住宅手当の支給は原則世帯主
従業員の住宅に掛かる費用負担を軽減する住宅手当ですが、多くの会社で、支給対象を世帯主のみと規定しています。
住宅手当の制度自体は、法律上の規定で定められているものではないため、その支給対象や支給額などの条件をどのように規定したとしても、それは会社の自由な判断に委ねられます。
また、外資系企業においては給与に諸手当分が含まれているため、住宅手当の制度自体が存在しないことが多くなっています。
福利厚生:住宅手当
福利厚生とは、会社がモチベーション向上や会社への定着、生活の安定などを目的として従業員とその家族に対して行う給与以外のサービスや援助のことを指します。
そして住宅手当は従業員の住宅に掛かる費用負担の軽減を目的として支給される、会社の福利厚生の一つです。
住宅手当の支給形態は、従業員が支払う家賃の一部補助や住宅ローンの一部補助が一般的で、その支給対象は世帯主のみと定めている会社が多くなっています。
世帯主
世帯は生計を同じくする人の集まりで、世帯主はその世帯の中心となる者です。世帯主は住民票で確認できますが、世帯は主たる生計者である必要はなく、どのような続柄や年齢の者であっても世帯主となれます。
一般的には父や夫といった、世帯で最も収入の多いその世帯の主たる生計者が世帯主とされることが多くなっています。
また、住宅手当の支給において、主たる生計者である世帯主でなければ支給しないとする会社も存在します。
世帯主は簡単に変更できる
世帯主が亡くなった場合や転出した場合、世帯分離を行うときなどは、世帯主を変更が必要となります。
転出の場合など義務的に世帯主の変更を行う場合だけでなく、世帯の代表者を単純に変えたいときにも、市役所に世帯主変更届を提出することで世帯主の変更が可能です。
戸籍の代表者であり、変更するには厳格な手続きがあった旧民法下の戸主と違い、世帯主は単純な世帯の代表者であるため自由な変更が可能となりました。
住宅手当の受け取りに必要な書類2つ
法律上の規定のない住宅手当は、会社が自由に定めた規定によって支給形態や支給額に差があるため、申請手続きに必要とされる書類も会社ごとに異なってきます。
何の書類も必要なく申請すら不要で住宅手当を支給する会社もありますが、ほとんどの会社では住民票と賃貸借契約書の二つの書類が受け取りに必要な書類となっています。
住宅手当の受け取りに必要な書類1:住民票
住宅手当の支給対象を誰にするかは、支給する会社の規定で自由に決めることができますが、多くの会社では世帯主のみを支給対象にしています。
そのため、会社は住宅手当を申請した従業員が世帯主であるか、同一世帯で住宅手当の二重取りがなされていないかを確認するために、住民票の提出を求めてきます。
生計が別となっている二人が同じ住居に住んでいる場合、世帯分離を行えば、両者とも世帯主として受給できる可能性があります。
住宅手当の受け取りに必要な書類2:賃貸借契約書
住宅手当の支給額は会社の規定で自由に定められますが、無制限で全額という会社はほぼなく、多くの会社では上限を定めた上で、家賃や住宅ローンの一部補助を行っています。
また、賃貸借契約の住宅であれば、支給の対象を契約者本人としている場合も多くあります。
そのため、会社は住宅手当の申請に契約者と家賃の額が記載された賃貸借契約書の提出を求めることで、不正な受給ができないようにしています。
同棲でも家賃補助(住宅手当)はもらえる
住宅手当を支給する会社の多くは、支給対象を世帯主のみや賃貸借の契約者のみとしているため、同じ賃貸住宅で同棲している場合は、どちらか片方しか受給できません。
しかし、まれに住宅手当の申請で住民票の提出のみを求め、賃貸借契約書の提出を求めない会社も存在します。
この場合には、賃貸住宅の契約者の確認を行わないため、同棲している二人がそれぞれの住民票を提出することで両者とも住宅手当が受給できることになります。
結婚していなくても家賃補助(住宅手当)はもらえる
結婚をしていない同棲の状態でも、住宅手当の制度がある会社であれば、住宅手当を貰うことはできますが注意する必要があります。
同棲の場合は賃貸借契約書の提出を求めないなど特殊なケースを除いて、どちらか一方のみの支給となるのが通常です。
また、賃貸借契約書の提出を求められず、二人とも受給できる可能性があっても、生計を別にしているなど他の条件が存在しないか確認し、不正受給とならないよう注意する必要があります。
あなたの会社に仕事の生産性をあげる「働き方改革」を起こしませんか?
名刺が多すぎて管理できない…社員が個人で管理していて有効活用ができていない…そんな悩みは「連絡とれるくん」で解決しましょう!まずはこちらからお気軽に資料請求してみてください。
住宅手当といっても支給基準は各社さまざま
住宅手当は法律の規定がないため、支給基準は会社の規定ごとに異なりますし、最低基準というものも存在しません。
また、法定福利厚生とされる雇用保険など各種保険への加入を除けば、住宅手当に代表される法定外福利厚生は会社が任意に定めることができます。
しかし、自由に定めてよいからといって、度々基準を変更したり一部の社員にしか支給されないなど不公平感のある基準にしないよう注意する必要があります。
世帯主か非世帯主か
世帯主であるか否かを、住宅手当の支給基準の一つとしている会社は非常に多いです。
しかし、世帯主は誰でもなれてしまうため、実質的に家賃や住宅ローンを負担していない従業員にも支給されてしまう可能性があります。
負担のない従業員に住宅手当を支給すれば、他の社員にとって不公平感のある制度となるため、実際に経済的な負担をしている「主たる生計者である世帯主」を支給の条件としている会社が多くなっています。
借家住まいか持ち家か
住宅手当は従業員の住居が賃貸であれば、家賃の一部を補助し、持ち家の場合は返済するローンの一部を補助するのが一般的ですが、多くの会社では持ち家に対して住宅手当を支給していません。
このため、賃貸から持ち家に住居形態が変わると住宅手当が支給されなくなる上に、住宅ローンまで抱えることになるため、マイホーム購入は良く考えなければなりません。
単身生計者か親と同居しているか
多くの会社が世帯主のみを住宅手当の支給対象としているため、単身生計者でなく親と同居している場合、自分が世帯主になるか世帯分離を行わない限り住宅手当は支給されません。
これに対して独立して住居を維持する単身生計者は、住民票を移していない場合を除いて自分が世帯主になるため、支給の条件を当然に満たすことになります。
家賃補助と住宅手当の違い
家賃補助と住宅手当は、どちらも会社の福利厚生の代表的なものですが、法律上の定めがあるわけではないため、住宅に関わる福利厚生をどちらの名称とするか、どのような内容で支給するかは会社の自由となっています。
両者の内容に違いがない場合もありますが、賃貸のみに支給する場合は家賃補助、持ち家にも支給する場合は住宅手当としている会社が多いです。また名称がどちらであっても、課税対象となることは変わりません。
年々変わる居住環境と実務上の注意点
住宅手当は持ち家や実家から通勤の場合には支給されない、居住する地方で家賃相場の違いから支給額が異なるなど、どうしても不公平感が出てしまいます。
また近年では、シェアハウスなど家族でない者との同居に代表されるライフスタイルの変化から、旧来の住宅手当では対応できないケースもあり、住宅手当は縮小傾向にあります。
このような変化への対応や、不公平感を解消する制度を作ることが実務において大切になってきます。
住宅手当の支給について理解を深めよう!
住宅手当は居住形態の多様化、会社の経営状況の悪化などから支給額の減少や制度そのものの廃止など縮小傾向にあります
しかし、住宅手当は支給条件や支給額が会社によってさまざまとはいえ、支給目的が従業員の生活の安定のための福利厚生であることに違いはありません。
その会社でずっと働くとなれば、累計で支給される住宅手当は大変な額となりますので、その支給について正しい知識を身につけ正しく受給しましょう。