還付申告とは
「還付申告」とは、確定申告書を提出する義務のない人が、確定申告をすることによって、納めすぎの所得税の還付を受けることができる制度です。源泉徴収された税金や、予定納税で払った所得税額が、実際の所得税よりも多いときは、還付申告することで、税金を還付してもらうことができます。
還付申告の期限
還付申告の有効期限は、確定申告期間とは関係ありません。「対象期間の翌1月1日から5年間」が有効期限となっています。では、それぞれのケース別に、還付申告の期限についてみていきましょう。
消費税
消費税の還付申告ができるのは、課税事業者です。基準期間の課税売上高が、1000万円以下の免税事業者は、還付を受けることができません。特に、個人事業者は事業開始から、第2期目までは原則として免税事業者となります。また、簡易課税制度の適用を受けている場合、非課税売上高が大部分を占めている場合は還付申告することができませんので注意してください。
次に、消費税の還付申告の期限についてみていきます。一般法人課税事業者は、事業年度の課税期間に対する「事業年度分の消費税の確定申告書」による税務申告の際に、必要書類を税務署に提出します。個人課税事業者は、その年の1月1日から12月31日の課税期間に対する「事業年度分の消費税の確定申告書」による税務申告の際に、必要書類を税務署に提出してください。
住民税
住民税は、年末調整や確定申告の結果で計算されます。(年末調整や確定申告の必要のない人の住民税の計算は除きます)。年末調整や確定申告の計算に訂正があれば、住民税が還付される可能性があります。住民税の還付申告の期限も同じく、対象期間の翌1月1日から5年間です。
控除の漏れに気づいたら、「確定申告の期限後申告」を行ってください。期限後申告を行えば、税務署がその申告内容を市町村へ回します。その後、申告内容を受け取った市町村は、本人宛に還付に関しての書類をおくります。その書類に必要事項を記入して送り返すことで手続き完了です。還付にてついては、いずれも自己申告ですので、注意してください。
所得税
個人事業者は確定申告することで、1月1日から12月31日までに発生した所得に対する、正しい所得税額を計算します。このとき、支払う税金よりも、あらかじめ納めた所得税額が多かった場合に還付申告を行うことができます。
所得税の還付申告の期限は、対象年度の翌年の1月1日から5年間の間です。受け取り時期は、確定申告書を提出した後に行われる、税務署の確認作業が終わったタイミングで還付金を受け取ることができるでしょう。
扶養控除
今年1月からの源泉所得税は、昨年提出される扶養控除申請書の情報をもとに計算されています。1年の途中で扶養する人数が変わったとなると、本来受けられるはずの所得控除が適用されていないため、所得税を払いすぎていることになります。期限は同じく、対象期間の翌年の1月1日から5年間です。扶養控除を受けられる対象者は次のとおりです。
・一般の控除対象扶養親族(12月末時点で16歳以上)がいる
・特定扶養親族(12月末時点で19歳以上23歳未満)がいる
・老人扶養親族(12月末時点で70歳以上)がいる
医療費控除
1月1日から12月31日までの1年間に、支払った医療費が計10万円(所得200万円以下なら所得の5%)を超えると、医療費控除の適用対象となります。ただし、医療費控除は、勤務先の年末調整では手続きができません。自分で確定申告をしなければなりませんので、注意してください。
ただ、払いすぎた税金を取り戻す還付申告の手続きなので、医療費がかかった翌年1月から5年間が申告期限となります。書類の作成に少し手間がかかりますが、対象者の方は還付申告をしてみてください。
寄付金控除
寄付金控除には、所得控除方式と税額控除方式の2つの計算方式があります。納税者はいずれかの方法を選択することができます。特定寄付金に該当するものは以下のとおりです。
・国や地方公共団体
・学校法人、社会福祉法人などの特定の団体
・公営社団法人、公益財団法人
・特定公益増進法人
・認定NPO法人
・一定の政治献金
特定寄付金控除を受け取るためには、寄付した団体から交付される受領書などの添付が必要になります。受領書がないと申告しても受け付けてもらえないので注意してください。期限については、同じく、確定申告の提出から5年間となります。
ふるさと納税
ふるさと納税とは、自分の選んだ都道府県や市長村に対して寄付を行った際に、寄付額2000円を超える部分について、一定の上限まで所得税と住民税から原則として全額が控除される制度です。自分のふるさとだけでなく、ゆかりのある自治体であっても「ふるさと納税」の対象となります。
ふるさと納税の還付申告についての期限も、対象期間の翌1月1日からの5年間です。今までは、ふるさと納税は確定申告が必要でしたが、確定申告不要で控除が受けられる手続き「ふるさと納税ワンス有数特例制度」が開始されています。
配当・株式
株式投資としていれば、投資している会社の業績が不振である場合などを除いて、1年に1・2回は配当金を受け取ることができます。一般的に、配当金に係る税金は、源泉徴収されるので、確定申告をする必要はありません。しかし。所得が一定額以下の場合や、株式投資で損をして場合は、確定申告することで、納めすぎた税金を取り戻すことができます。
上記のように、確定申告することで、総合課税や申告分離課税を選択することができます。源泉徴収された税額と、確定申告した税額を精算して、源泉徴収された税額のほうが多い場合には、超過した税額を還付申告することができます。期限については、対象期間の翌年1月1日から5年間です。
還付申告の手続き
e-tax・確定申告
e-tax(電子申告)がない時代は、申告書類を紙で作成する、など面倒な作業が多かったのですが、e-taxの登場により、インターネット上で申告ができるようになりました。e-taxを利用した確定申告でも、還付申告が可能です。
確定申告時期には、24時間アクセスすることができるので、時間的制約がなくなります。また、紙で書くなどといった複雑な業務が削減でき、税務署への持参や送付などが不要になる点が最大のメリットです。
e-taxで確定申告を行い、税金の納付額が還付の対象になった場合は、納税者に差額が返ってきます。e-taxで行われた還付申告は、3週間程度で処理されます。還付の受け取りは、金融機関の口座への振込や、ゆうちょ銀行の店舗や郵便局での受領などです。
年末調整
年末調整で還付金が発生するのには、いくつかの場合があります。扶養控除申請書で申請していた扶養控除以外に、さらに扶養対象者が増加すると、または生命保険控除や地震保険控除、住宅ローン減税など、さらなる控除を申請する場合です。これらの経理処理は、会社側が行ってくれます。
年末調整で還付金を受け取る時期は、会社により異なります。年末12月または翌年の1月のどちらかが一般的となっています。会社が税務署に提出する年末調整書類の期限が1月31日になっているため、経理処理の状況により、早ければ12月の給与に還付金が加算されるはずです。
還付申告の期限が過ぎたときの申告の仕方
還付申告は、期限が過ぎた後でも申告することができます。ただ、期限を守らなかった、ということで、ペナルティーがかかってしまいます。どのようなペナルティーがあるのでしょうか。
・無申告加算税(もともと納付すべきだった税金に上乗せされる税金)
・延滞税(税金の納付が遅れたことによる利息のようなもの)
・青色申告の取り消し(2年連続で期限を過ぎて申告すると、青色申告の場合は取り消しになります。)
納付ではなく、還付になるば、上記のようなことは課せられません。還付申告は5年前までさかのぼることができます。
期限を守り、期限内に適切な還付申告を!
いかがでしたでしょうか。それぞれの還付申告には期限があり、その期限内に申告をすれば、納めすぎた税金が返ってきます。還付の期限は過去5年間までさかのぼって申請することもできますので、申告を忘れていないか、一度確認してみてはいかがでしょうか。