賃金計算期間とは
賃金計算期間とは、賃金の計算をするための区切られた期間です。
前回の賃金の締め切り日の翌日から、締め切り日までの期間がひとつの賃金計算期間です。多くの企業が採用している月給制では、賃金の締め切り日を必ず月末にする必要はありません。
ただし、労働基準法ではいくつかの規定や原則がありますので、ご紹介します。
賃金計算期間と支払日の規定
賃金計算期間と支払日の規定は、会社が独自に決定することができます。
例えば、毎月1日から末日までを賃金計算期間として翌月の10日に給料を支払うこともできますし、毎月21日から翌月20日までを賃金計算期間としてその月の25日に支払うこともできます。この支払日の設定をする際に、銀行の受付締切日も確認しましょう。
会社として決めた賃金計算期間は、毎月変わることなく継続されなければなりません。
毎月最低1回払いの原則
労働基準法では、賃金を1ヵ月の間に最低1回支払わなければならない規定があります。
多くの会社では月給制を導入していますが、日給制や週給制、年俸制でもこの原則は適用されます。そして、賃金計算期間の締め切り日から計算期間を経て、支払っても大丈夫ですし、本給をその月に支払い、割増賃金を翌月に支払うこともできます。
毎月最低1回払いの例外として賞与や見舞金、退職金などの臨時に支払われる賃金があります。
毎月1回以上定期払いの原則賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません。したがって、「今月分は来月に2か月分まとめて払うから待ってくれ」ということは認められませんし、支払日を「毎月20日~25日の間」や「毎月第4金曜日」など変動する期日とすることも認められません。ただし、臨時の賃金や賞与(ボーナス)は例外です。
一定期日払いの原則
賃金は毎月10日払いとか、月末の支払いとか一定の期日に支払わなければなりません。
毎月25日から月末までとか、毎月第4金曜日といった、支払日が特定できない方法は認められません。ただし支払日が休日にあたる場合に、支払日を繰り上げたり繰り下げたりすることは認められています。
例えば支払日が土日曜日や祝祭日になった時に、休日の前に支払っても後に支払ってもどちらでも認められます。
賃金計算期間と原価計算期間のズレを調整する方法
賃金計算期間と原価計算期間はズレが生じるので、調整する必要があります。
賃金計算期間は会社で自由に設定できると説明しましたが、原価計算期間は毎月1日から月末までを1ヵ月としています。このため、賃金計算期間と原価計算期間が一致しないことが多くあります。
ここでは、給与の支給額の分類と賃金消費額への組替を使って、賃金計算期間と原価計算期間のズレを調整する方法をご説明します。
毎月の給与支給額の分割
毎月の給与の支給額を原価計算期間に合わせて分割します。
例えば、毎月20日を賃金計算期間の締め切り日とし、25日を給与の支払い日と設定している会社では、次のように分割します。
1.毎月1日から20日までの給与
2.毎月21日から月末までの給与
次に、賃金消費額への組替を行います。
賃金消費額への組替
給与支給額を計算式に当てはめて、賃金消費額に組み替えます。
賃金消費額=当月の給与支払額-先月の21日から月末までの給与+当月の21日から月末までの給与
この式によって導かれた先月の未払賃金と当月の賃金支払いの仕訳を行います。そして当月の未払賃金の見越計上を行い給与計算期間と原価計算期間とのズレを調整します。
賃金計算における注意点3つ
賃金計算のルールを統一することで、賃金計算を明確にすることができます。
日割り計算が間違っていると、休職した時の傷病手当金や出産手当金、労災の休業補償給付の申請の時に給付金が支給調整されることもあります。
賃金計算において注意しなければならない点が3つあります。
1.日割り計算のルールの統一
2.残業代単価の計算
3.年末調整
それぞれについて詳しく解説します。
賃金計算における注意点1:日割り計算のルールを統一
賃金計算における注意点の1番目は、日割り計算のルールを統一することです。
賃金計算期間の途中で入社や退社をする場合、また休職をしたり復職をしたりする場合に月給の日割り計算が必要になります。月給の日割り計算は、所定就労日ベースと暦日ベースの2種類があります。
この計算の注意点は、ルールを統一することです。基本給は通常日割り計算の対象ですが、手当に関してもルールを統一し、賃金規定に入れましょう。
所定就労日ベースの場合
所定就労日ベースで計算するときには、以下の式に当てはめます。
月給額×実際に就労した日数÷その月の所定就労日数(または1ヵ月あたり平均就労日数)
これは日割り計算に休日を含めない方法です。
<所定就労日ベース>月給額(注)×実労働日/所定就労日
暦日ベースの場合
暦日ベースで計算するときには、以下の式に当てはめます。
月給額×就労した暦日(休日を含む)÷給与計算期間の暦日数
簡単に説明すると、月末締めの会社で15日に退社した社員の場合、就労した暦日は15日に、給与計算期間の暦日数は30日(1ヵ月30日の月のとき)になります。
所定就労日ベース、暦日ベースのどちらの方法を使用しても、小数点以下の数字の扱いといった細かい点までルールとして統一しましょう。
<暦日ベース>月給額(注)×就労した暦日(休日含む)/給与計算期間の暦日数
賃金計算における注意点2:残業代単価の計算
賃金計算における注意点の2番目は、残業代単価の計算です。残業代計算に含まれない手当は、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支給された賃金です。その他の手当は全て基礎賃金に含めます。
また残業代単価の計算は、次の計算式です。
残業代単価=基礎賃金÷1ヵ月平均所定労働時間数
所定労働日数が減少していても従来の所定労働日数で計算しないように注意しましょう。
賃金計算における注意点3:年末調整
賃金計算における注意点の3番目は、年末調整です。
社員が受け取る給料から差し引かれた所得税は、1年間で本来社員が支払うべき税額と異なることもあり、「年末調整」で精算します。
年末調整は1月から12月までの賞与を含めた賃金の集計をもとに計算しますから、12月に行います。所得税の計算は会社が行い、社員は扶養控除と保険料控除、住宅ローン控除の申告をします。社員の申告に基づき最終的な所得税額の算定を行います。
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賃金計算するときの台帳への記入
社員の賃金計算を行うための基礎になる事項や賃金の額を記載した帳簿を賃金台帳と言います。
賃金台帳は、労働基準法により各事業場に作成が義務付けられ、そこで働く全従業員について作成しなければなりません。つまり同じ会社でも部門や事業内容が異なる時は事業場ごとに作成、保管する必要があります。また賃金台帳を作成していない場合は罰則の対象になります。
それでは、賃金台帳の書き方と保存期間について解説します。
賃金台帳の書き方
賃金台帳に記載する必要がある事項は10項目あり、様式は決まったものはありません。
・労働者氏名
・性別
・賃金計算期間
・労働日数
・労働時間数
・時間外労働時間数
・深夜労働時間数
・休日労働時間数
・基本給や手当などの種類と額
・控除の項目と額
この10項目の中で労働基準監督署が重要視する点は、労働時間数(時間外、深夜、休日)と基本給や手当に関する項目です。労働時間数で労務管理、基本給で最低賃金の確認を行います。
賃金台帳(第 108条)① 労働者氏名、 ②性別、 ③賃金の計算期間、 ④労働日数、 ⑤労働時間数、⑥時間外労働時間数、 ⑦深夜労働時間数、⑧休日労働時間数、 ⑨基本給や手当等の種類と額、 ⑩控除項目と額
賃金台帳の保存期間
賃金台帳の保存期間は、社員の賃金について最後に記載した日から起算して3年です。
賃金台帳の保存も労働基準法で保存期間が定められています。また、賃金台帳と同じような書類に給与明細がありますが、賃金台帳と記載事項か異なりますので、代わりの書類としては認められません。
必ず賃金台帳を作成し、3年間保存しましょう。
第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない。
従業員との間で信頼関係を築くためにも賃金計算は確実に
賃金計算は確実に行なわれなければならない、会社にとって最も重要な仕事の1つです。
賃金計算のミスや遅れは許されません。些細なミスで、税金や社会保険料などの公的機関に納付する金額にも影響があり、追徴課税になることもあります。賃金計算に必要な知識を身につけ、入力や計算ミスをなくし、情報漏洩に注意しましょう。
会社にとって欠かせない従業員との間で信頼関係を築くためにも賃金計算は確実に行いましょう。