育児時間とは
育児時間とは、生後1年に満たない子どもを育てている女性労働者が、休憩時間の他に「1日に2回各30分」の育児の時間を取得できる制度のことです。
育児時間は労働基準法に規定されており女性労働者のみが対象となります。いわゆる「育児休業」とは異なる制度のため注意が必要です。育児時間の取得を希望している人は会社の就業規則を確認しておきましょう。
今回は、育児時間の概要や申請ポイント、注意点について解説します。
就業規則の「育児時間」規定は会社ごとにルールが異なる
育児時間は会社によってルールが違うため注意が必要です。育児時間の利用を検討している人は会社の就業規則を確認しておきましょう。
例えば「育児時間を有給とするか無給とするか」あるいは「申請手続きをどうするのか」といったルールは、会社ごとに任せられています。
就業規則に育児時間の記載がない場合はどうなるのでしょうか。実は、記載がなくても育児時間の取得は可能です。育児時間を取得させないことは違法になります。
育児時間の申請ポイント5つ
育児時間を申請するときのポイントを5つ紹介しましょう。
ところで、育児時間は、なぜ女性だけが対象なのでしょうか。育児時間は女性の母体保護と授乳時間の確保を目的として定められた制度だからです。
育児時間を利用するときは、就業規則を確認したり担当者に相談したりすることが大切です。育児時間を取得するとき、5つのポイントをおさえながら申請しましょう。
育児時間の申請ポイント1:必ず1日2回に分けるのか
育児時間を取得するとき、必ずしも1日2回に分ける必要はありません。
たしかに、労働基準法では育児時間の取得方法を「1日2回各々少なくとも30分」としています。
しかし、場合によっては、育児時間の取得を1回にしたり、2回分をまとめて1時間にしたりすることができます。例えば、パート勤務の場合、1日の労働時間が4時間以内なら1回30分の育児時間でよいとされています。育児時間の詳細は就業規則で確認しましょう。
育児時間の申請ポイント2:1日のどのタイミングで取得するべきか
育児時間をどのタイミングで取得するかは本人の自由となっています。
例えば、保育園の送迎をしている女性従業員の場合、始業時間直後と就業時間直前に育児時間を取得することができます。育児時間を取得することで「30分遅れて出社」と「30分早めの退社」が可能となります。
あるいは、2回分をまとめて1時間にすることで「1時間遅れの出社」あるいは「1時間早めの退社」のいずれかを選ぶことができます。
育児時間の申請ポイント3:育児短時間勤務と育児時間は併用できるか
子どもが1歳未満の場合、育児短時間勤務と育児時間の併用が可能です。
育児短時間勤務とは3歳未満の子どもを育てている労働者が対象者となります。一方、育児時間の対象者は1歳未満の子どもを育てている女性労働者です。つまり、子どもが1歳未満の間まで両制度の併用が可能となります。
育児短時間勤務とは育児・介護休業法に定められている時短制度のことです。会社は、該当者から申請があれば対応しなければなりません。
育児時間の申請ポイント4:育児時間を有給にするのか無給にするのか
育児時間を取得した分の時間を、有給にするのか無給にするのか、法律上の決まりはありません。実は、企業と従業員の間で育児時間を有給にするか無給にするか決めることとされています。
通常、育児時間の取扱いについては、就業規則に定められています。育児時間が有給なのか無給なのか、会社の就業規則で確認しておきましょう。
育児時間の申請ポイント5:申請手順を確認する
育児時間の利用を検討している方は、就業規則で申請手順を確認しておきましょう。
1歳未満の子どもを育てている女性労働者の多くは育休中のため、育児時間を取得する機会がありません。そのため、育児時間の制度そのものが余り知られていない可能性があります。
子どもが1歳になる前に復職する女性労働者にとって、育児時間は母体保護と育児のための大切な制度です。育児時間の申請手順を就業規則で確認し活用しましょう。
育児時間の注意点
育児時間を利用する前に注意点を3つ確認しておきましょう。
注意点の1つ目は、女性従業員しか育児時間を取得できないことです。2つ目は、パート勤務の育児時間の取得方法です。3つ目は、就業規則に育児時間の記載がないケースになります。
以上、3つの注意点について解説します。
育児時間は女性従業員しか取得できない
育児時間を取得できるのは女性従業員だけになります。男性従業員は育児時間を取得できないので注意して下さい。
なぜ、女性従業員だけが育児時間を取得できるのでしょうか。実は、女性の母体保護と授乳時間確保のために設けられた制度だからです。そのため、男性は取得できません。
育児時間の用途は、授乳時間だけに限定されていないため、保育園の送迎やその他の子育ての時間に使うことも可能です。
パート勤務の場合は?
パートタイムで勤務している方も育児時間を取得することができます。
パート勤務の人はどのように育児時間を取得するのでしょうか。労働基準法にある「1日2回少なくとも30分」という規定は、1日8時間働いている人を想定しています。
1日の労働時間が4時間以内のパート勤務の人は、1日30分の育児時間でよいとされています。
就業規則に育児時間の記載がない場合
育児時間は就業規則に記載がなくても取得することができます。育児時間の取得を希望している人は、会社に申請しましょう。
会社側は、就業規則に育児時間の記載がないことで、申請を拒否することができません。もし、育児時間の申請を拒否した場合、違法となります。6か月以下の懲役または30万円以下の罰金を課せられてしまいます。
就業規則に育児時間を記載していない会社は、将来を見据えて整備しておきましょう。
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育児時間の使われ方事例3つ
職場で、育児時間はどのように使われているのでしょうか。
育児時間を活用している事例を3つ紹介しましょう。
今回紹介した事例が、全ての会社で認められているわけではないので注意して下さい。育児時間の使われ方は会社によってルールが異なります。育児時間の取得を検討している人は就業規則を確認して下さい。
会社の担当者に育児時間の詳しい取得方法を相談しましょう。
育児時間の使われ方事例1:30分遅れの出社と30分早めの退社を可能にする
育児時間の使われ方に「30分遅れて出社し、30分早めに退社する」という方法があります。
育児時間は1日に2回各30分取ることとされています。1日2回の30分を、それぞれ始業時間直後と終業時間直前で使うことができます。
例えば、子どもの保育園の送迎に育児時間を使うことで、時間的にゆとりを持って子どもの送り迎えをすることが可能となります。
育児時間の具体的な活用方法は就業規則で確認しておきましょう。
育児時間の使われ方事例2:1時間遅れの出社または1時間早めの退社を可能にする
育児時間を「1時間遅れて出社」あるいは「1時間早めに退社」として使う方法もあります。
育児時間の「1日2回の各30分」をまとめて1時間にし、まとめた1時間を始業時間直後あるいは就業時間直前で使用する方法です。
例えば「朝にまとめて子育ての時間を取りたい」あるいは「夜は子どもと一緒にゆっくり過ごしたい」というケースに使うことができるでしょう。
育児時間のルールは会社によって異なるため就業規則で確認して下さい。
育児時間の使われ方事例3:遅刻してしまった時間を育児時間にあてる
子育て中の女性従業員は、子どものことで遅刻をしてしまうことがあります。子どもの体調が良くない、授乳に時間が掛かってしまったなど、さまざまな理由があるでしょう。
やむを得ず遅刻をした場合、遅刻した時間を事後申告で育児時間にあてることができます。ただし、育児時間の使われ方は、会社によって異なる可能性があります。会社の担当者に育児時間の活用方法を必ず確認しておきましょう。
育児時間を正しく理解し就業規則を整備しよう
育児時間の内容・注意点・活用方法を紹介しました。
育児時間は、1歳未満の子どもを育てている女性従業員を支える大切な制度の1つです。会社は、該当者に対して育児時間を案内し、働きやすい環境を整えていきましょう。担当者は女性従業員からいつ相談を受けても良いよう育児時間を正しく理解して下さい。
就業規則に育児時間の規定がない会社は、できる限り早く整備をしておきましょう。