- 財務諸表の注記とは?
- 財務諸表の注記に記載すべき事項19
- 注記に記載すべき事項1:継続企業の前提に関する注記
- 注記に記載すべき事項2:重要な会計方針に関する注記
- 注記に記載すべき事項3:会計方針の変更に関する注記
- 注記に記載すべき事項4:表示方法の変更に関する注記
- 注記に記載すべき事項5:会計上の見積もりの変更に関する注記
- 注記に記載すべき事項6:誤謬の訂正に関する注記
- 注記に記載すべき事項7:貸借対照表に関する注記
- 注記に記載すべき事項8:損益計算書に関する注記
- 注記に記載すべき事項9:株主資本等変動計算書に関する注記
- 注記に記載すべき事項10:税効果会計に関する注記
- 注記に記載すべき事項11:リースにより使用する固定資産に関する注記
- 注記に記載すべき事項12:金融商品に関する注記
- 注記に記載すべき事項13:賃貸等不動産に関する注記
- 注記に記載すべき事項14:持分法損益等に関する注記
- 注記に記載すべき事項15:関連当事者との取引に関する注記
- 注記に記載すべき事項16:一株当たりの情報に関する注記
- 注記に記載すべき事項17:重要な後発事象に関する注記
- 注記に記載すべき事項18:連結配当規制適用会社に関する注記
- 注記に記載すべき事項19:その他の注記
- あなたの会社に仕事の生産性をあげる「働き方改革」を起こしませんか?
- 財務諸表の注記の書き方の注意点
- 財務諸表の注記の記載例
- 財務諸表の注記を理解して財務諸表をきちんと作成しよう
財務諸表の注記とは?
財務諸表とは簿記の用語で、賃借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュ・フロー計算書、株式資本等変動計算書(S/S)、計4種類の書類のことです。
そして「財務諸表の注記」というのは、会社の財務状況をわかりやすくするために作成している「財務諸表の補足説明情報」です。
この「財務諸表の注記」としてまとめて作成されている補足説明情報には、以下の3種類があり、次の見出しで個別に解説していきます。
1:会計方針
会計方針は、財務諸表を作成するために、その会社が採用して会計処理を行ってきた会計処理方法や計算方法の事です。たとえば、減価償却方法では「定額法」「定率法」といった、複数の会計処理方法があります。
決算で算出される減価償却方法で定額法を選択した会社の場合、この会社の減価償却方法は「定額法」になります。このような会計処理方法のうち、会社がどちらを選択したかを記載するのが「会計方針」です。
2:補足説明
「補足説明」とは財務諸表に表記されている数値の意味をより理解しやすくするためのもので、P/L(損益計算書)のシートに損失が形状されており、その算定根拠の説明項目を補足説明しています。
具体的には損益計算書の特別損失の項目に「減損損失」が形状されていた場合、減損損失の対称となっている固定資産の内容と、その経緯や、あるいは減損損失金額の内訳のほか、減損損失金額算定のための算出された根拠などを記載します。
3:簿外情報
簿外情報とは、財務諸表としては記載されていないものの、会社の財務に関する状況についてより詳しく記載している情報です。
通常、財務諸表には賃借対照表、損益計算書などのデータを計上しますが、これ以外の財務状況を確認する事ができます。
例えばリース債務、債務保証などが該当しますが、詳しく書くと「現時点では財務諸表のデータとして計上しないものの、会社にとって債務にあたるもの」となります。
財務諸表の注記に記載すべき事項19
では財務諸表の注記に記載するべき事項を19種類表記します。
下記で紹介している事項のほかにも賃借対照表、損益計算書、または株主資本等変動計算書などのデータを参照し、会社の財産や損益の状態を正確に判断するため必要な項目についても、併せて必要に応じて補足的に表記される場合もあります。
状況により記載方法の違いはありますが、主な注記について紹介していきます。
注記に記載すべき事項1:継続企業の前提に関する注記
そもそも企業が作成している財務諸表は、将来に渡り継続的に事業活動を営んでいることを前提としています。しかし普段から企業はさまざまなリスクにさらされながら事業活動を営んでいます。
継続企業の前提にとって重要な疑義を生じさせる事項・状況などがあり、不確実性が認められる場合には「継続企業の前提に関する事項」を財務諸表に注記することになっています。内容を具体的に、わかりやすく開示する事が求められます。
注記に記載すべき事項2:重要な会計方針に関する注記
財務諸表に注記することで開示しなければならない会計方針には「有価証券の評価基準及び評価方法」「棚卸資産の評価基準及び評価方法」といった会計方針が定義されています。
この項目の情報開示が必要となる時には、企業がどんな会計処理の方法を採用するかで損益額が異なってくるため、作成された基礎や事実をを明かにする必要がある場合です
なお、この項目は他に会計基準が認められていない時、省略する事ができます。
注記に記載すべき事項3:会計方針の変更に関する注記
会計方針の変更とは、これまで会社が採用していた会計方針から、会計基準で認められている他の会計処理へと変更することをいいます。
企業は一度採用した会計方針は毎期継続して適用することが求められており、恣意的に会計方針を変更すると利益操作などが行われる可能性があるためですが、正当な理由がある場合、会計方針を変更できます。
利益操作などを目的としない事など説明し、監査を受けてから注記として記載します。
注記に記載すべき事項4:表示方法の変更に関する注記
表示方法についても、こちらも原則的に毎期継続して適用する事が求められています。ただし下記引用文の条件に適用される場合、変更が認めらます。
表示方法の変更を行った時には、「過年度遡及会計基準16」の基準で定められている表示方法の変更基準にしたがって注記を行います。会計方針の変更と同じように、取扱いが事実上不可能な時も、会計基準で規程されているため確認しておきます。(過年度遡及会計基準15)
・表示方法を定めた会計基準又は法令等の改正により表示方法の変更を行う場合・会計事象等を財務諸表により適切に反映するために表示方法の変更を行う場合
注記に記載すべき事項5:会計上の見積もりの変更に関する注記
「会計上の見積もりの変更」とは、新たに入手可能となった情報に基づいて、過去に財務諸表を作成する際に行った会計上の見積りを変更する作業を言います。
財務諸表の作成時点での情報を基に見積もりを行いますが、この時収集できなかった情報を入手したり、前提の情報が変化した場合には、新に入手可能となった情報に基づき見積もりを行います。会計基準に沿い「変更の内容」「影響を及ぼす影響額」などについての注記を行います。
注記に記載すべき事項6:誤謬の訂正に関する注記
「誤謬」とは「誤り」という意味で、過去の財務諸表において誤謬が発見された場合、「過年度遡及会計基準21」の規程に従って遡及処理する事、とされています。
「過年度遡及会計基準22」に伴い、過去の誤謬に関する注記は「過去の誤謬の内容」「表示科目に対する影響額・一株当たりの情報に対する影響額」「期首純資産に反映された累計的な影響額」など、3つの項目について注記する事が規程される事になっています。
注記に記載すべき事項7:貸借対照表に関する注記
賃借対照表に関する注記を加える場合には、次に解説する規程された事項を表記し個別注記表へ注記を加えます。
規定された項目とは、下記にまとめたような会社計算規則での配慮項目を考慮した上で注記します。
・資産が担保に供されている場合
・保証債務、手形遡及債務などの債務がある時は、該当債務の内容及び金額
・関係会社に対する金銭債権または債務、これらが属する項目ごとの金額、または2つ以上の項目について一括した金額
注記に記載すべき事項8:損益計算書に関する注記
損益計算書に関する注記について以下にまとめました。
・関連会社との営業取引の総額、または営業取引以外の取引高の総額
・減損損失を認識した資産、または資産グループがある場合、減損損失を認識するに至った経緯、特別損失の金額または主な固定資産の種類ごとの当該金額の内訳、などの項目
ただし、減損損失を認識した資産資産グループなどの注記に関しては、重要性が乏しい場合省略可能となっています。
注記に記載すべき事項9:株主資本等変動計算書に関する注記
株主資本変動計算書に関する注記がある場合も、規程された項目について注記を行います。
・該当事業年度の末日における発行済株式の数
・該当事業年度の末日における自己株式の数
・該当事業の年度中に行った余剰金の配当に関する事項など
余剰金の配当に関する項目などについては、「配当財産が金銭の場合、当該金額の総額」「金銭でない場合、帳簿価格の総額」などについて表記します。
注記に記載すべき事項10:税効果会計に関する注記
この項目には「繰延税金資産」「繰延税金負債」の二種類について、発生した主な原因について記載を行います。
繰延税金資産については、算定を行うにあたって繰延税金資産から控除された金額があった場合、この金額を含みます。
これらの2種類の資金と負債について記載した項目が「税効果会計に関する注記」という事になります。ただし該当内容であったとしても、重要でないものは除く場合があります。
注記に記載すべき事項11:リースにより使用する固定資産に関する注記
「リースにより使用する固定資産に関する注記」は、言葉のとおり「リースで使用した固定資産がある場合」を記入します。
主に下記について記載します。
・該当事業年度の末日における取得原価相当額
・(同じく、末日における)減価償却累計祖額相当額
・(同じく、末日における)未経過リース料相当額
・このほか、当該リース物件にかかわる重要な事項
ただしリース物件とされる場合、さらに詳細条件がある場合があります。
注記に記載すべき事項12:金融商品に関する注記
この項目では、金融商品の状況、または金融商品の時価などに関した項目が記載されます。ここで記載される金融商品とは金融財産、あるいは金融負債の事を言います。
金融財産とは、有価証券、あるいはデリバティブ取引により生じた債権、またはこれらに準ずる証券・債権を含むものです。また金融負債とは、金融債権、またはデリバティブ取引により生じた債務、あるいはこれらに準ずる債権・債務となります。
注記に記載すべき事項13:賃貸等不動産に関する注記
賃貸など、不動産の状況・あるいは時価に関して、注記を行いたい場合に記載をします。賃貸等不動産とは、賃貸、または譲渡による収益、または利益を目的として所有する不動産の事を指します。
賃貸等不動産に関する注記には、「状況に関する事項」「時価に関する事項」との2種類があり、変更や連絡事項がある場合にはこの項目に記載をします。この項目に関しても、他の項目と同じように重要性に乏しいものは除く事ができます。
注記に記載すべき事項14:持分法損益等に関する注記
この項目においては、「関連会社がある場合、関連会社に対する投資金額、あるいは該当する投資に対し、持分法を適用した場合の投資金額」についてを記載し、このほかに「投資損失の金額」についても注記がある場合は記載します。
開示対象となる特別目的会社がある時には、「開示対象となる特別目的会社の概要」「開示対象特別目的会社との取引の概要」「取引金額」「その他の重要事項」について注記します。
注記に記載すべき事項15:関連当事者との取引に関する注記
事業者と関連当事者との間に取引がある場合、注記を行います。関連当事者は、会社計算規則112条にある「関連当事者」の事を指します。
「当該関連当事者が会社などである場合、名称、総株主の議決権の総数に占める、議決権の数の割合」など、あるいは「当該関連当事者が個人である場合、その氏名と、総株主の総数に占める、議決権の数の割合」などを表記します。こちらも個別注記表の形式を参考にしながら記載します。
注記に記載すべき事項16:一株当たりの情報に関する注記
一株当たり情報とは、「一株当たり純資産額」、「一株当たり当期純利益金額」、あるいは「当期純損失金額」、「存在株式調整後一株当たり当期純利益金額」について、総称した用語です。
計算方法が規定されており「会計基準12項」において規定された方法で算出します。一株当たりの情報に関する注記を記載する時には、「総資産額」と「当期純利益」または「当期純損失」といった項目を記入します。
注記に記載すべき事項17:重要な後発事象に関する注記
後発事象とは、「決算日のあとから賃借対象表を作成する日」までの間に発生した事象の事を指します。
次期以降の財政状態や経営成績に影響を及ぼすものを言い、「決算日人から財務諸表を作るまでの間に確実になった場合」「決算日後に新しい事象が発生した場合」の2つがあります。
当該事業者の事業年度の末日後に、翌事業年度以降の財産、あるいは損失に影響を与える出来事が発生した場合における当該事象を注記します。
注記に記載すべき事項18:連結配当規制適用会社に関する注記
連結配当規制適用会社とは「当該ある事業年度の末日が最終事業年度の末日となる時」から「当該ある事業年度の次の事業年度の末日が最終事業年度の末日となる時」の間の分配可能額の算定で、「会社計算規則第158条の規程を適用する旨」の「計算書類を作成する際に定めた株式会社」です。
この項目の注記は当てはまる事業年度の末日が、最終事業年度の末日となる時より後に、連結配当規制適用会社となる旨を記載します。
注記に記載すべき事項19:その他の注記
その他の財務諸表の注記事項がある場合に記載します。
上記で紹介してきた財務諸表注記事項のほかに、賃借対象表、あるいは損益計算書、株主資本等変動計算書など、財務諸表の書類により会社の財産、損益の状態とを、正確に判断するため必要な事項を記入します。
紹介してきた内容は、記載解説に関するごく一例の注記事項解説です。詳しい解説については、「会社計算規則の第98条」より以下の部分の解説を参照しましょう。
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財務諸表の注記の書き方の注意点
財務諸表の注記の書き方で、注意したいポイントについて紹介していきます。財務諸表の注記を記載する時の注意点としては、会社会計規則に沿った内容である点です。
また、個別注記表の様式項目について「e-Gov(電子政府の総合窓口)」からも雛形をダウンロードし活用することができます。(下記リンク先が参考になります。)インターネットで汎用の雛形を参考にして注記を参考にしながら記入するようにします。
会社の種類(公開会社・会計監査人設置会社か否か)によって記載項目は異なる
個別注記表の記載項目は「会社計算規則98I,II」によって規程されており、これは会社の種類「公開会社かどうか」あるいは「会計監査人設置会社かどうか」により記載する項目が区別されています。
具体的に4つの項目に分けることができます。
1.会計監査人設置会社で有価証券報告書提出会社
2.会計監査人設置会社で1以外の会社
3.会計監査人設置会社以外の公開会社
4.会計監査人設置以外の非公開会社
財務諸表の注記の記載例
財務諸表の注記には記載例が紹介されているページがあるため、必ず参考にしながら作成します。「個別注記表・記載例」などの検索で表示される「個別注記表の記載例」を参考にしながら作成を行った方が理解が早いため、活用するようにしましょう。
ただし、インターネットで公開されているデータや文献を参考にし、決算時に提出を行う場合には必ず自分でも確認を行い間違いが無いか検討して提出をしましょう。
財務諸表の注記を理解して財務諸表をきちんと作成しよう
財務諸表の注記の項目には、会社会計規則に沿った内容で、規則を的確に確認した上で注記の記載をしていくようにしましょう。
また併せて、インターネットで公開されている汎用の雛形を参考にしながら、各々の注記として記載されている内容が、大きく外れてしまう事のないようにします。
上記の項目を2つ確認しながら記載を行い、作成した財務諸表の注記内容が大きく的をはずしてしまわないよう注意しながら作業しましょう。