派遣社員でも残業代は出る?所定労働時間と法定労働時間の違い

人事制度

派遣社員とは人材派遣会社から各企業に派遣されて働く雇用形態

派遣社員として働くには、まず人材派遣会社への登録が必要になります。登録された人は人材派遣会社の社員となります。

人材派遣会社は、人材が欲しい企業の依頼により、自社の社員をその企業に派遣します。そして派遣された人材派遣の社員は、派遣先企業の支持のもと、業務を遂行します。

派遣元である人材派遣会社と派遣先企業の間には、労働者派遣契約が結ばれます。そこには、派遣先での派遣社員の労働や就業時間、派遣期間等に関する約束事が取り決められます。

派遣社員と派遣元・派遣先企業との関係

派遣社員は、登録をする際に派遣元となる人材派遣会社と雇用契約を結びます。なので、派遣社員の直接の雇い主は人材派遣会社となります。そのため、労働時間や残業、休日については派遣社員と人材派遣会社との間で取り決められます。

一方、派遣社員と派遣先の企業とは雇用契約は一切ありませんので、賃金や雇用期間などといった契約に関することに対しては口を出す事が出来ません。その代わり、派遣社員に対する業務に関する指示や命令を行う権限を有しております。なので派遣社員は、業務の遂行に当たっては人材派遣会社ではなく、派遣先企業の指揮で動く事になります。

派遣社員でも実働8時間以上働けば残業代は支払われる

派遣社員が労働基準法によって定められた、「1日8時間以上及び週40時間以上」を超えた場合に残業代が支払われる事になっております。例えば、9時から18時までの就業時間のうち、休憩が1時間30分あったとします。ある日残業を頼まれ、18時30分にならずに残業が終わると実働8時間の枠内に収まってしまうので、残業代は発生しません。逆に18時30分を過ぎると、実働8時間を越える事になりますので、残業代が発生します。この事については、後程詳しく説明していきます。

ただし、派遣社員が残業を行うには、下記の要件を満たしていなければなりません。

派遣元と派遣先の間で36協定が結ばれていなければ残業代は出ない

労働基準法第36条では、労働基準法で定められた労働時間を越えて労働をするためには使用者と労働者の間で文章による協定を結ばなければならないという事になっております。これを36協定と言います。

派遣社員の場合は、派遣元の人材派遣会社と派遣先企業との間で36協定が結ばれます。両者の間でこの36協定が締結されていなければ、派遣先企業は派遣社員に残業をさせる事が出来ません。逆に言うと、両者間で36協定が結ばれていない状態で派遣社員が残業を行っても、残業代は支払われません。

支払われる残業代の割増率は25%以上

上記の労働基準法で決められた労働時間を超えた場合は、残業代として基本賃金に対して下記の割増賃金が支払われます。

1:時間外労働の場合、割増率は25%
2:22時から翌5時までの深夜労働の場合、割増率は25%
3:時間外と深夜労働が重なった場合、割増率は50%
4:休日出勤の場合、割増率は35%
5:休日出勤と深夜労働が重なった場合、割増率は60%

なお、休日出勤時に時間外労働が発生した場合は、時間外労働分の割増率は適用されない事になっております。そのため、休日に労働時間が8時間を越えても休日出勤分の残業代しか支払われません。

労働時間に関する2つの考え

労働時間の考え方には、「法定労働時間」と「所定労働時間」の2つがあります。この2つは言葉で見れば似ておりますが、考え方は全く異なります。

これらを把握しておかなければ残業代の話をする際にもめてしまいます。なので、2つの違いをしっかりと頭に入れておきましょう。

法定労働時間は法律で決められている労働時間の上限

法定労働時間は労働基準法により、1日の労働は8時間まで、1週間の労働時間は40時間までと定められております。また、休日については1週間のうち少なくとも1日、4週間で4日以上を労働者に与えるように定められております。

たとえ企業側が就業規則や雇用契約上で1日8時間を越える労働時間を設けていると主張しても、8時間を越える部分は労働基準法により違法となります。そのため、8時間を超過した時間の労働は雇用契約上の勤務時間を問わず、残業扱いとなります。使用者は労働者に対して、8時間超過分の残業代を支払う義務が発生します。

所定労働時間は法定労働時間内で企業が設定した労働時間

企業は、法定労働時間である1日8時間以内及び1週間40日以内の範囲内であれば、自社の労働時間を自由に設定することが出来ます。例えば、ある企業が「1日の労働時間を休憩時間1時間込みで8時間とする」という就業規則を立てた場合、その企業の所定労働時間は7時間となります。

しかし、上記の例で1時間の残業が発生し、計8時間の労働を行った場合は法定労働時間範囲内に収まっているので、残業代を支払う義務は生じません。8時間を越えた部分については当然残業代を支払わなくてはなりません。残業代が発生する時間については、法律で取り決められている法定労働時間が優先されます。

派遣社員は派遣先の所定労働時間に合わせる

派遣元の人材派遣会社と派遣先企業とで所定労働時間の相違が出てくる事が多々あります。派遣社員は人材派遣会社と雇用契約を結んでいるため、派遣社員の労働時間の責任は人材派遣会社が持っております。しかし、派遣社員が実際労働を行うのは派遣先企業です。派遣先企業には派遣社員の労働時間や休憩、休日の管理を行う義務が発生します。そのため、派遣社員は所定労働時間も派遣先企業に合わせる必要があります。

派遣元の人材派遣会社と派遣先企業との所定労働時間の相違はよく見られるケースです。人材派遣会社側もほとんどが派遣先企業の所定労働時間に合わせる事を容認しております。

派遣先よりサービス残業を強要されたら断る事が出来る

派遣社員の残業については、派遣元と派遣先との間で結ばれる36協定によって決められております。当然、残業代に関する事も決められておりますので、サービス残業の強要は契約違反となります。なので、派遣社員は派遣先より残業代が支払われないサービス残業を強要された場合は断る事が出来ます。

しかし、現状は派遣社員がサービス残業を強要され断れないケースが多いのです。その理由を以下に挙げていきます。

派遣社員は立場が弱いためサービス残業を断りにくい

契約社員は上司や他の社員の評価によって今後の契約が変わっていきます。サービス残業を行わなかったことによって次回の契約更新時に更新がされないといった事が起こり得ます。ひどい時にはまだ契約期間中にも関わらず契約を打ち切られる事もあります。そのため、断れずにサービス残業を引き受けてしまうというのが現状です。

また、直接サービス残業をしろと言われなくても、周りが残業を行っている時に1人だけ定時で帰ると評価が落ちてしまうと恐れて、社員に付き合って残業を行うケースもあります。

サービス残業を強要されたら派遣元へ相談しよう

先程説明した通り、派遣社員の残業に関しては派遣元と派遣先との間で契約が交わされております。派遣先企業がサービス残業の強要やサービス残業をやらなきゃいけない気配を出しているのであれば、派遣元である人材派遣会社に相談をしましょう。

もし相談をせずにサービス残業を断り続けて今後の契約に響いた場合、その理由を派遣先企業は派遣元にサービス残業の事は言わず、普段の勤務態度がよくなかったと伝えてきます。そうなってしまうと今後違う企業への派遣に響いてしまいますので、そのような事態を防止する意味でも、まずは派遣元に一報を入れるようにして下さい。

派遣元もサービス残業を黙認していたら労働基準監督署へ

サービス残業は労働基準法違反です。そのような違法行為を派遣先・派遣元双方が見過ごしる場合は、行政機関へその旨を伝えるのがよろしいです。サービス残業に関する相談は労働基準監督署で行われておりますので、そちらへ駆け込みましょう。

さいごに

いかがでしたでしょうか。
派遣社員は実際労働をする企業と直接雇用契約を結ばずに、人材派遣会社と雇用契約を結んだ上で派遣されるという形態です。なので、直接雇用と比べて契約上の絡みが複雑になってしまいます。

少しわかりづらい形態のため、残業や残業代に関するトラブルが起こりやすいのも事実です。トラブルを事前に防ぐには、派遣という雇用形態について知識を身につけて、サービス残業を行わず、残業代を貰えるところで貰えるようにしましょう。

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