出勤時間と始業時間の違いとは?
会社に出勤する「出勤時間」と業務が始まる「始業時間」は、言葉も似ており、時間的にもあまり違いがない場合が多いですが、賃金が発生する労働時間を計算する場合には大きく違ってきます。
賃金が発生する労働時間は「始業時間」からと考えられがちですが、実は「出勤時間」から計算されています。
ですから、正しい賃金を受け取るための労働時間を計算するには、「出勤時間」と「始業時間」の違いを知ることが必要となります。
出勤時間
「出勤時間」とは、「始業時間」から業務をおこなうために勤務先へ出てきた時間のことです。単に勤務先へ到着しただけならば、労働時間とはなりません。
ですが、始業時間以前に準備が必要であったり、始業時間以前に業務をはじめなければならない場合は、始業時間以前に労働を開始したことになります。業務が発生した時点が、始業時間以前であっても、賃金が発生する労働時間にあたる「出勤時間」となります。
始業時間
始業時間とは、業務を開始する時間のことです。始業時間は、出勤時間よりもわかりやすく確認することができます。始業時間を知らせるチャイムが鳴るという会社もあるでしょう。ですが、会社の就業規則や雇用契約書を確認するのが確実です。
会社の就業規則に定められている、勤務時間の開始時間が「始業時間」です。たとえば、勤務時間が9:00~18:00の会社であれば、始業時間は、9:00となります。
出勤時間と始業時間の間は休憩時間ではない
勤務先への到着時間を早めにして、始業時間までの間を休憩時間のように過ごしている方も多くいます。新聞を読みながらコーヒーを愉しんだり、同僚と雑談をしたり、資格試験の勉強にいそしんだりという方もいるでしょう。
こういった時間は、賃金が発生する労働時間に含まれません。そのため、出勤時間と始業時間の間が休憩時間となることはありえません。
出勤時間と始業時間の間が労働時間となるポイント3つ
出勤時間と始業時間の間が労働時間となるには、出勤時間を明らかにする必要がでてきます。始業時間は就業規則などで確認できるのですが、出勤時間をどこから開始とするかは、あいまいです。
労働基準法では、「出勤時間」と「始業時間」の間が労働時間となる条件は定義されていませんので、最高裁判所の判例を参照することになります。「三菱重工業長崎造船所事件(平成7年 (オ) 2029)」が有名な判例です。
出勤時間と始業時間の間が労働時間となるポイント1:使用者の指揮命令下であるか
判例を参照すると、労働時間は「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」とされています。つまり雇用主の監督下にある、具体的に言えば、上司の指示で業務を行っている時間が労働時間です。
上司に出勤時間を指示された場合は、その「出勤時間」と「始業時間」の間が労働時間となります。
実際の現場では「指揮命令」は曖昧になることも多いですが、使用者の指揮命令下に置かれている時間が労働時間となるのが原則です。
出勤時間と始業時間の間が労働時間となるポイント2:作業準備として法令で定められているか
判例を参照すると、労働者が使用者から義務付けられた準備を行った時間は、「使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができる」とされています。
使用者から義務付けられた作業準備を開始した時間が「出勤時間」となり、そこから「始業時間」までの間が労働時間となります。作業の準備であっても、義務付けられているわけではないものなど、使用者の指揮命令下に置かれているとは言えない場合は労働時間とはなりません。
出勤時間と始業時間の間が労働時間となるポイント3:仕事上で必然的に付随する行為であるか
判例を参照すると、労働者が使用者から準備を義務付けられた場合以外にも、これを余儀なくされたときは、「使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができる」とされています。
業務を行うにあたって必然的に不随する行為であれば、その行為を開始した時間が「出勤時間」となり、そこから「始業時間」までの間が労働時間となります。付随する行為であっても必然的な行為でない場合は、労働時間とならない可能性があります。
労働時間になる始業時間前の行為3例
労働時間になる始業時間前の行為1:義務付けられた始業時間前の朝礼
「始業時間」の前に行われる朝礼への参加を義務付けられている場合は、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と考えられますので、その開始時間が「出勤時間」となり、「始業時間」までの間が労働時間となります。
ですが、特には義務付けられておらず個人の自由参加で行われる朝礼や希望者同士で自主的に行う朝の打ち合わせ会などの場合は、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」とは言えないため労働時間とはなりません。
労働時間になる始業時間前の行為2:義務付けられている制服への着替え
「始業時間」の前に行われる制服への着替えは、義務付けられている場合は、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と考えられ、その開始時間が「出勤時間」となり「始業時間」までの間が労働時間となります。
ですが、特には義務付けられておらず、任意での着用が認められている制服への着替えや制服通勤が認められている場合などでは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」とは言えないため、労働時間とはなりません。
労働時間になる始業時間前の行為3:現場へ向かう時間
「始業時間」よりも前に、現場へ向かう指示が上司からあった場合などは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と考えられますので、その開始時間が「出勤時間」となり「始業時間」までの間が労働時間となります。
ですが、ふだんの勤務先はもちろん、別の事業所へ向かう場合でも、始業時間に出勤するための時間は通勤時間となり「使用者の指揮命令下に置かれている時間」とは言えないため、労働時間とはなりません。
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始業時間より早く出勤する「早出」とは?
始業時間より早く出勤することを早出と言います。業務上の必要に応じて早出をしている場合以外にも、早出が常態化してしまっている場合もあります。
本人に任せておくのではなく、会社側としても必要な早出かを確認しておくべきです。
早出社員に対する会社側が取るべき対応
まずは早出社員が、どのような目的で早出をしているのか、理由を確認しましょう。そのうえで、業務上必要か判断し、不要であれば注意指導しましょう。
朝早くから熱心に業務に取り組んでいるようだからと、注意しづらい場合もあります。ですが、見て見ぬふりをしていると、暗黙の了解で許可しているということにもなりえます。必要な早出は、ねぎらい、不必要な早出は一刻も早くなくしていくことが得策です。
早出の理由を聞く
早出をしている社員がいたら、会社側としては、まずは理由を聞いて状況を把握しておくことが重要です。
「イベントの準備のために早出した」など、指揮命令の下に早出をしていることがわかる場合はよいのですが、毎日のように早出をしているようであれば問題が隠れている可能性があります。
仕事量が本人のキャパシティを超えて多すぎるため、早出しないと終わらないなど業務上の意外な問題が見つかることもありえます。
業務上の必要性を判断し注意指導
早出をしている本人は必要だからしているのでしょうが、会社側として、業務上で本当に必要な早出かを判断し、注意指導することも重要です。早出はあくまで、やむを得ず必要になった際に上司の指示で行うものと考え、業務の状況を本人と一緒に見直してみましょう。
業務に問題があるのではなく、早朝から仕事を始めるのが向いているということなのであれば、「フレックスタイム制」を導入している会社で働くという選択肢もあります。
黙示の労働時間にしない
会社側として、問題がありそうだと考えながらも、黙って見過ごしてしまうと、黙示に早出の指示を出しているとみなされることがあります。
言い出しにくいからと放置していると、本当に業務に必要な早出なのかよくわからないままに、残業代の支払いをめぐったトラブルにまで発展することもありえます。
本当に業務上必要な早出なのであれば、会社側もしっかりと理解し、「朝早くから、ありがとう」と気持ちよくお願いしましょう。
出勤時間と始業時間を理解しよう
出勤時間と始業時間の間が労働時間となることを理解することで、給料に違いが出てくることがあります。1日ではわずかな違いですが、1か月や1年となれば大きな差です。
出勤時間と始業時間の違いを理解できたら、働いた分の労働時間を正しく申告しましょう。