給与計算について
従業員を雇うと、必ずやらなければならない業務が給与計算です。給与計算とは、社員への正しい給与額を計算し、国に納める税額や保険料を正しく計算する業務です。
毎月、同じ額に見えるますが、項目ごとに計算方法が複雑になっているので、実際に給与計算をすると大変です。なので、給与の主な概要や、給与計算のための準備や計算方法、業務上におけるリスクは何かまでを細かくお伝えしていきます。
総支給額から控除額をひいた差引支給額を算出する業務
給与計算の差引支給額をだす方法は、総支給額から控除合計を引いた金額です。従業員が実際にもらえる金額になります。控除合計は社会保険料、労働保険料、所得税、住民税などの支給額から計算された、引かれる部分の合計金額です。
給与計算の重要性と必要な知識
1人でも従業員を雇えば、毎月のお給料を支払わなければなりません。従業員の生活に大きく関わるものなので、給与計算にミスは許されません。計算方法に誤りがあった場合は、会社の信頼がなくなり、従業員のやる気を失うことになります。
また、給与は労働契約に基づいて支払われるので、そのまま全額を支給すれば良いというものではありません。社会保険料については、企業が給与から源泉徴収して納付することが決められています。
労務:労働基準法の知識と自社の就業規則に関わる理解
労働基準法は、労働契約や賃金、労働時間や休日・休憩・有給休暇などの、基準を定めた国の法律のことをいいます。国籍を問わず、正社員から臨時社員や派遣社員、アルバイト・パートなどの労働者全てに当てはまります。
就業規則とは、その職場での労働条件や職場規律などを定めたもので、会社と従業員が第一に守る会社の中の憲法です。主に、始業・終業時刻や賃金の給与計算および支払い方法など、就業に関わること全てです。
税務:所得税や住民税のしくみや納付に関わる知識
所得税の最終的な額は、1年間の所得に応じて決まります。そのため、月々の給与から天引き額はあくまで見込みのもので、1年間の所得が確定してから計算をし直し差額を調整します。これが年末調整で、給与計算で重要な業務です。
住民税は、前年の所得に対して自治体が計算をして、企業に納入通知書が送られてきます。
情報漏洩:その重要性とリスクに関わる十分な理解
給与計算では、従業員や扶養家族の個人情報が必ず必要になります。個人情報には、生年月日や、交通費の計算をするための住所や家族構成なども含まれるので、慎重に扱わなくてはなりません。
もし情報が漏れた場合は、個人情報保護法違反や刑事罰、従業員から訴えられる可能性が出てしまいます。今では、マイナンバー制度もあるため、以前よりも情報漏洩のリスク高くなったので、漏洩しないための方法やシステムが必要です。
給与の計算方法
給与計算の概要が分かってきたら、次は計算方法にいきます。給与の支給額には、固定的なものと変動的に変わるものに分かれます。
固定してるものは、就業規則などの中で定められているので、計算の必要はありません。ですが、時間外・休日・深夜労働の割増賃金などの変動的なものは、勤務状況や残業時間に基づいて計算しなくてはいけません。
それでは、その元となるデータの集め方と計算方法についてお伝えしていきます。
給与の計算方法1:勤怠の集計
従業員の月の勤務状態を記載する項目があります。主に、労働基準法で賃金台帳に記入しなくてはいけない、出席日数・総労働時間・時間外労働時間・休日労働時間・深夜労働時間などがあり、これらは把握して記載しなくてはいけません。
そして、欠勤日数・遅刻時間・早退時間・私用外出時間なども把握しておく必要があります。毎月の給与計算の勤怠控除の計算方法に使うからです。
給与の計算方法2:人事データや営業データの確認
給与計算を正しくするには、人事データの確認が必要になります。基本給や固定されている手当類は、勤続年数や年齢、職種、職位、役職に応じて決まります。また、家族構成や住所の変更だけでも総支給額が変わってきます。
また、歩合給やインセンティブなどは営業成績や業務成績に応じて計算されます。なので、人事データと営業データは毎月の確認が必要になります。データの保管方法がソフトなどでも同じです。
給与の計算方法3:不就労による控除額の計算
遅刻や早退、欠勤などによる不就労の控除の給与計算方法は、労働基準法で明確に決まっているわけではありません。なので、会社の就業規則や賃金規定などで定めた計算方法が認められます。
端数処理は切り捨てとします。1円でも多くしてしまうと不就労部分以上の控除と考えられ、ノーワークノーペイの原則に反してしまいます。
給与の計算方法4:総支給額を決定
総支給額とは、基本給に各種手当、立て替えた経費の払い戻しなどを全て足した金額のことです。なので、まずは基本給と各種手当の計算をする必要があります。
基本給は社員ごとに違い、昇級のある月などは注意が必要です。また、各種手当は部署や職種によって変わります。営業手当は交通費によっても変わりますし、残業代がつかない職種もあります。それぞれ、見落としがないように注意が必要です。
給与の計算方法5:控除額の計算
給与計算での各種支給額の計算後、控除額を出さないといけません。控除額を出す方法は、まずは厚生年金や健康保険、雇用保険などの社会保険料の計算をします。
所得税は社会保険料を控除した金額にかかるため、先に社会保険料を計算した後に出しましょう。最後に、金額が決まっている住民税や社宅家賃などの控除額を差し引きます。住民税は住む地域ごとに違いがあり、月に1度、会社または個人宅あてに納付書が送られます。
給与の計算方法6:差引支給額を計算
差引支給額は、総支給額から上記で説明した、社会保険料、取得税、住民税などで計算して出した控除額を引いた額のことをいいます。この金額は、総支給額の8割程度であることが一般的です。
差引支給額は、源泉徴収票の集計の右端に記載さている金額になります。また、差引支給額は手取り金額と呼ばれており、給与計算をして最終的に従業員の手元に残るのがこの金額になります。
給与の計算方法7:給与明細の作成
給与明細は、給与計算した給与の内訳を記載したもので、これらは必ず従業員に通知をしなくてはなりません。通知しなくてはならない内容は、所得税や社会保険料、雇用保険料などの給与から控除した額であり、通知は法律により義務付けられています。
給与明細の配布方法ですが、こちらは紙でも電子データでも問題ありません。
給与の計算方法8:賃金台帳への記録
賃金台帳への記録は労働基準法により、罰則付きの義務となっております。正社員から日雇いの労働者まで全ての従業員のものを作成しなくてはなりません。
賃金台帳へ記録する項目は、氏名と性別、賃金の計算した期間、労働日数と労働時間数、残業労働・休日労働・深夜労働時間数、総支給額の内容と控除金額になります。
これらは、労働基準監督署の調査では必ずチェックされる重要な項目です。電子媒体で作成する方法もあります。
給与の計算方法9:各従業員への振り込み手続き
給与は原則として全額を現金で支払わなければいけません。従業員の同意を得た場合に銀行振込ができるようになります。会社から銀行の指定はできず、同意を得ていても手数料は会社が負担しなくてはなりません。
現在では、ネットバンキングに従業員の口座を登録をしておき、給与計算した賃金を毎月振り込む方法が一般的となっています。ですが、振り込みを行うことについては、労使協定も必要となるので注意が必要です。
給与の計算方法10:各従業員へ給与明細の配布
給与明細の発行と、記載する項目は法律で義務付けられています。記載する内容は、基本給、手当、その他の賃金の種類ごとと金額、源泉取得税、労働者に負担すべき社会保険料額など、賃金から控除した金額がある場合は、その項目ごとにその金額、口座振込を行なった金額です。
決まったフォーマットはありません。独自に作ることもできますが、ネットでもダウンロードができ、法律で定められた項目でできています。
給与の計算方法11:社会保険料・税金の納付
納付すべき額は、従業員の控除した被保険者負担額と、会社が負担する額の合計の金額になります。当月分を翌月末日までに納付しなくてはなりません。
雇用保険料は毎月納付する必要はなく、労災保険料と一緒に毎年1回の労働基準監督署に納付します。所得税は、当月分を翌月10日までに銀行に納付書を使用して納付します。住民税も納税方法は同じで、当月分を翌月10日までに銀行に納付書を使用して納付します。
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給与計算の準備
給与計算をするにあたって、準備しておくものが4つあります。
それは、就業規則、従業員の情報、社旗保険の加入、勤怠の管理です。就業規則には、賃金規定があるので、先に決めなくては何も進みません。
そして、従業員の情報と勤怠の管理をしなければ、基本給や手当、控除額の計算ができません。社会保険に関しては、加入条件を満たしている場合は必ず入らなければならず、加入していないと税金の納付額の計算ができません。
準備1:就業規則・給与規定の作成
就業規則は、給与計算なときにも必要な項目があるため、給与計算をする前に決めなくてはなりません。
必ず載せなくてはならない項目は、労働時間に関わること・交替制の勤務の交代時間、臨時の賃金以外の計算方法と締め日、支払い方法などの給与計算に関わることや昇給について、解雇になる理由を含む退職に関わることです。
他にも、制度として定めているのなら載せなければならない、相対的記載事項というのもあります。
準備2:従業員情報の収集・更新
従業員の情報は給与計算にも大きく関わってくるものなので、毎月の給与計算前に収集・更新を必ずやっておきましょう。
集めなくてはならない情報は、勤続年数、職種、役職、家族構成、勤務地の変更・転居などで、これらは毎月必ずチェックしなくてはならない項目です。この情報が変わるだけで基本給や手当、所得の控除額が大きく変動してしまい、給与計算に誤りが生じてしまいます。
準備3:保険の加入
社会保険は国の社会保障制度の一つなので、一定の条件を満たした事業所とその従業員は当人の意思に関係なく加入する義務があります。これらは雇用形態に関わらず条件が当てはまれば加入しなくてはなりません。
1週間の労働時間が30時間以上、31日以上続けて雇用される予定があるようなら加入対象です。また、従業員が501人以上の企業で、1週間の労働時間が20時間以上の場合も加入対象になります。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)
保険料は給与によって変わるため、その月の給与に変わりがないかを確認してから、健康保険料を計算しましょう。また、健康保険組合や都道府県によって料率が違うので注意しましょう。
・健康保険料の給与計算方法:標準報酬月額×健康保険料率/2
厚生年金の保険料率は、平成29年9月以降から18.300%となっています。
・厚生年金保険料の給与計算方法:標準報酬月額×厚生年金保険料率/2
社会保険(介護保険)
従業員が40歳の誕生日の前日の月〜65歳の誕生日の前日の月の場合は、健康保険料と介護保険料を納めるようになります。介護保険料率は協会けんぽの場合、全国同じで1.73%です。この数字は変わることもあるので確認が必要です。
・介護保険料の給与計算方法:標準報酬月額×介護保険料率/2
労働保険(雇用保険)
雇用保険は、失業、育児、介護などで働けなくなった場合に、再就職や収入の減少の際の支援をしてくれます。事業所にも雇用を継続するための支援金が支払われています。
雇用保険料率は事業の種類によって3つに分かれ、一般の事業、農林水産や清酒製造事業、建設事業と、それぞれの料率が違います。
雇用保険料の給与計算方法:雇用保険対象の従業員の賃金総額×雇用保険料率
労働保険(労災保険)
労働保険は、業務上のケガや病気で働けなくなった労働者の生活費や療養費の補償することが目的です。労災保険料は全て事業所が負担をしなくてはなりません。
労働保険料は、毎年4月1日〜3月31日までの見込み賃金額を元に計算します。労災保険料率は、事業種ごとに決まっているので、詳しくは厚生労働省のページを参照してください。
労災保険料の給与計算方法:労災保険対象の従業員の賃金総額×労災保険料率
準備4:勤怠管理
労働基準法では、各労働日に置いて、従業員の始業時間から終業時間までを適切に記録し管理しなければなりません。これにより、休日や時間外労働の有無や、有給休暇の取得などが正確に把握することができ、給与計算もスムーズにできます。
管理方法としては、タイムカードによる管理や、ICカードや指紋認証などによる管理などがあります。また、従業員が出勤簿をつけて提出する自己申告制なども認められています。
給与計算の仕方と基本を理解しよう!
上記の計算方法で情報があれば、基本給や手当、控除額が計算できます。そして、総支給額を計算で出した控除額で引けば差引支給額が算出できます。
給与計算とは、労働契約で定められた計算方法に基づき、給与を誤りなく計算しなくてはなりません。そして、期日どおりに支給ができなければ、従業員の生活が守れなくなってしまいます。
従業員の生活を守るためにも担当者は仕組みを理解し、正確な計算をしましょう。