人材戦略とは?
人材戦略とは、事業を行う上でのスタッフの確保や育成、その配置などを戦略的に行うことを意味します。人材戦略が目標とすることは、事業へ直接的に関わっていくニーズとして充足すること、スタッフの満足した職業生活の実現などがあげられます。
今回は人材戦略とともに経営戦略がどう関わり、どんなメリットを生むのかを探っていきます。
経営戦略と人材戦略の関係
経営戦略は既に必要性が問われ続けていて、その大切さを知っている経営者も多いのですが、昨今、単に数字や成果を上げることにしか執着しない経営者は失格であることが明らかになってきました。
正しく経営戦略を実行するのに必要なことは、適切な人材をタイミングよく職務に配置し、健全に営まれることにあります。人的体制を構築することが人材戦略です。経営戦略と人材戦略が整合されていることはとても大切な考え方です。
経営戦略と人材戦略の整合性が取れることのメリット9つ
経営戦略と人材戦略との間で整合が性とれるようになると、明白な相乗効果が出てくるとされています。以下では、経営戦略と人材戦略の整合性で見られるメリットについて、9つご紹介します。
1:企業価値の向上
経営戦略によって得られる最初の兆候は企業価値です。これは会社全体が所有する価値を意味します。M&Aや事業・設備投資の際に実行可否を決定する判断素材でもあります。株主にとって価値があるのは株式価値、債権者の価値である負債価値であり、その合計とも言われています。
経営戦略と人材戦略の整合性が保てれば、さらに企業価値にも相乗効果が表れてきます。
2:社内士気の向上
会社や組織の中では、自分だけがモチベーションを維持して働けばよいわけではありません。部下や同僚などそのチーム内でのモチベーションも重要な要素になっていきます。
チームの総合力が高まり相乗効果が出て成果になっていきます。経営戦略と人事戦略が密接な関係にある根拠は、社員の士気を向上させることになるからです。
3:生産性の向上
生産性がある組織やチームには、幾つかの特徴が見られます。それは「社会的感受性がある」「公平な時間配分をする」「女性の活躍」といったものが顕著です。お互いの長所を認め合いながら価値観を共有し、目標達成を目指していきます。
経営戦略と人材戦略が健全に整合すれば、これらの要素も自然と構成されて、生産性の向上に繋がります。
4:自己裁量業務の増加
経営戦略と人材戦略の整合性を図ることで、裁量労働制にも影響を与えます。これは実質労働時間に関わらず契約労働時間分を認める制度です。労働時間を1日7時間とする場合、もし実労働時間が4時間、もしくは10時間だったとしても、契約している7時間の労働量を給与に反映します。
つまり経営戦略と人材戦略が整合化されていれば、スタッフが納得できる最適な労働時間を守れ、かつ効率よくしごろ量もこなせるということです。
5:離職率の低下
経営戦略と人材戦略が上手く整合されていくことで、職場環境が最適に更新していくことになります。古い概念や決めごとで通用しなくなったものはアップロードされ、働きやすい職場へと変わっていくようになります。その成果として見込めるのが離職率の低下です。
離職率が下がっていくことで、スタッフが定着して納得のいく仕事を毎日することが可能です。
6:顧客満足度の向上
経営戦略と人材戦略とが整合化されれば、その成果として顧客満足度が高まっていきます。企業や組織は、成果を向上させることが目的です。
むしろそのために経営や人材への戦略を立てるわけなので、結果的に顧客への対応が改善されていったり、数値的な向上として表れることは当然な流れです。
7:プロセス効率の改善
労働生産性の向上を目指し、今や働き方改革に取り組んでいるという企業も増えています。働き方改革に目覚めた企業による施策として、業務のプロセス効率化が叫ばれています。既存の業務行程から無駄を排除し、効率良く整理していくことで労働生産性を高める動きです。
経営戦略と人材戦略を整合化させるという試みも、この業務プロセス効率の改善に一致している流れだと言えます。
8:社内イノベーション力の向上
イノベーションという言葉はここ近年聞かれるようになったビジネス上の重要キーワードです。創造性という意味で使われていますが、年々多様化し、社会的分野に限らず個人の生活にまで拡大しています。
経営戦略や人材戦略を行うことで、企業は新しいい成長の柱になり得る商品サービスの開発をします。社内イノベーション力を向上させることで企業を持続的に成長させる工夫をしていると言えます。
9:企業業績の改善
企業業績そのものがその組織のバロメーターであることは言うまでもありません。スタッフのやる気が高ければ成果につながり顧客満足度や業績の向上が期待されます。逆にやる気が低くなるとあらゆるものが低下し始めます。
そのまま放置して見て見ぬふりをしていると、その会社の存続にも関係していくほど悪化します。企業業務の中身を常に見直し、時折改善する時には思い切ってすることが、すなわち経営戦略や人材戦略になります。
経営戦略スタイル(戦略パレット)と人材戦略5つ
経営戦略や人材戦略を行う上で、さまざまなフレームワークを駆使して実施するところは多いはずです。ビジネスシーンでは、企業や組織のリーダーが好んで選ぶ戦略のためのツールや人材育成用のフレームワークの数が、この数年でも飛躍的に増えていると言われています。
ここでは、経営戦略スタイルの概ねを5つのタイプに分別している戦略パレットをご紹介していきます。
1:伝統型
伝統型もしくはクラシカル型と呼ばれる戦略アプローチの企業は、事業環境を予測することが可能で競争基盤が安定しています。一度優位な位置に立てば経営戦略や人材戦略は持続可能とされています。
環境を自らつくり変えず古くからのしきたりを重視し、そこでの最良なポジションを求める傾向があります。既に顧客の多くも、伝統や変わらないやり方に浸透しているファンが多いと言えます。
2:適応型
適応型もしくはアダプティブ型の戦略アプローチは、事業環境を予測できず改変の可能性も低い事業環境に向いています。予測がもできず優位性の維持も期待することが困難な場所では、十分な備えとともに自ら周囲に合わせて変革する能力が問われています。
適応型アプローチの企業の場合、その経営戦略や人材戦略も実験性が高く、経済効率の良いオプションを見定め、変化に適応できるスタイルを追求していきます。
3:先見型
先見型もしくはビジョナリー型と呼ばれるアプローチの企業は、基本的に自力で事業環境を作ることが信条です。革新的な商品やサービスを最初に投入し、多くの他社からかけ離れた市場やセグメントからチャンスを見通し実現させることが特徴です。
経営戦略や人材戦略も独力によって潜在ニーズを掘り当てて、魅力的な市場を創造することが可能です。
4:形成型
形成型もしくはシェーピング型のアプローチをする企業は、事業の予測はできないながらも改変性が高い環境にて再形成を主導することができます。改変する機会が到来すると、一社だけの力だけではなく、他社との協賛などをするのが得意な企業と言えます。
経営戦略や人材戦略においては、リスクを共有し組織能力を補完し合える他社との関係性こそ重要と見なしています、
5:再生型
再生型もしくはリニューアル型のアプローチをする企業は、外的環境と自社の現行では存続が難しいと判断された場合です。環境の悪化に気づいて早急に反応しなければなりません。
回復させるための行動が必要で、事業フォーカスの再定義、コスト削減、資本の効率化など、経営戦略や人材戦略の整合性がますます問われます。
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人材戦略の構成要素4つ
人材戦略は経営戦略とともに重要な事柄です。どうしても経営の立案にばかり着目してしまいますが、良い人材を正しいルートで確保し成長させることができない限り、人材をモノ扱いしてしまい、企業として成長できません。
人材戦略を構成するためには、以下の4つの要素が欠かせなくなります。
1:採用
人材戦略にて最初に行う要素が採用戦略です。大きく分ければ新卒採用と中途採用です。まだ実務経験や実績がない原石である新卒者を採用する手法と、実う実績がある中途採用とでは、方法やコストの掛け方、その後の育成に至るまで違いを理解して執り行わなくてはなりません。
また、採用時の条件や環境などに誇張した表現や食い違いなどがあると離職する人も多くなりやすいので、嘘いつわりのない募集要領を公表することが基本です。
2:配置
採用した人材を大切に育むためには、配置戦略も欠かせない方法です。人材配置の決定は大切な役割であり、企業は慎重に行わなければなりません。今でも企業側の論理で配属や移転をころころと変える傾向が否めません。本来必要以上な配置変えはかえって企業に悪影響を及ぼします。
そのためにも人材配置は最初の時点でしっかり行い、適宜必要に応じて見直し最適化することです。
3:育成
現在、人材戦略において課題とされているのが人材育成です。せっかく採用した社員をどのように成果を果たせるスタッフへと成長させるのかは、育成への適切な対応に掛かっています。
どの業界も昨今では人手不足が叫ばれています。これは、十分な人材育成をせず見切り発車させてしまったことによる弊害です。適切な教育を施さないで数値ばかりを追い求めた結果で、人材がその職場を去っていくという事例は珍しくありません。
4:定着
人材戦略での最終目標こそ人材の定着です。何よりも採用した人材がその職場で定着して、それ相応な結果を出しつつ、本人がその仕事に対して熱意や関心を常に失っていない健全な状態でなくてはなりません。
人材の定着にとって大事なことは、企業側の論理ばかり押し通し過ぎてスタッフを抑制するような行為ばかりしてしまうと、次第に人々は離職していくのが今の時代なんだと理解しておくことです。
人材戦略の立て方5つ
人材戦略が正しく行われているかどうかが、その企業の存続に関わっていきます。経営戦略とともに人材戦略は欠かせない考え方です。では、人材戦略を適切に行うためにはどのような要素が重要なのかをいくつかご紹介します。
1:経営戦略の理解
人材戦略とは経営戦略との密接な関係があり、お互いの整合性を求めることが基本です。そのためにも事業目標などを中心に、最終的ゴールが何かを必ず理解しておかなくてはなりません。人事戦略こそが自社ミッションを達成する戦略だとも言い換えられます。
経営戦略をしっかり把握して人事戦略に落とし込まれている企業こそが理想像だと言えます。
2:経営戦略の実現に必要な要員の定義
人材戦略に必要となる人員確保は大切です。どんな状態を理想とするのかが分からなくてはなりません。それは「いつ・どんな・どのくらい」という判断基準を計りながら行うということです。
ゴールに到達するために、その人材の経験やマインド、能力を把握しどういったタイミングで何人の人材が要るのかを想定します。それを考えれば現実と理想とのギャップも分かっていきます。ギャップから目を背けず理想に近づかるのが重要です。
3:理想と現実のギャップ調査
前述にもあるように、どうしても現実と理想とに溝ができあがります。そのギャップを埋めるためには、とにかく具体的なことを一つづつこなすしかありません。ギャップを埋めるための方法や、誰に何を任せるのかを知るために、理想と現実の双方をしっかり見届けます。
採用手法や教育、配置など、そこに従事する専門の人々とも連携を取って相談をしながら戦略を重ねながら立てていくことがポイントです。
4:目標値の設定
経営戦略にて、売り上げや成果についての具体的な目標数値が必要なのと同じように、人材戦略においても目標値の設定は必須です。例えば、その部署に人材を何人割り当てていくのかということが中心となっていきます。
随時募集という理由で採用をし続ける企業も多いようですが、無限にというわけにはいきません。そもそも目標値がどれくらいなのかは、最初の時点で決めておかなくてはなりません。
5:人材戦略実現プロセスの設計
人材戦略をするには、実現させるための行程を幾つも踏んでいくことになります。物事を成立させるためには、徐々に段階いを追って小さな達成感を得なくてはなりません。そこで実現プロセスの設計をするというのがポイントです。
いつ、どこで、どんな計画を実施するのかを、ある程度のスケジュールにも組み込んで実践していきます。
人材戦略は様々なメリットが期待できる
以上のように、経営戦略と人材戦略の双方から整合性を見出すことはとても大切だということが理解できたことでしょう。どうしても経営戦略にばかり目を追ってしまい、本当は必要な人材が全く確保されていないという中小企業はたくさんあるのが現状ではないでしょうか。
経営に関する課題解決の専門家は多いのですが、人材に関する専門家はまだまだ少ないとも言え、今後のキーワードになっていく可能性があります。