出産手当金ってなに?
出産手当金は会社で加入している健康保険の被保険者が、出産のために会社を休んだ場合、生活を支える所得保障として支給されます。
出産とあることから当然ですが、受け取ることができるのは女性のみで、出産を行わない男性は健康保険の被保険者であっても、出産手当金を受け取ることはできません。
出産手当金の制度の目的
出産手当金は健康保険の被保険者が、出産のために会社を休んでいる期間の所得保障を目的として支給されます。
労働基準法第65条には「出産日以前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)から出産後8週間の間については労働をさせてはならない」と規定されており、出産により所得が減ってしまう女性の生活を支援するための制度であるといえます。
出産手当金は社会保険加入者が対象で、国民健康保険加入者には支給されません。
一般的な支給額
出産手当金は事業主から支給される報酬額によって支給額が異なるため、一律ではありません。
出産手当金は1日につき、標準報酬月額の30分の1に相当する額の3分の2を支給し、支給される期間は産前産後休業期間となります
具体的に計算すると、標準報酬月額が30万円であれば、30万円÷30日=1万円となり、1万円×2/3×98日で出産手当金は約65万円です。
出産手当金と出産育児一時金の違い
出産手当金と同じく、出産する女性の支援を目的とした、出産育児一時金という制度があります。
出産育児一時金は出産に掛かる費用や検診費用を上限42万円(産科医療補償制度に加入されていない医療機関で出産された場合は39万円)支援するもので、産休中の被保険者の所得保障を目的とした出産手当金とは異なります。
また、出産育児一時金は健康保険や国民健康保険の被保険者、被扶養者が受給できる点でも異なります。
派遣社員は出産手当をもらえるの?
出産手当金は正社員、派遣社員、パートなどの雇用形態の種類を問わず、支給申請することができますので、当然のことながら、派遣社員も支給対象となります。
出産手当金は産休中の所得補償を目的とする制度です。そして、労働基準法において、この産休制度は、派遣社員などの雇用形態を問わず、全ての労働者に認められています。
出産する女性の生活を支援するという制度趣旨であるため、給与所得者であれば、広く認めています。
派遣社員が出産手当をもらうための条件4つ
出産手当金が派遣社員やパート、アルバイトといった非正規雇用にも認められた制度であることは説明しましたが、ただ産休中に給与を受けなければ、無条件に認められというわけではありません。
派遣社員が出産手当金を受給するには、産休中に給与を受け取らないだけでなく、健康保険の加入期間や給与、出産に伴う退職などの条件がありますので、以下で説明していきます。
出産手当をもらうための条件1:健康保険への加入期間が一年以上
派遣社員であるかを問わず、出産手当金を受け取るためには、勤務先の健康保険に継続して1年以上加入していることが、必要になります。
このため、派遣社員、アルバイト、パートであっても勤務先の健康保険に、1年以上継続して加入していれば、出産手当金を受け取ることができます。
また、退職者であっても、退職日からさかのぼり、1年以上継続して、健康保険に加入しているのであれば、出産手当金を受け取ることができます。
出産手当をもらうための条件2:産休中に給料が支払われないもしくは出産手当金より少ない場合
出産手当金が産休中の所得補償を目的としていることから、派遣社員が受け取るためには、産休中に給与が支払われないか、出産手当金より給与が少ない必要があります。
産休期間中に給与を支払われている場合、その支給額が出産手当金より少なければ、差額が支給されます。
産後休暇の期間は有給休暇を取得できませんが、産前休暇の期間であれば、有給休暇を取得できますので、この場合にも出産手当金と給与の差額が支給されます。
出産手当をもらうための条件3:退職を決定しなおかつ退職日に出勤しない
派遣社員が退職しても出産手当金を受け取るためには、資格喪失時に出産手当金受けているか、または受ける条件を満たしていることが必要です。
このため、退職日に出勤してしまうと条件を満たさなくなり、出産手当金を受け取ることができません。
出産手当金が妊娠出産を理由に働けないことが前提条件であるため、たとえ退職に伴う引継ぎのために、1時間だけ出勤してもこの条件を満たさなくなります。退職日は必ず休みにしましょう。
出産手当をもらうための条件4:退職を決定しなおかつ出産日42日前より後の期間の退職日に出勤しない
派遣社員が退職しても出産手当金を受け取るためには、退職日が出産予定日より42日以内であり、かつ退職日に出勤しないことが条件になります。
健康保険の資格喪失日は退職日の翌日になるので、派遣社員が出産に伴い退職する場合であれば、出産予定日の42日前が退職日とすることになります。
この計算をわずか1日でも間違ってしまうと、一切出産手当金は受け取れなくなりますので、しっかりと計算しておきましょう。
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出産手当以外にも雇用保険に加入していればもらえる手当がある
派遣社員であっても、雇用保険に加入していれば、失業中に基本手当として失業給付を受給することができます。
それだけではなく、条件を満たしていれば、育児休業期間中に育児休業給付金を受給することができます。
雇用保険は、労働者が失業した場合や、労働者の生活や雇用が不安定になった場合の安定を図ることを目的としているため、給与の支払われない期間の所得保障を設けています。
女性も男性ももらえる育児休業給付金とは?
育児休業給付金は雇用保険の被保険者が、育児休業中に申請することで、受給できる給付金で、出産手当金と異なり、受給資格は男女を問いません。
派遣社員やパートであっても、事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であることと、子が1歳6ヵ月になる日の前日までに、労働契約の期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかでないことを満たしていれば、育児休業給付金を受給できます。
育児休業給付金の支給金額
育児休業給付金は育児休業開始日から、180日までは休業前に支払われていた賃金の67%、181日目から最終日までは休業前に支払われていた賃金の50%が受け取れます。
ただし、どれだけ休業前に支払われていた賃金が高くても、67%が支給される場合の上限額は30万1,299円で、50%が支給される場合の上限額は22万4,850円となっています。
育児休業給付金の手続きと流れ
育児休業給付金は育児休業給付受給資格確認票、育児休業基本給付金支給申請書などの必要書類を事業主に提出し、事業主が事業所の所在地を管轄する公共職業安定所に申請します。
通常は事業主が申請しますが、やむを得ない事情がある場合においては、希望すれば本人でも申請可能です。
育児給付金を受けた人の割合
育児休業給付金は派遣社員やパートなど雇用形態を問わず、男性でも女性でも受け取ることができますが、近年になって男性の比率が上がっているとはいえ、圧倒的に女性受給者の割合が高い状況です。
育児に対する考え方の変化などで、育児休業に対して、積極的な男性は増えていますが、現実には制度が普及していないことや、仕事の多忙、金銭的問題などで男性の育児休業は、まだまだ取りづらい状況であるといえます。
初回受給者数 | 男性受給者数 | 女性受給者数 | |
---|---|---|---|
平成19年度 | 149,054 | 1,230 | 147,824 |
平成20年度 | 166,661 | 1,440 | 165,221 |
平成21年度 | 183,542 | 1,634 | 181,908 |
平成22年度 | 206,036 | 3,291 | 202,745 |
平成23年度 | 224,834 | 4,067 | 220,767 |
平成24年度 | 237,383 | 3,839 | 233,544 |
派遣社員でも出産手当はもらえる
出産手当金は正社員のみの権利で派遣社員では受給できないと考えている方も多いですが、条件を満たしていれば、受給することができます。
不安定な雇用である派遣社員にとって、出産手当金制度の正しい知識を持っているかどうかは、大きな違いを生みます。
出産手当金をはじめとする各種手当ての正しい知識を持って、出産という大事に備えましょう。