借入金とは?
よく、「借り入れが必要」「借入金が過大だ」と言った言葉を聞くことがあります。借入といえば、まず銀行を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、そもそも借入金とはどういうものを指すのでしょうか。
借入金とは、設備投資や資金繰り改善のために金銭を借りることによって生じる債務のことです。金銭を借入れる際には、借用証書や手形を差し入れます。借入期間やその使途によって長期借入金と短期借入金に分類されます。
借入金の表示場所は負債の部
経理担当者や役員にとって、貸借対照表上借入金がどこに表示されるかは非常に気になるところです。自分の会社の財務状況はなるべく良く見せたいでしょう。
貸借対照表は左に「資産」、右に「負債」「純資産」に分類されます。そして、借入金は貸借対照表の「負債」に表示されます。「負債が大きい」などと言った言葉もありますので、イメージはつきやすいでしょう。さらに、負債は流動負債と固定負債に分類されます。
短期借入金に関する基礎知識8つ
事前に短期借入金とはどういうものか知っておくと、金融機関に相談に行く際にも話がスムーズに進み、今後の見通しも立てやすくなります。また、短期借入金と長期借入金の性格の違いを理解せずに進めると、後々資金繰りに影響を与えてしまうこともあります。
そこで、ここから短期借入金に関する基礎知識8つを説明していきます。しっかり理解した上で、借入を検討するようにしましょう。
1:短期借入金は1年以内に返済する
冒頭で借入金は「短期借入金」「長期借入金」に分類できるとお伝えしました。では、「短期借入金」とはどういうものを指すのでしょうか。
短期借入金は借入金の中で返済期日が1年以内のものを指します。それゆえ、ワンイヤールールに則り、貸借対照表上流動負債に表示されます。
この借入が短期借入金なのか、それとも長期借入金に該当するのかよくわからないと言う場合は、まずその借入が1年を超えるのかどうかを意識しましょう。
2:数か月や半年以内の返済期間が多い
短期借入金の場合、実際の運用上はどれくらいの期間で借りるのが一般的でしょうか。基本的に、短期借入金は売り上げ金が決済されるまでの不足金を補う目的で借入れるものを指します。
それゆえ、短期借入金は売掛金同様、数か月や半年以内の返済期間が多いです。また、リスクを伴うため、金融機関側はたとえ借主が希望したとしても、根拠なく長めの借入期間を設定することは認めていません。
3:短期借入金は手形貸付の方法が多い
それでは、短期借入金はどのようにして調達できるのでしょうか。短期借入金は借り手が振出人となり、受取人を金融機関とする手形貸付の方法が多いです。
また、その他にも極度額を設定し、その限度額まで自由に借入れることができる当座貸越という方法もありますが、自由・便利度が増す分審査も厳しくなります。
最初は手形貸付から取引し、信用度が上がれば当座貸越で調達する可能性が出てくると理解しておいた方が良いでしょう。
4:用途が運転資金のみに限定される場合もある
金融機関は借手が返済できなくなるリスクを避けるため、短期借入金の用途が運転資金のみに限定される場合があります。
どういうことかと言うと、設備資金を用途にすると短期間での返済原資が確保されないためです。設備投資したとしても、いきなり大きく売り上げが上がる保証はありません。
その点、運転資金であれば売り上げの見通しが立ち、返済原資も妥当です。それゆえ、用途が運転資金のみに限定されます。
5:短期借入金は中小企業が利用することが多い
大企業の場合、企業体力があるので売り上げ回収までのズレがあっても対応できますが、中小企業にとってはその決済期間がどれくらいであるかが重要です。大きな取引だと、回収期間が長くなってしまい資金繰りに影響がでかねません。
それゆえ、短期借入金は中小企業が利用することが多いです。後に述べますが、これが行き過ぎると短期的な支払い能力が低くなります。
6:長期借入金よりも審査が厳しくない
審査は各企業の財務状況、成長可能性、返済実績などの複数要因を考慮するため、どの方法の審査が厳しいとは一概に言えません。
しかし、短期借入は既に受注中の売上を主に返済原資とするため、契約書でエビデンスの確認が取れる一方、長期借入は先々の返済原資が確実とは見込めません。
そのため、長期借入は今後の資金収支が確実に回るか説明しなくてはいけず、そういう意味では、短期借入金は長期借入金より審査が厳しくないです。
7:短期借入金の返済方法
短期借入金の返済方法は期日一括返済であることが多いです。融資が実行される際に、融資金額から利息分(信用保証協会付融資の場合は保証料も)を差し引き、口座に入金になります。返済時には、期日に融資金額が引き落とされます。
少しまとまったお金が入った場合、利息を減らすために一部だけ返済したい場合は、「内入」といって、一部繰り上げ返済も可能です。ただし、手数料がかかる金融機関もあるので気をつけましょう。
8:短期借入金が多い場合は経営改善が必要
ここまで説明してきた短期借入金ですが、過大な場合は経営改善が必要となります。
企業の比率を計る指標の一つに流動比率があります。流動比率は流動資産を流動負債で割って算出するもので、理想は200%、100%を下回ると注意が必要とされています。
それゆえ、短期借入金を積み重ねることは流動比率の悪化、経営の不安定化に繋がります。短期借入金が過大な場合は長期借入金に切り替えられないか、今一度検討してみましょう。
長期借入金に関する基礎知識9つ
それでは、長期借入金とはどう言うものでしょうか。個人で言うと、住宅ローンは長期借入金の一例なので、イメージしやすいです。ここからは、長期借入金に関する基礎知識9つをそれぞれ説明してきましょう。
1:長期借入金は返済までに1年を超えるもの
短期借入金に対して、長期借入金は返済までに1年を超えるものを示します。ただし、1年を超えて良いなら、月々の返済額を少なくするためにできるだけ長い期間借りようと考えるのは時期尚早です。
金融機関により異なりますが、最大でも10年でしょう。期間は長くすればするだけ金利負担も大きくなってしまいますので、自社の現在の状況を踏まえた上で金融機関に相談しましょう。
2:長期借入金で流動負債となるもの
ここまで、説明していくと長期借入金は1年を超えるから固定負債と考えた人も多いでしょう。基本的にはそう考えていただいても、間違いではありません。
しかし、「1年以内返済長期借入金」は流動負債に表示されます。これは、借入金を返済期限の長さにより、流動負債と固定負債とに分けて表示すると言うワンイヤールールに基づいています。後ほど詳しく説明します。
3:長期借入金で固定負債となるもの
上記を踏まえ、長期借入金から1年以内返済長期借入金を取り除いたものが、固定負債に表示されます。それゆえ、長期借入金を調達する場合はまず、固定負債が増えると言うことを意識しなくてはいけません。
4:長期借入金が固定負債から流動負債となるとき
先ほど説明しましたが、当初長期借入金だったものも、「1年以内返済長期借入金」になると固定負債から流動負債に表示します。それでは、1年以内返済長期借入金とは具体的にどのようなものでしょうか。
1年以内返済長期借入金とは?
長期借入金として借入したものでも、1年以内に返済される予定のものは「1年以内返済長期借入金」に分類され、流動負債に表示されます。そのため、時間の経過により、同時に借りたものでも一部が流動負債、残りが固定負債と別れる場合が出てきます。
5:長期借入金は利子がかさむ
長期借入金の返済は一括ではなく、毎月分割で少しずつ払えば良いので、メリットしか見えません。しかし、だからと言ってなんでも長い期間で長期借入金として調達するのはオススメできません。
長期借入金を調達すると、その間ずっと利息を払い続けなくてはいけないので、毎月の返済は少なく見えても、トータルの費用が短期借入金に比べ高くなります。調達時には金融機関から返済予定表が発行されるので、しっかり目を通しましょう。
6:長期借入金は設備投資に使われることが多い
長期借入金はその性格から、設備投資時に利用されることの多い手段です。取引先の売上を返済原資とする短期借入金と異なり、自社ビルや設備機械を購入したからと言って、すぐに大きな売上があることは保証されないため、短期間での返済が困難です。
それゆえ、毎月の利益を返済原資として長期借入金で調達します。
7:長期借入金は担保が必要
今まで述べてきたように、長期借入は返済原資が確実ではありません。そこで、金融機関は返済を確実なものとするため、担保差し入れを依頼してくる場合があります。
特に、物件購入のために借入をする場合は、その物件を担保として差し入れしなくてはなりません。住宅ローンと同じでわかりやすいでしょう。
また、担保差し入れの場合は、登記費用が必要となり、借主負担になります。金利だけでなく、この費用も考慮して借入ましょう。
8:長期借入金は証書貸し付け
長期借入金は借主が貸付条件が細かく書かれた借用証書を金融機関に差し入れ、融資金を受け取ります。借用証書は「金銭消費貸借契約書」として各種ローンで記入したことがある人には馴染みがあるでしょう。
ただし、ローンは元利均等貸付が主であるのに対して、事業性融資は元金均等返済の場合が多いです。元金均等は支払元金が毎月固定で、利息はどんどん減っていきます。融資元金がどんどん減るに伴い、月支払額も減っていきます。
9:短期貸付金よりも審査が厳しい
長期借入金の場合は、数年先までの返済になりますので、審査時に金融機関も返済の確証が持てません。特に、購入する機械・設備がどれだけ売上に貢献するかわかりにくいものであればなおさらです。
そこで、この金額・期間で確実に返済が可能か判断するために、収支計画もしくは関連資料の提出を求める場合があります。その収支予定表で、毎月無理なく返済が可能か示さなくてはならず、ある意味短期借入金よりも審査が厳しいです。
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短期借入金と長期借入金の資金調達先5つと利息
実際に資金調達を決めた場合、どうすれば良いでしょうか。当然、預金や個人取引が密接なメイン行があればそこに相談するのが筋ですが、もしなければどこに相談すれば良いか迷います。
それぞれメリット・デメリットがあり、金利も異なります。ここから短期借入金と長期借入金の資金調達先5つと利息を見ていき、自社はどうすべきかを考えてみましょう。
1:日本政策金融公庫
まず一つ目は政府系金融機関の日本政策金融公庫です。日本政策金融公庫では、制度によっては最大20年までの長期資金を調達できるため、他の金融機関で長期の借入を断られた場合、非常に頼りになります。
金利は利用する制度によって異なりますが、担保を提供しなくても1%台で借りられることもあります。また、日本政策金融公庫は長期借入金を提供する機関です。短期借入金や手形割引は利用できませんので、注意が必要です。
2:銀行
借入の審査をする上で、自分の会社を知ってもらうことは重要です。代金の入金口座にしている銀行であれば、毎月入金があることをすぐに理解してもらえるので、まずはメイン銀行に相談してみましょう。金利は各行で異なるので、その後他行に相談するのも大事です。
また、借入時には信用保証協会の保証を付けることがあります。この保証は全体での保証額が決まっているので、他行で借入する時にも関係するので注意が必要です。
3:カードローン
個人向けカードローンはテレビでも頻繁にCMが流れています。実は、法人・個人事業主向けにもカードローンがあります。銀行借入の場合、平日15時にはシャッターが閉まってしまいますし、融資の相談をしても審査で時間がかかります。これだと必要な時にすぐ調達できません。
その点、カードローンは発行機関によってはコンビニATMでも調達できます。しかし、注意すべきはその金利です。低くても5%は超えることが多いです。
4:ファクタリング
その他の方法として、ファクタリングと言う方法があります。ファクタリングは業者に売掛債権を決済期日前に買い取ってもらう方法を言います。ファクタリング業者が今度は売掛債権のリスクを負うことになるので、当然買取価格は取引企業の信用力にも依存します。
銀行金利に比べると割高になってしまいますが、早くに資金調達が必要な場合や自社の信用力から借入が難しい場合にはこの方法を検討すると良いでしょう。
5:知人や役員から
最後に紹介するのが、知人や役員から調達する方法です。急ぎで資金を調達する場合や、創業間もない場合はどうしてもこの方法に頼りがちです。
役員借入金もワンイヤールールに従い、短期借入金と長期借入金に分けて表示されます。しかし、金融機関によっては審査時に役員借入金を借入金とせずに審査してくる場合があります。
これは、他の借入金は返済期限時に必ず返す必要がある一方、役員借入の場合は柔軟に対応できるためです。
短期借入金と長期借入金を理解しよう
以上、短期借入金と長期借入金について解説していきました。経営者、経理担当者はこの違いをしっかり理解することが資金繰りを理解することの第一歩です。
金融機関に言われるがままにならないよう、銀行訪問する前に二つの違いをしっかり復習してから銀行に相談するようにしましょう。