モンスター社員とは
みなさんの職場に、「モンスター社員」と呼ばれる社員はいませんか。モンスター社員とは常識が一切通じず、職場の調和を乱し、会社に損害を与えるような行動をとるまさにモンスター的な社員のことです。
近年、モンスター社員は職種を問わず全体的に増加傾向にあり、指導や注意をしてもいっこうに自分の行動を改めようとしないモンスター社員に悩まされている上司や先輩社員も多くいると言われています。
種類
モンスター社員と一口に言っても、その種類はさまざまです。メンタルが弱く、ちょっとした注意や叱責にも感情に反応して職場を何日も無断欠席するモンスター社員もいれば、上司の指導を受け入れず反抗的な態度を取り、自分の非を決して認めようとしないモンスター社員もいます。
また、注意をされたことに逆恨みをして、わざと職場に損害を与えようとする悪意のあるモンスター社員もいるでしょう。
モンスター社員の特徴
モンスター社員は、厳しくされることに慣れておらず甘え切った「ゆとり世代」に多いというイメージがもたれています。ですが、必ずしも若い世代にだけモンスター社員がいるわけではありません。
むしろ、上司や先輩に注意されることがなくなったベテラン社員の中にも少なからぬモンスター社員が存在しています。では、どんな人がモンスター社員と言えるのでしょうか。
ここからは、モンスター社員の特徴をご紹介していきます。
特徴1:自己顕示欲・承認欲求が強い
モンスター社員の特徴としてまず挙げられるのが、自己顕示欲や承認欲求が異常に強いということです。
モンスター社員は総じて精神的に幼稚であり、常に自分にスポットライトが当たっていなければ許せないという性格をしているので、上司や先輩・同僚に対して自分を褒めることを過剰に要求します。
その要求が叶わない時にはヒステリックで反抗的な態度を取り、ふてくされて仕事をきちんとしようとしません。
特徴2:自分を正当化する
自分の非を認めず、正当化しようとすることもモンスター社員に共通してみられる特徴のひとつです。
モンスター社員は謙虚さに欠け、異常なほどプライドが高いため、自分が間違っていたとしてもそれを認めようとせず、謝ろうともしません。
また、ある程度のポジションに就いているモンスター社員は、自分のミスを部下や後輩に擦り付け、責任転嫁をしようとすることもしばしばです。
特徴3:自己中心的な性格
モンスター社員の核となる特徴は、自己中心的な性格をしているということです。自分さえよければそれでいいという自分本位な性格をしており、他人や職場のことを考えることができないからこそ、周囲に迷惑をかける行動を平気で取ります。
このようなモンスター社員は「持ちつ持たれつ」を理解することができません。自分は勝手な行動を取るのに、他の社員がミスをしたり助けを求めてきた時には許そうとせず、激高しがちです。
特徴4:自信がない
自信過剰なモンスター社員もいますが、他方で自分に自信がもてないがゆえにモンスター社員になってしまう人もいます。
自信がない社員はちょっとした注意や叱責でもすぐに落ち込み、その自己肯定感の低さゆえに「もうダメだ」と悲観して、会社を無断で欠勤しがちです。
このような社員は総じて打たれ弱いので、通常の指導の範囲内であってもすぐに「パワハラを受けた」と被害者ぶることも多いでしょう。
特徴5:余裕がない
モンスター社員によくある特徴のひとつが、余裕がないということです。心に余裕がなく、また段取りが悪いため時間的にも余裕を作ることができないために、頻繁にミスを繰り返したり、上司に相談や報告もせずに勝手に納期を遅らせたりします。
余裕をもってスケジュールを設定し、納期や締め切りを逆算して計画的に行動するという、社会人必須のスキルを身につけることができていないとも言えるでしょう。
特徴6:モンスター社員という自覚がない
モンスター社員をモンスターたらしめているのが、自分ではモンスター社員という自覚が全くないということです。
モンスター社員は往々にして認知が歪んでおり、自分を客観的に見ることができないため、自分が職場に迷惑をかけていることに無自覚です。
注意や叱責を受けてもそれを真に受けることはありませんし、どこ吹く風で受け流してしまうでしょう。そのため、いつまでたってもモンスター的な行動を改めません。
モンスター社員の対処法
以上では、モンスター社員にありがちな特徴をご紹介してきました。このような特徴に多く当てはまっている人は、みなさんの職場にも一人二人いるのではないでしょうか。
モンスター社員は自分がモンスター社員であることを自覚せず、それを改めようとしないため、その人がいる限り周囲は迷惑を被ってしまうでしょう。では、どうすればよいのでしょうか。
ここからは、モンスター社員への対処法を解説していきます。
対処法1:問題行動は速やかに指導する
まず必要なのが、モンスター社員の問題行動を目にしたらすぐにその場で指導するということです。
問題行動を見逃すと、モンスター社員は「この行動を取っても許されるんだ」と勘違いしてそれを繰り返すようにいなるため、そうならないために、最初の段階で芽を摘み取っておくことが大切です。
感情的に怒ってしまうと反省する機会を持てなくなるため、落ち着いて冷静に間違っている部分を指摘し、改善を促しましょう。
対処法2:入念なヒヤリング
モンスター社員の中には、自分が問題行動を取っていることに気づいていない人も少なくありません。そのため、一方的に叱責するのではなく、どうしてそのような行動を取るのか入念にヒアリングをすることも大切です。
ヒアリングを通じてモンスター社員の思考パターンがどのように歪んでいるのかを理解することで、それを正す方法も見えてくるでしょう。
対処法3:問題行動が改善されなければ罰則を適用
度重なる注意や叱責を行っても問題行動が改善されないのならば、罰則を適用するようにしましょう。
「怒られるくらいならどうってことない」と開き直り、罰則がなければ問題行動に歯止めのきかない悪質なモンスター社員も少なくありません。
彼らをエスカレートさせないためには、「これ以上問題を起こしたら本当に取り返しのつかないことになる」という危機感を持たせることが不可欠です。
事前に告知
モンスター社員の問題行動を抑制するために罰則を適用する際には、必ず事前に告知しておきましょう。
事前に本人に通達することなしにいきなり罰則を適用してしまうと、モンスター社員は反省するどころか反発し、「抗議」という形を取ってより悪質な問題行動にエスカレートしてしまいかねません。
あらかじめ告知をしておけばそのような状態は防げますし、また本人に危機感を持たせることができるので一石二鳥です。
対処法4:定期的にモニタリング
モンスター社員は、放置していればいるほどよりモンスターに変貌していくものですので、定期的にモニタリングをすることは大原則です。
モンスター社員は自分から「報連相」をすることができない人が多いため、こちらから積極的に関わったり、問題行動の芽を摘み取るためにモニタリングをすることが欠かせません。
上司一人だけで監視をするのは大変なので、先輩社員などと分担して定期的にモニタリングをするとよいでしょう。
必要があればカウンセリングを実地
モニタリングをしている中で、モンスター社員が問題行動を起こしそうな時には、カウンセリングを実施することも必要です。
最初のうちはメンターとなる先輩社員がカウンセリングを行い、それでもモンスター社員の意識が変わらない場合には、上司や人事の人間を含めてカウンセリングを行うとよいでしょう。
問題行動を自覚させ、それに対する改善方法をモンスター社員に自分の頭で考えさせることが大切です。
対処法5:長期間問題行動が続く場合は退職を促す
何度も話し合いの場をもち、改善を促してもいっこうに問題行動をやめようとしないモンスター社員は、「公正不可能」だと判断したほうがよいでしょう。
そのモンスター社員がこれ以上職場にいることで、利益は全くなく、むしろ損害を被り続けるだけです。職場全体の士気も下がってしまいかねません。
このように長期間問題行動が続く場合には、同情を見せずにきっぱりとモンスター社員に対して退職を促すべきです。
一方的な解雇は法令違反
注意したいのが、いくらモンスター社員と言えども、一方的に解雇を通達するのは法令違反であるということです。労働者は、会社から一方的に解雇されないようにその権利が保護される存在です。
労働基準法によって保障されているこのような労働者の権利を侵害してしまうと、会社側は最悪の場合、刑事罰に問われてしまいかねません。
どんなに問題のある社員であっても、感情的かつ一方的に解雇を言い渡してはいけません。
解雇が認められる方法
では、モンスター社員を解雇したい時にはどうすればよいのでしょうか。モンスター社員を解雇する際には、「解雇予告」を行うことが必要です。
少なくとも30日前に「あなたを解雇する」という予告を本人に行うことで、解雇することができます。口頭でも文書でもどちらでも解雇予告は可能ですが、30日前に予告をしなかった場合は、30日分以上の給料を本人に支払わなければ解雇できなくなってしまうので要注意です。
対処法6:就業規則を見直す
問題行動がエスカレートするモンスター社員に対しては、就業規則を見直すということも必要でしょう。
就業規則に明確な規定がなければ、それをいいことにモンスター社員は付け上がり、それを防ぐ効果的な手段を持てなくなってしまうでしょう。
モンスター社員の問題行動を防ぎ、もしもそのような行動を取った時には厳格に罰則を適用できるように、就業規則を変更することが必要です。職場環境を守るためにも、迅速に変更しましょう。
モンスター社員のリスク
入社したては真面目でよい社員だったとしても、時間が経てば慣れが生じ、モンスター社員になってしまうこともあります。また、出世してよいポジションに就いた途端、傲慢さが表面に出てモンスター社員と化してしまうこともよくあることです。
このようなモンスター社員を放置した場合、どのような事態になってしまうのでしょうか。ここからは、モンスター社員を抱えたままにしておくことのリスクについて見ていきましょう。
リスク1:職場環境の悪化
リスクとしてまず挙げられるのが、職場環境が悪化してしまうということです。たった一人であっても、問題行動を繰り返すモンスター社員がいれば、職場全体に迷惑がかかり、職場環境が悪くなってしまうでしょう。
とりわけ、モンスター社員の迷惑を直接被る社員は、大きなストレスと精神的なダメージをくらうことになります。
社内の人間関係も悪化し、ぎすぎすした居心地の悪い職場になってしまいかねません。
リスク2:業務のスピード・質の低下
モンスター社員はその怠惰さゆえに頻繁にミスをしでかすものですので、その尻拭いのために周囲は大きな労力を割かねばなりません。
その結果、職場全体の業務のスピードも質も低下してしまうことでしょう。報連相を怠った結果、取引先に取り返しのつかない損害を与えてしまうモンスター社員もいます。
こうなると職場全体でその後始末に動かねばならないため、他の社員の業務にも悪影響が出てしまうでしょう。
リスク3:金銭的な損失
モンスター社員が与えるのは精神的なダメージだけではありません。場合によっては、金銭的な損失を与えることもあります。
モンスター社員は往々にして仕事ができず、それを改めようともしないため、上司や先輩社員が厳格に監督しなければ、時に取り返しのつかないミスをしでかし、金銭的な損害を会社に与えてしまうこともあるでしょう。
その責任をモンスター社員に問うことができないことも多いので、会社は損をするばかりです。
リスク4:訴訟を起こされる可能性がある
他罰的で責任転嫁をするということも、モンスター社員ならではの特徴です。モンスター社員に対して通常の範囲内の指導や叱責を行ったり、あるいは正当な理由での解雇をした場合でも、一方的に逆恨みをされることもありえるでしょう。
最悪の場合、「パワハラを受けた」とありもしない嘘をでっちあげて、訴訟を起こされる可能性もゼロではありません。
会社の社会的信用の損失につながることもある
たとえこちらに全く非がなかったとしても、訴訟を起こされるということは風評被害をもたらし、会社の信頼を傷つけてしまいかねません。
裁判結果がこちらに有利なものだったとしても、裁判を起こされたこと自体が報道をされたりSNSで情報が拡散されてしまうと、会社の社会的信用の損失につながってしまうこともあります。
風評被害を未然に防ぐのはなかなか難しく、対策を講じにくいことでもあります。
モンスター社員を放置するリスクは大きい
今回はモンスター社員について特集してきましたが、いかがでしたでしょうか。モンスター社員は職場の士気を下げるだけでなく、会社の信頼を傷つけ金銭的な損害を与えることもあるので、放置をしてはいけません。
モンスター社員になりそうな社員がいれば、その問題行動がエスカレートする前に芽を摘み取ることが大切です。モンスター社員を放置せず、良好な職場環境を維持しましょう。