ただし、契約社員を選別する基準については労働基準法その他の法律に反しないように考慮して設定しなければいけません。

また、社員たちの中に不均衡感が生まれ、企業の一体感は損なわれる事が予測されます。

基本方針を決め就業規則や雇用契約書を作成する

労使関係を正常に成立させるためには、労働基準法にのっとった就業規則と雇用契約書で労使双方納得のいく契約を結ぶことが基本です。

企業の方針が定まらなければ就業規則も雇用契約書も指摘するところがありすぎるものとなり、労使の間に信頼関係を築くことができません。

企業は信念を持った方針を定め、その方針を実現させるための就業規則と雇用契約書を作成し、それを労働者に提示し、双方納得の上で労働契約を結ぶべきです。

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