有期雇用とは
有期雇用とは、契約に期限がある雇用形態のことです。無期雇用が正社員なのに対し、有期雇用は非正社員です。
有期雇用の例としては、契約社員や日雇い労働者、契約期間があらかじめ決められているパートやアルバイトなどが挙げられます。
総務省の調べによると、有期雇用者は全労働者の約1/4を占めており、2004年の労働基準法改正により、有期雇用契約の上限が1年から3年に引き上げられました。
試用期間とは
試用期間とは、雇用の際に一定の期間を定め、その期間内で社員の能力や適性を判断するために設けられた期間です。
有期雇用が「契約社員」という雇用形態で採用するのに対し、試用期間は最初から「正社員」として募集をし、期間が満了となった時点で正社員扱いになるという違いがあります。
もちろん、試用期間満了後に本採用の拒否をすることは可能ですが、正社員として採用されているので、解雇と同じ扱いとなります。
試用期間の代わりに有期雇用する際の注意点3つ
社員募集時に試用期間があるという事を明示して募集した場合、期間終了後に正社員として採用しなくてはならないのであれば、有期雇用の方が良いのではないかなど、気軽に考えてしまいがちです。
しかし、たとえば有期雇用にする場合にも、さまざまな法令や規定なども鑑みて募集要項を決める必要がありますので注意が必要です。
以下に、試用期間の代わりに有期雇用する際の注意点3つを挙げて行きます。ぜひ参考にして下さい。
試用期間の代わりに有期雇用する際の注意点1:採用当初は有期雇用契約であることを明示する
会社が、試用期間の代わりに社員を有期雇用する際に注意しなければならないのは、法令や規定の遵守(コンプライアンス)です。
特に最近では「ブラック企業」と呼ばれる会社も多く、合理性のない解雇や雇止めなど、労働形態が労働法に違反しているケースも多く存在し、大きな社会問題となっており、世間の目も厳しくなっています。
一度の不祥事が会社を経営難に陥れることもあるので、経営陣は徹底した対策が必要です。
有期雇用契約が試用期間と異なることを説明する
試用期間は、法律的には「試用期間終了後を含めた雇用契約」を結んでいることになります。つまり、試用期間の場合は、試用期間が終了しても契約が切れるわけではなく、正社員として働き続けることができます。
対して、有期雇用の場合は、契約期間が終了次第、契約も切れてしまいます。
社員採用時にこの点を確認しておかないと、試用期間と同じように考えている社員がいれば、契約終了時にトラブルになるので注意が必要です。
試用期間と同等となると解雇権濫用法理が適用される
試用期間を設定した場合、試用期間が終了した時に、「能力や適性を欠く」という理由で正規採用を拒否することは、法律的には難しくなります。
その理由は、会社側が能力や適性を欠くと判断したとしても、解雇の理由に客観性を求める解雇権濫用法理があるためです。
過去の判例に基づけば、有期雇用が試用期間と同等と判断されないためには、会社側と採用された側の間に、「契約期間が終了した」という明確な合意が必要となります。
試用期間の代わりに有期雇用する際の注意点2:正社員登用は可能性の1つと説明する
有期雇用をする際には、有期雇用は試用期間と具体的にどういった点で異なるのかを社員に説明する必要があります。ここを曖昧にしたまま雇用すると、期限が終了した時点でトラブルになることがあります。
だからと言って「有期雇用なので期限が来たらおしまい(解雇)です」という言い方では、社員の労働意欲を削ぎ、双方のためにもよくありません。
あくまでも、「正社員登用は可能性の一つ」という言い方で留めるようにしましょう。
期間満了で契約終了が原則であることを伝える
社員採用には社員の能力や適性はもちろん大事ですが、有期雇用の契約の場合は、敢えて能力や適性と同じくらい「期間」「契約」といったものを重視しましょう。
「期間が満了になれば、原則として契約は終了する」ということを雇用契約書の書面に明記し、必ず社員の同意を得るようにしてください。
正社員登用になるかどうかは、その後の問題として別々に処理します。
試用期間の代わりに有期雇用する際の注意点3:時間的な余裕を持って本採用の可否を伝える
有期雇用の期限が来れば契約は終了しますが、社員はその後の身の振り方を決めなくてはなりません。
引き続き正社員として雇用するのか、今後も採用はないのかについては、決定したらすぐに本人に伝えるのが誠意ある対応と言えます。
ただし、社内規定に正社員になれる年齢の条件や学歴の条件があれば、それに当てはまらない人には、理由を説明した上で、正式採用はできない旨を始めから伝えておきましょう。
本採用しない場合は理由を伝える
本採用しない理由が前述のような社内規定によるものの場合は、そのまま理由にすることができますが、それ以外での理由もはっきりと伝えましょう。
有期雇用で採用された社員の就職活動は今後も続きます。改善すべき点があるのなら、それを指摘した方が、本人の就職活動にも役立てることができます。
ただし、問題点や正規登用しない理由だけを述べるにとどめ、労働意欲を削ぐ内容や、人格否定に繋がる発言は控えましょう。
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試用期間の代わりに有期雇用するメリット2つ
ここまで、主に有期雇用と試用期間の違いについて述べてきましたが、次は「試用期間の代わりに有期雇用するメリット」とはどんなことかを考えましょう。
以下に、有期契約でいったん採用して、能力や適性のある社員を正社員登用するメリットをご紹介します。
試用期間の代わりに有期雇用するメリット1:解雇の問題が発生しない
有期雇用では、契約期間が満了すれば雇用契約も同時に終了します。社員側からすれば、身分の不安定という問題が付きまといますが、雇用側としては解雇の問題を回避することができます。
能力が基準を満たさない、適性がないと判断すれば、正社員登用をしなければよいだけの話です。
有期雇用は、試用期間と違って「雇止め」という扱いになり、理由のない解雇として労働法に違反することもありません。
試用期間の代わりに有期雇用するメリット2:社会保険に加入しなくてもよい場合がある
原則として、契約が2か月以内の有期雇用の場合は、社員を社会保険に加入させる必要はありません。
ただし、「有期労働契約の締結・更新 および雇止めに関する基準」に従えば、契約書に、「自動更新はない」旨の明記が必要です。
その明記がなく、自動更新あるいはその可能性がある、と記載されている場合については、社会保険に加入させなくてはならないので注意が必要です。
試用期間の代わりに有期雇用するデメリット2つ
全てに言えることですが、メリットがあればデメリットも存在します。
解雇の問題も回避され、しかも社会保険に加入させなくてよいケースもあるとなれば、有期雇用でいいのではないかという話ですが、それならばなぜ試用期間を採用している企業があるのでしょうか。
次に、採用試用期間の代わりに有期雇用をするデメリットについて、主なものを2つご説明します。
メリット・デメリットの双方を理解した上で、雇用形態を決めましょう。
試用期間の代わりに有期雇用するデメリット1:人材が集まりにくくなる
試用期間の明示をすることは、最初から正社員として募集をかけていることを強みにできます。そのため、中小企業など求人難のところは、敢えて試用期間として正社員を募集し、やる気のある人・本気の人を求めます。
それに対し、有期雇用の方は「有期」である以上、正社員募集の意図が見えず、「パート募集」程度のインパクトしかありません。
本気で就職を考えている人が集まりにくくなるため、効率的とは言えないでしょう。
試用期間の代わりに有期雇用するデメリット2:契約期間中の解雇は難しくなる
有期契約の場合、民法と労働契約法で「やむを得ない事由」が必要であるとされているため、契約期間中の解雇が難しくなります。
試用期間の場合は、適性を欠くと判断されれば期間満了を待たずに本採用拒否をしたり、試用期間を延長したりできるのですが、有期契約期間中の解雇は意外と条件が厳しいということを理解しておきましょう。
しっかりと説明をしてトラブルのリスクを減らそう
ここまで見て来たように、有期雇用も試用期間も、社員の能力や適性を判断するための一定の期間を設けるというのが目的ですが、細かな点でたくさんの相違点があります。
会社の経営状態によってどちらを選ぶかを検討し、後のトラブルを避けるためにも、しっかりとした説明をして同意を得るようにしておきましょう。
社員採用の際には、経営者自身が理解し両者の違いについてきちんと、社員に説明できるような事前準備が不可欠です。