成果主義とは
成果主義とは、勤続年数ではなく、業務の成果によって報酬や人事を決める考え方です。仕事の成果や成績によって評価し、昇進や昇給の基準とします。簡単に説明すると、昇給や昇格を仕事の成果によって決める人事制度です。
成果主義の場合、年齢や学歴、勤続年数などに左右されず、仕事で成果を上げれば誰でも給与のアップや昇格につなげることが可能となります。
成果主義が取り入れられた背景
成果主義は、バブルの崩壊後、年功序列に代わる新しい賃金制度として導入されるようになりました。1991年以降、急激に景気が悪化したことで、日本企業はこれまでの雇用スタイルや人事制度の根本的改革に着手する必要があったからです。
成果主義の導入の背景には、終身雇用慣行や年功序列制度、家族的経営スタイルの崩壊、雇用や就業スタイルの多様化があります。
成果主義を取り入れるメリット3つ
では、成果主義を取り入れることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。成果主義には企業側にも従業員側にもさまざまなメリットがあります。ここからは、成果主義を取り入れるメリットをご紹介します。
成果主義を取り入れるメリット1:社員の労働意欲が向上する
成果主義を取り入れることによるメリットの1つ目は、社員の労働意欲が向上することです。
成果主義では、年齢や勤続年数、学歴や経験は評価の対象とはなりません。仮にそういった要素を評価の対象とする場合でも、その影響は極めて小さいものとなります。
つまり、仕事で成果を上げることが直接給与アップや昇進につながるため、若い世代の労働意欲の向上につながります。
成果主義を取り入れるメリット2:年功序列だと優秀な人材が流出する
成果主義を取り入れるメリットの2つ目は、自社の優秀な人材の流出を防げることです。年功序列では、成果主義を採用している企業に優秀なスタッフが流出します。
なぜなら、年功序列の場合、成果を出せない社員であっても、勤続年数が長いだけで昇進する可能性があるからです。これは成果を出している若い社員にとっては不満の原因となり、企業に対するロイヤリティの低下や離職を招きます。
成果主義を取り入れるメリット3:人件費を削減できる
成果主義を取り入れることで人件費の無駄をなくすことができることが、成果主義を取り入れる3つ目のメリットです。
年功序列では、勤続年数が長ければ昇給せざるをえません。また、成果の出せない社員に対しても、勤務時間に対して相応の賃金を払う必要があります。
しかし成果主義では、成果を上げている社員には報酬を与え、成果を出さない社員は減給することも可能です。そのため、不要な人件費を減らすことも可能となります。
成果主義を取り入れて失敗する原因3つ
成果主義のメリットをご紹介しましたが、成果主義を取り入れることで失敗する事例も存在します。成果主義にはメリットだけでなくデメリットも存在するため、単純に成果主義を取り入れると失敗に終わることもあります。
ここからは、成果主義を取り入れて失敗する原因についてご紹介します。
成果主義を取り入れて失敗する原因1:成果主義の人事制度に問題がある
成果主義の人事制度の問題が、失敗の原因となる場合があります。成果主義には、人事評価の期間が終了して結果が出た後に、社員の評価を下すだけの制度になってしまうという問題点があります。
また、社員に目標だけを与え、結果のみを見て従業員の評価を付けて給与を分配していくだけの制度では、個人や組織の成長につながらないため、企業の発展にも貢献しません。
社員の個人主義化
成果主義では、社員が部署全体の実績よりも自分自身の成果を求めてしまう傾向があります。成果が自身の待遇に直結するため、社員が個人主義化し、それによって組織全体のパフォーマンスが悪化する場合があります。
例えば、同じチーム内で仕事を奪い合ったり、身内で足の引っ張り合いを行うことにより、結果的に企業全体にマイナスの影響を与えることになります。
長期展望が描けない
成果主義では短期的な成果ばかりを求めてしまい、長期展望が描けずに失敗する場合があります。成果主義では結果を出すことが求められるため、短期間で確実に成果を出せる取り組みが多くなり、中長期的な分野の仕事に関わる社員が減る可能性があるためです。
例えば、長期的な取り組みが必要となる研究分野などは、成果主義の採用により推進力が失われてしまうこともあるでしょう。
目標を低くして達成度を高くする
成果主義では、成果を出すためにそもそもの目標を低く設定してしまうことがあります。成果を上げた分だけ報酬につながるため、目標を低く設定して達成度を上げようとする社員が増える場合があります。
また、報酬につながる短期的な成果を追求することになり、社員に不正のきっかけを与えることにもなります。
人が育たない
成果主義では人が育たないために、失敗する場合があります。
成果主義を採用した場合、チームで協力するのではなく、社員それぞれが個人プレーに走る場合があります。そういった場合、先輩社員が見込みある若手社員を教育しないなどの足の引っ張り合いが発生し、人材が育たないということになります。
また、元々評価の低い社員の労働意欲を減退させることになり、本来であれば期待できたはずの成長を阻害します。
数値化できない業務にはなじまない
成果主義では、数値化できない業務を行う部門の成果を把握することが困難です。営業部門などは成果が数字で明確に出てくるため評価しやすいですが、研究部門や事務などは成果の判断が難しく、結果として成果主義が失敗に終わる場合があります。
また、将来有望な分野への先行投資プロジェクトなども、実際の成果が出るのは何年も先の話になるため、現段階で評価するのは難しくなるでしょう。
成果主義を取り入れて失敗する原因2:社員の不信感が増える
成果主義では評価の基準が曖昧になるため、評価への不信感が増します。給与改革はどれだけ社員を納得させられるかが重要であり、さらに社員の成果を評価する公平な基準が必要になります。しかし成果主義の評価方法は明確な基準がなく、客観性を確保することができません。
そのため、成果主義の性質をよく考えずに浸透させようとしても、社員の不信感は募るばかりで失敗しやすいといえるでしょう。
成果主義を取り入れて失敗する原因3:部門ごとの無駄な競争が起こる
成果主義では部門や部署ごとの競争が発生し、失敗する場合があります。成果主義が単なる給与の奪い合いといったニュアンスになってしまうと、社員は他社との競争より社内での社員同士の競争に一喜一憂するようになってしまいます。
その結果、部門間の確執が発生し、社員同士の足の引っ張り合いを助長することにもなります。
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失敗しない成果主義の取り入れ方
成果主義はそのデメリットにより失敗する場合がありますが、成功している事例も存在します。では、失敗しないためには、どのように成果主義を導入すれば良いのでしょうか。ここからは、失敗しない成果主義の取り入れ方についてご紹介します。
完全な成果主義にしない
成果主義の失敗の原因として、日本では人物評価に重きを置き、さらに組織に対する貢献を重視する傾向があることがあります。そのため、完全な成果主義を導入した結果、失敗に終わることがありました。
ですから、完璧な成果主義にせず、成果主義と年功序列のハイブリット型人事評価を採用するなどの対策を行う必要があります。いきなり完全な成果主義を導入せず、段階を踏んで成果主義にシフトするなどの対策を取りましょう。
会社の方針と評価基準を明らかにする
成果主義を採用する場合は、評価基準をすべての社員に明示しましょう。成果主義で失敗しないためには、何を基準に評価されるのか、昇進の条件は何かといった基準を明確にする必要があります。
社員の理解を得られないまま導入しても、年功序列のシステムに慣れている社員から反発を招く可能性もあります。そのため、企業の論理だけを振りかざさずに、社員側が納得する丁寧な説明を行うことが失敗しないための鍵となります。
失敗の原因を知って上手に成果主義を取り入れよう
成果主義による人事改革を失敗しないためには、既存の評価システムとのバランスを取ることが必要です。
成果主義にはさまざまなメリットがありますが、同時にデメリットも存在します。極端な成果主義は失敗の原因となりますが、デメリットに対して適切に導入していけば大きな利益をもたらしてくれるでしょう。
企業は自社の状況を把握し、失敗の原因を理解して独自の方法を模索していくことで、成果主義を上手く取り入れましょう。