短時間正社員の社会保険はどうなる?短時間正社員の目的5つを紹介

働き方改革

短時間正社員とは

短時間正社員といえるには、第1に、フルタイム正社員と比較して、1日の所定労働時間が短い正規型の社員である必要があります。

ここにいう所定労働時間とは、労働契約において設定された労働時間を意味しています。

これに加え、第2に、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結していること、及び、基本給や退職金等の算定方法が同種のフルタイム正社員と同等であることのいずれの要件をも満たすことを要します。

フルタイム正社員との違い

フルタイム正社員は、使用者と無期労働契約を締結しています。また、短時間正社員も正社員であるため、使用者と無期労働契約を締結しています。

しかしながら、短時間正社員はフルタイム正社員と比較して1週間の所定労働時間が短いで社員です。したがって、所定労働時間の長さという点につき、フルタイム正社員と短時間労働者は異なります。

このほか、社会保険制度の適用要件も相違があります。

パートタイマーとの違い

通常「パートタイマー」は、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者(フルタイム労働者)に比べて短い労働者」を指します。

よって、所定労働時間がフルタイム正社員よりも短い点について、短時間正社員とパートタイマーは共通点があります。

しかし、労働契約の有期・無期については、パートタイマーと短時間労働者との間で違いが生じることがあるほか、社会保険制度についても違いがあります。

雇用形態所定労働時間労働契約の期間の定め
フルタイム正社員1日8時間、週40時間程度無期
パートタイマーフルタイム正社員よりも短い有期・無期
短時間正社員フルタイム正社員よりも短い無期

短時間正社員の社会保険について

短時間正社員に社会保険を適用する要件は、通常のフルタイム正社員や、パートタイマーとは異なります。以下、社会保険制度について概観する前に、社会保険という概念について前置きしておきます。

社会保険は、通常、健康保険・厚生年金保険・雇用保険などを総称したものを意味します。しかし、以下に見る社会保険は、雇用保険を区別するため、健康保険・厚生年金保険の2つの総称を社会保険として扱います。

社会保険を適用する要件

短時間正社員が社会保険を適用される要件は、通常の正社員が社会保険を利用できる要件とは異なり、緩和されています。

就業規則等に、短時間正社員に係る規定があること、期間の定めのない労働契約が締結されていること、時間当たりの基本給及び賞与・退職金などの算定方法が同一事業所に雇用される同種フルタイムの正規型の労働者と同等であることの3つの要件を満たす必要があります

社会保険の適用要件
パートタイマー1日または1週間の所定労働時間と、1ヶ月の所定労働日数が通常の者の4分の3以上
短時間正社員第1に、労働契約、就業規則、給与規定などに、短時間正社員に係る規定があることに加え、期間の定めのない労働契約が締結されていること。第2に、給与規定などにおける時間当たりの基本給・賞与・退職金などの算定方法等が同一事業所に雇用されるフルタイム正社員と同等であること。第3に、就労実態も諸規程に則していること。※パートタイマーの社会保険制度と異なり、所定労働時間の制限がない点で、適用要件が緩和されている)

雇用保険を適用する要件

雇用保険は、所定労働時間が週20時間以上であり、31日以上の継続雇用が見込まれる労働者に対して適用されます。短時間労働者であっても、この労働者に該当すれば、雇用保険の適用があります。

社会保険の場合と異なり、所定労働時間が週20時間以上であることが必要であることには注意を要します。

社会保険や雇用保険の適用要件については以上です。以下では、短時間正社員の目的やメリットについて見ていきます。

短時間正社員の目的5つ

以上、社会保険制度について見てきましたが、ここでは短時間正社員制度の目的についてみていきます。

短時間正社員制度の目的には、育児・介護支援、モチベーションの向上、キャリア支援、健康不全への対策、シニア活用など、導入する企業によって様々なものがあります。

短時間正社員の目的1:育児・介護支援

育児・介護に時間を割いている人がフルタイム正社員として働くのは困難です。しかし、短時間正社員なら、所定労働時間がフルタイム正社員よりも短いですから、その短くなった時間の分を育児・介護にあてることができます。

これにより、育児や介護をしながら就業を継続することが可能となり、社員の離職を防止することができます。

短時間正社員の目的2:モチベーションの向上

短時間正社員制度を企業が導入することで、「多様な働き方」を企業側から推奨することができます。例えば、無期雇用として雇用することで、パートタイマーにキャリアアップの期待を与えたりすることができます。

また、フルタイムで働くことを望まない高齢者のニーズにも応えることができます。これらにより、パートタイマーや高齢者のモチベーションを上げることも可能です。

短時間正社員の目的3:キャリア支援

短時間正社員制度を導入し、「多様な働き方」を企業側から推奨することで、企業側が社員のキャリア支援をすることができます。例えば、大学・大学院に通ったり、資格取得のためのスクールに通う時間など、キャリアアップのために労働者が使える時間が取りやすくなります。

これにより、労働者は働きながらキャリア向上を図ることができ、会社にとってもスキルアップする見込みのある社員に働いてもらいやすくなります。

短時間正社員の目的4:健康不全への対策

健康不全による休職から復帰した労働者は、復帰して間もない時点では、どの程度の仕事をすることができるかについて分からないことが多いですから、労働者・使用者双方にとって、職場復帰した労働者をいきなりフルタイムで就労させることにはリスクが伴います。

短時間正社員制度は、どの程度の仕事が可能かなど、社員の状況を確認しながら労働時間を調節することが可能となり、健康不全への対策をより容易にすることができます。

短時間正社員の目的5:シニア活用

シニア人材は、体力の低下に伴い、フルタイムの労働を苦にして離職する者も多いです。そこで、労働時間を短く設定する短時間労働者制度を採用することで、シニア人材が離職することを防ぐことができます。

また、フルタイムではない分、シニア人材の労働生産性の損なわない時間だけ働いてもらうこともでき、これによって企業全体の労働生産性が確保されます。

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短時間正社員のメリット4つ

次に、短時間正社員のメリットについて見ていきます。前述した社会保険制度の適用要件が、フルタイム正社員やパートタイマーの社会保険制度よりも緩和されている点は、短時間正社員からみたメリットの1つです。

しかし、短時間正社員制度のメリットは、社会保険だけではありません。また、使用者側にもメリットがあります。以下では、代表的な4つのメリットについて概観します。

短時間正社員のメリット1:優秀な人材の確保

短時間正社員制度を導入している企業は、個々の社員に対する融通の高さや、ワーク・ライフ・バランスへの配慮が行き届いている企業であるとの印象を就職・転職活動者に与えますから、社会保険の適用要件の緩和と相まって、優秀な人材に対する有効なアピールとなります。

したがって、短時間正社員制度の導入は、優秀な人材の確保の安定的な確保にとって重要といえます。

短時間正社員のメリット2:生産性の向上

短時間正社員制度を採用して労働時間を短くすることによって、社員のモチベーションの維持や、社員の体力の低下を抑えることができます。これによって、労働生産性の低下を抑え、むしろ向上させることができます。

短時間正社員のメリット3:ワークライフバランスの推進

労働時間を短縮することにより、より労働者はより多くの時間を確保することができます。短時間正社員制度により、正社員でも空いた時間をボランティア活動や自身の趣味の時間に充てることができ、ワークライフバランスをより確保しやすくなります。

短時間正社員のメリット4:法令改正への対応

改正労働基準法が、今年の4月に施行されました。これにより、時間外労働の上限規制、年次有給休暇の付与義務が使用者側に課されることになります。

短時間正社員制度を採用することで、より多くの労働者を確保することができるため、これら法令改正により受ける影響を抑えることが可能です。

短時間正社員のデメリット3つ

短時間正社員制度には、社会保険の適用緩和や、前述の5つのメリットのように、ポジティブな要素ばかりでなく、デメリットや課題もあります。以下では、その中から、社員・世間の認知が低いこと、家族の協力が必要であること、責任が重くなることの3つを取り上げて概観します。

短時間正社員のデメリット1:社内・世間の認知が低い

短時間正社員制度は、労働時間が短縮されています。

しかし、フルタイム正社員と同様の仕事量・内容を課してしまい、制度を形骸化させてしまったり、仕事内容が、補助的・定型的なものに限られてしまったり、短時間正社員制度というだけで定型的に社内や顧客、取引先の評価が下がったりするなどの事例が実際に起こっています。

これらは、社内・世間の認知が低いために起こることがあります。

短時間正社員のデメリット2:家族の協力が必要

短時間正社員は、労働時間は通常の正社員よりも短いです。しかし、だからといって、家事や育児、介護などをすべて1人で引き受けてしまっては、結局フルタイム正社員と同等かそれ以上の負担を被ることになります。

制度を利用するに際しては、家族とよく相談し、家の仕事の分担をするべきです。

短時間正社員のデメリット3:責任が重くなる

短時間正社員は使用者側と無期労働契約を締結していますから、将来的には管理職を任されたり、そうでなくともパートタイマーよりも責任が重くなる仕事を任されやすくなります。したがって、短時間正社員はその責任が重くなるというデメリットがあります。

メリットデメリット
具体例社会保険の適用要件の緩和、優秀な人材の確保、生産性の向上、ワークライフバランスの推進、法令改正への対応社内・世間の認知が低い、家族の協力が必要、責任が重くなる

短時間正社員制度は社会保険適用も可能になる取り組み

以上、短時間正社員制度について概観しました。短時間正社員制度は、所定労働時間の長短で社会保険の適用の有無が決まらないため、社会保険の適用がより容易となります。また、雇用保険についても、実質的に適用要件を容易に満たすことができます。

また、これらの社会保険制度だけでなく、企業にとっても、職場の社員が安心して働く環境を整えることで、優秀な人材確保や、既存の社員の労働生産性の向上が見込めます。

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