ノーワーク・ノーペイとは?ノーワーク・ノーペイの適用例3つ

働き方改革

ノーワークノーペイとは?

ノーワークノーペイとは、英語単語にするとNO WORK NO PAYとなります。会社などで労働の対価として支払われる賃金の内、働いていない日数分あるいは時間分の賃金は支払われないということです。

労働者は、働いていない日や時間の賃金の請求をすることはできません。使用者は労働者に働いていない日や時間の賃金を支払う義務はありません。

ノーワークノーペイの原則とは?

ノーワークノーペイの原則とは、労働基準法24条に規定されている賃金支払いの5原則の裏返で、労働していない日や時間に相当する賃金は当然支払われないということです。

労働基準法24条に、賃金は
1.通貨で
2.直接労働者に
3.働いた分全額を
4.毎月1回以上
5.一定の期日を定めて支払わなければならない、とあります。

月固定賃金であっても、規定の労働日数や時間に満たない部分に相当する賃金の支払義務は使用者にありません。

ノーワークノーペイの適用例3つ

ノーワークノーペイの適用例として、働いていない時間や日とはどのような例があるのか、支払義務が発生しない賃金額の計算例、当該賃金の控除額の制限例の3点について、それぞれ見ていきましょう。

賃金は労働の対価として労働者が受け取るもので、労働者が働いた分については受け取る権利が発生します。逆に使用者は労働の提供を労働契約の条件のもとで受けた場合、賃金を労働者に支払う義務が生じます。

ノーワーク・ノーペイの適用例1:不就労時間分の賃金控除

不就労時間とは遅刻や早退など働いていない時間や欠勤などの日のことで、不就労時間分の賃金は、使用者にとって支払い義務はありませんので、控除できることになります。

ただし、ノーワークノーペイを適用するためには、使用者と労働者との間で就労の開始時刻と終了時刻および出勤日を取り決めておく必要があります。

使用者と労働者との間の取り決めは、労働協約や就業規則あるいは個々の労働契約で規定されることになります。

遅刻の場合

労働者が就労開始時刻に遅れて出勤した場合は、使用者は遅刻した時間分の賃金を控除できます。遅刻の原因が労働者の責任でなくても控除できます。例としては、通勤に利用する電車やバスなどの交通機関の遅れが原因の場合などです。

原則では、労働者が無過失であっても賃金控除を使用者はできることになりますが、一般的には労働者と使用者との間の取り決めで、無過失が証明された場合には遅刻としないことにすることが多いです。

早退の場合

労働者が就労終業時刻よりも早く労働をやめて早退した場合は、使用者は早退時刻から終業時刻までの間の時間分の賃金を控除することができます。早退の理由が何であろうとも使用者は早退により労働していない時間分の賃料を労働者に支払う義務はありません。

労働者が体調不良を理由に早退したり、労働者の家族に不幸が起こり急遽早退したりする場合でも、ノーワークノーペイの原則が適用されます。

欠勤の場合

労働者が病気や怪我で労働できない状態で会社を休んだ場合でも、使用者はノーワークノーペイの原則により、休んだ日数分の賃金は支払う義務がありません。遅刻や早退の場合と同じように労働者に支払う賃金から休んだ日数分の賃金を控除することができます。

労働できない状態には、病気や怪我の他に、妊産婦の産前産後の一定の期間などがあります。育児のため出勤できない場合や家族を介護するため出勤できない場合も同様です。

ノーワーク・ノーペイの適用例2:欠勤控除額などの計算方法

欠勤控除額などの計算方法は、働いた時間や日数分の賃金は支払う義務が使用者にあるのですから、支払い義務が完全に実施されるものでなければなりません。

労働基準法24条の賃金支払の原則に基づき働いた時間や日数分の賃金を全額支払ったことが明確になる計算方法であることが大事です。

計算方法は、法律で規定されているものではありませんが、ノーワークノーペイの原則どおりであると理解できるものでなければなりません。

計算基礎となる賃金

計算基礎となる賃金は、月固定賃金の場合は毎月1回一定の期日に支払われる賃金の額です。月によって変動する残業代や3ヶ月以上の一定期間毎に支払われる賞与(いわゆるボーナス)などは含まれません。

日雇労働者や出来高払制労働者やアルバイト、パートタイマーなども毎月一回一定の期日に支払われる賃金の額になりますが、ノーワークノーペイの原則が適用できるよう労働条件の内容を明らかにしておく必要があります。

賃金控除の計算式

月固定賃金の場合の賃金控除の計算式は、労働しなかった時間や日数を固定賃金額から割り戻して算出できる式にならなければなりません。具体的に計算された金額がノーワークノーペイの原則に従っていることが大前提です。

基本は、月固定賃金額を12倍したものを1年の日数365(閏年の場合は366)で除した額が1日単位賃金になります。1日の賃金を労働条件で決められた1日の労働時間で除した額が時間単位賃金になります。

計算基礎に参入できる手当

計算基礎に算入できる手当には、月固定で支払われる手当で、家族手当、住宅手当、役職手当、資格手当などが含まれます。月によって支払金額が変動しないものに限られます。

通勤手当は月固定金額になりますが、遅刻や早退の場合は、通勤のための費用が発生しているので、計算基礎に算入するのかしないのかは意見が分かれるところです。現実的には通勤定期などの購入費にあてる通勤手当は算入しないとするところが多いです。

控除時に注意すべき手当

控除時に注意すべき手当には、残業手当や3ヶ月以上の一定期間毎に支払われるボーナスなど、金額が固定されていない手当です。労働条件で決められた固定賃金には残業手当や賞与は含まれません。

金額が固定されない手当を控除時の計算に算入してしまうと、労働条件に基づき決められた月固定の賃金が膨らんでしまいます。膨らんだ賃金額で計算すると必要以上に控除されることになり、ノーワークノーペイの原則に反してしまいます。

端数処理

ノーワークノーペイの原則に則って、働いていない時間や日数に相当する賃金控除の額に端数が発生した場合は、切り捨てることになります。理由は労働基準法24条の賃金支払いの原則に基づくからです。

労働基準法24条の賃金支払の原則の一つに労働した分の賃金は全額支払うというものがあります。賃金控除額に端数が発生した場合に切り上げると、実際に働いた時間や日の賃金が切り上げた分だけ支払われないことになります。

ノーワーク・ノーペイの適用例3:賃金控除の上限について

労働基準法には使用者が月固定賃金の労働者に支払う賃金額を減額して支払う場合は、減額の限度が定められていますが、ノーワークノーペイの原則においては賃金控除の上限はありません。

上限を規定するとすると、月固定賃金額になります。全く働かなかったなら全額控除で支払額は0円です。

労働基準法の賃金減額の上限は、労働者やその家族が急に収入が減ってしまうと、生活に支障がでてしまうことを防ぐために規定されています。

懲戒としての減給の場合

懲戒としての減給の場合は、基本的にノーワークノーペイの原則とは関係のないもので、相応の減給がなされることになります。会社や使用者に損害を与えてしまった場合や就業規則など使用者と労働者との間の約束や規定に違反した場合などは損害や違反に対する罰として減給されます。

懲戒の原因が労働者の重大な過失であったとしても、一定の水準の収入を確保できるように労働基準法では減給の額の上限を規定しています。

ノーワーク・ノーペイの控除と減給の制裁

ノーワークノーペイの賃金控除と懲戒などの減給の制裁は、基本的に全く別のもので、ノーワークノーペイの賃金控除は、労働基準法24条賃金支払の原則に定められた使用者の義務と労働者の権利に基づきます。

ノーワークノーペイの場合の賃金控除は制裁ではありません。懲戒の場合の減給は懲罰制裁です。労働基準法で懲罰減給の上限が規定されていますが、不就労時間や欠勤日数に関わりなく減給が実施されます。

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ノーワーク・ノーペイの原則の例外とは?

労働者が働かなかった時間や日数分に相当する賃金を使用者が労働者の賃金から控除できるノーワークノーペイの原則にも例外があります。

労働者は働いていない時間や日があるのに、その分の賃金を受け取る権利があります。使用者は労働者が働いていないのに賃金を支払う義務があります。

ノーワークノーペイの原則の例外として、会社都合による休業・自宅待機の場合と不可抗力の場合、有給休暇による休業の場合などがあります。

会社都合による休業・自宅待機

会社都合で休業となり労働者が働ける状態であるにも拘わず自宅待機を余儀なくされた場合は、労働を提供していないにもかかわらず、労働者は休業日・自宅待機期間中の賃金相当額の6割を受け取る権利があります。ノーワークノーペイの例外です。

労働基準法は、労働者の安定した生活を守るために、会社都合の休業の場合、賃金の6割を支払わなければならないことを使用者に義務付けています。この場合の手当は休業手当といいます。

休業期間中の補償手当

労働者が業務が原因で負傷したり病気になったりして労働できない状態になり欠勤した場合は、労働者はノーワークノーペイの原則により使用者から休業手当を受け取ることができません。

しかし、使用者に加入が義務付けられている労働者災害補償保険の適用を受けて休業補償手当(賃金の6割)を受け取ることができます。

業務災害が原因の傷病で働けない休業期間中の補償手当、休業補償手当はノーワークノーペイの原則の例外です。

不可抗力による休業の場合

台風や地震などの自然災害や重大な事故など、労働者にも使用者にも責任がない不可抗力による休業の場合は、基本はノーワークノーペイの原則の適用が可能ですが、実際は労働者と使用者との間で取り決めたり、合意したりして、休業手当を支払うケースが多いです。

この場合は使用者は義務により休業手当を支払うのではなく、使用者の経済力や労働者の生活の安定を守る人道的観点から支払われています。

有給休暇の取得

有給休暇は、労働者が労働してしていない時間や日に対して使用者は賃金を支払わなければならないとされるノーワークノーペイの原則の例外の典型です。労働基準法に規定された労働者の権利です。

有給休暇は使用者にとっては労働者が希望すれば与えなければならない義務でしたが、働き方改革関連法により2019年4月以降、使用者は労働者が希望するしないにかかわらず与えなければならない付与義務になりました。

年次有給休暇とは?

年次有給休暇は、労働者が雇用された日から継続して6ヶ月勤務し、かつ8割以上出勤した場合を要件として、労働者に10日与えられる休暇で、労働基準法に規定されています。その後勤続年数1年経過ごと8割以上出勤したことを要件に加算されてゆき、1年につき最高20日まで与えられます。

法定休暇取得の場合

妊産婦の産前産後休暇や育児休暇、家族の介護や看護のための介護休業および看護休業は法定休暇と呼ばれますが、休暇を取得する権利が法定で与えられているのみで、基本的にノーワークノーペイの原則が適用されます。

法律では雇用保険法などで一定の条件を満たした場合に休暇中に給付を受けることができます。

法定外休暇取得の場合

主に使用者が労働者に与える任意の有給休暇のことをいい、慶中休暇や会社の創立記念日などが法定外休暇と言われます。就業規則や労働協約に規定されているもので、ノーワークノーペイの原則の例外です。

ノーワーク・ノーペイの原則を守ろう

ノーワークノーペイの原則は使用者や労働者にとっては当然の原則であって、それぞれの労働者の賃金を公平なものとするためにも、守られなければならない原則です。遅刻や早退をする労働者と真面目に出退勤を守る労働者に賃金に差がでるのは常識的にみて当然のことです。

懲罰的な減給とは全く違います。使用者も労働者もノーワークノーペイの原則を認識して働きやすい労働環境をつくっていきましょう。

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