依頼退職の場合は会社都合退職か自己都合退職か|依頼退職の退職金

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「依頼退職」って何?

日常にみられるケース

会社に属していれば、いつか何かの形で退職という時が訪れるでしょう。その中であまり聞きなれないのが「依頼退職」普段はなかなか使わないこの言葉、あなたはその正しい意味を理解しているつもりでも、ちょっとした落とし穴があるかも。もう一度ここで依頼退職の正しい意味をおさえておきましょう。

近年、よくみかけるニュースの一例です。こんな記事やニュース、皆さんもご覧になったことがあるでしょう。

xx県はy日、女性社員にセクハラ行為を繰り返し行ったとして、人事部x課の男性課長(51)を停職5ヶ月の懲戒処分にしたと発表した。同日付で当該課長は依頼退職した。

この種のニュースは官僚や財界・あるいは政治家に自治体職員、警察官、公立学校教師の方々が記事になっていることもしばしばあります。ネットで「依頼退職」と検索すると、公務員が不祥事で懲戒処分を受けたことを伝える記事がたくさん出てきます。このため、依願退職といえば「この人何かミスをして仕方なく辞めたんだ」というマイナスイメージを持っている人も多いのも事実です。

しかし、ここで間違っていけないのは、依頼退職は決してすべてが悪いことではないということです。むしろ、定年退職や解雇といった場合を除けば、ほとんどの退職事例は依頼退職になるとみても大げさではありません。

退職の違いや種類

まずは基本的な会社における退職の種類についておさらいしてみましょう

・自己都合退職
①従業員が退職を申し入れ、会社側の了承を得て行う退職
②従業員が退職を申し入れ、会社側の了承をとらないまま行う退職
③懲戒解雇(労働者が責任を負わなければならない理由による解雇)=クビ

・会社都合退職
①会社の倒産または店舗閉業に伴う退職
②事業所の閉鎖による退職(例:働いていた工場や支店が閉鎖された)
③解雇(人員整理など、労働者に責任を負わなければならない理由がなく行われる解雇)=クビ
④退職勧奨に応じて行う退職

依頼退職は、自己都合退職の①に該当するものですが、依願退職とは従業員の「願いに依(よ)る」退職を表現しています。したがって、従業員からの申し出によって従業員と会社が合意した上で雇用契約を解除することです。上述したようなマイナスイメージのつきまとう依頼退職ですが、こうしてみれば、依頼退職はそれほど特異なケースの退職の仕方ではないことが分かります。

依頼退職のマイナスイメージ

自己都合退職なのに、不祥事のニュース等で依頼退職という言葉が使われることに皆さん疑問をもったことはありませんか。懲戒解雇(公務員の場合は懲戒免職)でない限り、懲戒処分を受けたとしてもその職場で働き続けることは可能です。ですが、懲戒処分を受けた側からすると、不祥事を起こしたことで職場の人との関係にも悪影響が進展して居づらくなったり、昇進や昇給に悪い影響が出ることも考えられるでしょう。

会社側からみた依頼退職

では逆の視点から見てみましょう。懲戒処分を行った側は不祥事を起こした人に対して不信感や不満が募ります。本音では仕事をしてほしくないと思っているかもしれません。このような点から推察してもわかるように、懲戒処分を受けると、本人も退職にしてしまいたいような気分になります。加えて使用者側も引きとめず、退職を容認するのが一般的な傾向です。

依頼退職と法律とのかかわり?

使用者側が譲歩して、処遇を軽くする代わりに退職願を提出させる場合もあります。「本来なら懲戒解雇に相当するが、再就職に不利にならないよう、停職処分ににとどめるかわりに退職願を書いてくれ」というケースです。

懲戒解雇されると、再就職の選考で不利になるのは避けられません。しかし、自分の意思で辞めた事情や、やむを得ない理由があれば、履歴書や面接で退職理由を説明することができます。このために会社側も考慮して依頼退職にしてはどうかと勧めることがあります。

会社の保全に…

では依頼退職に「本人からの申し出」というフレーズがあるように、会社側が被雇用者に対して、このような自主性を強調するのはなぜでしょう。その一点に、依頼退職という言葉は公務員に限って使われるわけではありません。しかしながら懲戒処分を受けた公務員の退職をマスメディアに流す際、役所などは依頼退職という言葉を意識的に使っているフシがあります。

それは、公務員の「身分保障」、法律的な観点と関係しています。公務員は、法律で規定されている原因以外で、本人の意向に反して除名させられたり、免職(民間企業でいう解雇)されたりしないと定められています。公正な職務を担保するため、公務員にとって上司となる政治家(大臣や都道府県知事、市町村長など)の独断や裁断で労働の責務を奪われないようにしているのです。

よってマスメディアに公表する際には「本人の志願したことによる退職である」ということを明確にする必要があり、それを強調するために依頼退職というフレーズが使用されいるのが内情です。

エイジハラスメント=依頼退職?

会社が会社を守るために、依頼退職に導くことがあることは、上記で確認しました。しかし、あくまで依頼退職そのものがセクハラや現代で言われるエイジハラスメントが原因によるものではないことを理解しておきましょう。それには本人が次の職場や環境を目指すために退職を考える前向きな理由の依頼退職も含まれるからです。

依頼退職の場合の退職金って?

依頼退職の岐路に立っている方にとっては一番気になる部分かもしれません。「退職金は、依頼退職だと出るの?」そんな疑問もあるでしょう。はっきり言いましょう。会社に退職金制度があれば、基本的には、支給条件を満たしていれば依願退職である・ないにかかわらず、退職金をもらえます。しかしながら、支給額や退職金の算出方法、具体的な金額は会社によって変動もあるので注意しておきましょう。

依頼退職の退職金のケース

退職金の額を算出する場合、依頼退職は自己都合退職として扱われます。ここは重要な部分です。一般的に企業では会社都合退職に比べて自己都合退職の退職金は低く設定されているので、同じ勤続年数でも退職理由によって支給額に差をつけたり、会社都合退職の場合を満額として自己都合退職の場合はそこから減額したり、何らかの条件をつけるといったケースがあります。

会社の規定をチェックするべし!

現実として、勤続年数によっては退職金を一切支給しない企業もあります。1年以上勤めていれば退職金が支給される企業もあれば、10年以上たたないと退職金を支給しない企業もあるなど、こちらも企業によってわかれていきます。退職金制度がある会社で依頼退職を考える場合、会社には支給条件・支給率を定めた「退職金規定」というものが存在します。自分で行動を移す前に、確認してみるとよいでしょう。

退職金の考え方

ここまでみてきた依頼退職というの言葉のイメージを少しまとめるとすれば「会社が依願退職を募り、労働者がそれに応じる」といったようなニュアンスになります。これだけをみれば、自己都合退職かそれとも会社都合退職かは微妙といえます。ちなみに失業保険では自己都合退職と解釈されることが多いです。

ただ退職金においてはこれまでみてきたように、基本的には会社が自由に規定しても違法ではありません。それは「退職金は会社ごとに任意に規定を設定しても違法ではない」という法律があるためです。会社に迷惑をかけるような懲戒解雇や論旨解雇ではないのが合意退職というものになりますが、依頼退職も一般的にはそれに該当します。

退職金の考え方②

本来、退職金は満額支給されるような規定となっていることがほとんどだと思います。ですが前提として自己都合か会社都合かいった点が重要になります。重要なのはこの依願退職が自己都合か会社都合かのどちらに該当するのかを、会社側が明確にどう社則等で規定しているのかによります。

したがって失業保険では自己都合というように上で説明しましたが、それによる退職金でも自己都合となるという根拠にはなりません。そのため依願退職がどちらに該当するのか明示していない場合、雇用者と労働者の間でトラブルとなることもしばしばです。よって、依頼退職が自己都合か会社都合であるかは、退職金の観点から考えても会社によって様々なので一概には規定はできません。

依頼退職で退職金の手続きをする場合

まずはじめに、支給開始までには3ヶ月かかります。長いと思うか早いと思うかは人それぞれだと思います。依願退職の場合でも、失業保険を受け取ることができるのは確認しましたが、社則によっては自己都合退職として扱われます。よって支給開始までには3ヶ月程度かかることに注意が必要です。

失業保険は、離職した人が次の新しい職を見つけるまでの生活を支えるための制度ですが雇用保険に一定期間加入していれば、1日6,000~8,000円程度を上限として会社を辞めた直近半年間の給与の50~80%の給付金を受け取ることができます。

自己都合か会社都合か?

一方で、会社都合か自己都合によって手続きにも差が出てきます。社則等で会社都合で離職を余儀なくされた人の場合は求人を扱う公共施設に離職票を提出した7日後に最初の給付金が支給されるのが通例です。しかし、自己都合退職の場合は、さらに3ヶ月の給付制限がかかるので、最初の給付金を受け取るまで7日+3ヶ月かかります。大きな違いが生まれるのがわかります。

自己都合退職の場合のデメリットをあげるとすれば、会社都合退職に比べて支給期間が短いという点です。また、給付金を受けるために必要な雇用保険の加入期間も自己都合退職の方が長く設けられていますので、失業保険は退職経緯という観点から会社都合でやむを得ず離職した人に手厚い仕組みになっています。

依頼退職って何だろう?

依願退職は、労働者が退職願を提出し、会社がそれを承諾することで成立する退職の形態であることは確認してきました。これは自己都合退職の一つとして位置付けられます。その原因はセクハラや不祥事によるものがすべてではなく、次の職場を前向きな気持ちで目指す人たちにとっての、ポジティブな退職の姿であるともいえます。また退職金や失業保険の支給でも社則や会社の事情によりますが、自己都合退職として扱われるのが一般的です。

依願退職は決して悪いことではありません。しかしながら不祥事の印象や組み合わせで使われることが多いため、マイナスイメージを持っている人がいることも現実です。あからさまには人前でわざわざ依願退職という言葉を使わない方がいいかもしれません。

依頼退職を悩む

今いる会社から依願退職を打診された場合、また退職で悩んでいる方もいると思います。このようなときに労働者としてはどのような対応をすればいいのか、また依頼退職を断ったほうが良いのか、またそのまま受けたほうが得なのかも、考えても答えが出ないと思います。正解はないのですが、一つの基準としてその後どうなる場合があるのか最後に見ていきましょう。

依頼退職の背景

「会社から依頼退職を打診された!」そんなとき退職を断ればどうなるのかということですが、あまり良い結果にならない可能性が多いようです。それはその打診をされた時点で会社がその労働者に対して退職に向けた姿勢があるわけです。仮に断ったとしても、

1退職勧奨がある
2強制解雇をされる
3何らかの待遇面で不当な扱いを受ける

というような可能性は高いです。もしこのような流れが予想できるのであれば退職を受けるのか、または会社に在籍をしていくのか。自身で慎重にそのメリットとデメリットとを判断していかなければなりません。

依頼退職で迷ったら!

依頼退職で迷う点を挙げるとすれば、有給休暇や失業保険・解雇予告手当の受給など主に金銭的な項目が気になると思います。つまり、依願退職とそれ以外の何らかの退職をする場合とで、どれが自分にとって得策となるのかについて考えてみましょう。この場合、依願退職は基本的に合意退職という前提で考えます。

•有給休暇の消化は認められやすい傾向にある。
•失業保険では自己都合になる可能性あり。
•解雇予告手当の支給もないこと企業もあり。

ということが考えられます。法的には解雇であれば、

有給休暇の消化はしにくい。
•会社都合となる可能性がある。
•予告期間を会社側から設けられていれば、予告手当の支給はない。

となるでしょう。しかし会社は上述したように基本的には解雇を認めたくないところが多いです。このようにいくかはわかりませんが有給休暇は会社との話し合い次第で方向が変わったり、失業保険については会社都合であるか自己都合であるか証明が必要になったり、解雇予告についても会社側による解雇である証明が必要になります。

つまり失業保険でも解雇予告でも証明することがポイントということですが、書面で解雇であることは証明できることは実際は少ないです。多くの企業から解雇の意思を示したことを実際に声としてICレコーダーなどで記録できているかどうかが重要です。職業提案所などの担当者に、退職前に相談しておくと退職理由に関する証明や証拠のアドバイスはかなり丁寧にもらえることもあります。実際にハローワーク等にいって、専門の担当者に話をしてみるのも得策といえるでしょう。

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