メリット制とは
メリット制とは、労働災害の発生多寡に応じて保険料率を上下させるシステムです。
もともと労働災害保険では、災害発生の多い業種と少ない業種での公平化のため、労災保険率が業種ごとに定められていますが、同じ業種であっても災害の発生率は事業所によって違います。
そこで、保険料負担の公平性と業務災害防止の努力を促進することを目的に、一定の範囲で労災保険料率を増減させるシステムとして制定されました。
メリット制適用の仕組み
メリット制が適用される仕組みは、過去3年間の労災保険収支率によって決定され、3年間の最終年度から翌々年度に収支率の割合に応じて増減40%の範囲で上下します。
労災保険収支率とは、納付済みの保険料額に対した支給済み保険給付額の割合のことで、この収支率によってメリット制が適用されるかが決定されます。
ただし、新設された事業所の場合、どのような事業所でも最初の4年間にメリット制が適用されることはありません。
労働災害の内容
労働災害は大きくわけて業務災害と通勤災害があります。
業務災害とは業務上に負ったケガや病気のことを指し、通勤災害は通勤途上で負ったケガや病気のことを指します。この業務災害には業務が原因で病気やケガを負う以外に、施設や管理上の問題で生じた災害も含まれます。
事業別メリット制の概要
労災保険の保険率は、業種によってそれぞれに定められています。これは、業種により災害の発生リスクが異なるためという理由があります。
では、事業によってメリット制はどのような違いがあるのでしょう。事業別メリット制について、それぞれ見ていきましょう。
継続事業のメリット制
一般的な多くの企業に適用されるのが、継続事業のメリット制です。
継続事業のメリット制では、各々の業種で適用されている労災保険のメリット料率によって労災保険率が決まります。メリット料率とは、労災保険率から1000分の0.6を引いた率を±40%の範囲で増減させたものを指します。
この1000分の0.6という数字は通勤災害などの日業務災害率で、どの業種であっても一律になっています。
一括有期事業のメリット制
立木の伐採や建設工事などの事業で適用されるのが、一括有期事業のメリット制です。年間で小規模な建設工事や伐採事業を一括し、全体を1つの事業として適用されます。
一括有期事業のメリット制の内容は継続事業のメリット制とほとんど変わりませんが、事業の規模は連続する3保険年度の各保険年度の確定保険料が40万円以上であること、という条件があります。またメリット増減率は、増減表によって異なります。
単独有期事業のメリット制
大規模な工事など開始と終了があらかじめ決められている事業で、その事業単独に対して適用されるのが、単独有期事業のメリット制です。
単独有期事業のメリット制は、事業終了後に確定精算された労災保険料の金額が増減する仕組みになっています。また、適用には条件があることを知っておきましょう。
単独有期事業のメリット制適用の条件
単独有期事業のメリット制を適用するには、以下の2つの条件が必要になります。
・平成24年度以降の事業で確定保険料の金額が40万円以上であること
・平成27年度以降の事業で消費税相当額を除く建設事業の請負金額が1億1千万円以上、立木伐採事業は素材生産量が1000平方メートル以上であること
事業の開始時期によって条件が変わってくるため、しっかりと確認しておくようにしましょう。
メリット制の注意点4つ
事業別のメリット制など、労災保険でメリット制を適用するためには注意しなければいけない点があります。それはどのような事柄のでしょうか。それぞれの項目ごとに注意点をみていきましょう。
メリット制の注意点1:事業ごとに仕組みが全く違う
メリット制の注意点1つ目は、事業ごとに仕組みが違う点です。継続事業や有機事業など、それぞれの事業ごとによってメリット制の仕組みは違ってきます。これは、事業ごとによって災害が発生するリスクが異なるためです。
メリット制を適用する場合には、自社の事業がどれに当てはまるのかをしっかりと確認するようにしましょう。
メリット制の注意点2:通勤災害はメリット制に関係がない
メリット制の注意点2つ目は、通勤災害はメリット制に関係がないことです。
労災保険のメリット制は、労災保険料負担の公平性と業務災害防止の努力を促進する目的のための制度となっています。そのため、メリット制の対象は業務災害のみとなっています。
労災保険には、通勤災害や二次健康診断なども保険給付されますが、業務災害以外は対象外となるので注意しておきましょう。
メリット制の注意点3:災害率の高い職場は特に注意
メリット制の注意点3つ目は、災害率の高い職場は注意が必要ということです。
メリット制は、業務災害の発生率が高い場合、40%の範囲内で保険料率または保険料が増す仕組みになっています。そのため、災害率が高ければ高いほど、保険料や保険料率が上がっていきます。
自社の業務災害の発生率がどれくらいなのか、災害率は高いのかどうかを確認しておくようにしましょう。
メリット制の注意点4:適用される業種は限られている
メリット制の注意点4つ目は、適用される業種が限られている点です。これは、労災保険のメリット制が一定規模以上の事業を対象にしているためですが、一定規模の基準とはどのようなものでしょう。
1つ目は、常時100人以上の雇用を継続している事業、そして2つ目の基準が、常時20人から100人の労働者を雇用していて災害度係数が0.4以上である事業です。
自社がこれらの条件を満たしているのかを確認しましょう。
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特例メリット制とは
労災保険のメリット制以外にも知っておきたいことが、特例メリット制についてです。
特例メリット制とは中小企業の労災防止活動や努力促進を目的としたもので、通常のメリット制でのメリット増減率と変わってきます。
では、この特例メリット制とはどのようなものなのでしょう。特例メリット制についてみていきましょう。
メリット増減率の違い
労災保険のメリット制が適用された場合、増減40%の範囲内でメリット増減率が上下しますが、特例メリット制が適用された場合はメリット増減率の範囲が変わってきます。
特例メリット制を適用する場合、増減40%の範囲内で保険料率が増減されます。メリット制とは保険料率の範囲が違ってくるので、注意するようにしましょう。
対象となる事業
特例メリット制はどのような事業でも対象となるのでしょうか。
特例メリット制が適用されるためには条件があります。
それは、建設もしくは立木の伐採事業を除く継続事業の中小事業主であり、労働者の安全または衛生を確保するための措置を講じた事業主が対象となります。
また、措置を講じた年度の次年度から6ヶ月以内に、特例メリット制の適用を申告していることも満たさなければいけない条件となります。
労働災害が起こらないようにしよう
労災保険のメリット制について見ていきました。
メリット制とは労働災害の多寡によって保険料率を上下させる仕組みであり、事業主の労災保険料の公平性と事業災害防止の努力を促進させるための制度です。また、事業の内容によって適用される制度も変わります。
自社の事業がどのメリット制が適用されるのかを確認し、労働災害が起こらないように防止に努めていくようにしましょう。