人手不足に陥る原因は複数の問題が絡まり合っている
人手不足が原因で倒産する企業が増加しています。営業を続けようにも肝心の人手が足りないため会社を閉じなければならないのはやりきれないでしょう。
倒産には至らなくても、人手不足から企業規模を縮小せざるを得ないケースもあります。地方の拠点を閉鎖するなど、地方経済の衰退の原因にもなります。
とはいえ、職を求めている人が少ないというわけではありません。昨今の人手不足には現代社会を反映した複雑な原因があります。
経営者の視点から見た人手不足の原因5個
まずは人手不足に悩まされている、経営者の視点で原因を探っていきます。経営者にしても人手不足に対して何もせずに手をこまねいているわけではありません。
しっかりとした対策を立てるためには原因を把握し、分析する必要があります。ここでは特に代表的と思われる原因を5つ挙げて解説します。
原因1:少子高齢化による労働者の高齢化
多くの企業では定年制を導入しています。概ね65歳には完全に定年退職という制度としている企業が多いようです。特に団塊の世代と呼ばれる、人口が非常に多い世代が定年に達して退職したことが人手不足につながっています。
熟練したスキルを持つ高齢者の退職は、一方で後継者不足という問題も生み出しています。高度なスキルが承継されないことは日本企業の衰退の原因にもなっています。人手不足が競争力の低下を招いてもいます。
原因2:人口減少による労働者の減少
高齢者の定年退職が進む一方で、低迷する出生率による少子化も人手不足の一つの原因になっています。1980年代には150万人以上いた出生数も近年は100万人を割るようになってきました。
確実に人口減少は進行しています。大学も全入の時代から学生確保に苦戦する時代です。それはそのまま新卒社員の減少に繋がります。
人口増加は一朝一夕になるものではありません。そのためしばらくは人材の奪い合いの状況が続きます。
原因3:労働条件に求めるものが増えている
かつては日本型雇用環境として終身雇用、年功序列が盛んでした。多少仕事がきつくても、いつか役職も給料も上がるため社員も我慢することができました。会社と社員は運命共同体でした。
しかしインターネットの発達で社員も労働に関する知識を容易に得ることができるようになりました。少しでもコンプライアンスに問題があると会社と争ったり、簡単に転職したりと働く側の意識が変わったことも人手不足の原因と考えられています。
原因4:非正規雇用の増加
バブル崩壊やリーマンショックなどの経済不況で、企業は負担の重い正規雇用から非正規雇用へ軸足をシフトしてきました。
一方で非正規雇用の増加は、会社に対する忠誠心の低減という結果も招きました。より良い条件があればすぐに職場を変えてしまいます。
雇用の調整のために積極的に導入された非正規雇用が、いまの人手不足の原因になるというのは企業にとっては皮肉な結果といえるでしょう。
原因5:若者の離職率が高い
いまの若者は、かつてのように一度就職したら一生同じ企業に勤めるという価値観を持っていません。学卒の新入社員は大卒で3年後にはおよそ30%が、高卒は50%が退職するという統計があります。
意に沿わないことがあると躊躇なく退職するため、特に中小企業では常に人材募集せざるを得ない状況です。人手不足により既存の社員の負担が増えることでさらなる退職を生み出す原因にもなっており、悪循環に陥ってる企業もあります。
従業員の視点から見た人手不足の原因5個
一方で従業員側にも言い分があります。人手不足の原因は労働者の我慢が足りず、すぐに退職してしまうからということばかりではありません。
経営者側が十分な労働環境を提供できないため、止むを得ず退職を選択するケースも数多くあります。特にここ10年ほどで劣悪な就労環境のブラック企業という言葉もすっかり定着しました。
ブラックな職場が増えたことが人手不足の重要な原因になっていることは疑いようがありません。
原因1:仕事内容がきつい
一つ目に考えられる原因は仕事のきつさです。単純に肉体的にきつい場合もあれば、人間関係やノルマなど精神的にきつい場合もあります。
こうした職場慢性的な人手不足に陥ってます。それにより残った社員にしわ寄せが行き、さらなる退職者が現れます。このように負の循環に陥ると、企業が自力で人手不足を脱するのは難しいでしょう。
作業内容の見直しや、職場の風通しを良くするなどの工夫が必要となってきます。
原因2:給与が安い
よく給料には我慢料も含まれると言われていました。上司や顧客に理不尽なことを言われても給料のためだと我慢する。年功序列で一定期間在籍すれば給料もそれなりに上がっていきました。
しかし景気の低迷や成果主義の導入などで、給料が安いまま、負担だけが増える状況が続いています。こうした将来性のなさを原因として若者は企業に所属する意味を見出せなくなってきています。
原因3:労働時間が長い
長すぎる労働時間も人手不足につながる原因の一つです。欧米型のワークライフバランスの概念が入ってきて、これまでの残業文化を嫌う若者が増えてきました。
残業時間や休日出勤の有無を働く上で重要視する人が増える一方で、企業の労働時間短縮への取り組みがいまひとつ進んでいないという事情もあります。
原因4:会社のイメージが悪い
ネット社会が進み、企業イメージもちょっとした不祥事などで炎上し、取り返しのつかないことになる事態が増えました。
過酷な労働環境のブラックな職場に関する情報はSNSなどであっという間に共有されます。就職にあたってそうした企業を避ける傾向はますます強まることが予想されます。
人手不足解消のために、企業イメージにも最大限の注意を払う必要があると言えます。
原因5:人間関係が悪い
対人関係の不安から、早期の退職につながるケースも多くなっています。昔は多少そりが合わなくてもお互い様で我慢をしていた時代もありました。しかし昨今はそうした我慢をせず、すぐに転職を選択する人が増えています。
人間関係が悪い原因は業績不振やブラックな環境であることが多いです。人間を頻繁に入れ替えることも現実には難しいため、さらなる退職者につながるという悪循環になっている企業もあります。
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人手不足が深刻な業界5つ
特に人手不足が深刻な業界があります。以下に紹介する業界はネットをはじめとするさまざまな媒体で過酷な労働環境であることが知られるようになりました。
ただでさえ離職率が高いところに、こうした情報を知った人が就職を避けるため、ますます人手不足が進んでいます。
業界1:建設業界
きつい、汚い、危険と言われるのが建設業界です。事務方は別にして現場作業員は肉体的に過酷な労働環境にあると言われています。事務方にしても、業界規模自体が縮小傾向にある中で多くのプレッシャーにさらされています。
夏には炎天下の中、冬は寒風の中で作業するなど体力や気力がないとなかなか続きません。また時にパワハラのような指導があることもさせられる原因になっています。
業界2:小売業界
小売業界が人手不足になる原因はどういったものがあるのでしょうか。
よく話題になるのがノルマ達成のための自爆営業です。仕事のためにそこまでしたくないという考えから人が定着しません。
また、クレーマーとのやりとりなど精神的にも負担がかかることがあります。それらに目を瞑ることができるほど高給というわけではないため、転職を選択する人が多いのが実情です。
業界3:IT業界
ブラックになりやすい業界であることと、技術者不足でもあることからIT業界は慢性的な人手不足に悩まされています。優秀な技術者はどの企業からも好待遇で歓迎されますが、職位が低いままだとIT土方と言われるように過酷な労働が待っています。
顧客からの納期がきつく、請負金額自体も低額であることが多い小規模零細企業の場合は、特に悲惨で年度末は残業だけで200時間近くなることもしばしばあります。
業界4:介護業界
介護職自体の需要は今後ますます増えていくことは間違い無いのですが、反比例して労働者の待遇が上がらないことが慢性的な人手不足の原因です。
低賃金、長時間労働、利用者とのトラブルなどがあり、介護という仕事自体が好きで誇りを持っている人でないと長続きは難しいと言われています。
業界5:放送業界
一見華やかな印象のある放送業界ですが、実情はなかなか過酷です。撮影スケジュールの関係で勤務時間は不規則になりがちです。ほとんど睡眠が取れないような状態が数日続くことも珍しくありません。
健康に悪いだけでなく、低賃金も人が定着しない原因になっています。キー局といわれる大手給与は高水準ですが、下請け会社の社員は長時間労働、低賃金であることが多いです。
人手不足を解消する鍵は獲得した人材を定着させること
人手不足を解消するには、採用した社員を以下に定着させるかにつきます。そのためには適切な教育訓練や充実した福利厚生、企業の将来性に対する信頼などが必要です。
労働人口の減少はこれからさらに加速します。労働条件の見直しや職場環境の向上など人手不足解消のためには他社に先駆けて取り組んでいく必要があります。