事業環境分析
事業環境を押さえて仕事をする必要があるということは分かっても、事業環境をどうやって知ることができるか分からないという人は多いでしょう。企業は日々変化する環境の中にいます。どうやって環境の変化を捉え、それに適応しながら目標を達成するのでしょうか。
この記事では、事業環境をどうやったら押さえることができるのか、押さえるための分析方法などについてご紹介します。
事業環境分析:外部環境分析
外部環境とは、企業を取り巻く外部の環境を指します。自社ではコントロール不可能であり、与えられた事業環境の条件として経営戦略立案や意思決定を行う必要があります。
外部環境を分析するためには、自社にとっての機会と脅威を考えながら分析を進めることが大切です。外部環境を分析する主な方法としてはPEST分析と5Forcesがあります。
事業環境分析:競合分析
競合分析とは、自社の競争相手を分析することを意味します。戦略策定のための基礎的な分析には3C分析やマクロ環境分析などがありますが、3C分析は「市場(customer)」「自社(company)」「競合(competitor)」の3つをカバーしています。
具体的な項目としては、競合のバリューチェーンや技術、財務状況、シェアなどがありますが、ここ最近は企業文化などを競合分析に含める場合もあります。
事業環境分析:内部環境分析
外部環境分析によって明らかになった世間のニーズに対して、内部環境分析とは、事業環境を見て、自社で何ができるのかや自社が勝てる領域がどこなのかを検討することを指します。
具体的には、自社の強みや弱み、能力のレベルを明らかにして、競争相手と比較して勝てる見込みがありそうかどうかを検討してみるのが内部環境分析です。
事業環境分析:マクロ環境分析
マクロ環境分析とは、自社の企業活動に影響を与える外部環境要因の分析のことで、すなわち自社ではコントロールできないものになります。
マクロ環境分析とはPESTとも呼ばれ、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)4つのフレームワークを使って自社の事業に関係の深い重要な外部要因や事業環境の変化を分析します。
事業の戦略や事業環境の分析を円滑にするビジネスフレームワーク13選
それでは、実際に事業環境を把握するためにどのようなビジネスフレームワークがあるのでしょうか。外部環境や内部環境を押さえるためにはさまざまなビジネスフレークが存在します。フレームワークをうまく活用して、事業環境の変化をスムーズにとらえましょう。
フレームワーク1:SWOT分析
SWOT分析とは、競合やトレンドといった外部環境と自社の資産やブランド力などの内部環境をプラス面、マイナス面にわけて分析することを指します。
Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの頭文字をつなげてSWOT分析と呼ばれます。
SWOT分析では分析を生かして戦略を決定する場合と、決定した戦略を分析でレビューする場合の両方があります。
フレームワーク2:PEST分析
PEST分析とは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)という4つの視点から分析する手法の1つで、それぞれの頭文字をとり「PEST」と呼びます。
主に経営戦略や海外戦略などの策定、マーケティングを行う際に使用します。この分析手法によって、自社を取り巻く事業環境が、現在または将来にどのような影響を与えるかを把握、予測します。
フレームワーク3:3C分析
3C分析では市場(customer)、競合(competitor)、自社(company)を分析します。
市場分析では市場規模や成長性、ニーズなどを分析します。競合分析では競争相手について分析しますが、いかに競争相手から市場を奪うかという視点で分析することが重要です。
自社分析では自社の経営資源や活動について分析しますが、具体的には売上高や市場シェア、ブランドイメージなどの項目を分析します。
フレームワーク4:PDCA サイクル
PDCAサイクルとはPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を繰り返すことで生産管理や品質管理などの管理業務を改善していくことを指します。
Pでは目標を設定し、業務計画を作成します。次にDで、Pで立てた計画を実行します。Cでは実行した結果をPlanと比較して分析し、解決策が有効かどうかを評価します。Aでは実施結果を検討し、業務の改善を行います。
フレームワーク5:PLC(製品ライフ サイクル)
PLC(製品ライフサイクル)とは、製品が市場に売り出されてから顧客の支持を得て売上を増やし、その後月日を追って段々と売上が落ち、最後には市場から消えていくまでのプロセスを表した考え方のことです。PLCには大きく分けて導入期、成長期、飽和期、衰退期の4つのプロセスがあります。
この考え方を適用することによって、自社の製品が顧客や市場に対して、どういった位置づけにあるのか把握することができます。
フレームワーク6:コア・コンピタンス分析
コア・コンピタンス分析とは、自社が顧客へ提供できる価値の中で、特に他社に真似できない中核的な能力が何かについて分析する手法です。SWOT分析などと異なる点は、競合との比較の中で客観的に分析するところです。
分析項目としては、商品サービスの開発数や開発スピード、シェアなどがあります。顧客への価値提供能力を分析するものなので、「子育て中のスタッフも活躍できる」というような内部的な強みは含みません。
フレームワーク7:PPM
PPMとはプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(Product Portfolio Management)の略で、事業や製品のライフサイクルの立ち位置を問題児、花形、金のなる木、負け犬の4つのフレームで確認できます。
複数の事業環境を売上や客数などで1つの図に表すことができる優れたフレームワークですが、経営判断に必要な経営環境や自社のコアコンピタンス、事業間のシナジー効果については分析しません。
フレームワーク8:GEのビジネススクリーン
PPMの限界を補うために考えられたのがビジネススクリーンです。提唱したのはアメリカのGE社とマッキンゼー社です。
まず事業の魅力度を縦軸に、事業地位を横軸にとったグラフを作成します。縦、横ともに高・中・低の3段階に分けて、全部で9領域に分類し製品の魅力を分析します。PPMが市場成長率と相対的市場シェアだけで分類していることに対し、ビジネススクリーンでは状況に応じた分析をすることができます。
フレームワーク9:ファイブフォース(5forces)
5Forces(ファイブフォース分析)とは、「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」「業界内の競争」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」という5つの競争要因によって、業界の魅力度を分析するフレームワークです。
製品を売り出そうかを検討していている業界が、スムーズに売上を上げることができ、またコストが下げやすい事業環境なのかどうかを判断することができます。
フレームワーク10:アドバンテージ・マトリックス
アドバンテージ・マトリックスとは、「競争要因が多いか少ないか」「ある事業の中で優位性を構築する可能性が大きいか小さいか」という2軸で業界を特化型事業、規模型事業、分散型事業、手詰まり型事業の4つのタイプに分類し、業界の競争環境を分析する手法です。
自社の事業が属する業界がどのタイプに位置づけられるかを確認することで、とるべき戦略の基本的な方向性の示唆が得ることができます。
フレームワーク11:7つのS
7つのSとは企業に関わる要素の相互関係を表すフレームワークです。Shared value(価値観)、Style(社風)、Staff(人材)、Skill(能力)の4つのソフトと、Strategy(戦略)、Structure(組織)、System(制度)の3つのハードに分かれます。
ソフトは短時間での変更が難しくハードは計画次第で変更できるため、ハードのみ手を入れる場合が多いですが、両方の整合が重要です。
フレームワーク12:VRIO
VRIOとはジェイ・B・バーニー氏が提唱したVRIO理論をフレームワークにしたものを指します。
経営資源を価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣可能性(Imitability)、組織(Organization)の4つの視点から評価することで、企業が持つ強みの質と市場での競争優位性について分析します。その結果、自社の事業環境を優位にし、さらに効果的な施策を考えることが可能となります。
フレームワーク13:サービス・プロフィット・チェーン
サービスプロフィットチェーンとは、サービス企業における利益の成長の成果を達成する上で、主要な要因の関連性を示したフレームワークです。
サービス業では顧客接点の最前線にいる従業員の満足度向上は大変重要です。サービスプロフィットチェーンでは、従業員満足がサービスの水準を高めて顧客満足を高めることにつながり、企業利益も高めるとしています。その利益で従業員満足度を向上させることで、より良い循環図ができます。
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事業環境マップで移り変わるビジネスモデルに対応
昨今、イノベーションのスピードが加速し、事業環境が日々めまぐるしく変動し複雑化しています。
現在、確固としたビジネスモデルを構築して事業が順調に進んでいても外部環境に合わせてビジネスモデルを再構築しなければ、いつの間にか自社のサービスや商品が顧客のニーズから離れてしまうこともあります。
外部環境を把握して対策を講じるために有効なフレームワークが事業環境マップです。具体的にはどのように使うのでしょうか。
事業環境マップの主な外部環境:市場
事業環境マップでは市場と産業、トレンド、マクロ経済の4つを外部環境としています。4つの要素に変動が起きる、つまり、他社による優れた商品を開発や顧客ニーズの変化に合わせて既存のビジネスモデルは古くなります。そのため、環境の変化を予測して仮説を立てる必要があります。
市場の場合、自社の顧客セグメントや提供価値を見直し、市場を動かしている重要な論点を分析します。そして、今後の新しいターゲットを探します。
事業環境マップの主な外部環境:産業
事業環境マップを産業の視点で見る場合には、競合を把握して自社に強みを明確にします。たとえば、現時点の産業を誰が支配しているのかや、競合に比べて有利な点あるいは不利な点があるのかどうかなどです。
そして新しく参入する他社を予想し、ビジネスモデルを見極めていくことが重要です。自社製品が代替品になる可能性も考える必要もあります。
事業環境マップの主な外部環境:トレンド
事業環境マップをトレンドからの視点で考える場合は、テクノロジー、規制、文化面、経済面などを考える必要があります。
テクノロジーの観点では、市場の内外でどのような技術革新が起こっているかどうかを把握します。また、規制の面では、規制や税金の変化などでビジネスモデルに影響するものがないかを確認します。
文化的、経済的トレンドの変化については、それがどう消費者の動向や自社のビジネスに影響するかを把握します。
事業環境マップの主な外部環境:マクロ経済
事業環境マップをマクロ経済の観点から見る際は、まず市場全体の変遷を把握します。次に資本市場の状況を把握し、自社が資本を得られる状況かどうかなどを確認します。
人件費などのリソースの現在価格と今後のトレンドを把握したり、輸送や貿易はどれほどやりやすいかなどの経済インフラの状況の確認も重要です。
事業環境についての理解を深めよう!
事業環境を把握するためのフレームワークの使い方は理解できたでしょうか。
種類も多く、どんなときにどのフレームワークを使えばよいかはすぐには分かりづらいですが、上手く活用すれば自社の置かれている事業環境がスムーズにわかるようになり、戦略の方向性を決めるスピードも早めることができます。
これを機にフレームワークを使いこなせるようになり、事業環境への理解を深めましょう。