会社都合退職とは
「会社都合退職」は、会社の都合で労働者が職を辞めることをいい、勧奨退職と解雇の2つのケースがあります。
勧奨退職とは、勤務能力などの不適格によるいわゆる「肩たたき」のことをいい、使用者が労働者に対して退職を促す(勧奨する)ことをいいます。
解雇は、俗に言う「リストラ」のことをいい、労働者の個別理由による普通解雇、重大なコンプライアンス違反による懲戒解雇、経営不振などによる整理解雇の3つがあります。
会社都合退職の方が有利
会社を退職する場合、会社都合退職の方が労働者にとって有利な点があります。
1つは雇用保険が支給されるまでの待機期間が短縮されること、もう1つは失業給付金の給付期間が延長されることです。
退職日の2週間以内を目処に会社から「離職票」という書類が送付されますので、失業給付の申請の際にハローワークに提出します。
この書類に記載された退職の事由と退職前の賃金の状況によって、失業給付の金額が決定されます。
会社都合退職のメリット4つ
会社の都合で退職した場合は、自己都合退職より失業給付金が早く支給され、かつ長期間にわたって貰えるというメリットがあります。
また、会社が労働者に解雇予告をしなかった場合は、最大で30日間の解雇予告手当を貰えるなど、会社都合退職の場合は、労働者側に多くのメリットがあります。
ただし、退職の事由によってはデメリットになることもあるので、どのような場合に労働者側にメリットがあるのか、詳しく見て行きましょう。
会社都合退職のメリット1:失業給付金をすぐに受給できる
会社都合退職の場合、ハローワークに離職票の書類を提出後、待機期間(7日間)+1ヶ月ほど経過すると第1回目の失業給付金が受け取れます。
つまり、自己都合退職より約2ヶ月間も早く失業給付金が受け取れるメリットがあります。
失業給付金の支給金額は「基本手当日額」を基準に支給されますが、基本的に賃金が高かった人は低い給付率、賃金が低かった人は高い給付率が適用されます。
なお、年齢別の上限額は下表のとおりです。
年齢(範囲) | 基本手当日額の上限 |
---|---|
30歳未満 | 6,710円 |
30歳以上~45歳未満 | 7,455円 |
45歳以上~60歳未満 | 8,205円 |
60歳以上~65歳未満 | 7,042円 |
失業給付金の手続きに必要な書類
ハローワークで失業給付を申請する場合は、以下の書類などが必要です。
1.雇用保険被保険者離職票1
離職理由が会社都合退職の場合は、「3」と記載されています。
2.雇用保険被保険者離職票2
被保険者番号・事業主の情報・離職前の賃金の情報などが記載されています。
3.その他必要なもの
印鑑(訂正印)・写真2枚・運転免許証(本人確認)・口座番号・個人番号などです。
会社都合退職のメリット2:失業給付金を受給する期間が長くなる
会社都合退職した場合は、自己都合退職に比べて失業給付金の待機期間が短縮される以外にも、給付期間が延長されるメリットがあります。
会社都合退職の所定支給日数は90日~330日の範囲ですが、勤務時間は1年未満~20年以上の5段階刻み、年齢は30歳未満~65歳未満5段階刻みになっています。
ちなみに、自己都合退職の所定支給日数は90日~150日の範囲であり、年齢は一律で勤務期間が5段階刻みになっています。
会社都合退職のメリット3:被保険者期間が1年以内でも失業給付金がもらえる
会社都合退職(ただし、懲戒解雇を除く)の場合は、離職日以前の1年間を遡って被保険者期間が6ヶ月以上あれば、失業給付が貰えるメリットがあります。
ちなみに、自己都合退職の場合でも配偶者の転勤・家族の介護・本人の病気などの「正当な理由に該当する」場合は、会社都合退職と同等の被保険者期間が適用されますが、それ以外の自己都合退職においては離職日以前の2年間で通算12ヶ月の被保険者期間が適用されます。
会社都合退職のメリット4:解雇予告手当をもらえる場合がある
使用者(会社)が労働者に対し解雇予告を行わないで会社都合退職させる場合は、解雇予告手当を支払わなければなりません。
労働基準法において、使用者が労働者を会社都合退職によって解雇する場合は、正当な事由があっても「解雇日の30日以上前に労働者に予告しなければならない」と定められています。
ちなみに、解雇予告手当の金額は、「平均賃金の日額×(30日ー30日に満たない残日数)」の式で計算します。
会社都合退職なのに退職届の提出を求められた場合の対処法3つ
会社都合退職を通告された際、会社側が、労働者に対し退職届などの書類提出を求めることがあります。
それは、「退職願などの書類を受け取ることによって自己都合退職扱いとして処理したい」との思惑が働いている場合です。そのような時のために、労働者が取るべき適切な対処法を知っておくことは大切です。
以下に、「会社都合退職なのに退職届の提出を求められた場合の対処法3つ」をご紹介しますので、ぜひ参考にして下さい。
会社都合退職なのに退職届の提出を求められた場合の対処法1:退職届は提出しない
会社都合退職であるにもかかわらず、退職願などの書類提出を求められた場合は、きっぱりと断ることが正しい対処法です。退職願などの書類を提出するのは、自己都合退職に限られます。
特に勧奨退職の場合において、会社が作成した退職願などの書類に署名・捺印を求められることがありますが、気軽に応じると自己都合退職で処理されてしまう恐れがあります。後々失業給付などにおいて不利益を被りますので注意が必要です。
会社都合退職なのに退職届の提出を求められた場合の対処法2:会社都合退職である証拠を得る
一般的に、会社都合退職の対象は、倒産・人員整理・退職勧奨などですが、それ以外にも労働基準監督署が「会社都合退職に相当する正当な理由」と認めるケースがあります。
会社都合退職に相当する正当な理由とは、労働契約の違反や賃金・残業代の未払い・過剰な残業などの事由です。
ただし、これらの違法性を立証するためには、労働契約書・賃金明細表・勤怠記録書などの証拠書類の提出が求められます。
会社都合退職時の書類記入には注意が必要!
会社都合退職であるにもかかわらず、退職願や合意書などの書類の記載不備によって自己都合退職扱いとされてしまうことがあります。
書類の記載不備によって自己都合退職扱いにされると、失業保険の受給や解雇予告手当の支給などで、損失を被ることになります。
退職事由欄には、必ず「会社都合退職」または「解雇の記載」がある書類を作成することが大事です。書類の記載内容には、細心の注意を払うようにして下さい。
会社都合退職なのに退職届の提出を求められた場合の対処法3:労働局に相談
会社都合退職する場合、会社から強圧的に退職願の提出を求められることがあったら、管轄の労働局に相談して下さい。
会社都合退職の場合、自らの意思で退職するわけでないので、会社に対して退職願などの書類を提出する必要はありません。
仮に、何らかの事情で、会社から執拗に退職願や合意書などの書類提出を求められた場合は、音声記録や書類として文字記録の証拠として保全しておくことが重要です。
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会社退職時に必要な書類6つ
会社を退職する場合は、退職の意思を固めた日から、退職当日までにやっておかなければならないことがたくさんあります。
長年勤めていた会社を辞めることになれば、部下や上司、あるいは取引先関係者への挨拶などで多忙を極めます。
そんな忙しさにかまけて、退職手続きに必要な各種書類の作成や提出を失念すると、後々面倒なことになりますので注意が必要です。
以下で、会社退職時に必要な書類6つを確認して行きましょう。
会社退職時に必要な書類1:離職票
会社都合や自己都合にかかわらず、退職後に失業給付を申請する場合は「離職票」という書類が必要です。
ただし、退職者すべてが失業給付を申請するわけではないので、離職票の必要の有無を個人が判断し、会社に発行を申請する必要があります。失業給付を申請する場合は、個人が離職票を持参しハローワークに提出します。
また、離職票に似たような書類に離職証明書がありますが、この書類は会社で作成し、ハローワークに提出します。
会社退職時に必要な書類2:雇用保険被保険者証
今まで勤めていた会社を退職し、再就職先で入社手続きする際は、「雇用保険被保険者証」が必要になります。
雇用保険被保険者証は、初めて就職した会社が保管している書類なので、ふつう見ることはありません。
失業給付の申請には必要ありませんが、再就職する際に提出する必要が出てきますので、前会社から必ず受け取って下さい。なお、紛失した場合は、本人確認の上でハローワークから再発行が可能です。
会社退職時に必要な書類3:源泉徴収票
会社を退職する場合は、源泉徴収票という書類をもらう必要があります。
そこには、これまで会社で支給された給与総額および、所得税や社会保険料の徴収額が記載されています。
源泉徴収票は、再就職先の会社で年末調整を受けるために必要な書類です。退職後1ヶ月経過しても届かない場合は発行を督促してください。
なお、再就職しない場合は年末調整を受けられないので、翌年2月の確定申告に添付する証憑書類として使用します。
会社退職時に必要な書類4:年金手帳
会社を退職する場合は、今まで勤めていた会社から年金手帳を返却してもらい、再就職する会社に転出しなければなりません。
年金手帳は、全ての国民一人ひとりに交付される書類のことですが、国民年金保険や厚生年金保険などに共通する基礎年金番号が記載されています。
年金手帳は、一生涯にわたって有効なので職先が変わっても継続的に使用し続けます。なお、紛失や汚損した場合は、年金事務所で再発行が可能です。
会社退職時に必要な書類5:健康保険被保険者喪失証明書
会社を退職した場合は、今まで勤めていた会社に速やかに健康保険資格喪失証明書を発行してもらい、新たな就職先の会社に提出しなければなりません。
健康保険資格喪失証明書は、国民健康保険やそれ以外の健保組合などに加入する際に必要な書類です。
健康保険資格喪失証明書の発行は、資格喪失日(退職日の翌日)を起算して5日以内となっていますが、国民健康保険への加入手続きは喪失日から14日以内なので多少余裕があります。
会社退職時に必要な書類6:退職証明書
会社を退職し再就職する場合、転職先の会社から退職証明書の提出を求められることがあります。
退職証明書とは、会社を退職していることを証明する書類をいいますが、年金保険を始め各種社会保険の二重加入防止を図るため、転職者の採用に当たって退職証明書の提出を義務づけている会社もあります。
いざ提出を求められた時のため、あらかじめ今まで勤めていた会社で発行してもらっておく方が良いでしょう。
会社都合退職時に必要な書類などを確認しよう
ここまで見て来たように、会社都合退職(懲戒解雇は除く)した場合は、失業給付の支払手続きなどを行うためにさまざまな書類が必要です。
必要な書類が漏れていると不利益を被ることがありますので、しっかりと事前準備をしておくようにしましょう。
会社都合退職に必要な書類は、必ずしも会社が自発的に発行してくれるとは限りません。漏れがないように、自らチェックリストを作っておくことをおすすめします。