正しい給与計算の方法
企業・会社で働くサラリーマンに1月の報酬が給与です。給与は基本給・通勤手当・時間外手当・家族手当・深夜手当・休日出勤手当などで構成されています。基本給は基本的に毎月同じです。しかし、時間外手当・深夜手当・休日出勤手当など月の勤務状況により変動します。
そのため毎月間違いのない正しい給与の計算が必要になります。給与計算方法を知りたい人に給与計算の正しい方法と給与計算のポイントについて説明していきます。
給与計算のポイント
給与計算をする上で知っておきたいこととして給与と給料の違いがあります。給与と給料は同じと考えがちです。しかし、給与と給料は違います。給与は基本給に通勤手当・時間外手当・家族手当などを加えた金額です。
給料は基本給のことです。給与計算では所得税・住民税などの法定控除と健康・介護・厚生年金など保険料の控除の額を計算する方法と雇用保険は企業が6割、従業員が4割負担することを知っておくことが必要です。
給与計算の準備5つ
給与計算する上では準備しておくものがあります。準備しておくものには「就業規則・給与規定の作成」「従業員情報の収集・更新」「保険の加入」「労働保険(労災保険)」「勤怠管理 」の5つです。
給与計算の準備1:就業規則・給与規定の作成
給与計算の準備「就業規則・給与規定の作成」は給与計算をする上でもっとも大事なことです。就業規則は従業員が働く上でのルールや労働時間などの労働条件が細かく記載されています。
その就業規則には給与規定を記載する必要があります。その給与規定にもとづいて給与を計算するからです。
給与計算の準備2:従業員情報の収集・更新
給与計算の準備として「従業員情報の収集・更新」があります。従業員情報が最新でないと正しく給与計算ができなくなるため更新が必要です。例えば昇進・昇格した情報が更新されていないと基本給がアップした給与計算ができなくなります。
給与計算の準備3:保険の加入
給与計算の準備として「保険の加入」があります。「保険の加入」の確認は給与から引かれる保険料のために必要です。従業員が5人以上いる会社の従業員は健康保険・厚生年金保険の加入対象になります。保険料のために社会保険の加入を確認する必要があります。
給与計算の準備4:労働保険(雇用保険)
給与計算の準備として「労働保険(雇用保険)」があります。雇用保険は条件に当てはまれば加入することが義務づけられています。そのため従業員の雇用条件の確認が必要になります。
給与計算の準備5:勤怠管理
給与計算の準備として「勤怠管理」があります。「勤怠管理」は給与計算に欠かせない重要な項目です。従業員の労働時間を管理することで時間外労働時間を知ることができて残業代の計算をする上で大事になります。
給与計算の方法8つ
企業・会社の給与計算は総務課の仕事です。給与計算には専門知識が必要で、給与計算には関心はありません。いくら給与を貰えるかには関心があります。しかし、給与はどんな手順でどんな計算方法があるのかを知りたい人もいます。
そこで給与の細かい計算の方法について説明をします。給与計算の方法は支給額の計算・控除額の計算・社会保険料の計算・税金の計算など8つです。
給与計算の方法1:給与の支給額の計算
給与の支給額の計算は、勤務時間の集計、時間外手当・家族手当などの手当の計算で決まります。勤務時間と時間外労働時間はタイムカードやICカードでわかります。
タイムカードとICカードでは会社の出勤した時間と退社した時間がわかり、時間外労働時間を知ることができます。時間外手当の計算は、時間外労働の時間×1時間あたりの賃金×割増率で決まります。手当の計算は会社の就業規則に沿って決まります。
給与計算の方法2:変動的な給与支給額の計算
給与支給額の計算は「基本給」「時間外手当」「各種手当」を足した金額です。「基本給」は従業員の年齢、会社での勤続年数、スキルなどによって就業規則で定められるので昇給・昇格しない限り変動はありません。
また家族手当・通勤手当などの「各種手当」は基本的には変動はしません。しかし、給与支給額では毎月変動する計算項目があります。
給与支給額の変動的計算には時間外手当があります。「時間外手当」は時間外労働時間によって計算されるため、その人の時間外労働時間によって毎月変動します。「時間外手当」は「時間外労働時間」×「1時間あたりの基礎賃金 ×「割増率」で計算されます。
「時間外労働時間」とは労働基準法32条によって決められている労働時間よりも多く働いた時間のことです。この時間には上記の計算式で出た金額を支払う義務が生じます。
給与計算の方法3:給与の控除額の計算
給与の控除額とは、またその計算方法を知りたい人に給与の控除額の計算について説明をします。給与の控除額とは給与の中で必要とされる経費のことです。つまり給与にかかる税金、社会保険料などが安くなる金額のことです。
給与の控除額の計算は社会保険料・生命保険料控除・扶養控除・基礎控除などの控除の合計で求めることができます。
給与計算の方法4:雇用保険料の計算
雇用保険料の計算を説明する前に雇用保険とはどんな保険かについて説明をします。雇用保険とは会社都合、自己都合などで会社を退社し、職を失った時に次の職が見つかる間の生活費などを保障してくれる保険です。
雇用保険は労働者と会社で負担、労働者が3/1000、会社が6/1000と雇用保険料率が決まっています。雇用保険料の計算は給与額×雇用保険料率となります。つまり30万円なら労動者の支払う額は900円です。
給与計算の方法5:社会保険料の計算
社会保険料には健康保険料、厚生年金保険料、労災保険料などがあります。健康保険料の計算 は給与や賞与の報酬額と従業員の負担額によって求めることができます。老後の年金となる厚生年金保険料は標準報酬月額×保険料率の計算式によって求めることができます。
仕事中の怪我などを保障してくれる労災保険料は給与×労災保険料率の計算式で求めることができます。労災保険料率は3/1000といったように事業の種類により分かれています。
給与計算の方法6:介護保険料の計算
介護保険料は40歳以上の年齢の人に支払う義務がある保険料です。介護保険には第1号被保険者と第2号被保険者があり保険料に違いあります。65歳以上の第1号被保険者は所得金額に応じて段階別に保険料率が決められています。
40歳から64歳まで第2号被保険者は国民健康保険とその以外の医療保険に加入している人では保険料に違いが出ます。国民健康保険の場合は「所得割」+「均等割」+「平等割」の計算方法になります。
給与計算の方法7:所得税の計算
給与にかけられる税金の所得税は、給与の控除を引いた金額に対して、ある一定の税率で計算される税金のことです。 所得税は残業代、各種の手当代などを含む給与から非課税の手当と給与控除を引いた「課税所得」x税率-税額控除額の計算方法になります。
課税される給与金額195万円以下の場合は、税率5%、195万円超330万円以下は10%、695万円超900万円以下は23%といったように7段階の税率が決まっています。
給与計算の方法8:住民税の計算
住民税は地方自治体により税率に違いがあります。住民税の計算方法は「所得割額」と「均等割額」をプラスして求めることができます。「所得割額」とは1年間の所得部分に課税される税額のことです。
「均等割額」とは住民税を地方自治体に住んでいる住民で均等に分担する税金のことです。そのため地方自治体によって税率に違いがでることになります。
給与計算にまつわるリスク
給与計算は絶対に間違えないようにしなければなりません。給与計算をする上で知っておきたいことややってはいけないことなどについて説明をします。給与計算の方法は、毎月変動する部分と控除額や割増率といったややこしい計算があるため大変な業務になります。
そのため計算の方法を間違えるといったリスクもあります。給与計算にまつわるリスクとして労務リスク・情報漏洩リスクなどがあります。
労務リスク
給与計算にまつわるリスクには「労務リスク」があります。労務リスクには残業代の金額相違と残業代の未払いがあります。残業代の金額相違は時間外労働時間の入力ミスで起こります。
残業代の未払いは、会社の信用にもかかわることで絶対にやってはいけません。違いがあります。時間外労働時間の入力ミスによる残業代の金額相違、残業代の未払いを防ぐために自動で計算し、間違いがすぐにわかるようなシステムを導入しましょう。
情報漏洩リスク
給与計算をする総務課には、通勤手当や家族手当を支給する上で個人の住所・名前・家族構成など個人情報が集められています。そしてほとんどの会社がパソコンなどの端末を使って計算をしています。計算されたデータはUSBメモリーなどで管理されています。
データが保存されているUSBメモリーなどの置き忘れや紛失による個人情報の漏洩リスクがあります。個人情報漏洩は会社が社会から信用を失うことになる大変重要なことです。
税務リスク
所得税は給与所得によって決まります。しかし、住民税は地方自治体により税率が違うため計算で間違えるといったリスクが生じます。また所得税も基礎控除額、総合課税、分離課税などの項目を考慮する必要があるので間違えるリスクが増えます。
給与計算に関係する賃金支払5原則とは
給与計算は「賃金支払い5原則」によって行います。「賃金支払い5原則」は労働基準法第24条に定められています。 賃金支払い5原則とは 通貨払い・直接払い・全額払い・毎月払い・一定期日払いのことです。
賃金支払5原則その1:通貨払いの原則
毎月支払う給与は、会社が倒産などよほどの事情がない限り現金での支給と指定された口座に振り込むのが原則です。 給与の代わりとして会社の製品などの現物や小切手で支払うことはできません。
しかし、契約時に現物や小切手の支給を了解していれば現物や小切手の支給方法でも問題はありません。
賃金支払5原則その2:直接払いの原則
毎月支払う給与は、本人に直接渡す方法かあるいは本人名義の口座に振り込む方法が原則です。本人以外の名義の口座に振り込む方法は基本的にはやってはいけません。しかし、本人以外の名義の口座に振り込む方法でも本人が了承している場合は振り込むことができます。
賃金支払5原則その3:全額払いの原則
毎月支払う給与は、労働基準法第24条の定めにおいて給与の全額を払うのが原則です。給与は支給される従業員の生活の安定を守らなければならないのが原則のためにこのような決まりになっています。また全額の支払い方法でない場合は未払いの金額を会社に請求することができることを覚えておきましょう。
賃金支払5原則その4:毎月1回以上の原則
労働基準法第24条によれば給与は毎月1回以上支払わなければならないという原則があります。月初めから月末の間に1回以上給与を支払う義務があることです。年俸制の払いの方法では12回以上に分割して支払う必要があります。年俸制の払いの方法だからといってまとめて払うことは許されません。
賃金支払5原則その5:一定期日払いの原則
給与は一定期日払いの方法が原則です。 一定期日払いの方法とは月に何日といったように厳密に規定する必要はありません。月給であれば月末払いの方法、週給であれば週末払いの方法で問題はありません。月末払いの方法は支払い日を変更することは違反となりますので注意をしましょう。
給与計算や給与明細発行をカンタンに行えるソフト2つ
毎月の給与計算や給与明細発行が手間がかかる業務です。給与計算や給与明細発行の業務を簡単な方法で行えるソフトがありますので紹介します。業務を簡単な方法で行えるソフトとして「人事労務freee」と「マネーフォワードクラウド給与」があります。次項からそれらのソフトについて解説します。
給与計算や給与明細発行をカンタンに行えるソフト1:人事労務freee
給与計算や給与明細発行をカンタンに行えるソフト「人事労務freee」とは東京都品川区に本社を構えて、500名ほどの従業員で事業を展開しているfreee株式会社が提供しているソフトです。従業員の出勤時間・退勤時間などのデータから給与計算の自動化、給与明細の自動化、振込ファイルの自動化ができるソフトで、スマートフォンでもできます。
給与計算や給与明細発行をカンタンに行えるソフト2:マネーフォワードクラウド給与
給与計算や給与明細発行をカンタンに行えるソフト「マネーフォワードクラウド給与」は東京都港区に本社を構えて事業を展開している株式会社マネーフォワードが提供しているクラウド型会計ソフトです。
健康保険料率、厚生年金保険料率、所得税率などが自動的に更新します。また従業員の情報の登録、扶養控除などが一元管理できる方法により毎月の面倒な給与計算を簡単にしてくれます。
総務経理担当者は給与計算の基本を理解しよう
給与計算の正しい方法、給与計算の原則やポイントなどについて説明をしてきました。給与は従業員の生活に大きな影響を与えます。給与計算は間違ってはいけない大変重要な業務になります。給与計算の基本の方法を理解することが大事です。
給与計算を担当する総務課の経理担当者は、保険料の計算方法、控除の割合、残業代の割増率、税金の計算方法など給与計算の基本を理解して間違いのない給与を支給するようにしましょう。