看護師の免許取得には国家試験への合格が必要
看護師は病気や怪我に苦しんでいる人を助ける仕事のため、そこに喜びややりがいを抱き、目指している人が大変多い職業です。
しかし看護師は人の体や命を守る仕事という事もあり、その道のりは決して簡単なものではございません。
看護師になるためには看護師国家試験を受験し、それに合格した後に看護師免許を交付される必要があります。この国家試験に合格をしない事には看護師への道が開けないのです。
看護師国家試験を受験し、合格して免許が交付されるまでの流れをもう少し詳しく見ていきましょう。
看護師国家試験の受験資格
看護師国家試験は誰でもすぐに受験できるものではございません。看護師国家試験を受けるには、以下の課程が必要となります。
・看護師専門学校にて3年の勉強
・看護系短大にて3年の勉強
・看護系大学にて4年の勉強
4年制看護大学は他の課程に比べて1年多いですが、その代わり保健師や助産師の勉強も行います。そのため、他の課程では看護師の資格を取得した後に専門教育機関へ行かなくては取得できない保健師や助産師の資格を、4年制看護大学ではそれらを看護師の資格と同時に取得する事が出来ます。
これらのいずれかの課程を経て初めて、看護師国家試験が受験できるようになります。
看護師国家試験に合格をした後は免許の申請手続が必要
看護師の免許は、看護師国家試験に合格をした後に申請を行い、交付されます。
ここで注意をしなくてはいけない事は、看護師国家試験に合格をしたからといって、その後は自動で免許が交付されるという事にはなりません。試験に合格をしても免許が発行されていなければ無免許となってしまいます。
看護師国家試験に合格をした後は忘れずに免許の申請を行うようにして下さい。
また、看護師免許は申請後すぐに発行されません。試験合格後すぐに申請を行うようにしましょう。
看護師と准看護師との違い
看護師と似たものに、准看護師というものがあります。
准看護師とは、准看看護学校で2年間勉強をし卒業した後に、各都道府県で実施される准看護師取得のための試験を受け、合格してなれるものです。
看護師資格は国家資格で厚生労働省管轄、准看護師資格は公的資格で各都道府県知事管轄となります。
業務内容等も一見すると両者変わらないように見えますが、准看護師は看護師の補佐的な仕事を行います。看護を行うには医師や看護師の指示に従わなければならず、自分の判断では看護が出来ません。
また、昇進に関しても看護師は主任や師長などに昇進は出来ますが、准看護師は出来ません。
准看護師から看護師へキャリアアップする事は可能ですが、自分の判断で看護を行い、昇進したいと思うのならば看護師を目指すのがよいでしょう。
看護師免許の更新
免許には、自動車免許のように定期的に更新をしなくてはいけないものがあります。
看護師免許の更新についてはどのようになっているのか、掘り下げて見ていきましょう。
看護師免許には定期的な更新制度はない
看護師免許は自動車免許とは異なり、定期的な更新を義務付けられてはおりません。つまり、一度取得をしてしまえばずっと有効な免許なのです。
現在看護師免許の更新制度はありませんが、厚生労働省では今後看護師免許の更新制度の導入の検討を薦めております。今後、看護師免許の更新制度が導入される可能性は十分に考えられます。
登録内容に変更が生じる場合は免許の更新が必要
看護師免許は生涯有効とはいえ、免許に登録されている項目に変更が生じた場合は、変更箇所の書き換えを行わなければなりません。
変更が生じた場合に書き換えを行わなければならない登録項目は、氏名と本籍地の都道府県となっております。
住所が変更になったが本籍地は変わっていない、本籍地は変わったが変更前の都道府県内での変更の場合は、免許の書き換え申請は不要です。
看護師免許更新の手続方法
氏名や本籍地の都道府県が変わった場合、変更が生じた日から30日以内に、就業地にある保健所へ籍の訂正に伴う免許書き換え申請書を提出しなければなりません。
免許の書き換えに必要なものとしては、書き換え申請書の他に6ヶ月以内に取得をした戸籍抄本または戸籍謄本、看護師免許証、印鑑(氏名変更の場合は変更後の印鑑)、手数料として1,000円分の収入印紙です。
変更後30日を過ぎてしまうと免許証が無効となってしまい、無資格と同じ扱いになってしまいます。名前や本籍地の変更が生じた場合は速やかに変更手続を行いましょう。
変更して30日経過後に書き換え申請を行う場合は、書き換え申請書の他に遅滞理由書が必要となります。
看護師免許を破損・紛失した場合は再発行が可能
看護師免許は、運転免許のようにカード式で持ち歩きが容易に出来るようなものではなく、賞状のような形のため携帯するには大きすぎて容易に出来ません。そのため、看護師免許を自宅に保管する人も少なくありません。
大切に保管をしていたつもりでも、免許証が破れてしまったり、なくしてしまったりという事は決して珍しくありません。
このような場合は手続を行う事で、免許証の再発行をしてもらう事が出来ます。
看護師免許再発行の手続方法
看護師免許の書き換え同様、手続を行う先は就業地がある保健所となります。
再発行をするのに必要なものは、免許証再交付申請書、6ヶ月以内に取得した住民票の写しまたは戸籍謄本・戸籍抄本、運転免許証などの本人確認が出来るもの、再交付に関する意見書、印鑑、手数料として3,100円分の収入印紙となります。
紛失の場合は不要ですが、破損の場合は破損した看護師免許証が必要になります。
免許証を紛失した場合は、看護師資格を持っていないとみなされてしまうため、紛失が発覚したら速やかに再発行手続を行うようにして下さい。
再発行後に紛失した免許証を発見した場合
免許証が再発行された後に紛失した免許証を発見した場合は、5日以内に発見した古い免許証を就業地の保健所へ返納をしなければなりません。
看護師免許保有者の業務従事者届義務
看護師免許の更新は、現段階では登録内容の変更がない限りは更新義務がありません。
しかし、看護師として業務を行っている人に対しては業務従事者届の提出を義務付けております。
業務従事者届とは一体どのようなものなのでしょうか。
対象は業務に従事している医療従事者
業務従事者届とは、現在働いている医療従事者に対してその現状を把握するために提出を義務付けているものです。
つまり、現在業務に従事している保健師、助産師、看護師、准看護師などが対象となっております。
看護師資格を保有しているが現在働いていないという方はこの届出の義務はありません。
ただし、休職中や育児休暇中など、退職をしていない場合は業務従事者届の提出が必要となります。
届出の間隔と内容、提出先
業務従事者届の提出は2年ごとに行うよう義務付けられております。
12月31日現在の氏名、住所、生年月日、免許の種類、番号や年月日の登録情報、主たる業務、就業地の情報などの必要事項を記載し、翌年の1月15日までに就業地にある保健所まで提出をするようになっております。
届出義務違反者に対しては罰金が課せられる
業務従事者届を定められた通りに提出をしなかった場合は、罰金50万円以下が課せられる事になっております。
就業先によっては事前に届出書を用意し、提出の際は取りまとめてくれる所もありますが、個人で提出を行う場合は提出期限等に十分注意をして下さい。
看護師免許の履歴書への書き方
看護師の場合も、転職や一度現場を離れたが現場復帰する場合には履歴書を書かなくてはなりません。当然新卒での就職の場合も必要です。
初めて履歴書を書く方も、数年ぶりに書く方も書き方に不安があるかと思われます。
そこで、ここでは看護師の履歴書の書き方で注意すべきところをピックアップして紹介をしていきます。
資格欄には『看護師免許』と記載をする
資格欄記載の際に注意すべき点は、必ず看護師免許取得の情報を記載する事です。すなわち、看護師国家試験合格年月日や、『看護師国家試験 合格』の記載は行うべきではありません。
先述の通り、試験に合格をしただけでは免許も交付されず、看護師の資格として認められないからです。
新卒でまだ免許が交付されていない場合も合格した事を記載するのではなく、免許の申請を行い後は免許の交付待ちですよという内容の記載をするべきです。それが先程説明をしました『看護師免許 取得見込』となります。
法改正前に免許を取得した場合も『看護師』と記入
平成14年3月1日施行の法改正以前に免許を取得された方は、『看護婦』の名称で免許が交付されております。『看護師』『看護婦』どちらで記入をすればよいのか迷われるかと思います。
現在では上記の法改正により、法改正以前に取得した資格についても『看護師』の名称で統一されております。
そのため、そのような場合でも履歴書に『看護師』と記入をすれば良いです。
国家試験合格に関する事は記載をしない
看護師免許をちゃんと持っていることを記載する資格欄には、運転免許であれば『普通自動車第一種免許』といったような、その資格の正式名称を記載しなければなりません。
看護師免許の場合はと言いますと、『看護師免許 取得』と記載すればよろしいです。新卒で、看護師国家試験には合格したけれどまだ免許が交付されていない方は、『看護師免許 取得見込』と記載をします。
看護師免許は場合によっては剥奪される事がある
一度免許を取得すると生涯有効な看護師免許ですが、場合によっては看護師免許が剥奪されてしまうという事態が起こります。
件数的にはあまり多くはないと言えど、どのような場合に免許が剥奪されるのかを把握しておく必要があります。
看護師免許が剥奪される、もしくはその可能性がある状況を見ていきましょう。
窃盗や傷害事件など、刑事処分を受けた場合は免許が剥奪される
指で数えられるほどの件数しかありませんが、毎年看護師の免許取り消し処分(剥奪)という行政処分が発生しております。
免許取り消し処分が発生する原因としては、詐欺や窃盗や強制わいせつ、危険運転や暴力行為、殺人といった行為を犯した事によるというものです。
いくら看護師として優秀でも、このような犯罪を犯してしまえば容赦なく免許は剥奪されます。
また、犯罪を犯したのが看護師国家試験受験前であった場合、欠格事由に該当するとして試験に合格をしても免許が発行されない事も起こり得ます。
医療ミスを犯した場合、免許が剥奪される可能性がある
看護師の行政処分は先述したものだけではなく、業務上過失致死傷を起した場合も対象となります。つまり、医療ミスを犯してしまった場合もその対象となるという事です。
しかし、このような医療過誤を起してしまった場合についての処分で、免許の取り消しが行われるケースは少ないのが現状です。
その背景には、このような事件に関しては病院全体の責任が大きい事や、訴訟はミスをした看護師ではなく病院全体に対して行われる事が多い事があります。そのため、ミスをした本人の看護師免許を剥奪する事が少ない傾向にあります。
だからと言って、医療ミスを犯しても免許剥奪まではされないと安心してはいけません。
免許剥奪されるケースが少ないだけであって、その可能性がゼロという訳ではありません。
看護師免許の剥奪まではされなくても、業務停止処分や懲戒免職処分を受ける事もある
看護師に対する行政処分は、看護師免許の取り消しだけではございません。免許の取り消し処分が行政処分で最も重いものであり、その下には業務停止処分、戒告処分があります。
医療ミス等の業務上過失致死傷を起した場合、免許の取り消し処分は行われなくても業務停止処分や懲戒免職処分を受ける事も有り得ます。
業務停止や懲戒免職が解除された後は、そのほとんどの看護師が元いた職場に復帰をしております。
一度行政処分を受けてしまうと、転職や看護師として働き続ける事が困難になってしまいます。特に公立病院に勤務する看護師は地方公務員扱いとなりますので、それが原因で就職が出来ない、公立病院勤務中に懲戒処分を受け、それが地方公務員の欠格事由に当たり失職してしまうという事が起こります。
行政処分には十分に注意をするようにして下さい。
看護師は業務中の行動はもちろんの事、業務外の行動も慎重に
業務上過失致死傷は業務中に起こりうる医療過誤だけではなく、車の運転等で人身事故を起した場合にも適用されます。
自動車運転での人身事故については、事故を起した後に警察等への連絡や被害者に対する救護を行わずにその場を逃走した場合、行政処分の対象となります。
そのため、看護師は業務中はもちろんの事、業務外の行動にも十分な注意を払う必要があります。
もし細心の注意を払った上で事故等を起してしまったら、適切な処置や救護を行いましょう。犯罪行為を行わないのはもってのほかです。
普段の日常の中でも自己の管理を徹底し、規律を守った生活を心掛けなければいけません。
免許証と自己の管理を大切に
いかがでしたでしょうか。
看護師の免許やその更新、看護師の履歴書の書き方、看護師の行政処分について見ていきました。
看護師免許は原則一生有効なものですが、場合によっては書き換えが必要であったり、免許が取り消される事もあります。そこの部分は看護師免許取得後もしっかりと頭の片隅に入れておきましょう。
看護師免許を取得しても行政処分があるから安心できませんよね。しかし、これらは当たり前の事をしていれば恐れる事はありません。業務中でもわからない事があれば上の人間に報告・連絡・相談をする、プライベートでも規律を守る。起こってしまった事は誠意を持ってきちんと対応をする。これさえきちんと出来ていれば大丈夫です。
当たり前の事をきちんと出来る人は良い看護師さんになれます。
これから看護師を目指して勉強をしている皆さん、是非とも良い看護師さんを目指して頑張って下さい。