経理業務が担う役割とは?
経理業務が担っているのは、会社の利益や損失などの金額を管理する部署です。
就活で経理業務に希望を出したい人や、漠然と経理業務に興味がある方は、経理業務がどんな仕事内容なのかをより詳しく理解しておきましょう。
企業の規模による経理業務の違い
経理業務と一言で表しても、その業務内容は企業の規模によって変わります。
例えば、大きな企業の場合は、経理業務も細分化されてそれぞれの部署や部門に割り当てられているでしょう。それが、中小企業になってくると、1人当たりが担当する経理業務の量が膨大に膨らみ、経理業務については何でもわかる幅広い知識が求められることもあります。
毎日行う主な経理業務9つ
経理業務は、日々の売上管理や仕入れの管理、また、給与や社会保険、税金の計算などの仕事を毎日行っています。もちろんこれは、会社によって多少異なりますが、基本の経理業務なので覚えておきましょう。
それでは実際に、経理業務がどんなことをしているのかを細かく確認してみましょう。
1:領収書の整理
経理業務の代表的な仕事として、領収書の整理があります。これは、会社の規模が大きければ大きいほど領収書の枚数も膨大な量に膨らむでしょう。
具体的には、社員が使った経費の領収書を管理したり、取引先への領収書の発行を行うのも経理業務のひとつです。領収書を発行する際に記載ミスがあると、渡した相手が税務申告や還付申告をする際に不備となり迷惑をかけてしまいます。
そのため、領収書の発行はミスが許されない業務です。
2:伝票の記帳
会社のお金の動きがあったときに伝票を記帳するのも、経理業務の大事な役割です。
売上があったり、損失があったりと会社のお金は日々変動しています。それを仕訳けて適切な伝票に記載していきます。最近では手書きの伝票ではなく、パソコンソフトに入力することの方が多いでしょう。
そのため、経理業務につく場合はパソコンの知識も最低限は持っている必要があります。
3:現金出納帳の管理
会社の売上や損失、経費の動きなど現金の入出金の明細を管理して、記録する帳簿のことを現金出納帳といいます。
これは、家庭でいう家計簿やお小遣い帳などと同じような役割です。何月何日に誰に対していくらのお金が動いたのか、これを記帳しておかないと税務申告ができなくなってしまいます。
現金出納帳は1円単位のずれも許されない大事な帳簿です。そのため、経理業務は細かい作業がコツコツとできる人に向いています。
4:現金残高の照合
現金残高の照合は、毎日行ってミスや前日とのズレがないかどうかを確認しておきましょう。なぜなら、1円単位のずれも許されないのが会社の経理業務です。
そこで、お金の動きが落ち着く時間帯や、1日の終わりに現金残高の照合を行うのがおすすめです。また、預金口座の残高記帳やネットバンキングでの残高照会など、現金に関する照合は同じタイミングでまとめて行うと確認がしやすく便利です。
5:経費の精算
経費の精算も経理業務の大事な仕事の1つです。
経費にはさまざまな種類がありますが、中でも社員が一度自腹で立て替え払いをしているお金の精算などが挙げられます。経費として落とせる項目は、会社にとって基準が決まっていることが多いです。
そして、経費の精算で気をつけることは、適切な領収書かどうかの確認を怠らないことです。経費計上できない領収書まで受け取ってしまわないよう細心の注意を払いましょう。
6:預金の管理
会社の預金の管理をすることも、経理業務の大事な役割です。
具体的には、会社宛の請求書や、各種支払業務のために会社名義の預金からお金を入出金することです。大きな会社になればなるほど、会社の預金額も大きく膨らみます。そこで、通帳を紛失したり、金額を間違えて預金と帳簿の誤差がでないように細心の注意を払う必要があります。
そのため、慎重で正確性に自信のある方が経理業務に向いているといえるでしょう。
7:小切手の管理
大きな額の現金を動かすときや、遠隔地にいる相手へ現金を渡すときなどに使う小切手の管理をするのも、経理業務の一貫です。
小切手は支払う金額を記載して相手に渡すと、受け取り側が銀行に持参します。そして、小切手に記載の額面を預金口座に入れるか、現金へ引き換えるかの選択を自由に選ぶことができる便利なアイテムです。
大きなお金を動かす経理業務に携わる方は、小切手の取り扱い方を知っておく必要があります。
8:売掛金の管理
日々の経理業務で大事な仕事に、売掛金の管理をすることが挙げられます。
売掛金は代金を後払いする取引で販売した売上金額のことです。実は、代金後払いでの仕事というのは多いため、売掛金の管理は毎日記載しておく必要があります。
また、年末調整の時期にこの売掛金の計算がされていないと税務申告に困りますので、日々の地道な積み重ねが必要です。
9:買掛金の管理
売掛金の管理の対をなす業務の、買掛金の管理も経理業務の日々の仕事のひとつです。
売掛金は後払いで販売したものの勘定項目ですが、買掛金は代金を後払いする義務があるものを買った場合の勘定項目です。これは仕訳上の負債に当たります。後払いで売った側は売掛金、買った側が買掛金ということを理解しておけば難しいことではありません。
帳簿付けを日々行うことは、金額の誤差に気づきやすいので必ず行う企業が多いです。
月間の主な経理業務7つ
日々の経理業務の他にも、月間業務として行っている経理業務の主なものを7つ紹介します。
経理業務は会社のお金についての業務を全て担当している部署なので、毎月発生する仕事というものが存在します。全てにおいて数字の誤差が許されないため、慎重に仕事をこなす正確性が求められる部署といえるでしょう。
1:請求書の作成
月間の主な経理業務に請求書の作成があります。
これは例えば、月払いで契約している商品や、経費として使ったものの1カ月分の金額をまとめて請求するときに書く請求書のことです。また、売掛金として販売したものの請求書の作成も、この月間の経理業務に含まれています。
請求書は金額や但し書きを間違えると、税務申告の際に不備となり請求書を渡した相手方にも迷惑を懸けてしまう恐れがあるため、慎重に作業することが大事です。
2:請求書の受領と支払い
請求書を渡すだけではなく、受領して、その請求額の支払いをすることも経理業務には欠かせません。
会社の経理業務は、お金を管理することが主な仕事です。そのお金の管理の中には、請求書の受領と支払いをするという業務が大半を占める場合もあります。
また請求書を受領するときは、金額や但し書きなどの記載内容に間違いがないかどうかを必ず確認してから受け取りましょう。
3:月次決算書作成
1ヶ月単位で決算する月次決算書の作成も経理業務の一つです。
実際の決算は1年毎や、半年ごとで集計しているところが多いですが、その仕訳の元となるのが月次決算書です。またこの月次決算書のことを、月次試算表や残高試算表と呼ぶ場合もあります。
この月次決算書は、貸借対照表と損益計算書によって構成されています。これを作成するのが経理業務の大事な役目です。
4:予算実績管理
月間の経理業務の中には、予算実績管理が含まれています。
会社の売上目標として立てた予算と実際の売上金を比較し、達成状況を管理するのが予算実績管理の業務内容です。まず会社の長期的な目標予算を月ごとに細かく設定し、その予算をどれだけ達成しているかを毎月チェックしています。
そして、予算と実績に大幅にズレがある場合には、予算の変更を計算することも経理業務です。
5:給与計算
働く上で大切な給与の計算を行うことも、経理業務の大事な役割です。
会社の雇用形態によって、時給や月給、年俸などで給与額をそれぞれ計算する必要があります。その他、残業代や各種保険などの控除額なども計算をした上で、その月の給与額を明細書として発行することが経理業務です。
6:源泉所得税の納付
毎月の経理業務に、給与から控除している源泉所得税の納付があります。
基本的に源泉所得税は、当月分を翌月10日までに納付します。「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出して申請が認められた会社の場合は、源泉所得税を半年ごとにまとめて納付することもできます。
この源泉所得税を計算して納付するのが、経理業務です。
7:社会保険料の納付
月間の経理業務には、社会保険料の納付があります。
社会保険料は、日本年金機構に毎月納付を行います。具体的な納付方法としては、20日頃に納付書が送られてきたものを利用して納付するか、口座振替の手続きをして納付する方法があります。
そして口座振替の場合は、引き落とされた金額が間違っていないかを毎月確認すると良いでしょう。
年次の主な経理業務9つ
経理業務は1年に1度だけ行うものもあります。会社によって業務をする時期に多少の違うはありますが、覚えておくと良いでしょう。そこでこちらでは経理の主な年次業務を9つ紹介します。
1:年次決算書作成
月間業務で作成していた、月次決算書作成を利用して年次決算書を作成するのも、経理業務の大事な仕事の1つです。
年次決算書とは、会計年度ごとに作成する貸借対照表や損益計算書、また、キャッシュフロー計算書や株式会社の場合は株主資本等変動計算書などの全ての総称です。この全ての書類を作成することが、経理業務において大事な役割です。
2:税務申告
各種税金の計算に必要な税務申告は、年次の経理業務です。
1年間の会社の税務申告をすることで、会社が支払う所得税や消費税、法人税などの税額が決まります。また年次の経理業務の中でも決算時期に行うため、税務申告の時期は経理業務は1番の繁忙期といえるでしょう。
そして、税額が決まる大事な書類なので、ミスなく数字を管理することが求められます。
3:年末調整
社員の給与から控除していた源泉徴収額を調整するのが年末調整の役目です。
あらかじめ、年間の給与額を予測して、そこからおよその金額の源泉所得税を控除して給与を支払っています。その源泉所得税の金額を正しい金額に変えることが年末調整です。
源泉所得税は、少し多めに毎月の給与から徴収しておいて、後から還付することが多いでしょう。この還付作業までを一律に年末調整と呼んでいます。
4:労働保険の年度更新
年次の経理業務には、労働保険の年度更新があります。
労働保険の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間を1単位として計算しています。その保険料の金額は、すべての労働者に支払われる給与の1年間の総額と、その会社ごとに定められた保険料率を元に算出されています。
この労働保険は年度ごとに更新する必要があるため、この更新手続きも経理業務として行います。
5:税金納付
税務申告に基づいて算出された税金を納付することも、年次の経理業務です。
会社が納める税金は、国税である法人税や復興特別法人税、消費税や所得税の他にも地方税である法人事業税や固定資産税など、その会社の利益や不動産を保有しているかどうかによっても変わります。この税金を適切に収めることも経理業務の大事な役割です。
6:償却資産報告書の提出
会社が土地・建物以外の償却資産を保有している場合は、償却資産報告書の提出も年次の経理業務に入ります。
償却資産税とは固定資産税の一種です。会社が事業で使用している減価償却資産にかかる税金のことで、門や塀、看板などの外構や船舶、航空機、大型の特殊自動車などが当てはまります。
7:法定調書の提出
源泉徴収票や給与支払報告書などの法定調書を税務署に提出することも、年次の経理業務です。
この法定調書は年に1度税務署に提出する必要があります。法定調書は、給与以外にも役員報酬の支払い調書や、不動産使用量の支払調書など、お金に関する調書が全て含まれます。また、この法定調書は提出期間が定められているため、忘れずに提出しましょう。
8:実地棚卸
決算期末に向けての準備として行う実地棚卸も、年次の経理業務です。
実地棚卸とは、棚卸資産の残高を実際に現物を点検・計量することです。これは商品や食品などを扱っている会社は必ず年に1度は行いましょう。
商品や食品の在庫は、販売するごとに記録していることがほとんどですが、中には破損や盗難などで実際の在庫と販売した在庫数がずれていることがあります。それを正すのが実地棚卸です。
9:予算立案
来年度の予算立案をするのは、日頃から予算管理をしている経理が行います。
予算は達成できないほど高すぎる目標にすることはできません。達成見込みのある数字を提示しましょう。この予算立案を立てるためには、日頃から会社の売上や損失の数字をしっかりと理解しておく必要があります。
経理業務は会社のお金を記録し管理する重要な仕事
今回は経理業務について紹介しました。経理業務は日々行う仕事から、月間業務、年次業務とその仕事内容は多岐に渡ります。そして、会社の予算管理も任されているため、経理業務は会社にとって欠かせない存在です。
会社のお金を管理し、記録をすることはどちらもミスが許されない大事な仕事なので、慎重に取り組みましょう。