法務部って?
法務部は、会社内の法律に関する業務を一手に担っている部署です。コンプライアンスが重視される時代なので、労働基準法に基づいて社員が働きやすい環境を作ったり、社外との取引の際に法律上の問題がないかを確認するなどの重要な業務を行っています。
また、専門的な知識と社内の業務についての知識が必要なため、法学部の新卒でも配属されることは少ないと言われています。それでは、詳しく法務部について確認してみましょう。
法務部の組織内での役割
法務部は社外との法律上のトラブルが起きないように、リスクヘッジを行う役割を持っています。例えば社外との取引で、大きな損失が起きないよう法的アドバイスを行うことなどが挙げられます。
法律上のトラブルが起きると企業にとっては大きなダメージです。大手企業になればなるほど、トラブルがメディア露出してしまう可能性も高まります。そして、一度ついてしまったイメージは覆しにくいため、法務部による法的監査が必要です。
法務部に向いている人
法務部に向いているのは、大学の法学部を卒業しているなど法律に関する知識を持っている人です。
法学部を卒業していない場合は、法律に関する資格を有していると配属される可能性があります。また、海外との取引がある企業の法務部に配属されたい場合は、TOEICで高得点を取得しておくと有利に働く場合があります。
そして、法務部は企業内のあらゆる業務の知識が必要です。各部署が扱っている業務内容を知っておきましょう。
法務部って?法務部の主な仕事内容12個
法務部と一言で表しても、実際の業務は多岐に渡ります。そこで、ここでは法務部が実際に行っている主な仕事内容について紹介します。
企業によっては法務部の中でさらに細かくチームに分かれて、それぞれの専門的な仕事をこなしている場合があります。反対に、法務に関することを1人で何でもこなさなければならない企業もあります。
そのため法務部配属を希望する場合は、必ずその企業の業務体制について確認しておきましょう。
1:契約・取引法務
契約書を作成したり、他社から渡された契約書の内容に法的な問題がないか、また自社が損をするような内容が盛り込まれていないかを確認するのが「契約・取引法務」の主な内容です。
他社や個人のお客様と、取引や協業をする際には必ず契約を交わします。その際に交わす契約書の内容はとても細かく、また法律用語が入っていると素人には理解が難しいこともあります。そこで法律を理解している法務部によるチェックが必要となります。
2:機関法務
機関法務とは、株主総会や取締役会などが法律に基づいて適切に行うことを目的にしています。
株主総会や取締役会は会社法でその開催について細かく定められています。その際の株主や取締役の招集や、株主総会で報告する書類の記載内容に法律上の問題がないかどうかを監査するのが機関法務の業務です。
また、新たな株式の発行に係る業務や、株式の分割などの手続きを行うこともあります。その他、子会社の株券にも関与します。
3:法務相談
法務相談とはその名のとおり、法律に関することについての相談役を引き受けることです。
そのため会社の部署や部門が多いほど、法務相談の量も多くなります。社内の業務内容について幅広い知識が必要とされるため、法務部は法律の知識だけがあれば良いわけではありません。
また社外との取引以外にも、社員の労働環境についての相談に乗ることもあります。セクハラやパワハラの相談を受ける場合もあり、メンタル面でのケアも必要です。
4:紛争訴訟対応
会社と取引先、また個人のお客様とのトラブルに対応するのも法務部の紛争訴訟対応部門の業務です。
会社が個人のお客様と取引している場合は、トラブルに対する問い合わせ先としてお客様相談室やコールセンターが用意されていることが多いでしょう。これも紛争訴訟対応のひとつです。
また会社同士の取引をしている場合の法律上のトラブルに対しての対応や、訴訟になった場合には弁護士とのやり取りなどを担うのが法務部の業務です。
5:法制度調査
法務部が行っている法制度調査とは、法律改正についてのリサーチを行うことです。
会社運営に関係のある法律として、民法や商法、会社法が主ですが、その他にも業務に応じてさまざまな法律に則って業務が行われています。その法律は、ときどき改正されることがあるため、その内容を常に把握していなければいけません。
その改正後の法律がいつから施行されるか、内容はどのようなものかをリサーチするのが法務部の法制度調査です。
6:コンプライアンス・社内規定
コンプライアンスの徹底や周知、また社内規定を定め、その規定が法律に違反していないかなどを確認するのも、法務部の仕事です。
コンプライアンスという言葉はよく聞きますが、それは会社が法律を守って業務を執り行うことを意味しています。そのコンプライアンスが社内で守られているか、その内容が間違っていないかなどを法務部が管理しています。
社内研修を行ってコンプライアンスを守るよう啓発することも法務部の業務です。
7:国際法務
国際法務は、海外の企業と取引をする場合に必要となる法務部の業務です。
海外の企業と取引をする場合には、現地の法律を理解しておく必要があります。そのため、より幅広い法律の知識と語学力も求められるのが国際法務です。そして海外では国によっては、法律が明文化されていなく慣習法のみの場合があるため、より専門的な知識を問われる場合があります。
あらゆるリスクを回避するためにも、国際法務は大事な役割を担っています。
8:商事法務
商事法務とは、会社が仕事をする上で法律を守っているかどうかということをチェックする以外にも、会社内で起こりうる全ての事柄について、弁護士や法律の専門家への橋渡しをする業務のことです。
商事法務はビジネス法務とも呼ばれ、ビジネス法務検定や法学検定などの検定資格を持っていると有利に働く場合があります。商事法務は法務部の中でも、社外へ向けての業務より、社内の紛争などの業務を主に担当することが多いでしょう。
9:裁判や交渉をサポート
法務部の業務でも大きな役割なのが、裁判や交渉をサポートすることです。
裁判へ出頭する役目ではなく、会社の顧問弁護士やその他、専門知識を持った法律家への適切な引き継ぎが主な業務です。また、裁判にならずに紛争を解決できるよう交渉したり、サポートしたりすることもあります。
裁判沙汰になってしまうと企業イメージが落ちてしまうこともあるため、なるべく大事にならない内に紛争を解決するサポート力が求められます。
10:事業の展開や取引をサポート
法務部の仕事内容は多岐に渡り、事業の展開や取引をサポートする大きな役目も担っています。
例えば、会社が新たに店舗をオープンする場合には法律に則って届け出が必要となります。その場合の手続きを担当するのが法務部です。このように新たな事業のサポートを行うという点で欠かせない業務です。
また、取引先が国内か海外かによって適用される法律が変わる場合もあります。適切なアドバイスを行える知識の深さも必要です。
法務部で活かせる資格6つ
法務部に配属されるのは、主に法学部出身者が多いです。しかし、法学部出身じゃなくても法律に関する専門的な知識や経験を持っていると配属される場合があります。
法務に関わる仕事がしたい方は、法務部で活かせる資格を取得してみるのも良いでしょう。
また現在法務部に勤務している方は、その知識をさらに深めるための資格取得もおすすめです。法律は改正されることがあるため、なるべく最新のテキストを使うのが良いでしょう。
1:法学検定試験
法学検定試験は、ベーシックコース、スタンダードコース、そしてアドバンストコースの3コースに分かれています。
それぞれのコースによって試験科目が異なり、ベーシックコースは法学入門、憲法、民法、刑法からの出題です。スタンダードコースになると、さらに追加で民事訴訟法・刑事訴訟法・商法・行政法の中から1科目を選択します。
また上級のアドバンストコースは、さらに選択科目も増えるため、難易度も上がります。
2:ビジネスコンプライアンス検定
ビジネスコンプライアンス検定は、仕事を行う上で必要なコンプライアンスに関する知識や能力について問う試験です。
法務部の業務において、コンプライアンスの知識を持っていることは優位です。そして、有資格者はビジネスコンプライアンス知識を持っていることを示すことができるので、転職する際にも役立ちます。
ビジネスコンプライアンス検定は、初級と上級の2段階に分けられているので、初級から気軽に挑戦してみましょう。
3:ビジネス実務法務検定試験
ビジネス実務法務検定試験は、東京商工会議所が主催している民間資格です。
ビジネスコンプライアンスの知識を持っていることを示す資格で、1級~3級に分けられています。また受験資格は、2級と3級においては制限がありませんが、1級は2級に合格してからでないと受けられません。
4:個人情報保護士認定試験
個人情報保護士認定試験は、個人情報保護法を適切に理解しているかどうかと、個人情報を適切に管理・運用できるかどうかを問う民間資格です。
会社の規模が大きくなると、取り扱う個人情報の量も増え、その管理を適切に行えるかどうかをチェックするのも法務部の業務とされる場合があります。
そして個人情報保護士の資格は、大手企業が取得を推進していることもあり、転職で優位に働くおすすめの資格です。
5:司法書士
司法書士の資格は国家資格で、司法書士法の知識を持っているかどうかを問われる試験です。
司法書士試験は筆記試験、口述試験があり、合格率も例年1桁台の難関資格です。そのため、保有していると法務部の業務に役立つだけではなく、転職でも有利に働きます。
6:行政書士
行政書士は行政書士法に基づく国家資格ですが、実際の試験内容は民法や行政法が主体です。
官公庁への提出書類を作成することができるので、法務部の仕事に役立ちます。また行政書士は受験資格の定めがないため、誰でも受けられる間口の広い法律系資格として人気があります。
法務部の仕事内容を理解しよう!
今回は法務部の仕事内容について紹介しました。
法務部は、会社を運営していくにあたって重要な部署です。そのため会社を芯から支えたいという方に向いている部署とも言えます。
そして法務部の多岐に渡る業務はやりがいがあるため、法律が好きで仕事に打ち込みたい方におすすめです。