派遣から直接雇用への切り換え|直接雇用のメリットとデメリット

人事制度

増えている派遣の直接雇用への背景

派遣から直接雇用への切り換えが増えています。派遣社員のあなたも直接雇用になるかもしれません。そうなった時、慌てないように、直接雇用のメリットとデメリットをおさえておきましょう。

一昔前に比べて非正規雇用の割合が大きく増えている今、本来なら「一時的な働き手」だったはずの派遣社員という身分のまま、長期間働き続けている人も多いことでしょう。そこで派遣法の改正によって無くなってしまった「直接雇用申し入れ義務」とあわせて、今の法律の規則や長期間派遣で働く場合の実情について確認しておきましょう。

派遣期間には制限がある

そもそも派遣労働というのは、上記の通り一時的な働き手をまかなう為の制度です。「正社員と同じように長期間働かせつつ、身分は派遣のまま」というのでは、労働者は派遣会社にマージンは取られ続け、契約終了の宣告に怯えるという身分を強いられるとても不利な立場になります。

そこで派遣法では派遣期間の上限を3年と定めています。例外として2015年の法改正までは、特定の仕事(政令で定める26業務)については派遣期間の上限が定められていませんでした。※特定の仕事(政令で定める26業務)については労働政策研究・研修機構のページに詳しい記述があります。

しかし、派遣法の改正によりこの26業務という区分そのものが無くなったため、原則として全ての仕事で派遣期間の上限が3年になっています。

直接雇用申し入れ義務とその廃止

2015年の法改正以前には、企業が勤務期間が3年を超える派遣労働者に対して、「正社員になりませんか?」と声をかける必要があり、これを「直接雇用申し入れ義務」と呼んでいました。しかし、2015年の法改正によって、この直接雇用申し入れ義務は廃止になっています。

「何が何でも3年」というわけではなく、派遣期間の上限は「原則として3年」というだけで、これには例外もあります。例えば、企業は3年を超えて同じ派遣労働者を受け入れたいと思った場合、労働者の過半数を超える人によって構成されている労働組合等に意見聴取をして同意を求めることができます。

これによって労働者側の反対が無ければ、最長6年までの延長が認められます。派遣労働者が派遣会社に無期限に雇用されていて、なおかつその労働者の年齢が60歳を超えている場合には、3年という期間制限は適用されません。

今の働いている条件が厳しいなら、評判のいい派遣会社に変えて仕事を探してみるといいでしょう。派遣会社によって制度やサポート体制も異なるので、自分に合う派遣会社を探しましょう。

雇い止め

直接雇用申し入れ義務が存在した時も、正社員を増やしたくないと考える会社は、勤続期間が3年になる前に労働者を「雇い止め」を行うことで、その義務から逃れようとするのが常套手段になっていました。現在の派遣法についても、3年という期間の上限は「1人の人が同じ事業所で働いている場合」に限った話なので、派遣労働者を受け入れる企業は派遣労働者の事業所に異動させたり、その人との契約を打ち切って別の人派遣労働者を受け入れれば、派遣社員を派遣社員のまま働かせることができます。

それどころか、改正前の派遣法では働く期間に定めのなかった「政令で定める26業務」が廃止されて全ての業種で3年が上限になったことで、雇い止めによって職を失ってしまう労働者はさらに増えると予想されています。我々労働者は「派遣」という働き方が極めて不安定であり、将来につながらない可能性がある働き方だということを十分に認識しておくべきでしょう。

法律はどうなっているか?派遣法のそもそもの根拠

派遣元会社は、派遣先会社との間で、原則として派遣社員の雇用期間終了後に派遣先会社が派遣社員を直接雇用することを禁止する契約を結んではならないとされています。つまり、雇用契約期間の終了後については制限がない契約でなければいけません。

これは労働者派遣法第33条に明確に規定されています。派遣元会社にとっては厳しい制約ですが、これは憲法の職業選択の自由からくる、「会社を辞めた後どこで何の仕事をしようが自由!」という考えに基づきます。

派遣社員の直接雇用とは?

2015年9月に可決された改正労働者派遣法によって、派遣社員の雇用に関するルールが変わりました。これまでは「専門26業務」と呼ばれる業務については、派遣社員を使用できる期間に制限はなく、それ以外の業務については、派遣社員を3年以上継続して使うことができませんでした。改正後は、専門26業務もその他の業務についても、同じスタッフを同じ職場の同じ部署に派遣できる上限を3年と定めています。 つまり、もし同じ部署で同じスタッフに引き続き働いてもらいたいという場合は、派遣から直接雇用に切り替える必要があるのです。

人件費をおさえるために直接雇用に切り替えたい

「人件費をおさえるために直接雇用に切り替えたい」には、2つの理由があります。
1つは、派遣スタッフは受け入れ期間が長くなればなるほど割高になるという点。派遣料金には、スタッフのお給料以外に諸経費が30%もかかっています。この30%には雇用主が払わなければならない社会保険料なども含まれているので、直接雇用にすれば払わなくてすむわけではないのですが、企業には削減余地があるように映ります。

時給で働く派遣スタッフは、残業時間に比例して人件費が加算される点です。例えば裁量労働制のポジションで直接雇用にすれば、企業は青天井で残業代をつくことを回避できます。

「人件費をおさえたい」というこのパターンでは、正社員ではなく契約社員としての採用打診だったり、正社員の採用打診だったとしても、手取り収入が減ることが少なくありません。企業からは、「長期間、雇うのだから今までよりも手取りがさがっても仕方がない」とか「派遣料金が高すぎ」とか、いろんな理由が聞かれます。

派遣スタッフに頼める仕事が広げられない

2010年の年明けから、企業に対して非常に厳格な監督指導が厚生労働省によって行われたため、これまではなんとなく派遣スタッフにお願いしていた電話対応やコピー取りも契約外の仕事といわれたり、なかには、派遣スタッフだけ研修への参加も認められないという事態が発生しています。

そのため、派遣スタッフの直接雇用への切り替えを検討する企業が増えてきました。とくに大企業は、派遣スタッフの契約解除をめぐる裁判をかかえていたり、監督指導によって社名が公表されることで、イメージダウンのリスクが高くなります。リスクをかかえるぐらいなら、直接雇用にした方がよいという判断が働きます。

大企業は、いきなり正社員ではなく契約社員として受け入れることが大半です。それは、厚生労働省が発表した専門26業務派遣適正化プランの結果でも明らかで、是正指導によって正社員になったのは10人で、165人が契約社員になっています。企業からの採用打診というと、なんだか素敵な響きがありますが、企業にもいろんな思惑があるのです。そのため、せっかく声をかけてもらっても断る人も少なくないのです。

派遣にとって直接雇用の大事な部分は条件と環境

大切なのは「将来のチャンスが広がる働き方」かどうか。派遣先からの採用打診を断る主な理由をあげてみます。労働条件が悪化する。派遣という働き方でいたい。職場に魅力を感じない。労働条件には、賃金や残業時間が該当します。すでにのべたように、直接雇用を機にコストを削減したい企業もあるので、せっかくの採用打診が、派遣スタッフにとっては魅力的に映らないことも多いのです。「労働条件が良くなれば採用提案に応じる」が「正社員の採用提案に応じる」という声を上回っています。

さらに、正社員になれば、仕事の担当範囲も責任も増えます。失職のリスクがなくなるにしても、そこまでして働きたくないという人がでてきます。とくに派遣スタッフとして専門的なキャリアをつんできた場合、ジェネラリスト的なポジションには魅力を感じません。

また、慢性的に長時間労働になっていたり、覇気のないダラダラした職場だと、一時的に収入を得るために働くにはいいが、直接雇用されたくないという判断が働くこともあります。

派遣と直接雇用。どちらを選ぶ?

派遣先からの採用打診があっても、「おいしくない」条件だったら応じない方がいいと感じるかもしれないです。しかし、働く立場からすれば、ワークライフバランスを保ちながら、長く気持ちよく働けるかが何よりも大事なはずです。人によってはこれは譲れない点ででしょう。

もちろん、景気が悪くなった時の雇用継続の可能性や正社員という肩書が有利に働くことがあるのも事実です。

契約社員は正社員以上に人間関係のしがらみがある

「直接雇用が良い」と思って派遣社員より契約社員を望む人が多いですが、実際は契約社員も「いつ雇い止めに合うかわからない」という点では派遣社員と同様です。また、雇い止めに合わないように周りの評価に対して過敏に気にしてしまうたい、業務に支障をきたします。

直接雇用は条件が合わなかったらキッパリ断る

契約社員で直接雇用されて、派遣社員より給料が下がってしまったり、労働環境がかえって悪化することの方が多く、あなたを苦しめる結果になります。また契約社員は正社員への近道だと思われがちですが、この世で最も社会的身分が低いのは契約社員です。契約社員として5年以上働くと正社員にさせなければいけない制度はありますが、5年経ったら契約を打ち切るなど会社側に主導権がある以上、この制度はあってないようなものです。

また派遣社員であれば紹介予定派遣から正社員を目指す方法もあります。派遣先によっては派遣社員より契約社員で雇った方が人件費を浮かせられるため、無理にでも直接雇用を勧めてくるところもあります。そのため雇用条件が合わなかったらきっぱり断ることをおすすめします。

契約社員のイメージは、有期雇用で正社員より会社のしがらみに関与しなければならない存在だと思います。最近では、契約社員でも3ヶ月や6ヶ月の短い期間で契約を結び、いつでも雇い止めができるようにしている企業もあります。

無期雇用を目指すのであれば契約社員は派遣社員より近い存在かもしれませんが、自分のワークライフバランスを優先する場合派遣社員の方が向いています。

今の条件が合わないと感じている人は、派遣会社を変えてみるのもひとつの手かもしれません。評判と口コミを派遣会社ごとでご紹介している記事がありますので、参考にしてみるといいでしょう。

助成金の対象となる場合も

また、派遣社員の直接雇用は、条件によって助成金の対象となる場合があります。これは、非正規雇用の処遇を改善するための支援制度として実施されている「キャリアアップ助成金」というもので、内容によって6つのコースに分かれています。

このうち、「正規雇用等転換コース」は、派遣社員などの非正規雇用者を正規雇用や無期雇用した場合に適用され、「多様な正社員コース」は、勤務地限定正社員や、職務限定正社員、短時間正社員として採用した場合に適用されます。 ここでいわれている「正規雇用」「無期雇用」「短時間正社員」などには、細かく条件が設定されており、助成金を受けるには、それらを満たしている必要があります。また、その企業に「キャリアアップ管理者」を置いていること、「キャリアアップ計画」を作成して、事前に提出することなども必要になります。

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