車両管理規定とは
車両管理規定とは、従業員が業務中に使用する自動車などについて企業が定めるルールのことをいいます。交通会社やインフラ系の企業に限らず、業務で車を使用する企業は増加傾向にあり、それに伴い、交通事故の発生するリスクも増えています。
万が一、従業員が交通事故を起こした場合、車両管理規定の有無により、企業側の支払う賠償額が大きく異なります。車両管理規定は、現代の会社経営上必要な規定のひとつとも言えます。
法律との関係
道路交通法上では、企業は社有車の運用について各種の規則を設けることを課せられており、その内容は年々厳しいものとなっています。
民法715条では、従業員が業務中に第三者へ損害を与えた場合、その従業員だけでなく使用者側の企業も賠償責任を負うことが規定されており、交通事故を起こした場合も該当します。
ただし、車両管理規定を定め、日頃から注意喚起などの指導を行っていれば、その責任が及ばない場合があります。
車両管理規定作成のための9ステップ
車両管理規定を作成するためには、社内の安全運転を監督する人材の選定や、車両に関する規定、あるいは社有車を運転する場合のルール作りなど、いくつかの段階を踏まえなくてはなりません。
次に、車両管理規定を作成するための9ステップについて、項目ごとに解説します。
ステップ1:安全運転管理者選定
乗車定員が11人以上の車両を1台以上保有する企業、または乗車定員関係なく社有車を5台以上保有する企業は、安全運転管理者を選任することが法律で義務付けられています。また、社有車を20台以上保有する企業は、20台ごとに1人の副安全運転管理者を選任しなくてはなりません。
安全運転管理者の選考基準は内閣府令により定められており、届出を怠った場合、罰金などの罰則規定がありますので、注意が必要です。
ステップ2:車両管理台帳作成
社用車は会社の資産であり、社用車を利用して交通事故や交通違反を起こした場合は、警察にその記録が残ります。会社の資産を使用していることへの意識付けや、交通安全への啓蒙などの観点から、社用車の車両管理台帳を作成しましょう。
社用車だけでなく、できればマイカーを業務に使用した場合などにも、業務に使用したことを報告させる日報を提出させるような仕組みを作りましょう。
ステップ3:運転者資格の厳格化
交通事故が発覚した時に、運転手が更新忘れなどで実は無免許であった事例を耳にすることがよくあります。特に社有車両で交通事故が起きた時は、運転させた会社などにも責任がおよびます。運転手の運転免許証を定期的に確認することは、運転資格厳格化の一環として効果的です。
また車両管理規定の条文でも、酒気帯び運転など法的に違反となる内容は元より、体調が悪い時の運転は遠慮してもらうようにするなどを明文化しましょう。
ステップ4:安全運転確保の啓発
安全運転を行うにはどうしたら良いのかを、頭でわかっていても、実際にどのような活動をすれば良いのか分からなかったり、交通安全に対する意識が従業員ひとりひとりにずれがあり、足並みが揃わないということも少なくありません。
都道府県の安全運転協会で貸し出しでいるビデオディスクなどの視聴覚教材の利用や、会社内で交通安全委員会などを組織し、月1回の会合を行うなどの活動で安全運転確保の啓発活動を行いましょう。
ステップ5:整備点検と修理
従業員の使用する社有車は個人が所有するマイカーに比べ管理の意識が緩みがちとなり、少しくらいの異常なら見過ごしてしまうこともあります。
ちょっとした気の緩みが大きな事故へのつながることも考えられますので、車両管理規定で社有車の管理についての規定を盛り込むことにより管理の意識も強くなります。
社有車に異常があった場合の報告に関することや、運行前点検といった項目も車両管理規定で明文化しておきましょう。
ステップ6:自動車保険加入
近年の交通事故の厳罰化に比例し、交通事故に対する個人への損害賠償額も上昇傾向にあり、万が一の時のためにも、自動車保険への加入はリスク管理上重要です。
社有車両あるいは通勤で社員個人が使用するマイカーについても、自賠責保険、任意保険のいずれにも加入させるようにしましょう。
特にマイカーの任意保険については、対人対物の賠償額の目安を車両管理規定に折り込んでおくなどの、具体化も考えておくと良いでしょう。
ステップ7:社用車の業務外使用について
社用車は業務上必要な時に使用するための車両であって、業務外に使用されるべきものではありません。特に、ある程度の職位になって来ると「忙しいから」とか、「ほんのちょっとなら」という感覚で業務以外に使用することが多くなります。
業務外での使用を減らすためにも、車両管理規定で社用車の業務外使用についての規定を作成し、社用車の管理を心掛けましょう。
ステップ8:マイカーの業務使用について
社有車に限らず、従業員がマイカーを業務中に使用して交通事故を起こした場合も、規定などの存在がなければ企業に賠償責任が発生します。社有車の台数が少なく、必要があってマイカーを業務に使用すること考えられる場合、マイカーの業務使用に関する車両管理規定も必要となります。
業務中にマイカーの使用を認める場合は、使用頻度や範囲、時間などを規定に記載し、企業が車両と運転者の管理を行うようにしましょう。
ステップ9:事故時の対応規定
車両を運転する以上、交通事故のリスクから逃れることは不可能です。万が一、交通事故に遭った場合の対応手順や連絡先、あるいは報告すべき内容などを車両管理規定で明文化しておくことが重要です。特に社有車での事故の場合、相手方との示談のみでの対応は絶対にさせないようにしましょう。
警察署や会社への連絡は元より、事故の相手の連絡先や被害状況なども確認させ、交通事故の報告書を提出させるのも方法のひとつです。
車両管理効率化のポイント
交通安全を促進していく上で、車両の管理は重要な課題のひとつとなります。各々の車両の法定点検や車検、あるいは運行前点検などの日常の点検など、手間の掛かる事も少なくありません。
次に、車両運行日報や運行前点検の実施などを車両管理規定を利用し、効率良く管理していく方法について解説します。
テンプレートの使用
車両管理規定の条文をひとつひとつ考えていると、完成までに時間が掛かります。また車両運行日報も、ひな形から考えていては完成まで時間が掛かってしまいます。
車両管理規定の条文は、ビジネス文書のテンプレートサイトなどに掲載されている例文を参考に活用すると良いでしょう。また車両運行日報のひな形も、車両管理規定の条文を検索していく中で、参考になる形を活用しましょう。
社外サービスの利用
車両管理規定も就業規則のひとつなので、内容が法律的に違反していないか否かのリーガルチェックが必要となります。就業規則などの場合、社労士へその依頼をすることが多くなりますので、リーガルチェックだけでなく、車両管理規定の内容の原案の段階から相談するのも、方法のひとつです。
また、相談の場において車両管理に関する他社の方法など、他社の車両管理規定の事例を参考にすれば、規定の作成上より効率的となります。
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安全運転管理者の仕事
道路交通法の基づき、一定以上の台数の自家用自動車を所有する会社などにについて、安全運転管理者の選任が取り決められています。安全運転管理者は、社内の車両管理規定を運用しながら、従業員に対し車両の安全運転や運転手のコンディションの確認など、社内の交通安全の管理を行います。
ここでは、道交法の基づき任命される安全運転管理者の仕事にはどのようなものがあるのかについて、各項目ごとに解説します。
運転する従業員の管理
安全運転管理者には、従業員の自動車の運転に対する適性や知識、あるいは技能や道路交通法に対する理解度などについて、どのようなレベルであるかということを把握する役割があります。
会社組織にはさまざまな年齢の従業員が在籍しており、運転技術に関しても、免許の取得年数や個人の性格や技術にばらつきがあります。従業員一人一人の運転スキルを把握することで、事故防止の対策へとつながります。
運転手の健康管理
自動車の運転において、運転手の健康具合は交通安全を左右するものであり、安全運転管理者は運転手の健康管理も重要な業務のひとつです。
コンディションの不良が一瞬の判断を鈍らせ、交通事故へと繋がることも十分考えられます。安全運転管理者は、そうした事故を防ぐためにも運転手の健康状態をチェックし、場合によっては運転手の交替などの判断をする必要があります。
異常気象発生時の使用判断
重要な商談がありどうしても得意先へ行けなくてはならない、あるいは運送会社でしたら、着日指定の荷物がありどうしても届けなくてはいけないということがよくあります。とは言え、その日が台風や吹雪などで視界が悪く、自動車の運転が困難な場合も考えられます。
異常気象発生時、業務内容や顧客への対応、あるいは運転手のスキルなどを総合的に判断し、自動車の運行の可否の判断をするのも、安全運転管理者の重要な仕事です。
運転手の技術向上
安全運転管理者の選任義務のある会社などへは、各都道府県の安全運転協会などから、安全運転コンテストの案内の届くことがあります。また安全運転協会から、交通安全に対する取り組みのレポートなどの提出を求められることもあります。
安全運転管理者は、安全運転協会から上記のようなお知らせやコンテストの案内などがあった場合、情報を上手に利用し、従業員の運転手の技術向上に役立てるなどといった役割もあります。
車両管理規定を正しく行いリスク回避をしよう
交通安全の厳罰化に伴い、事故に対する責任の追い方だけでなく、事故を起こした会社などに対する世間の風当たりも厳しくなっています。車両管理規定は、社内への交通安全の促進だけではなく、万が一の時の会社および従業員に対するリスク管理に対する規定でもあります。
車両管理規定も就業規則のひとつですので、正しくかつ健全に社内運用されるものでなくてはなりません。車両管理規定を正しく定め、リスク回避に備えましょう。