裁量労働制とは
働き方改革によって、いろいろな面で働き方について見直されるようになってきました。その働き方改革によって見直されている要素の1つに労働時間があります。
労働時間を見直すことで、裁量労働制の導入を検討する企業は増えています。裁量労働制は、みなし労働時間制の1種で、労働時間が労働者の裁量によって決めることができます。
専門業務型
裁量労働制は専門業務型と企画業務型の2種類があります。裁量労働制では労働時間は労働者の裁量によって決めることができます。
その業務の中でも、研究開発やデザイナー、弁護士、記事の取材や編集など、業務の進め方や手段、時間配分などを具体的に指示をすることが難しい業務に対して適用されます。また、専門業務型の対処となるのは高度な専門性を必要とする業務19種類に限定されています。
企画業務型
企画業務型は事業運営の企画や立案、調査および分析業務が対象となります。専門業務型のように具体的な業務が定められているわけではありませんが、導入のためには場所、業務、労働者に関する条件を満たさないといけません。
専門業務型と企画業務型の裁量労働制は導入を検討している企業は増えてきているものの、専門業務型は全企業の2.5%、企画業務型1%ほどしかまだ導入されていません。
裁量労働制の特徴5つ
裁量労働制はみなし労働時間制の1種で、労働時間を実労働時間ではなく一定の時間とみなす制度のことです。なので、裁量労働制が導入されると、労働者は労働時間を自分の裁量で決められるようになります。
ただし、裁量労働制は単純にいつ働いても良いというわけではなく、業務を進めるうえで守るべきルールもあります。そのため、裁量労働制の導入を検討したり、導入された場合、それらのルールを把握しておく必要があります。
裁量労働制の特徴1:勤務時間が決められず出退勤が自由
裁量労働制では労働時間を労働者の裁量によって決めることができます。そのため、出勤や退勤時間を決められることなく、自由な時間に出勤して仕事を行い、退勤することができます。
ただし、これは出勤さえすれば良いというわけではなく、自分で仕事のペースを決められるということです。なので、やるべき仕事が済んでいたり、最低限の仕事が済んでいれば、自分の判断で早く退勤できることもあるということです。
裁量労働制の特徴2:みなし時間が設定される
上記で述べた通り、裁量労働制が導入されれば、労働者の裁量で出勤時間と退勤時間を決めることができます。そのため、労働時間という概念がなくなってしまいます。そのため、裁量労働制ではみなし時間が設定されます。
もし、みなし時間が8時間と設定されていれば、6時間しか働いていなくても、10時間も働いたとしても、労働時間に関する処理上は8時間となります。
裁量労働制の特徴3:休日手当てについて
裁量労働制が導入されると労働時間という概念がなくなってしまうことになります。しかし、休日は設定しなければなりません。
もし、休日に出勤した場合は、裁量労働制に関する時間外の仕事となるため、労働時間は設定されたみなし時間で判断するのではなく、実労働時間で計算することになります。ただし、就業規則などに休日についての規定がある場合は、それに従います。
裁量労働制の特徴4:フレックスタイム制との違い
裁量労働制では自由に出勤時間や退勤時間を労働者の裁量の範囲内で決めることができます。そのため、裁量労働制はフレックスタイム制と混同されてしまうことがあります。
ですが、裁量労働制では労働時間はみなし時間が適用されることに対して、フレックスタイム制の場合は出退勤時間を労働者が決めるだけであり、労働時間に関しては実労働時間で計算されることになります。
裁量労働制の特徴5:導入には労使協定を結ぶ必要がある
裁量労働制を導入するためには、まず会社と労働者で労使協定を結ぶ必要があります。労働者側は労働組合があれば、その代表が会社と労使協定を結びます。もし、労働組合がない場合には、会社の労働者の過半数を代表とします。
労使協定を結ぶ際に、みなし時間や休日の設定、労働者の健康確保措置や苦情処理措置などをまとめて、さらにその内容は労働基準監督署に届け出なくてはなりません。
裁量労働制の働き方改革における問題5つ
裁量労働制は働き方改革によって注目されました。出勤時間や退勤時間を労働者の裁量で決められるので、労働者にとっては多くのメリットがあるように思えます。しかし、裁量労働制を導入しての働き方改革にはいくつかの問題があります。
そのため、裁量労働制を導入する際には、メリットだけでなく、デメリットも把握しておく必要があります。
働き方改革における問題1:あてはまらない業種がある
裁量労働制には専門業務型と企画業務型があります。専門業務型では専門性の高い業務19種類、企画業務型は事業運営の企画や立案、調査および分析業務が対象となります。
これらのあてはまらない業務に関しては、裁量労働制を導入することができません。そのため、働き方改革によって裁量労働制の導入を実施しようとすると、対象となる部署を無理に作ったり、違法な方法で労使協定が結ばれたりする可能性があります。
働き方改革における問題2:実労働時間とみなし時間がかけ離れている
裁量労働制での労働時間は実労働時間ではなく、みなし時間が労働時間として処理されます。そのため、1日に何時間働いたとしても、設定されたみなし時間だけ働いたことになります。
つまり、繁忙期に長時間の労働が続いても、みなし時間分しか働いていないことになります。また、仕事内容によっては労働時間が極端に少なくなる人も出てくる場合もあります。このような実労働時間とみなし時間が大きく離れてしまう可能性があります。
働き方改革における問題3:長時間労働が蔓延している
裁量労働制でなければ、出勤時間や退勤時間が決まっていて、退勤時間を過ぎても仕事をしていれば残業となります。中には定時に仕事が終わることがなく、毎日残業をしているという人もいます。
しかし、裁量労働制では労働時間という概念がありません。そのため、自分で出勤時間や退勤時間は決められるものの、仕事が終わらないと帰ることはできないので、終わるまで仕事をすると結局は毎日長時間仕事をすることになります。
働き方改革における問題4:実際は出退勤時間が決められている
働き方改革によって、裁量労働制を導入すると出退勤時間は労働者の裁量で決めることができます。しかし、実際は朝礼や朝のミーティングなどに出ないといけないため、事実上は出勤時間が設定されてしまっているということもあります。
また、長時間労働をすることは働き方改革の意に反するため、なるべく早く仕事を切り上げるように促したりなどされます。そのため、結局は出退時間が決められているような状態となってしまいます。
働き方改革における問題5:休日出勤が多い
働き方改革で労働時間を見直さないといけないということは、もともと仕事量が多くて残業や休日出勤が多くなっているという場合もあります。そのため、働き方改革として裁量労働制を導入したとしても、結局は仕事量が変わらないため、労働時間自体は変わりません。
また、出退勤時間が自由なことから、うまく時間管理ができない人がいれば普段の仕事を早く切り上げ過ぎてしまい、休日出勤が増えてしまうという可能性もあります。
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働き方改革の現状
先に述べた通り、働き方改革として裁量労働制を導入している企業はわずかです。また、裁量労働制に限らず、働き方改革を実施している企業は40%ほどと言われています。特に、企業の規模が小さいほど働き方改革が実施できていないという実情もあります。
そのため、働き方改革という言葉や働き方改革は進んでいるということをよく耳にすることはありますが、現状としてはあまり進んではいません。
働き方改革の今後
働き方改革がうまく進まないことにはいくつかの理由があります。その理由には、制度を前向きに利用しようという企業が少ないことや、労働者が抱える問題の根本を解決できていないことや、実施までの手間とコストがかかりすぎることなどがあります。
働き方改革を浸透させるためにはこれらの問題点を解決する必要があり、今後の課題となるでしょう。
裁量労働制と働き方改革における問題を知ろう
働き方改革によって裁量労働制の導入を検討する企業もあります。しかし、裁量労働制にはメリットだけでなく、デメリットもあります。これは裁量労働制だけでなく、働き方改革も同様です。
働き方改革は実施することが良いのではなく、メリットとデメリットの把握をして、仕事に対しての問題点を解決していくことが重要になるといえるでしょう。