「管理職」とは?
「管理職」とは一般的に、労働者を指揮する役割に当たる人のことです。
この「管理職」という呼び方は係長や店長などに広く使われ、労働基準法上の「管理監督者」と混同されていることが非常に問題と言えます。
憧れのポストの「管理職」である一方、「管理職」だから残業代が付かない、休日出勤の手当もない、などの不満がよく言われますが、これは間違いの可能性が高いでしょう。
「管理職」とは何かを一度整理しておきましょう。
管理職と休日出勤についての基礎知識
管理職に昇進して喜んでいたら、休日出勤が増えたのに、管理職になったからもう休日出勤に手当は付かないと言われて大変だ、という話を耳にすることがありますが、間違いの可能性があります。
管理職だから休日出勤の手当が出ないのではなく、管理職と呼ばれるうちの一部に休日出勤の手当が出ない人がいる、という構造であり、これはかなり根が深い問題です。
どういうことなのか、管理職と休日出勤について確認していきましょう。
管理職と休日出勤についての基礎知識1:法律上の定義は?
労働基準法で「管理監督者」にあたる管理職には、休日出勤の手当を支払う必要がないとされています。この「管理監督者」は一般的な「管理職」とは異なる概念で、「経営者と一体的な立場」「出退勤の自由」「地位にふさわしい待遇」などの条件を満たすものとされています。
社内で「管理職」と呼ばれている「係長」や「課長」を「管理監督者」と混同して休日出勤の手当を支払わない企業が多いのが現状であり、大きな問題と言えます。
管理職と休日出勤についての基礎知識2:休日日数は?
労働基準法では、使用者は労働者に少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならないとされており、これは管理職であっても同様です。
管理職になったのだから休日出勤は当たり前、などということはありませんから、しっかりと知っておきましょう。
管理職と休日出勤についての基礎知識3:振替休日はあるの?
管理職であっても休日出勤をすれば、振替休日や代休、休日手当の割増賃金などがあります。
管理職として、休日出勤も必要でしょうが、しっかりと休みを取ることも大切です。休日出勤をする時にはこのことを覚えておきましょう。
管理職と休日出勤についての基礎知識4:時間外手当はあるの?
「管理職は残業代が付かない」という誤解が広まっていますが、管理職であっても時間外手当は基本として付くものであり、時間外手当が付くかの判断基準は管理職かどうかではありません。
「管理職は残業代が付かない」と言うよりも、管理監督者に当たる場合など「残業代が付かない管理職もいる」と言うほうがより正確と言えるでしょう。
公務員の管理職について
国家公務員では国家公務員法で管理職員の範囲が定められているなど、民間の企業とは違った定義があります。
公務員か民間か、またその企業によってなど、「管理職」はさまざまな使われ方をしますので、「管理職だから」という基準で判断することには、慎重になるべきでしょう。
公務員管理職は特別勤務手当を受けられる
公務員の管理職は、休日出勤をした時などに、管理職員特別勤務手当を受けられることがあります。
公務員にはほかにもさまざまな手当があり、特に管理職特別勤務手当を受けられる管理職は優遇されていると言えますが、公務員の管理職には休日出勤が必要な場面が多く想定されている重要な立場であるとも言えるでしょう。
「名ばかり管理職」の可能性もある
ここまでで、管理職が管理監督者と混同され「残業代が出ない」「休日出勤も当たり前」などと言われるのは間違いを含んでいることがお分かりいただけたでしょう。
管理職という肩書を与えられ、「管理職だから」と残業代などが支払われない「名ばかり管理職」が問題となっています。
名ばかり管理職となってしまっている人たちが正しい知識を持ちしかるべき行動に出ることができれば、この状況も改善に向かうでしょう。
ケース1:支店長・店長などの肩書き
支店長や店長だから残業代や休日出勤手当は出ないという場合は、「名ばかり管理職」の可能性があります。
「名ばかり管理職」という言葉は、日本マクドナルド割増賃金請求事件判決(東京地方裁判所平成20年1月28日判決)で有名になりました。
店長という管理職の肩書を与えることで、管理監督者として扱おうとしましたが、裁判所はこれを認めませんでした。「店長だから残業代が出ない」は違法だと世に知らしめた事件です。
ケース2:他の従業員と勤怠管理が同じ
管理職でも他の従業員と同じように、シフト勤務であったり、タイムカードやタイムレコーダーで勤怠管理をしているのであれば、「名ばかり管理職」の可能性があります。
管理監督者の条件としては、勤務時間を自身の裁量で決められることがありますから、交代制で勤務時間を縛られたり、タイムレコーダーで管理することが必要なのであれば、管理監督者には当たらないと考えられます。
ケース3:残業時間に見合った手当をもらえていない
管理職だからと残業時間に見合った手当がもらえなくなった場合は、「名ばかり管理職」の可能性があります。
管理監督者に当たる管理職には残業時間に応じた手当は支払われませんが、それは給与面で十分に優遇されているためです。名ばかり管理職でなければ、残業代も休日出勤手当もなくなり給与が減ったという状況になることは考えにくいでしょう。
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管理職の条件4つ
以上のように、管理職と管理監督者を混同した「名ばかり管理職」が多く生まれてしまっています。
「名ばかり管理職」ではなく「残業や休日出勤の手当がない」管理職、すなわち「管理監督者」とは、会社の経営面に関与し、一定部署を統括し、仕事量や時間を裁量で決められ、十分な給与を受け取っている人のことです。
実際に管理監督者に当たるかは個々のケースでの判断となりますが、大まかな基準を知っておきましょう。
管理職の条件1:会社の経営面に関与している
会社の経営面に関与すると言えるほどの重要なポストに就いている管理職は、管理監督者に当たる可能性があります。
日本マクドナルド割増賃金請求事件判決(東京地方裁判所平成20年1月28日判決)では、店長は確かに店舗経営において重要な役割ですが、企業全体の経営には関与していないため、管理監督者には該当しないと判断されました。
管理職の条件2:一定部署を統括する立場にある
一定の部署を統括する統括部長のような立場である管理職は、管理監督者に当たる可能性があります。
このような立場では、決まったオフィスや支店に出社するのではなく、次の項目でも挙げるように、自身の裁量で行動を決めることが多くなるでしょう。
管理職の条件3:仕事量・時間を裁量で決められる
仕事量や時間を裁量で決められる管理職も管理監督者に当たる可能性があります。
日本マクドナルド割増賃金請求事件判決(東京地方裁判所平成20年1月28日判決)では、店長には裁量性がありましたが、実際は月100時間を超える残業があるなどして、実質的には労働時間を自由に決定できない状況であったと判断されました。
管理職の条件4:給料面で十分に優遇されている
給与面で十分に優遇されている場合も、管理監督者に当たる可能性があります。
管理監督者に当たる管理職は残業代や休日出勤手当が出ないというよりは、残業代や休日出勤手当を細かく計算して支払う必要のないほど、十分な給与が支払われていると言うことができるでしょう。
管理職の定義をきちんと把握しよう
以上のように、管理職は管理監督者と混同されて「名ばかり管理職」を生み出し、「管理職だから残業代が出ない」など労働者の不利益になる状況があります。
「名ばかり管理職」にご自身に当てはまると感じたら、公共の労働相談の窓口で相談してみるとよいでしょう。
残業や休日の手当の支給は、管理職かどうかではなく契約や労働の状況によって決まるものですから、適正に労働の対価を受け取りながら素敵な管理職を目指してください。