残業時間の現状
残業時間は、ある意味世相を反映します。高度成長期は、一貫して労働時間が増加していました。その後バブルの崩壊や失われた20年など、さまざまなことが日本の労働環境に影響してきました。日本における労働時間は、バブル景気が終焉した1992年前後で大きく変化しています。
年代別の残業時間の変化
年代別の残業時間の変化をみてみます。日本が戦後復興を果たすため、猛烈に働いた1960年代の年間の総労働時間は平均2426時間です。現在より600時間ほど多く、これは1年中ほとんど休まず働いていたことになります。
この働きにより、1964年には東京オリンピックの開催、奇跡の復興が成し遂げられています。政府は国民の給料を10年間で倍にすると言い、夢と希望にあふれ、その約束は果たされ、むしろそれ以上となりました。
1970年代
1970年代は戦後からポスト戦後へと、時代の終わりと始まりをみせていきます。
いざなぎ景気という高度成長が、1973年のニクソンショックとオイルショックで終わります。ただ、生活水準はあがり一億総中流という社会になるものの、そのような経済界の背景から雇用不安なども続いていた時代です。
日本人の総労働時間は、1970年で2250時間前後となり、1976年には2100時間前後へ減少していきます。
1980年代
昭和50年代後半から末期、第二次オイルショック以降も4%の経済成長を達成し、日本経済は安定期と呼ばれます。そして、1987年頃よりいわゆるバブル景気に突入します。日経平均株価が史上最高値を記録した時代です。
日本人の総労働時間は、1982年ごろはおおよそ2100時間から2000時間です。一見バブル経済で雇用状況も安定していたかのようですが、一億総中流という状況は喪失し、格差社会へ変化していきます。
1990年代
1990年代は、1991年にバブル経済が崩壊し、失われた十年と表現されるようになります。
企業の倒産、不動産価格の暴落、団塊ジュニアの就職による就職氷河期とバブルのツケを払っていたような年代です。女性の社会進出とともに、非正規雇用も増え、働き方も徐々に多様化していきます。
日本人の総労働時間は徐々に減少し、1994年には1900時間、1990年代後半には1800時間に近くなります。
2000年代
バブル崩壊後からの回復がなかなか進みません。格差社会がさらに拡大し、勝ち組や負け組という言葉まで出始めます。働き方もさらに多様化し、若くても才能を発揮して財を築く人もいれば、下請けや孫請けにあたる企業のブラック化で長時間労働などの問題も出てきます。
日本人の総労働時間は、平均では少なくなり1800時間を下回るようになりますが、IT業界や福祉現場での過重労働など一部では残業が常態化します。
2010年代
スマートフォンの普及にもみられるインターネット社会がさらに普及し、働き方もネットを通じての職業が増えます。ワークライフバランスが叫ばれるようになり、労災を認められることも増え、企業側も対策を迫られ残業代の削減に向けて企業努力が求められるようになりました。
日本人の総労働時間は1800時間を下回ってきますが、長時間労働を余儀なくされている人々とワークライフバランスを保っている人々の二極化が現状です。
残業代の現状
日本の時間外労働の現状として、厚生労働相によると月に60時間以上残業している人は全体では減少傾向で1割弱ではあります。しかし、働き盛りの30代男性では16.0%と高水準が続いています。
その残業に対して対価である残業代がきちんと支払われ、有休取得もスムーズな優良企業が出てきている一方で、申請しても正当に払われなかったり、申請すらできなかったりする状態も少なくありません。サービス残業という言葉もすでに一般的になっています。
残業代削減にまつわる7つの背景
ブラック企業などもまだまだ社会問題ですが、残業代削減のためにしっかり取り組んでいる企業も少なくありません。残業代を削減するためには、残業に関する意識の改革とともに、残業がなくても業務が滞りなく進むようにする必要もあります。
残業代削減にまつわる背景1:正当な理由なく残業代カットはしない
時間外労働をしたら、それに対する対価として残業代は支払われなくてはいけません。これが支払われていないことが問題になり、サービス残業が常態化している企業もあります。
正当な理由なく残業代をカットすることは違法です。しかし、タイムカードを押させて残業させていたり、固定残業制やみなし労働時間制で残業代を削減している企業もあるのが実態です。
残業代削減にまつわる背景2:残業の理由は明確に
残業代を削減しようとあらゆる取り組みを行っても、残業代が削減できな理由の一つとして、生活のために敢えて残業をして残業代を稼いでいる人もいるという実態です。
しかし、これは企業にとっては良いことではありません。残業代を申請する際には、その残業理由を明確にして、上司の了承を得ることが必要です。ただ、残業代が必要な状況は企業風土や給与自体の低さなどの原因や、企業の管理が甘いこともあります。
残業代削減にまつわる背景3:代休制度を活用する
残業代を代休で相殺するという企業もあります。残業が8時間を超えたため、1日分の代休を取得させられ、結果的に残業した時間が無くなり残業代としては支払われないという仕組みです。
この制度が就業規則であらかじめ決められており、さらに残業代にあたる割増賃金が払われていれば問題ありませんが、代休を取得したからといって残業代にあたる割増賃金が支払われない場合は違法です。
残業代削減にまつわる背景4:業績賞与を導入する
業績賞与とは、残業代として支給していたぶんを賞与などで還元する仕組みです。月の残業時間がゼロである社員にNo残業手当を支給する仕組みを取り入れた企業もあります。
労働時間を削減するだけではなく、仕事の生産性が下がるだけということを防止するために、利益が維持できている限りは業績賞与を出すということです。ただ、個人の能力や元々の残業代などによって不平等になることもあり、導入には慎重さが必要です。
残業代削減にまつわる背景5:残業をマネジメントする
残業代が削減できないということは、管理職の管理能力、つまりマネジメント能力の不足が原因の場合もあります。管理職の人事評価に関して、部下の残業時間を入れ評価材料の一つにする方法もあります。
管理職は部下の残業時間に敏感になり、残業代を削減できるような業務改善に取り組むでしょう。また、一般社員の人事評価の中にも残業代に関する項目を盛り込み、自分で仕事の仕方をマネジメントさせる工夫も始まっています。
残業代削減にまつわる背景6:簡単な業務改善
残業代を削減するだけでは、企業の生産性が落ちるということもあります。生産性を維持しつつ、残業を減らすためにはできるだけ簡単にできる業務改善を取り入れることも必要です。
業務委託できることは外部へ委託したり、立ったままの会議、デスクを一定時間で変えてあえて落ち着かない環境を作る、有数自ら定時退社を推進して声掛けする、朝のミーティングで退社時間を宣言するなどの工夫が実際にみられています。
残業代削減にまつわる背景7:ノー残業デーを設ける
ノー残業デーを決めている企業は、徐々に増えてきました。企業が決めた曜日に、社員を一斉に退社させる方法です。社員もモチベーションもあがりリフレッシュできるという効果があります。企業も、人件費削減というメリットがあります。
しかし、反対にノー残業デー以外の日に仕事量が増えたり、結局タイムカードを押したうえで残業せざるを得なかったりということが横行している企業もあり、評価の実態は難しいところです。
企業の残業代削減を試みる理由3つ
そもそも企業が残業代削減を試みる理由は何でしょうか。とくに近年になり、残業代を削減すること、ワークライフバランスなどは強く叫ばれています。企業が残業代を削減する理由を具体的にしてみます。
企業の残業代削減を試みる理由1:従業員の健康のため
残業をすることによって食事の時間は狂いますし、睡眠時間も十分にとれない可能性があります。家事などの時間が遅くなることで、心身ともに疲弊し自分の時間がとれないことで気持ちの切り替えもできづらくなるでしょう。
このようなことが日常的に繰り返されていると、感覚が麻痺し心身に無理をかけているという自覚がないまま過労状態となっていきます。
企業の残業代削減を試みる理由2:生産性向上のため
何時間も集中して働き続けることはできません。どこかで疲れて、ミスをしたり10分でできる仕事が30分かかったりするようになります。結果として、長時間労働が続くことは良い仕事ができないということにつながるでしょう。
結局、短時間で集中して働く方が生産性が高くなります。残業代削減のために動くことによって、かえって良い仕事ができるといえます。
企業の残業代削減を試みる理由3:残業費削減のため
残業代は割増しにしなければなりませんし、残業代が高ければ企業の財政を圧迫しかねません。残業代を払うために、人を新しく雇えないということにもなります。また、残業が多いという評判は、人材そのものが遠のく結果にもなるでしょう。
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残業代削減に対する反対意見3つ
残業代削減の必要性は広く認知されていますが、残業することによって起こるメリットを感じている人がいるのも事実です。残業を削減することに対する反対意見も聞いてみましょう。
残業代削減に対する反対意見1:残業代ありきな基本給の低さ
当初より残業代をあてにしたような、基本給の低い企業があることも確かです。
生活費のために、残業代を削減されると困るという方は多いです。しかし、残業代を当て込んだ給与体系は不安定ですし、賞与などには反映されません。ただ、残業代を削減されると生活苦になる方が居るのも現状です。
残業代削減に対する反対意見2:仕事を早く仕上げられない
残業をしたいわけでは無く、仕事の仕方としてキリの良いところまで頑張りたい人もいます。
日中は営業などで出回っているため帰社してから仕事を片付けたい、日中は騒がしく集中できない方や、明日に仕事を残したくない方、仕事自体があまり手早くできないという方は残業代削減の方向に舵を切られると働きづらくなるでしょう。
残業代削減に対する反対意見3:残業することで努力を認めてもらいやすい
残業することが美徳のようにみられる企業風刺はまだあります。いつも遅くまで頑張ってくれているという評価をもらい、努力を認めてもらいやすい場合です。残業代削減の方向になると、自分の働き方を見直さざるを得ないのでやりづらくなるでしょう。
残業代削減の背景を知り働き方を見直しましょう
残業が少なくなり、ワークライフバランスを保って働き続けられればこんなによいことはないでしょう。しかし、一口に残業代削減といっても、その背景にはいろいろな要素があります。
それらを知って、収入的にも満足できるような形で、残業代削減につながる働き方を見つけていきましょう。