契約社員が社会保険に加入できる条件とは?
企業の即戦力として雇用されることが多い契約社員は、自分の得意分野やスキルを最大限に活かすことができる働き方のひとつです。
そのため正社員とは異なり、副業もできるなど自由な一面もありますが、雇用期間が定められているため、雇用が安定しにくくなります。
契約社員は短期間で職場を転々とすることも多く、社会保障への不安などもありますが、一定の条件を満たしていれば健康保険や厚生年金などに加入することができます。
有期契約労働者
契約社員の雇用形態は、有期契約労働者とパート有期契約労働者に分かれています。
有期契約労働者とは、正社員と同じく、所定の労働時間で勤務することを条件とした働き方です。また、契約期間が2か月を超える場合は、社会保険に加入することができます。
ただし、契約期間が2か月以内の場合は、健康保険については「日雇特例被保険者」となります。
パート有期契約労働者
パート有期契約労働者とは、正社員よりも所定の労働時間より短い条件で働く雇用形態です。
週の所定労働時間が20時間以上、かつ31日以上の雇用見込みがある場合は、雇用保険に加入する必要が出て来ます。
また、健康保険や厚生年金については、正社員の4分の3以上が週の所定労働時間という契約で、かつ雇用期間が2か月を超える場合にも雇用保険への加入が必要になります。
契約社員が加入できる社会保険の種類5つ
契約社員が加入できる社会保険には、健康保険・厚生年金・介護保険・労災保険・雇用保険の5つがあります。
これらの社会保険は、いずれも生活していく上で必要な社会保障制度で、ほとんどの労働者に加入する義務があります。
たとえば、毎月給料から天引きされる健康保険は病気やケガに、厚生年金や介護保険は老後や将来の生活に備えた保険です。
また、雇用保険や労災保険は、労働者の万が一の時に役立つ制度です。
狭義の社会保険
社会保険は、労働契約における一定の条件を満たしている場合に加入する義務がありますが、一口に義務と言っても「強制」と「任意」があります。
強制加入は、法人・常時5人以上の労働者がいる会社、任意加入は、常時5人未満・農林水産や旅館・サービス業などの特定業種です。
勤務先の事業形態によって、必ず加入しなくてはならない場合と、入りたくても入れない場合があります。
次に、各社会保険の概要を説明して行きましょう。
狭義の社会保険1:健康保険制度
法人、または常時5人以上の従業員がいる会社は健康保険に加入しています。そのため、その会社で常時雇用として働く従業員は強制加入となります。年齢や給料の額などは関係ありません。
一方、常時5人未満・農林水産や旅館・サービス業などの法定16業種以外で、会社が社会保険に加入していない場合は、常時雇用の従業員であっても加入することはできません。
加入できない場合は、個人で国民健康保険に加入する必要があります。
狭義の社会保険2:厚生年金保険制度
厚生年金の加入についても、健康保険と同じです。厚生年金と健康保険はセットになっていて、どちらか片方だけを選択して加入することはできません。
健康保険に加入できるのであれば、厚生年金にも加入できると認識しておきましょう。
ただし、厚生年金の加入は原則70歳までとなります。また、これらの社会保険料は、半分会社に負担してもらうことができます。
加入できない場合は国民年金に加入する必要があります。
狭義の社会保険3:介護保険制度
40歳を迎える誕生月から、介護保険の加入義務が発生します。介護が必要になった場合に、生活支援を行ってくれる社会保険制度です。
65歳以上を第1号被保険者、40歳から64歳までを第2号被保険者として年齢で区分しており、報酬額や所得などに応じて保険料が異なります。
「健康保険と国民健康保険のどちらに加入しているか」によって保険料が異なり、社会保険に加入している場合は、会社が保険料を半分負担してくれます。
広義の社会保険
社会保険の中には、健康保険・厚生年金・介護保険などの公的社会保険のほかに、労災保険や雇用保険といった労働保険があります。
いずれも社会保険に変わりはありませんが、労働保険は労働者のために設けられた制度です。
労災保険や雇用保険には、健康保険や厚生年金・介護保険の社会保険では補うことができない、さまざまな生活保障・支援が含まれています。
続いて、労災保険と雇用保険の概要を詳しく説明していきます。
広義の社会保険4:労災保険制度
労災保険は、労働者が業務上や通勤中に病気やケガなどをした場合や万が一に備えて労働者の生活などを保護するための保険です。
雇用形態・業種・規模を問わず、労働者を1人でも雇用していれば加入しなくてはならない社会保険です。ただし、農林水産の一部の事業は除きます。
時短勤務であるアルバイトやパート・契約社員であっても、会社が加入しなければなりません。会社が従業員を加入させていない場合は違法となります。
広義の社会保険5:雇用保険制度
雇用保険は、労働者が失業または病気により働けなくなった場合などに、生活や雇用の安定を確保するための社会保険です。
アルバイトやパート・契約社員でも、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上の雇用見込みがある場合は加入する必要があります。
また、雇用保険は会社と従業員の双方が一部負担する形で折半ではありません。規定の料率に基づき試算され、給料から天引きされます。労災保険は会社が全額負担です。
社会保険の加入手続きのポイント4つ
アルバイトやパート・契約社員など、雇用形態がどのような形であっても、従業員を雇用したら社会保険や労働保険の手続きが必要になります。
総務部や人事部などで手続きを行ってくれるので、ほとんど自身で行う手続きはありませんが、手続きには提出する書類の作成や準備が必要です。
また、国民健康保険などから社会保険へ加入する場合はすべて自分で手続きする必要があります。
入社時に必要な書類・手続きについてまとめています。
社会保険の加入手続きのポイント1:必要書類
社会保険の加入手続きにおいて入社時に必要な書類には、年金手帳・雇用保険被保険者証やマイナンバーがあります。
年金手帳は、本人と配偶者がいる場合は、配偶者の分も必要です。紛失した場合は、再交付しておきましょう。
雇用保険被保険者証は、前職で雇用保険に加入していた方のみ必須の書類です。
マイナンバーは配偶者が国民年金第3号被保険者となる場合に必要ですが、扶養家族がいる場合は家族分、提出する場合があります。
社会保険の加入手続きのポイント2:提出先・期限
社会保険の加入に必要な書類が揃ったら、健康保険・厚生年金被保険者資格取得届を、年金事務所または健康保険組合に提出します。
健康保険や厚生年金の社会保険手続きは、雇用開始から5日以内が提出期限となっています。期限を過ぎると無保険となるため注意しましょう。
また、国民健康保険などから社会保険へ加入した場合の期限は14日以内です。そのまま放置しておくと重複して支払うことになるので、忘れずに手続きしましょう。
社会保険の加入手続きのポイント3:手続きにおける注意点
社会保険に加入する時の注意点は、必要な書類の提出と期限を守ることです。
社会保険の手続きは期間は雇用開始から5日以内、雇用保険被保険者証は、雇用した日の翌月の10日までです。
期限までに必要書類を添えて提出する必要があります。紛失した、見当たらないでは手続きを進めることはできず、保障だけでなく、手続きがややこしくなり会社にも迷惑がかかります。
特に、退職時の書類の取り扱いには注意しましょう。
社会保険の加入手続きのポイント4:住所変更時の手続き
健康保険や厚生年金保険などの社会保険に加入している会社は、従業員が引っ越しなどで住所が変わった場合、住所変更の手続きをとる必要があります。
マイナンバーと基礎年金番号の紐づけが行われている場合には必要ありませんが、住所変更をしていないことで、本人と見なされず年金が未払いとして取り扱われる場合があります。
それを確かめる「ねんきん定期便」も届かなくるので、住所が変わったら必ず申告しましょう。
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契約社員のメリット4つ
契約社員は、自分の得意分野やスキルを活かしてフリースタイルで働くことができる雇用形態です。また、即戦力として会社から求められる人材が多いため、給料も悪くありません。
自分の時間を有効に使いながら働きたい方や、自分の能力を活かせる職場で働きたいという方にピッタリの働き方です。
続いて、契約社員のメリットについてご紹介しましょう。
契約社員のメリット1:自分のスキルを最大限に活かせる
契約社員として働くことの最大のメリットは、自分のこれまでの経歴や知識、経験などをフルに活かすことができることです。専門的な分野に集中して働くことができます。
また、終身・定年雇用ではないため、さまざまな会社で働くことができますので、視野が広がるだけでなく経験も積むことができます。
また、雇用期間が設けられているため、計画的に働くことができ、スキルアップを目的・目標とした働き方も可能です。
契約社員のメリット2:プライベートを大事にできる
契約社員は、有期労働契約の場合、正社員と同じ労働時間で働くことができます。しかし、正社員と違って、割り切った働き方ができます。
業種や職種、雇用契約の内容にもよりますが、ほとんど残業が発生しないと言われています。
そのため、仕事帰りに趣味や習い事に行く時間を確保することもできます。また、家族との時間を有効に使うなど、仕事とプライベートをしっかりと分けた、充実した日常が送りやすい環境です。
契約社員のメリット3:副業が可能
契約社員には、正社員のように「副業禁止」という縛りはありません。仕事終わりや休みの日に、アルバイトやパートなどの掛け持ちが自由にできます。
「同僚に見られたらどうしよう」などと、会社にバレないようにコソコソする必要もなく、堂々と別の場所で働くことができます。
1つの仕事の責任を果たしてさえいれば、気兼ねなく楽に働くけますので、働きたいと思った時のチャンスを見逃すことがありません。
契約社員のメリット4:人間関係が固定しない
契約社員は、雇用期間が決まっているため、同じ会社で働くことはほぼありません。割り切って働くことができる分、あまり職場の人間関係に悩み、振り回されることもありません。
煩わしい付き合いがなく、仕事は仕事と割り切ったお付き合いをすることができます。
職場の人との付き合い方によっては、色々な会社で働くことができるというメリットを活かし、自分を売り込んで人脈を広げることができます。
契約社員のデメリット4つ
ここまで、契約社員のメリットを見て来ましたが、「なんだか契約社員って良さそう」と感じている方も多いのではないでしょうか。
確かに契約社員は、自分に合った働き方が選択できるという意味では自由です。魅力的な部分はたくさんありますが、必ずしも良いことばかりではありません。
続いて、デメリットについてもしっかりと確認して行きましょう。
契約社員のデメリット1:長期雇用は難しい
契約社員は、基本的に契約期間が定められています。更新がなければ、再就職先を考えなければならないなど、常に不安を感じながら業務をしていかなければなりません。
そこで、契約社員として5年間更新された人は、無期契約社員に変更できる法律ができました。
平成25(2013)年4月1日以降に開始した有期労働契約の通算契約期間が5年を超える場合、その契約期間の初日から末日までの間は無期転換の申し込みをすることができます。
契約社員のデメリット2:退職金が出ず賞与も少なめ
契約社員は、会社にもよりますが、基本的に退職金はありません。契約社員が雇用期間内に退職することが、原則認められていないためです。
そのため、退職金制度を導入している会社でも、正社員のみが対象といった場合が多いです。
また、ボーナスについても、支給されないことが多く、支給されたとしても正社員と同じ額をもらうことはできません。雇用契約時の契約内容により異なりますので、しっかりと確認しましょう。
契約社員のデメリット3:福利厚生が充実しない
契約社員は、健康保険や厚生年金、労働保険などの社会保険には加入することができますが、福利厚生制度は使えない場合が多いです。
有給休暇や育児休暇、アニバーサリー休暇やバースデー休暇、確定拠出年金といった、会社が独自で導入・完備している福利厚生制度は、使用できない場合が多いです。
ただし、全く使えないというわけではなく、正社員と異なる条件で使用できる場合もありますので、確認が必要です。
契約社員のデメリット4:出世できない
契約社員の場合、即戦力として雇用されていることが多く、また雇用期間が定められているため、会社内でのキャリアップは望めません。
自身の経験や実績、スキルアップのために働くことは可能ですが、評価制度を設けている会社だとしても、昇格は難しいです。
契約社員は仕事ができても権限がなく、立場は正社員の方が上になりますので、出世を考える場合は期間満了を待って、別の会社に転職するという選択になります。
契約社員の社会保険加入は義務である
社会保険の加入は、たとえ契約社員であっても、一定の条件を満たした場合は加入しなければならない保証制度です。
そのため、有期労働契約の場合であれば、ほとんどの社員が加入する義務がある制度です。就職の際には、契約社員が加入できる社会保険や労働保険の知識を正しく理解し、保障や制度を正しく活用しましょう。