休業手当とは
休業手当は、勤務日でありながら会社側の責任や都合で働けず休んだ場合に会社から手当が支払われる制度で、労働基準法の第26条に定められています。休業手当は平均賃金の60%以上の支払いが義務付けられています。
会社側の責任で発生する休業には、経営悪化による仕事量の減少によるものや原材料の不足による休業などがあります。休業手当は会社が休業した時の手当と考えると良いでしょう。
年次有給休暇との違い
休業手当は年次有給休暇とは違います。年次有給休暇は労働基準法の第39条に定められた労働者の権利で、年間に何日間か定められた日数を休んでも賃金が支払われる制度です。
休業手当が会社側の理由によって休むのに対して、年次有給休暇は労働者の都合で休むものでその理由の内容は問われません。休業手当が平均賃金の60%以上に対して、年次有給休暇は100%が支払われます。
休業補償との違い
休業手当は休業補償とも違います。休業補償は労働基準法第76条に定めがあり、業務によるけがや病気の治療のために会社を休む時は平均賃金の60%を支払うとされています。
休業手当が本来の出勤日について支払われるのに対し、休業補償は会社の所定休日も含めて支払われます。また、休業手当は所得税が課税されますが、休業補償は課税されません。なお、天災など会社が回避できない原因によるけがなどについては適用されません。
休業手当の計算方法
休業手当は平均賃金の60%以上とされていますが、正確な計算方法を見てみましょう。平均賃金も月給と日給月給の場合では計算方法が異なります。また、所定労働日数に含まれない休日などを差し引いて計算する必要もあります。
休業手当は所得税の対象にもなりますし、正常に働けない場合の貴重な収入です。支払われた休業手当が正確な金額なのか、計算して確認することも大切です。
平均賃金×60%×所定労働日数
休業手当の計算では、平均賃金×60%×所定労働日数の計算式が最低限の金額を示します。労働基準法での平均賃金への掛率が60%以上ですから、60%が最低ラインです。
60%以上と言っても、80%、100%にしている会社の例はほとんどありません。60%として計算する時に端数処理をする必要はありませんが、平均賃金については小数点第3位以下を切り捨て、手当総額は小数点以下を四捨五入して計算するのが一般的です。
平均賃金の計算方法
平均賃金の計算方法は、月給の場合と日給、あるいは時給の場合とでは異なります。
月給の場合は、直近の3カ月間の賃金をその期間の総日数(休日も含めたカレンダー上の日数)で割って計算します。賃金が日給あるいは時給の場合は、直近3カ月間の賃金総額をその期間の労働日数で割って計算します。
小数点第3位以下を切捨てて平均賃金を計算するのが一般的です。
所定労働日数の計算方法
所定労働日数は、休業手当の支払い対象となる日数のみを計算します。公休日や就業規則で休日としている日および代休日などは休業手当の対象にはなりません。
その他、産休や育児休業、介護休業、労災などによる休業など、休業手当以外の手当が付与される日数も除外して所定労働日数を計算します。
休業手当は毎月、所定の賃金支払い日に支払うこととされていますので、平均賃金や所定労働日数も月ごとに計算する必要があります。
休業の種類5つ
休業手当が支払われる休業は、会社側の責任・理由による休業ですが、その他の理由によっても手当が支給される休業があります。産休や育児休業などがよく知られていますが、それらのなかから5種類の休業を紹介します。
それぞれ、休業と認められる期間や条件、手当の額などが定められていますので、手当の額などを計算する時などの参考にしてください。
休業の種類1:業務上の負傷・疾病の療養をするため
業務上の負傷・疾病のために休む場合、労働基準法では休業とされていて、就業規則などで定めがない限り賃金は支払われません。このような場合、労働者災害補償保険法で労災保険から休業補償などが受給できます。
休業初日から3日目までは会社が平均給与日額の60%を補償する義務があり、それ以降は労災から休業給付と休業特別支給金として給付基礎日額の80%が給付されます。給与基礎日額は直前3カ月の1日当りの賃金額です。
休業の種類2:産前産後の休業
出産については産前が6週間、産後が8週間、休業を請求できることが労働基準法第65条に定められています。いわゆる産休です。その期間、ほとんどの会社で給料の支払いはありませんが、健康保険から出産手当金と出産育児一時金が支給されます。
出産手当金は日給×2/3×産休の日数で、日給は年収を12で割った標準報酬月額を30で割った金額です。出産育児一時金は子供一人につき42万円が標準です。
休業の種類3:使用者の責任となる理由による休業
使用者の責任となる理由による休業の場合は、使用者である会社が休業手当の支払いを義務付けられている休業です。具体的には次のような理由による休業があります。
・不景気による操業停止、一時帰休
・取引先などの業績悪化による連鎖的な休業
・原材料不足による休業
・機械・設備の故障による休業
・監督官庁の勧告による操業停止、など
休業手当は平均賃金の60%以上の支払いが義務付けられています。
休業の種類4:育児休業
育児休業は、産後8週間から1歳まで、条件を満たせば1歳半あるいは2歳まで会社を休める制度で、育児介護休業法に定められています。この期間、雇用保険から育児休業給付金が給付され、3歳になるまで児童手当の支給もあります。
育児休業給付金は、6カ月目までが標準報酬月額の67%、6カ月目以降が50%と計算されます。ただし上限額が285,621円です。児童手当は子供一人につき1カ月15,000円です。
休業の種類5:介護休業
介護休業は、要介護状態の配偶者や父母、子供、配偶者の父母がいる場合に育児介護休業法で認められている休業です。通算93日まで、分割して3回まで取得することができ、雇用保険から介護休業給付金が支給されます。
介護休業給付金は、休業開始時賃金日額×支給日数×67%で計算され、正確な金額はハローワークに提出する雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書により算出されます。支給上限額は312,555円です。
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休業手当支給の事例3例
休業にはいろいろな休業があることが分かりましたが、会社の責任・理由による休業手当が支給される休業には具体的にどのようなものがあるのかを見てみましょう。
不景気や業績悪化による操業中止や設備の故障などによる休業などは分かりやすい事例ですが、採用内定者や派遣社員などにも起こりえるやや特殊な事例を3つ紹介しましょう。
休業手当支給の事例1:採用内定者
新卒などで採用が内定している人に対して、会社の業績が不振なので出社せず自宅待機を命じた場合は、会社の都合で休業させたことになりますから会社は休業手当を採用内定者に支払わなければなりません。
一旦仕事を休み、必要な時に仕事に戻る一時帰休の場合も同様で、会社に在籍して労働契約が継続している場合は、休業期間分の休業手当を支払わなければいけないことになっています。
休業手当支給の事例2:午前勤務
会社の都合で、午前中は勤務したけれど午後は働けなくなることもありえます。この場合は、その日分の賃金が平均賃金の60%以上であれば休業手当の支払いの必要はありません。60%未満だった場合はその差額を休業手当として会社は支払わなければなりません。
午前、午後という区切りに関係なく、10時まで働いた時とかの場合も60%以上の賃金かどうかで休業手当支払いの有無が変わってきます。
休業手当支給の事例3:派遣社員
派遣社員で派遣先の会社で会社の都合で休業になってしまった場合はどうでしょうか。派遣社員の場合、仕事量が少ないから休むように指示されたり雇用を打ち切られたりすることはあり得ることです。
このような場合、派遣社員は休業手当の支給を受けることができますが、休業手当の支払い義務があるのは派遣先起業ではなく、派遣元企業のほうです。派遣社員は派遣元企業に休業手当、あるいは別の派遣先などを求めることができます。
複雑な休業手当をきちんと理解しよう
休業手当は、支給される条件や平均賃金などの計算方法も複雑なのできちんと理解しましょう。会社都合の休業手当を支給されるような事態は避けたいことですが、もしそのようなことになった時には、その手当の正当性を必ず確認することをおすすめします。
産休や育児休業、介護休業などもそれぞれ計算方法が異なります。これらの手当も生活に支障をきたさないための大切な収入になりますので、金額などの確認を確実に行ないましょう。