18歳未満の年少者でも雇用できる?
労働基準法では満18歳未満の者を年少者として、成人の労働者とは別の特別な保護規定を設けています。
労働力人口が減少し続けている我が国においては、高校生や大学生などの未成年者をアルバイトとして雇用し、労働力としている企業も多いのが現状です。
しかし、年少者は健康および福祉の確保の観点からさまざまな制限が設けられているため、その趣旨や制度をしっかりと理解し、問題が起きないように努めることが重要です。
労働者の年齢区分
労働基準法における、満20歳未満の労働者の区分は以下のとおりです。
・義務教育を修了していない者を「児童」
・満18歳未満の者を「年少者」
・満20歳未満の者を「未成年者」
それぞれに通常の成人労働者とは異なる特別な保護規定を設け、健康および福祉の確保を図っています。
最低年齢の例外
原則として、労働基準法において義務教育を修了していない児童は、労働者として雇用できません。
しかし、例外規定として満13歳以上の児童であれば、健康や福祉に有害でなく、軽易な労働に限って、労働者として雇用することを認めています。
しかし、この場合であっても所轄労働基準監督署長の許可を得た上で、「修学時間外」という制限が課されます。また、満13歳未満の者は映画演劇の事業に限って雇用が認められています。
年少者を雇用する際の注意点10個
肉体的・精神的に未成熟で、健康および福祉の確保の観点から保護が必要な年少者の雇用には、通常の労働者とは異なるさまざまな制限が課されています。
このため、年少者を雇用する際には休憩、休日や労働時間の扱いが通常の労働者と異なること、一定の就業制限が課されていることなどに注意しなければなりません。
続いて、年少者を雇用する際に、特に注意を要する点を10個挙げて解説していきましょう。
年少者を雇用する際の注意点1:労働条件の明示
年齢を問わず、労働契約が締結された場合には、労働基準法第15条の適用を受けることになります。そのため、使用者は年少者に対して、賃金や労働時間などをはじめとする労働条件を明示する義務が課されます。
この義務を怠った場合や、労働条件を書面で提示しなかった企業には、罰則(30万円以下の罰金)が設けられています。また、明示された労働条件が事実と異なる場合、年少者は即時に労働契約を解除することができます。
年少者を雇用する際の注意点2:賃金の支払い
労働基準法第24条により、使用者は労働者に対して直接賃金を支払わなければなりません。
この規定は賃金の支払いに際して、使用者と労働者の間に第三者が介入し、その第三者が不当に労働者の賃金を搾取することのないよう、労働者保護のために設けられています。
年少者も労働者であるため、直接払いの原則が適用され、親権者や後見人に対して賃金を支払うことは禁止されます。
年少者を雇用する際の注意点3:労働時間
労働者が法定労働時間を越えて労働する場合や、休日労働をする場合には、所轄労働基準監督署長に36協定を届け出ることになります。
しかし、雇用される年少者においては、仮に36協定を届け出ても、時間外労働や休日労働を行わせることは原則として認められません。
1週間の労働時間は40時間、1日の労働時間は8時間が限度となっていることに注意しましょう。
年少者を雇用する際の注意点4:休憩時間
6時間を越える労働には、45分または60分の休憩を一斉に付与しなければなりませんが、運輸交通や映画・演劇業、接客娯楽業などの特例事業では、休憩を一斉に付与しなくても良いこととされています。
しかし、年少者については特例事業に雇用されている場合であっても、休憩を一斉に付与することが必要です。
また、郵便局員など休憩を与えなくて良いとされる業種であっても、年少者の場合であれば休憩を与えなければなりません。
年少者を雇用する際の注意点5:休日
労働組合または労働者の過半数代表と36協定を締結すれば、一定の制限のもとに雇用する労働者に休日労働をさせることができます。
しかし、年少者は36協定があっても、原則として休日労働をさせることができません。
ただし、災害や公務のため臨時の必要がある場合や、農水産業、畜産業など労働基準法第41条に該当する事業に雇用されている場合には、例外的に年少者であっても時間外労働や休日労働を行うことができます。
年少者を雇用する際の注意点6:未成年者の労働契約締結の保護
労働契約は、労働者本人が自らの意思で締結する必要があります。年少者などの未成年者の場合であっても、親権者や後見人が本人に代わり締結することは認められず、労働契約は無効となります。
ただし、締結した労働契約が未成年者に不利であると認められる場合、親権者や行政官庁は未成年者の保護のため、その意思に関係なく労働契約を解除することが認められています。
年少者を雇用する際の注意点7:年齢証明書等の備付け
年少者を雇用する場合、使用者は住民票記載事項証明書など、年齢の確認できる書類を事業場に備え付けなければなりません。
アルバイトなどでは学生証で年齢を確認することが多いですが、本来は公的証明書である住民票記載事項証明書で確認することが望ましいです。
また、児童を雇用する場合には年齢を確認できる書類に加えて、親権者または後見人の同意書と学校長の証明書を事業場に備え付けることが必要とされます。
年少者を雇用する際の注意点8:労働時間・休日の制限
36協定を締結しても年少者には、原則として時間外労働や休日労働を行わせることができません。例外として行わせる場合であっても、「1週40時間を越えないな」どの制限が課されています。
これは、年少者の健康および福祉の確保を図る観点から設けられている制限で、年少者を雇用する場合、使用者はその制度趣旨を充分理解し、特別な配慮をする必要があります。
年少者を雇用する際の注意点9:深夜業の制限
年少者は労働基準法第61条によって、原則午後10時から午前5時までの深夜帯に働くことが認められていませんので、24時間営業の飲食店などで雇用するときは特に注意が必要です。
ただし、年少者であっても満16歳以上の男子で交代制によって使用される場合は、例外的に深夜業が認められます。
また、災害や公務などで臨時の必要がある場合や農水産業、保健衛生の事業などに雇用される年少者も深夜業の制限の例外となります。
年少者を雇用する際の注意点10:危険有害業務の就業制限
年少者には、重量物の取扱いや土砂崩壊、墜落の可能性があるような危険業務および有害物、危険物を取り扱うような有害業務に就業させることが認められていません。
また、深夜業などの例外の場合であっても、年少者をバーやキャバレーなど特殊な接客業に就業させることはできません。
これらの規定には、時間外・休日労働や深夜業のような例外がないため、どのような場合でも就業は認められませんので、しっかりと理解しましょう。
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年少者の労働時間の3つの特例
年少者は原則として、労働基準法で定められている1週40時間、1日8時間の法定労働時間内で労働させなければならず、変形労働時間制の適用もありません。
ただし、条件を満たせば深夜業や休日労働のように特例として、労働時間の延長や変形労働時間制の適用が認められます。以下に、年少者の労働時間の3つの特例を挙げて解説していきます。
年少者の労働時間の特例1:労働時間を10時間まで延長
前述のとおり、年少者は原則として、1日8時間を越えて労働させることができません。しかし、1週間の内で任意の1日を4時間以内の労働時間とすれば、他の日の労働時間を10時間まで延長できます。
ただし、この特例の適用があっても、1週間の労働時間は法定の40時間を越えられないので、十分な注意が必要です。
年少者の労働時間の特例2:変形労働時間の適用
年少者には原則、フレックスタイム制や変形労働時間制は適用できません。
ただし、1週間の労働時間を48時間以内とし、1日の労働時間を8時間の法定労働時間の範囲内にすれば、「1ヶ月・1年単位の変形労働時間制」を適用することができます。
ただし、この特例の適用があっても、年少者には1週間単位の変形労働時間制とフレックスタイム制は適用できませんので注意しましょう。
年少者の労働時間の特例3:午後10時30分までの就業
交代制により使用される満16歳以上の男子は、年少者であっても深夜業が認められています。
しかし、それ以外の年少者であっても、所轄労働基準監督署長の許可を得ることにより、例外的に午後10時30分まで労働させることが可能です。
また、労働基準監督署長の許可を得ずに行わせた違法な深夜業であっても、深夜割増賃金を支払う必要があり、これを支払わなかった場合は罰則が規定されています。
年少者の雇用方法をきちんと知っておこう!
現代は、大学や短大の進学率が過半数を超え、高校進学率も極めて高くなっています。それに伴い、満18歳未満の年少者を正社員として雇用することも少なくなっています。
しかし、少子高齢化や団塊世代の引退などで、労働力が減少し続けている現状では、臨時的・補助的な労働力としての年少者の需要が高くなっているのも実情です。
年少者を労働させる際は、確かな知識を持って雇用方法をきちんと知っておきましょう。