損金不算入とは
損金不算入のことをを知る前にまずは税金の計算方法を知ることが大事です。基本的な考え方は決算書と同じなので、意味がわかると税金計算もそれほど難しいものではなくなります。ここでは、損金不算入と言われる意味について、決算書との関係を交えてお話します。
決算書と税金の関係
税金を計算するときに必要なものは会社の決算書です。では、決算書はどうやって作るのかというと事業年度内の収入と支出を集計して項目(科目)に分けて作成します。
収入には、事業年度内に納品したものは含まれ、受注や見積もりは含まれません。費用も同じように事業年度内に納品されたものが含まれ、発注段階のものは含まれません。また、製造途中の商品も在庫として計上するため費用にはできません。
こうして作成された決算書は、社外に対して会社の業績を報告する資料となるほか、税金計算のスタート地点としても利用されます。ちなみに、損金というのは、決算書で言うと費用になり、決算書で言う収益のことを益金と言います。また、税金計算上の利益のことを課税所得と言うなど、基本的な考え方は決算書と変わるものではありません。
損金不算入と呼ばれる意味
さて、本題ですが、売上を達成するためにかかった費用はすべて計上できますが、税金を計算するときには一部費用とされないものがあります。これを損金不算入といい、損金不算入の基本的な考え方です。言い換えると企業が作成した決算書上で費用とした金額のうち、税金計算をするときに費用にならないものが損金不算入といいます。
損金不算入制度・損金不算入額
そもそも損金不算入制度ができた背景には、課税の公平という根本的な考え方があるからです。課税の公平とは、規模の大小や収入の多寡に応じて税負担をさせようという考え方です。
また、その時代の状況に応じてその時の政府が項目別に課税したり課税しなかったりを決定します。たとえば、将来の費用発生を見込んで毎期計上する引当金は、もともとは、損金算入できたものが、現在ほぼ損金不算入となっています。
ビジネスマンとして知っておきたい損金不算入項目
先で紹介した引当金以外にも税法では、さまざまな損金不算入項目が設定されています。どの項目も限度額が設けられていて、その限度額を超えるものが損金不算入として取り扱われます。ここでは、ビジネスシーンで絡んでくる代表的な4つの損金不算入項目についてお話します。
役員給与・役員退職金
登記上登記された取締役はもちろん、登記はされていないけど実質的に経営者となるものなど税法上の取締役の範囲は広くなっています。実質的な経営者とは、肩書はないけど取締役会に参加して経営に口出ししている方やさまざまな経営事項の決定権を持った人を言います。
交際費
飲食を伴う接待はもちろん、その際に負担する帰りのタクシー代などの交通費やイベントなどのノベルティグッズも交際費となるケースがあります。税法で定める交際費は、事業に関係するものに飲食や金銭、これらに類するものを使って接待や饗応した場合と定義されています。
ところで、接待費の中にキャバクラやクラブなどの飲み代を計上しているケースもあるのですが、接待費として会社の経費に計上するためには、誰と何人で行ったかということを記載しなければなりませんので、同席者の名前を明かせない場合は、業務に関連する費用だとしても経費計上することは認められないということです。
寄付金
寄付金は、交際交際費とほぼ同様の扱いですが、事業に関係しないものへの飲食や金銭などの支出を言います。また、従業員であっても、会社から受けたサービスや商品に対して正当な支払いをしない場合も、本来払う額と支払った額との差額が寄付金に該当します。
租税公課・税金
法人運営をしていくとサラリーマンと同じように毎年納付しなければならい税金がたくさんあります。その多くは、ここまで紹介した損金不算入や損金算入を経て計算されます。たとえば、法人税や法人住民税、印紙代など登録免許税があります。
損金算入額が制限されるもの
損金不算入制度が取り入れられているのは、課税の公平を保つものというお話をしましたが、ここでは、具体的な例を2点挙げてお話します。
有価証券評価損
有価証券評価損とは、他社の株式を持っている場合に、決算や売却時の価格で算定し直し、算定した価格と簿価を比べて簿価より算定した価格が下回るときのその差額を損失として計上します。言い換えると取得したときよりも株式の価値が下がった場合に簿価と評価額との差額を損失として計上します。
棚卸資産評価損
棚卸資産評価損は、自社が抱えている在庫を評価して、価値が下がっている場合に、その在庫の簿価と評価した価格との差額を損失として計上します。在庫には、商品在庫はもちろん、製造途中の商品やサービスに対して支出した金額も含まれます。
損金算入が認められるもの
課税の公平を目的として取り入れられているのが損金不算入制度なら、課税の公平に現時点では影響がないものが損金算入と言えます。ここでは、損金算入が認められるケースを3点挙げてお話します。
5000円以下の交際費
接待に関わることが多い営業マンは、自社の交際費は○○円までと言う話を聞いたことがあると思うのですが、その根拠となっているのが、これからお話する交際費の中でも飲食に関する交際費の損金参入制度です。
2017年12月現在では、5000円以下の飲食を伴う交際費は、交際費として計上するものの損金算入が認められています。多くの会社では、会社の経費とするためにこの制度を利用して当社の交際費は5000円までと言うルールを設けています。
役員報酬減額・定期同額給与
先にお話した登記上の取締役に加えて実質的に経営に関与しているものへの給与は、定期的に基本的には同額を支払わなければ支払った報酬の最低額との差額が損金不算入となります。これを定期同額給与といいますが、毎月決まった日に決まった額を支払わなければならないということです。
ところで、業績の悪化を理由として事業年度途中で、役員報酬を減額するケースがありますが、税法では、このケースに限り取締役会で決議など所定の手続きがされていれば、この減額した金額との差額は損金算入として取り扱うことになっています。
そもそも定期同額給与ができたのも役員報酬の金額を調整して利益調整していたことによる法の穴を埋めるものとして成り立ったものなので、正当な理由がある減額は、不問にするとしています。ちなみに、事業年度途中での増額は認められていません。
一定の寄付金
損金不算入のところでお話した寄付金ですが、寄付金の内容によって損金算入されます。たとえば、赤十字への寄付や災害時の義援金は、領収書や証明書を添付することで寄附金額の全額の損金算入が可能になります。また、それ以外の寄付金の場合は、資本金や所得によって限度額が計算され、その限度額までが損金算入されます。
損金不算入額の算定方法
基本的には、決まった算式により限度額を求め、支出額のうち限度額を超えた部分が損金不算入になります。寄付金を例にして説明すると、赤十字への寄付金20万円、町内会の祭の寄付として5万円を支出したとすると、要件を満たせば赤十字の20万円は全額損金算入、祭の寄付金の限度額が0.5万円だとすると、4.5万円は損金不算入になります。
同じように引当金も税法で定められた算式で限度額を求め、限度額を超える金額が損金不算入となります。役員報酬の損金不算入は算式による限度額はなく、1年間で最も低い報酬額を基準として、その基準を超えた部分の金額が損金不算入になります。
損金不算入になるケースを知ることで無駄な支出をなくせる
今回は、損金不算入についてお話しました。
税金計算自体は直接関係ない方も多いのですが、交際費や寄付金など知らなかったために、相手にも自社にも迷惑をかけてしまうこともあります。逆に知っていることで合法的に経費とすることもできます。
自分には関係ないと考えずビジネスに活かすつもりで少しだけ勉強してみてはいかがでしょうか。