年次有給休暇の時季指定義務のポイント4つを紹介!年次有給休暇とは?

働き方改革

年次有給休暇の時季指定義務とは

現在の日本の労働基準法では、年次有給休暇をいつ取得するかを決められる時季指定権が従業員に与えています。しかし実際には「周りに迷惑をかけそうで休めない」とためらいを感じ、有給休暇が取得できない人もいます。

2019年、働き方改革により約70年ぶりに労働基準法が改正されました。新制度では、企業は従業員に対し、1年に最低5日の有給休暇を取得させる義務が課せられました。詳しい内容について見ていきましょう。

今までとどう変わるの?

今まで有給休暇を取得したい場合、従業員が「○月×日に休みます」と時季指定を申し出て有給休暇を取得していました。言い換えると、自ら申し出ない限りは有給休暇を取得することができませんでした。

今後は、この従業員の申出による有給休暇の取得に加え、企業側からの時季指定による有給休暇の取得が新設されます。企業が従業員に有給休暇の希望日を聞き取り、従業員の意見を尊重した上で企業が時季指定をする制度です。

いつから適用されるの?

2019年(平成31年)4月1日から適用されています。働いている方の中には、上司や担当者から年次有給休暇の時季指定について説明を受けた方もいるでしょう。

まだ有給休暇が付与されていない人の場合は、有給休暇が付与される日が基準日となり、その日から1年間が適用期間となります。例えば、入社日が4月1日の新入社員は、有給休暇が付与される10月1日が基準日となり、翌年9月30日までの1年間が適用期間です。

自分で休む日は選べるの?

基本的には自分の希望日で有給休暇を取得することが可能ですが、希望日の指定時季によっては、企業側が承諾できないケースもあります。

例えば、同じ期間に多くの従業員が休暇を取得することで、正常な事業運営が妨げられる場合などです。従業員の多くが休んでしまい、仕事が成り立たなくなってしまっては企業としても困ります。そのような場合は、企業は時季変更権を行使して指定時季を変更することができる制度となっています。

企業が押さえておくべき年次有給休暇の時季指定義務のポイント4つ

年次有給休暇の時季指定義務化は、数多くの企業や従業員に影響が及ぶ制度です。従来の制度とは異なり、企業側も積極的に従業員の有給休暇の消化に努めなければなりません。

ここからは、年次有給休暇の時季指定義務化について、企業側が押さえておくべき重要なポイントをご紹介します。

時季指定義務のポイント1:対象となる労働者

年次有給休暇の時季指定義務の対象者は「管理監督者を含む、法定の年次有給休暇付与日数が10日以上のすべての従業員」です。

時季指定義務は、企業の規模や業種、雇用形態に関わらず適用されます。つまり、有給休暇が10日以上付与されていれば、中小企業の従業員にも適用され、正社員のみならずアルバイトやパート従業員にも適用されます。

既に有給休暇を5日以上取得済みの従業員については、企業からの時季指定は不要です。

時季指定義務のポイント2:年次有給休暇を取得させるときの流れ

10日以上の有給休暇が付与された日を基準日とし、その日から1年間に5日以上の有給休暇を取得させなければなりません。

まず企業側から従業員に有給休暇の時季指定について聴き取りを行います。企業は従業員の意見を尊重し、有給休暇を取得する時季を指定します。

年次有給休暇の時季指定は、可能な限り従業員の意見を尊重するよう努めましょう。企業側が一方的に時季指定を行うことは認められないので注意してください。

時季指定義務のポイント3:年次有給休暇管理簿の作成

企業は、従業員ごとに「年次有給休暇管理簿」を作成し、3年間は保管しなければなりません。年次有給休暇管理簿には、有給休暇の取得時季、基準日や取得日数などを明記し、従業員がいつ有給休暇を取得したのかを管理しておきます。

しかしながら、年次有給休暇管理簿は重要種類には該当しないことから、誤って紛失してしまった場合でも罰則はありません。

時季指定義務のポイント4:5日以上取得できなかったときの罰則

企業が従業員に対し、1年に5日以上有給休暇を取得させなかった場合、従業員1人につき最大30万円以下の罰金が科される可能性があります。また、企業が従業員に対して時季指定をしなかった場合や、時季指定したはずの従業員が出勤した場合も同じように罰せられる可能性があります。

とはいえ、いきなり高額な罰金を請求されるわけではありません。まずは、労働基準監督署が企業に対して改善を図るよう丁寧に指導を行います。

時季指定義務化の計画的付与するための3項目

有給休暇の時季指定を積極的にするよう従業員に連絡してみたけれど、実際に従業員が有給休暇を取得できるのか分からない、と感じている担当者も多いのではないでしょうか。

ここからは、従業員に有給休暇の時季指定を計画的にしてもらう方法をご紹介します。年度初めの早い段階から計画的に有給休暇を付与することで、制度に違反してしまった場合への罰則に備えましょう。

1:事業所全体での一斉付与

1つ目は、事業所全体で一斉に有給休暇を付与する方法です。常に忙しい雰囲気の職場などでは、従業員が「休みたい」と言い出せない場合もあります。事業所全体で有給休暇の時季指定をすることにより、多くの従業員が周囲に気兼ねなく休むことができます。

事業所全体で休むことで、取引先に迷惑が掛からない時期を企業が選べるのもメリットです。トラブル防止のため、取引先には従業員が一斉に休むことを事前に伝えておきましょう。

2:チーム別の交代制付与

2つ目は、チーム別に交代で有給休暇の付与する方法です。この方法は、流通やサービス業など、一斉に休みを取りたくても難しい事業形態の場合などに有効です。

各部署や各課などでチーム分けをして交代で休みを取ることで、業務をス有数させることなく、従業員に有給休暇を取得してもらえます。あらかじめ全体で各チームが休む日を共有しておくことで、スムーズに業務が行えるように工夫しておきましょう。

3:年次有給休暇付与計画表による個人別付与

3つ目は、年次有給休暇付与計画表を用いて個人別に有給休暇を付与する方法です。従業員にあらかじめ計画表を渡し、休みたい日を記入してもらいます。

従業員は、夏季や年末年始の長期休みだけでなく、誕生日や記念日などを有給休暇に充てることができます。早い段階から計画表に有給休暇の時季指定をしてもらうことで、周囲も配慮しやすくなるでしょう。計画表に記入した日付を別日に変更する場合は、計画表も必ず修正しましょう。

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時季指定するための就業規則の改定方法

労働基準法第89条により、年次有給休暇は就業規則に規定しなければならない「絶対的必要記載事項」と定められています。このため、就業規則の変更なしに企業が年次有給休暇の時季指定を行うことはできません。時季指定を行うためには、まず会社が就業規則を改定する必要があります。

時季指定をする根拠となる条文を就業規則に入れる

企業が時季指定をするためには、就業規則に「対象となる労働者の範囲」と「時季指定の方法」の2点を記載しなければなりません。

厚生労働省の年次有給休暇取得促進特設サイトでは、「年次有給休暇の時季指定に関する就業規則の規定(例)」として、モデル条文を公開しています。どのように就業規則に記載したらいいのか困っている担当者の方はこちらを参考にするといいでしょう。

第1項又は第2項の年次有給休暇が10日以上与えられた労働者に対しては、第3項の規定にかかわらず、付与日から1年以内に、当該労働者の有する年次有給休暇日数のうち5日について、会社が労働者の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。ただし、労働者が第3項又は第4項の規定による年次有給休暇を取得した場合においては、当該取得した日数分を5日から控除するものとする。

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou…

時季指定義務についてしっかり理解しよう

年次有給休暇の時季指定義務化は、要件を満たさない人が1人でもいると、企業は法律違反に問われ、社会的な信用を失う可能性があります。

まだ始まってまもない制度ですが、企業の担当者はもちろんのこと、従業員も内容をしっかりと理解しておきましょう。

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