有給休暇の義務化で会社が変わる?浮き彫りになる7つの問題点

働き方改革

有給休暇の義務化とは

有給休暇は、労働者に保証された権利のひとつです。海外の先進国では、上司や同僚に気兼ねなく有給休暇を使うのが「常識」なところも多く、有給休暇を使うのに気をつかったり、あるいは有給休暇を消化できないのが常態化している日本の労働環境に驚く人も少なくありません。

日本でも有給休暇の消化が義務化になりましたが、手放しで喜べるわけではありません。この記事では、有給休暇の義務化による問題点を解説していきます。

2019年4月から義務化が始まる

日本社会においては、長時間労働・サービス残業が常態化しています。そんな現状を変えるべく、近年では働き方改革が叫ばれるようになっています。

働き方改革の一環として、政府は2019年4月から、年間10日以上の有給休暇がある労働者に関して、最低でも5日の有給を消化させることが会社の義務になりました。

有給休暇の義務化の対象となるのは全ての労働者であり、正社員に限らず、アルバイトや非正規社員も含まれます。

手放しで喜べない実情

これまで、労働者は自らの権利である有給休暇を消化することが非常に難しい状態でした。有給休暇を申請すると、あからさまに上司や同僚に冷たい態度を取られることもあります。

有給休暇の消化をすることによってあなたの仕事を他の誰かが請け負うことになる可能性もあります。有給休暇の消化が義務化になれば確かに有給が取りやすくなりますが、手放しで喜べない実情があります。

一般企業の有給取得率は

先進国の中でも、日本が圧倒的に有給休暇の取得率が低いことは有名です。だからこそ、そんな劣悪な労働環境を改善すべく、有給休暇の取得が義務化されたと言えるでしょう。

厚生労働省の2018年の最新のデータによると、一般企業の有給取得率は51.1%で、これでも過去最高の数値を記録しているのですが、フランスやスペインの100%と比べると、その率は圧倒的に少なく、以前として先進国の中で最低位です。

有給休暇の義務化の問題点7つ

2019年4月から有給休暇の取得が義務化され、それに違反した企業にはペナルティが加えられることになります。

一見すると、この有給休暇の義務化は労働者にとってよいものであるように思えるでしょう。ですが、必ずしも理想通りの現実が待っているというわけではありません。法の目をかいくぐって、義務化のデメリットを阻止しようとする企業も少なくないはずです。

ここからは、有給休暇の義務化の問題点をご紹介していきます。

1:理由をつけて取得させない企業

有給休暇の義務化は、企業が使える労働者の労働時間が減るということでもあります。企業の中には、有給休暇の義務化によって生じるデメリットを解消すべく、理由をつけて有給休暇を取得させないところも出てくるでしょう。

たとえば就業規則を変更して、祝日など休日としていた日を労働日に変更し、それを有給休暇の日に指定しておくという方法を取る企業も出るはずです。

2:義務化の日数分年休を減らす企業

有給休暇の義務化の日数分、年休を減らすという方法を取る企業もあるはずです。正月休みやお盆休みなど、すでに休日として設定されている日を有給休暇にすり替えることで、有給休暇の義務化の日数分を巧妙に減らすことができます。

このような巧妙な手口は刑罰の対象とならないため、今後有給休暇のすり替えを行う企業が増えてくるものと予想されています。ただし、労働者の不利益になることが民事で確定すれば、刑罰対象です。

3:有給取得分の仕事を溜めておく企業

労働者が有給休暇を取得したことによって仕事上のロスが生じないように、有給取得分の仕事をためておく企業も出るでしょう。

有給休暇の義務化により、一応労働者は有休をとることができますが、その分、次に出勤した時に通常よりもはるかに多い仕事をこなさねれならなくなるため、かなりの負担を被ることになります。

労働者のメリットになるはずの有給休暇の義務化が、逆にデメリットになってしまいかねません。

4:義務化の日数分時間外を増やす企業

有給休暇の義務化に伴い、最低5日の有給のロスを取り戻すべく、その日数分だけ時間外労働を増やす企業も出るはずです。

有給休暇を取得することができても、出勤日に時間外労働を強いられ、さらには残業代をもらえない場合も予想されるため、労働者にとってはかなりのデメリットだと言えるでしょう。

勤務日は長時間労働をせざるを得なくなり、心身をすり減らしてしまいかねません。

5:基本給を下げる企業

有給休暇の義務化による問題点のひとつとして、基本給を下げる企業が出てくるということも挙げられるでしょう。

当然ではありますが、労働者が有休を取得している間も企業側は賃金を支払わねばなりませんが、有休が増えれば増えるほど企業側の負担となるため、これを防ぐべく、基本給を下げようとする企業も出るはずです。

そうなると労働者側は対策を講じることができず、生活に大きな支障が出てしまいかねません。

6:年末年始を有給消化にあてる企業

年末年始をもともと休日としている企業がほとんどでしょう。ですが、有給休暇の義務化による損失を少しでも抑えようとして、もとから休日であった年末年始を有給休暇としてあてる企業も増えることが予想されます。

本来ならば休日として無条件で休むことができていた年末年始を有休消化としてあてられることで、実質的に労働者が取得できる有休が減ってしまうことになりかねません。

7:有給扱いで出社させる企業

有休休暇の義務化によるデメリットのひとつとして、有休扱いにしておきながら、半ば強制的に出社させる企業が出るということも挙げられるでしょう。

労働者の自由意思にもとづくボランティア的な出社として位置づけ、タイムカードを押させずに仕事をさせることで、見かけ上は有給休暇を取得させているように装うというパターンです。

この場合は明らかな違反ですので、発覚すれば企業は刑事罰の対象となります。

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有給休暇を取得できない場合の対処法

以上でご紹介したように、働き方改革の一環として有給休暇の取得が義務化になったものの、現実は必ずしもメリットばかりではありません。

企業の中には、どうにかして有給休暇取得による損失を抑えようと、法の穴をかいくぐってさまざまな対策を講じてくるところもあります。では、有給休暇を取得させてもらえない場合はどうすればよいのでしょうか。

ここからは、有給休暇が取得できない場合の対策を解説していきます。

1:上層部に直接相談する

有休休暇を取得させてもらえない場合、まずは上層部に直接相談しましょう。上司が有給休暇の義務化の実施を知らず、勝手な判断で有休取得を阻んでいるだけの可能性もありますので、上層部に現状を伝え、その改善を要求することが必要です。

2:社内のコンプアイランス担当に相談する

もしも上層部に直訴しても状態が改善しないのならば、社内のコンプライアンス担当に相談しましょう。

コンプライアンス担当やハラスメント担当ならば、あなたの不利益にならないように問題を精査し、有給休暇が取得できるように上層部に提言をしてくれるはずです。

3:労働基準監督署に通報する

小さな家族経営の会社に勤めている場合、コンプライアンス担当者もおらず、雇用主の勝手な判断で有給休暇をもらえないというケースもあり得るでしょう。

このような場合は、労働基準監督署に通報するのがベストです。労働基準監督官は、有給休暇の義務化に違反している企業に対して警告や刑罰を与えることができます。

最終手段として、労働基準監督署にかけこみましょう。

自分の会社を見極めるチャンスである

今回は2019年4月1日からスタートした有給休暇の義務化について特集してきましたが、いかがでしたでしょうか。

有給休暇の義務化は、必ずしも手放しで喜べるものではありません。巧妙に有給休暇の日数を減らしたり、その取得を阻もうとする企業もあるからです。

有給休暇の義務化を遵守する企業であればホワイト、そうでなければブラックであると見極めることもできるでしょう。

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