自営業者に必要な税金申告と申告方法|自営業だと税金が高い?

財務・資金

自営業者の納める税金は、5つ

自営業は個人事業主といわれ、5つの税金があります。
・所得税
・住民税
・国民健康保険税
・個人事業税
・消費税

です。それぞれ、税金内容と申告手続き・支払方法が違います。

自営業の税金 ~所得税~

所得税は、1月1日~12月31日までに得た個人所得に対して支払う税金です。会社員の場合は、会社で源泉徴収され、会社が個人にかわって納付しています。自営業者の場合は、自分で所得税を申告して納めます。

所得税の税金額

所得税は課税所得額に対して税率を掛けた金額です。
総収入額(売上額)―経費―控除額=課税所得
課税所得×税率―所得税速算表の控除額=税金額
税率は、課税所得の金額により違います。

所得税の税率(一部のみ)

    課税所得             税率
 195万円以下             5%
 195万円超~330万円以下     10%
 330万円超~695万円以下     20%
 695万円超~900万円以下     23%

所得税のシュミレーション

課税所得額     所得税額の計算式         所得税額
300万円   300万円×10%-97,500円      202,500円
500万円   500万円×20%-427,500円      572,500円
700万円   700万円×23%-636,000円      974,000円
※所得税には、別途復興特別所得税がかかります(所得税額×2.1%・平成49年まで)

所得税の申告時期

・毎年2月16日~3月15日まで(その年の曜日により前後します)
・前年の所得に対する所得税の申告をします。

所得税の申告方法

・毎年地域で設置される青色申告会場に行き、提出する
・税務署に持参する
・税務署に郵送する
・税理士に依頼する
・インターネット(e-tax)で申告する

というような形があります。

所得税の納付期限

・翌年、3月15日までとなっています。

自営業者の税金 ~住民税~

個人の所得に対して支払う税金で、市町村に支払う市区町村民税と都道府県に支払う都道府県民税の2つをあわせて支払います。

住民税の税率(例)

住民税は地方税です。住んでいる都道府県・市区町村により税率が違います。
(詳しくは、お住まいの市区町村に問合せてください)
住民税は、所得割と均等割で計算されています。
・所得割は、一律10%   (内訳:都道府県4%・市区町村6%)
・均等割は、一律5,000円(内訳:都道府県1,500円・市区町村3,500円)
 ※住民税 均等割は、東日本大震災の復興財源確保のため1,000円加算されます
(平成35年まで)

住民税の税金が非課税になる場合

住民税は、ケースにより非課税になる場合があります。
【住民税の所得割・均等割とも非課税になるケース】
・合計所得金額が、市区町村の非課税基準以下の場合
・障害者・未成年者・寡婦・寡夫に該当し、所得金額が125万円以下の場合
・生活保護法による生活扶助を受けている場合
【所得割のみ非課税になる場ケース】
総所得金額等が一定の金額以下の場合、税金が非課税になります。
・扶養家族がいる人・・・{35万円×(本人+扶養家族の人数)+21万円以下}以下
・扶養家族がいない人・・35万円以下

住民税のシュミレーション

住民税課税所得額     住民税額の計算式           住民税の税額
300万円      300万円×10%+5,000円        300,500円
500万円      500万円×10%+5,000円        500,500円
700万円      700万円×10%+5,000円        800,500円

住民税の申告方法

住民税は、申告する必要はありません。税務署へ所得税の申告を行うとそのデーターが市区町村へ通知されるようになっています。6月に住民税の納付通知書が送られてきます。

住民税の納付期限

住民税は、翌年に4回の分納で納めます。(一括払いもできます)納付通知書に納付期限が書かれています。

自営業者の税金 ~国民健康保険税~

国民健康保険の掛け金として納める税金です。(市町村によっては、国民健康保険料という場合があります)国民健康保険に加入していると、病院にかかった時の医療費は3割負担になります。その保険料が国民健康保険税です。国民健康保険の運営を市町村が行っているので「国民健康保険税」という税金となっているのです。自営業者の場合は、国民健康保険に加入しなければなりません。

国民健康保険税の税率(例)

国民健康保険税は各市町村が管理しているため、市町村によって計算方法・税率が違います。(詳しくは、お住まいの市区町村に問合せてください)

【東京都大田区(平成27年度)の場合】
●国民健康保険税は年齢により支払う内容が違う
・39歳以下の人・・・医療分+後期高齢者支援金分
・40~64歳の人・・・医療分+後期高齢者支援金分+介護分

●医療分・後期高齢者支援金分・介護分それぞれの税額・税率
・医療分(年間限度額54万円)
 所得割・・・(所得額-33万円)×6.86%
 均等割・・・35,400円/一人
・後期高齢者支援金分(年間限度額19万円)
 所得割・・・(所得額-33万円)×2.02%
 均等割・・・10,800円/一人
・介護分(年間限度額16万円)
 所得割・・・(所得額-33万円)×1.33%
 均等割・・・14,700円/一人

国民健康保険税のシュミレーション

【東京都大田区(平成27年度)/39歳以下、加入者1名の場合】

住民税の課税所得額    所得税額の計算式           住民税の税額
300万円    医療分    (300万円-33万円)×6.86%+35,400円=218,562円
      後期高齢者支援金分 (300万円-33万円)×2.02%+10,800円=64,734円
                             合計約283,000円

500万円    医療分    (500万円-33万円)×6.86%+35,400円=355,762円
      後期高齢者支援金分 (500万円-33万円)×2.02%+10,800円=105,134円
                             合計約460,000円

700万円    医療分    (700万円-33万円)×6.86%+35,400円=492,962円
      後期高齢者支援金分 (700万円-33万円)×2.02%+10,800円=145,534円
                             合計約638,000円
※年間保険料の最高額は、890,000円となっています。

国民健康保険税の申告方法

国民健康保険税も住民税と同じで申告する必要はありません。国民健康保険税の税金額は、所得により変わります。そのため、住民税の金額から国民健康保険税の金額が計算されています。6月に保険料の納付通知書が送られてきます。

国民健康保険税の納付期限

国民健康保険税は、翌年に10回の分納(6月から翌年3月まで)で納めます。(一括払いもできます)

自営業者の税金 ~個人事業税~

個人事業税は、法律できめられている70の業種(=法定業種といいます)に課税されている税金です。課税される事業は、第一種から第三種にわかれ、事業の種類により税率も違います。また、個人事業税のかからない業種もあります。

個人事業税の法定業種の種類と税率

●第一種事業・・・税率5%
物品販売業・保険業・不動産貸付業・不動産売買業・製造業・運送業・倉庫業・印刷業・写真業・広告業・冠婚葬祭業など
●第二種事業・・・税率4%
畜産業・水産業・薪炭製造業
●第三種事業・・・税率5%
医業・歯科医業・薬剤士業・獣医師業・司法書士業・行政書士業・税理士業・設計監督業・不動産鑑定業・理容業・美容業・クリーニング業など
●第三種事業・・・3%
あん摩・マッサージまたは、指圧・はり・灸・柔道整復その他の医業に類する事業・装蹄師業
※法定業種にない文筆業(ライター)は個人事業税はかかりません。

個人事業税のシュミレーション

個人事業主控除が年額290万円あるため、所得金額が290万円の場合納税義務はありません。
・税額5%の場合
事業税の課税所得額  個人事業税額の計算式         個人事業税の税額
300万円     (300万円-290万円)×5%         5,000円
500万円     (500万円-290万円)×5%       105,000円
700万円     (700万円-290万円)×5%       205,000円

個人事業税の申告方法

個人事業税も国民健康保険税や住民税と同じで申告する必要はありません。所得税の確定申告書類より解散されます。都道府県から納付通知書が送られてきます。

個人事業税の納付期限

個人事業税は、翌年に2回の分納(8月と11月)で納めます。(一括払いもできます)

自営業者の税金 ~消費税~

売上金額が1,000万円を超える場合、消費税を納税することになります。消費税の納税義務のある業者を「課税事業者」といいます。一定の判定機関を経て、課税事業者となります。

消費税の課税事業者の判定

【平成29年度が課税期間だった場合】
●基準期間・・・消費税を支払う年の前々年(平成27年)の1年の課税売上高1.000万円を超える場合
●特定期間・・・前年(平成28年)の前半期(1月~6月)の課税売上高及び給与等支払額の合計が1,000万円を超える

上記2つの要件のどちらかを満たすと、課税事業者となります。

消費税の税率と計算方法

消費税の税率は現在8%です。消費税の計算方法は、簡単にいうと「差額」です。
課税売上高×8%―課税仕入高×8%=消費税額
※消費税には、簡易課税制度といわれる計算方式もあります

消費税の申告方法

税務署に課税期間翌年の3月31日までに申告します。また、前年度の消費税金額によって中間申告が必要な場合があります。

消費税の納付期限

納付期限は3月31日です。早めに申告して納付するのが良いでしょう。

自営業者の納める税金~まとめ~

自営業の人が納める税金は、確定申告後に納税するため『高い』、『納めるのが大変』と思われています。「所得税」と「住民税」は会社員の人と同じです。しかし、「国民健康保険税」が高く、「個人事業税」と「消費税」は事業を行う上では避けられない自営業者が納める税金といえます。自営業の場合は、正しい税知識をもち、納める税金の確保をしておく必要があります。

自営業者の税金 ~節税対策~

自営業は会社員と違い自分で事業を営んでいますので、自分で『節税対策』を行うことができます。節税対策を知っておきましょう。

自営業者の税金 ~節税対策① 事業の経費を見直す~

自営業者の場合、日常生活の支出の中に事業経費として計上できる費用があります。

【日常生活支出で経費にできる費用】
・自動車の原価償却費・車検代・保険代・修理代・ガソリン代
 事業に使用した距離や使用する日数に応じて経費に計上できます)
・電気・上下水道代・ガス代・灯油代などの水道光熱費
 (事業に使用しているスペースの広さに応じて経費に計上できます)
・住居の家賃・火災保険料・地震保険料・住宅ローンの支払利息
(事業に使用しているスペースの広さに応じて経費に計上できます)
・電話代(固定・携帯共)、インターネット接続料などの通信費
 (仕事の頻度の割合により経費に計上できます)

【事業に必要な経費としての費用】
・新聞代
 (仕事のために購入していれば経費として計上できます)
・飲食代
 (カフェ・レストランなどで、仕事の打合わせ・仕事スペースとして一時的に使用した場合は、経費として計上できます)

【業務関連費用としての費用】
自営業の事業の内容によっては経費として計上できる費用もあります。事業内容に関連していなければ経費としてみとめられません。
・例1・・・スーツやドレス
仕事のためのパーティや会合で着用するためだけのスーツやドレスなどの衣装代
・例2・・・リサーチ費用
同じ業種の競合他社のマーケットリサーチ費用
ネイルやエステなどの同業他社のサービスをリサーチするためのエステ費用や温泉地などの宿泊で同業者の調査などの宿泊旅行代

自営業者の税金 ~節税対策② 青色申告制度を利用する~

自営業者が『青色申告制度』を利用すると節税効果を大きく得られます。『青色申告制度』は一定の条件を満たす確定申告を行うと65万円の所得控除が受けられる制度です。節税効果は所得税だけではなく、住民税・国民健康保険税・事業税にも及びます。

【青色申告制度を受ける条件(抜粋)】
・青色申告制度を利用して確定申告を行くことを税務署に申請する
 (青色申告をする年の3月15日までに申請をする)
・複式簿記で帳簿をつける
・決算で「貸借対照表」及び「損益計算書」を作成する

【青色申告での節税効果】
青色申告なし 365万円の課税所得と青色申告あり300万円の課税所得で、所得税・住民税・国民健康保険税・事業税を試算すると、あわせて約25万円青色申告のほうが安くなります。

【青色申告制度によるその他節税方法】
・青色専従者給与
家族で一緒に事業を行っている場合、配偶者やその他家族に給与を支払うことで経費となります。
・貸倒引当金の計上
年末に売掛金や未収入金・受取手形などがある場合、金額の5.5%まで貸倒引当金として必要費用に入れられます。もちろん、前年の引当金より当年の残高が少ない場合は、貸倒引当金を戻し入れなければなりませんので注意が必要です。
・繰越損失
事業が赤字になった場合、翌年以降の3年にわたり損失を繰越することができます。つまり、3年にわたり赤字分を所得から差し引くことができます。
・少額減価償却資産の一括計上
青色申告者は、30万未満なら全額経費にできます。

自営業者の税金 ~節税対策③ ~保険~

自営業者を対象とした公的保険と年金の掛け金が所得控除の対象になっています。保険・年金とも必要に応じて加入し、その掛金で節税ができますので利用しましょう。
【節税可能な自営業者の公的保険と年金】
・小規模企業共済等掛金
・中小企業倒産防止共済掛金
・確定拠出年金掛金

自営業者の税金は、把握するところからはじめましょう

自営業者になると、他人まかせることができないのが『税金』です。自営業の税金は種類もいろいろあり、税額も所得や扶養家族の人数により違います。また、所得に対して後から納めるため、納税するまで『税金』を確保しておく必要があります。おおまかでも税額を把握しておくことが必要です。

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