嘱託社員の位置づけ
そもそも嘱託とは、仕事を依頼するという意味です。「嘱託社員」に明確な定義はなく、待遇や条件は各企業によってまちまちです。
嘱託社員とは、「正式職員に任用しないまま、臨時で業務を任された社員」のことです。「定年退職者などを一定期間再雇用する目的で契約し雇用する、再雇用」という定義が一般的ですが、「正社員に次ぐ準社員という立場」「特殊なスキルを持ち仕事を依頼された社員」などのところもあります。
嘱託社員と契約社員の違い
雇用期間に定めがある有期雇用契約という点では契約社員と同じ雇用形態です。嘱託社員は再雇用で高齢の人が中心なのに対し、契約社員には幅広い年齢層の人たちがいるのが大きな違いになります。
また、契約社員はほぼフルタイムなのに対して嘱託社員の労働時間はまちまちで、臨時や非常勤の意味合いが強く、給料などの賃金格差については企業ごとに違いがあります。
嘱託社員とアルバイト社員の違い
嘱託社員の給料が月給制で、雇用期間が1年などの長期での更新であるのに対し、アルバイト社員の給料は時給または日給制で、数か月などの短期の雇用期間であるのが特徴といえるでしょう。
ただし、会社によっては嘱託社員であっても雇用の更新期間が短期であったり、給料が時給制のところもあります。詳しくは契約前に就業先の企業に問い合わせたほうが良いでしょう。
嘱託社員への契約書
嘱託社員であっても、労働基準法により労働契約締結に際して使用者は労働者に対し、労働条件を書面にて明示することが義務づけられています。給料や休暇などの条件が細かく書かれていますのでしっかりと確認する必要があります。
契約書の内容が分かりにくかったり不足していると感じたら、就業後のトラブル防止のためにも必ず問い合わせるようにしましょう。
嘱託社員への契約書の記載項目
嘱託社員の契約書には、以下のような項目が記載されている必要があります。就業後の労働条件に関する重要な内容となりますので、契約後にトラブルにならないよう、契約を交わす前にしっかりと確認し、不明な点や疑問があれば問い合わせるなどして解決しておきましょう。
- 労働契約期間について
- 就業場所及び業務内容について
- 始業時刻及び終業時刻と超過労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに交代制就業転換に関する事項について
- 賃金、計算及び支払い方法、締め日と支払日について
- 退職に関する事項について
8つの事例別に解説!嘱託社員の給料の相場
ここでは、嘱託社員の給料・賞与や社会保険(健康保険・厚生年金など)の条件の相場・実態について、正社員との比較や法的な義務など、8つの事例別に詳しく見ていきましょう。
嘱託社員の給料の相場1:嘱託社員の給料の実態
嘱託社員の給料についての法的な定めはなく、その額は企業により異なります。嘱託社員の給料は正社員の5割から多くて7割といったところが多くなっています。
定年退職後の再雇用による嘱託社員の場合も定年退職前に比べ、地位・役割などに大きな変動がなくても給料が下がるのが一般的で、3割から7割減になることが多いです。
嘱託社員の給料の相場2:嘱託社員の賞与の実態
こちらも法的な定めはなく、契約時の就業規則に基づいて定められています。嘱託社員の賞与は、就業規則に特別な記載がない場合にはその企業の正社員と同じ扱いになり、記載がある場合には記載されている通りに有無や金額が決まります。
就業規則に賞与についての記載があるときは、正社員の6割から7割に設定されるのが一般的です。
嘱託社員の給料の相場3:嘱託社員の退職金の実態
こちらも就業規則によって定められています。就業規則に嘱託社員の退職金に関する記載がない場合には、正社員と同じ扱いになり、記載がある場合はその通りに退職金の有無や金額が決まります。
嘱託社員の給料の相場4:嘱託社員の健康保険の実態
法人経営の企業や従業員が常時5名以上いる個人経営の企業(サービス業を除く)では、加入することが義務づけられています。
加入義務のある企業に勤務している場合、嘱託社員であっても週の労働時間が20時間以上あり、1ヶ月の給料が8万円(年収106万円以上)で契約期間が1年以上であれば、加入することが可能で保険料の半分を給料から天引きされます。
大抵の企業では、要件を満たしていれば自動的に加入となります。
嘱託社員の給料の相場5:嘱託社員の厚生年金保険の実態
こちらも上記健康保険と同じく、法人経営の企業や従業員が常時5名以上いる個人経営の企業(サービス業を除く)では加入することが義務づけられています。
加入義務のある企業に勤務している場合、嘱託社員であっても週の労働時間が20時間以上あり、1ヶ月の給料が8万円で契約期間が1年以上であれば、加入することが可能です。大抵の企業では、要件を満たしていれば自動的に加入となり保険料は給料から天引きされます。
嘱託社員の給料の相場6:嘱託社員の雇用保険の実態
1週間の労働時間週20時間以上である場合や、雇用期間が継続して31日超える場合は嘱託社員であっても加入する義務があります。
離職時には「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」を発行してもらいましょう。解雇などでなければ1年以上の加入で失業保険を受給できます。
嘱託社員の給料の相場7:嘱託社員の介護保険の実態
40歳から加入することが義務付けられており、加入している健康保険と一緒に徴収されます。
ですので、企業の健康保険に加入している場合は給料より天引きされ、国民健康保険に加入している場合は国民健康保険料と一緒に徴収されます。介護保険料については給料の額に左右されるものではありません。
嘱託社員の給料の相場8:嘱託社員の労災保険の実態
法人経営企業・個人経営企業の区別なく、加入することが義務づけられています。
会社単位で保険料を納付しているので給料から労災保険料が天引きされないため、加入しているのかどうか個人では判断できないことが多いですが、在籍しているだけで加入となります。不安な場合は就業先の企業に問い合わせてみるといいでしょう。
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嘱託社員は何歳まで雇用できるのか
高齢者雇用安定法によって、希望者に対して会社は65歳まで雇用の機会を与えることが義務づけられています。
それ以上の上限は特になく、70歳や75歳までの企業もあれば上限を設けていない企業などもあります。何歳まで雇用してもらえるのかは、就業先の企業に問い合わせてみると分かります。
嘱託社員の就業規則
嘱託社員の労働条件が正社員と異なる場合は、就業規則に記載する義務があります。就業規則に記載されていない項目については、正社員の就業規則が適用されることになりますので、契約前にしっかりと確認しておくことが重要です。
嘱託社員の有給休暇
嘱託社員であっても、週30時間以上の労働時間であれば取得できます。定年後1日も空けずに嘱託社員になった場合は、定年前の有給休暇の残日数を継続して取得できることになっています。取得日数についての法的な決まりはありませんので事前にしっかり確認しておきましょう。
嘱託社員の副業
嘱託社員の副業は、就業規則によって禁止されていなければ可能となっています。また、禁止されている場合でも禁止する理由に法的な正当性がなければ有効なものとは言えず、副業は可能です。正社員と比べて給料も低いのですから、就業先の企業と交渉するといいでしょう。
嘱託社員の採用を検討しましょう!
「定年退職者などを一定期間再雇用する目的で契約し雇用する、再雇用」という定義が一般的である嘱託社員は、多くの業務を経験してきた優秀な人材であることが多いです。そういった嘱託社員を雇用する一番のメリットは「スキルの高い労働力を確保できる」ことでしょう。
新人を採用するより時間や費用がかからない上、給料などの賃金や労働時間など、労働条件の見直しにより人件費を抑えることができるのが最大のメリットといえます。