客先常駐の労働形態とは?派遣との違いとメリット

人事制度

客先常駐とは

「客先常駐」という言葉は、ビジネス用語の中でも一般的にあまり聞きなれない言葉だと思われます。客先常駐とは労働形態の一つなのですが、この形態は特にIT業界で使われることが非常に多い労働形態です。むしろIT業界以外ではほとんど見られない働き方なので、他の業界から見ると少し異質な働き方になります。
いったい「客先常駐」とはどのような働き方なのでしょうか。

客先常駐の働き方

ひとことで説明すると、客先常駐は言葉の通り「自社ではなく客先(=協力会社)に常駐して働く労働形態」のことを指します。自社に出勤するのではなく、自社以外の協力会社に出勤をする方は客先常駐に括られます。もしあなたが現在働いている会社で、自社の人間ではないのにも関わらず毎日自社へ出勤している社員がいらっしゃれば、その方は自社より業務を請け負った会社からの客先常駐の社員であるかもしれません。

客先常駐の分類

客先常駐を細かく分類すると、自社と協力会社で交わす契約内容によって業務請負、特定派遣、偽装請負という3種類に分類されます。そのため、客先常駐で働いている方は会社間でいずれかの契約が結ばれ、その契約に基づいて業務を行っています。いずれの場合も給与を貰う流れは変わりませんので客先常駐で働く人は自分がどのような契約で働いているのか知らない場合もあります。客先常駐の方は、自身の契約がどうなっているか詳しくしておいた方が良いです。契約の内容によっては労働者側に不利な内容になっていたり、特に上記に挙げた「偽装請負」は法律違反にあたりますので、注意が必要です。それぞれについてもう少し詳しく掘り下げていきます。

客先常駐(業務請負)

業務請負契約の場合は、大体の場合は開発や作業を行う環境が客先にしかない状況である場合に結ばれます。「請負」の契約は提供しなければならないのは「成果」であり、協力会社の労働力となるという事ではないので、客先の正社員は客先常駐の社員に直接作業の指示を出す事が出来ません。指示を出す事は契約違反であり、違法行為にあたります。そのため客先が指示を出したい場合は一旦派遣元に連絡をして、派遣元の管理者から指示を出してもらう必要がありますので、客先側からみると少し面倒くさい手順が必要です。
また、請負の場合は残業しても客先から手当が出ることはありません。なので派遣元が残業代を出す場合は、残業するほど会社が赤字になる、出さない場合はサービス残業になってしまうことを覚えておきましょう。

客先常駐(特定派遣)

客先常駐が一般的なIT企業でが一番多く行われており、IT企業に正社員として入社した人の多くが行っている労働形態がこちらです。客先の会社があるプロジェクトにおいて作業者・人員確保のために派遣を募集し、派遣元が自社の社員を派遣として客先に常駐させるという形態です。特定派遣は業務請負と異なり、「労働力」を提供していますので客先の正社員に指示を仰いで業務を行うことになります。その性質上、契約内容にもよりますが残業が発生した場合は客先の会社から残業代が支払われます。客先側からすると自社の所属ではない人間に残業代はあまり支払いたくないので、客先常駐の残業はあまり好まれない傾向にあるようです。

客先常駐(偽装請負)

こちらはIT業界ではよく行われていると言われている契約ですが、本来は違法です。仕事の流れや指揮系統は特定派遣とかわりがありません。しかし、偽装請負の場合は契約が「請負」となっております。この契約は働く側にとっては良いことがありません。客先から見ればこちらの指示で残業や休日出勤をさせても残業代は払わなくてもよく、派遣元が支払う必要性がありますが、大体この契約を行う会社は残業代を払わずサービス残業にしていることがほとんどです。詳しく記すと他にもありますが、要は働けば働くほど自身が損をする、業務請負と特定派遣のデメリットを総取りしたような契約ですので、このような状況で働くことはお勧めできません。ただ自身の契約が偽装請負なのか判断することは契約書を確認する以外では非常に難しいので注意が必要です。

客先常駐と派遣の違い

客先常駐について詳しく説明をしていくと、いわゆる一般的な「派遣」と働き方が似ていると気づく方もいらっしゃったのではないでしょうか。「客先常駐」と「派遣」では果たして違いがあるのでしょうか。答えを以下にまとめます。

実はあまり変わりがない客先常駐と派遣

実は、働き方としては客先常駐と派遣(一般派遣)は変わりはありません。
主な客先常駐の働き方の形である「特定派遣」と「一般派遣」を比較してみます。

■客先常駐(特定派遣)
契約内容:派遣
提供物:労働力
業務指示:客先の社員
時間外手当:あり
待遇:正社員

■一般派遣
契約内容:派遣
提供物:労働力
業務指示:客先の社員
時間外手当:あり
待遇:派遣

これを見ると、待遇は異なるものの、働き方は全く一緒であるといえます。違うのは、給与形態くらいで、一般派遣は派遣先との契約が終了すればそれで終わりですが、特定派遣は派遣元の正社員ですので契約が終わった後も給料は発生しますし、ボーナスも貰うことが出来ます。

客先常駐SEのメリット・デメリット

上記で述べたようにIT業界では客先常駐という働き方が定着しておりますので、特にSEの方はこの働き方と非常になじみ深いです。客先常駐にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

客先常駐のメリット

まず、客先常駐の会社は非常に入社がしやすいことが挙げられます。将来のことを考えると自社で開発や受託が出来るような会社が良いのですがそのような会社は少なく、いわゆる大企業であることが多いので入社自体が非常に難しいです。なので、IT業界で手に職を付けたいという方のキャリアのルートとして、まず客先常駐に入社して様々な現場を経験したのち転職でキャリアアップするという道もあります。

客先常駐は長くても数年という短いスパンで色々な現場を回ることになります。客先のプロジェクトが終了すると、次の現場へ移りますので、そのたびに新しい現場に入り、新しいスキルを取得することが出来ます。また、そこでの新しい人間関係を構築しますので、いわゆる人脈は広くなります。色んな現場を渡り歩き、幅広い技術と人脈を習得できるのは客先常駐からのキャリアアップにとって最大のメリットであるかもしれません。場合によっては客先での紹介で転職ができたり、活躍すればヘッドハンティングされることも考えられます。

客先常駐のデメリット

対して、客先常駐のデメリットとして一番に挙げられるのは「技術者として成長することが難しい」ということです。メリットの項目で幅広い技術を習得できる、とありましたが実際は常駐先の企業によりますが任される仕事は下流の工程であることがほとんどです。若い20代の頃はそれでも良いかもしれませんが、30代以降の転職で求められるような設計やエンドユーザーとの打ち合わせの能力やプロジェクトの管理能力などのスキルを学べるような機会は回ってきません。結果としてずっと客先常駐で働いていると年齢が上がるにつれ需要が減り、使い捨てにされる可能性も大きくなります。その他、勤務地が変わる、現場が変わるたびに求められるものが変わり、人間関係も変わるというメリットも、言い換えると何回も一からやり直す必要があるデメリットにも捉えられます。

一人で客先に常駐する場合のポイント

客先常駐には上記のようなメリット・デメリットがありますが、ネットで見る限りはどうもマイナスの意見が多いようです。その内容は上記に挙げたデメリットの部分もそうですが、「精神的な負担が大きい」「ストレスが酷い」といったことがよく書かれています。よそ様の会社に入るわけですし、立場的にも当然弱くなるので、気を遣う場面が多くなるのは容易に想像できます。さらに過酷なのが、客先に常駐するのが一人だけという「一人常駐」と言われる状況になった場合、ただでさえ肩身の狭い状況でたった一人で仕事をするという非常にストレスがかかる状況に陥ります。そのような状況で働かないのが一番ですが、現状のIT業界では自身にも起こりうる状態です。そうなった時にストレスで潰れないためにどのようにふるまうべきでしょうか。ポイントをいくつか提示していきます。

積極的に行動する

客先常駐のような短期間の契約で、常駐先の企業が求めているのは「即戦力」です。即戦力の人材になるには、まず情報の収集が大切になります。社内環境やシステム、雰囲気などをいち早くつかむために自分から色んな人に話しかけるなど情報を取りに行きましょう。慣れてないと思われている内に積極的に動くことで常駐先の人間からもいい印象を持たれやすく、人間関係を早めに構築した方が今後の業務のやりやすさにもつながってきます。

存在感をアピールする

成果を出すために上記の要素は必要ですが、それだけではまだ替えがきく状態です。「あなたじゃないといけない」という信頼感を得るためには「存在感」をアピールする必要があります。そのためには、積極的な提案やアイデアだしをすることが重要です。その提案が採用されることは立場上あまりないでしょうが、積極的な姿勢を見せることは仲間としての意識が芽生え、円滑に仕事を進めることが出来るでしょう。

客先常駐の転職理由とタイミング

客先常駐はメリットもあるものの、やはり働く側にとってはマイナスに感じる部分が多く、転職を希望する人も多くいるのも事実です。転職の理由はどのようなものが多いのでしょうか。また、転職を行うならば、どのようなタイミングで行うべきなのでしょうか。

客先常駐の転職理由

客先常駐の方の転職理由としては待遇への不満や精神的な負担が大きい等様々ありますが、その最たる理由は「客先常駐という働き方への脱却」です。今まで述べてきたとおり、客先常駐は働く側に非常にストレスのかかる働き方であり、また、将来のキャリアステップにもつながりにくい現状があります。客先常駐の分類で述べましたが客先常駐は正社員であるものの、実質は派遣と変わりがありません。派遣と扱いが同じである限り、今後30代40代になった時に希望があるものではありません。なので、ある程度のスキルを身に付けたら客先常駐ではなく自社で働ける正社員として雇って貰える所に転職を行うのが賢明な判断です。

客先常駐の転職のタイミング

では、転職を行うタイミングはいつが良いのでしょうか。一番形が良いのは今現在関わっているプロジェクトが終わり、客先との契約が終わったタイミングで退職願を出すという形が客先にも迷惑をかけずに退職できるタイミングだと思われます。それを考えたうえでまずは直属の上司に相談を行いましょう。就業規則に退職についての記載があると思いますので確認しておく必要があります。その後の退職の流れは相談のうえ決められるでしょうが、仕事の状況の他にも、例えば転職先が決まっている場合は入社時期、年休取得の予定、個人の用事などを考慮して退職時期を決めていくのも良いでしょう。

客先常駐からの転職におすすめの求人サイト

最後に、客先常駐からの転職におススメのサイトをいくつか紹介します。どうせ転職するならばキャリアアップを狙いたいです。そんな転職には転職エージェントの利用が有効です。ITに強い転職エージェントもいくつかありますので、上手く活用して転職を成功させましょう。

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