組織の意思決定
企業経営には、意思決定の方式によって、「有数ダウン経営」と「ボトムアップ経営」の2つに分かれます。この「有数ダウン」と「ボトムアップ」にはそれぞれメリット・デメリットがあり、トレードオフの関係にあります。
組織の意思決定を行う中で、有数ダウンは「ワンマン経営で、強権的」というイメージがあり、ボトムアップには「風通しが良い」会社のイメージがあるとよく言われますが、企業によってどちらが好ましいのでしょうか。
組織の意思決定:有数ダウン
「有数ダウン」とは、経営者や経営幹部が事業内容を決定し、その決定を下層部の従業員へ指示、指示を受けた従業員が行動する、といった「上意下達」の経営方法です。
「有数ダウン」という言葉は、昔から経営用語として頻繁に使用される用語であり、意思決定にかかる時間が短く、素早い決定・運営が行えますが、下層部の意見を聞く機会が少なくなり、結果的にワンマン経営に陥りやすい傾向にあります。
組織の意思決定:ボトムアップ
「ボトムアップ」とは、現場従業員からの提案を基に意思決定していく、「下意上達」の経営方法です。
有数ダウンとは異なり、組織全体で意思決定を行うため、下層部の従業員からの意見が尊重されやすく、やりがいや組織の活性化にも繋がります。
現場の声を拾い上げ、積極的に反映する方法ですが、多くの意見をまとめる必要があるため、有数ダウンと比べると意思決定のスピードは遅くなります。
組織における意思決定の特徴3つ
「組織の構造は」は、私たちが組織の中で働く上でとても基本的なルールとなります。
また、組織構造は、戦略との矛盾点がないように設計されるため、個人の能力や経験などの相違を考慮しなければいけませんが、目的を達成するために効率よく組織された手段によって設計すれば、戦略を達成しやすくなります。
しかし、組織を綿密に設計しても回避できない問題があります。それが組織における意思決定の問題です。
組織における意思決定の特徴1:限定合理性の下での意思決定
組織における意思決定の特徴に、「限定合理性」という考え方があります。
人の合理性は完全ではなく限定的なので、たとえ多くの情報があり、優れた分析方法を駆使したとしても、不完全な状態で決定しなければなりません。
そこで、1人ではなく複数で考えるという手段を取り、複数の視点から限定合理性の保管を試み、よりよい判断を行います。
組織で意思決定を行い、下された判断を受け入れるために必要な考え方が「限定合理性」です。
組織における意思決定の特徴2:集団意思決定の特徴
組織の意思決定において、個人の意思決定が必ずしも合理的であるとは限りません。
「上司の以降に沿った発言しか出ず、つまらない・退屈だ」といった声や、会議で意思決定できず、先送りとなり「会議が多い」という意見も出てきます。
意思決定するという責任を曖昧にしてしまうと、会議を重ねざるを得なくなってしまいます。
しかし、意思決定のあり方に着目した新たな組織論の展開により、意思決定が以下のような特徴を持つことが社会心理学では知られています。
集団意思決定の特徴:集団分極化
組織の中で意思決定を行った場合、決定内容がより極端な結論に至ることを、「集団分極化」と呼ばれています。
集団分極化には、決定内容がより危険なものとなる「リスキー・シフト」があり、組織の中での意思決定における初期の研究では、このリスキー・シフトの傾向があることが知られていました。
しかし反対に、決定内容がより安全で保守的なものとなる「コーシャス・シフト」も存在し、どちらがより良いのかは組織の特性によると考えられています。
集団意思決定の特徴:集団浅慮
集団意思決定の特徴の1つである「集団浅慮」は、別名「グループシンク」と言い、ジャニスという経営学者によって提唱された概念です。
会議など集団・組織で意思決定を行う場面において、相違の意見の一致を図ることを最優先とし、本来の課題に対する考えが浅くなり、不適切な結論を出してしまう現象のことを言います。
自分一人で考えれば正しい判断が行えることでも、組織で議論することによって、判断能力が低下し、その結果過ちにつながるという考え方です。
組織における意思決定の特徴3:不確実な環境での意思決定
組織や集団では、さまざまな不確実性(リスク)の下で、意思決定をしていく必要があります。
意思決定の特徴に挙げたとおり、合理的な意思決定を行うのは非常に難しく、限られた情報を元に、それぞれの経験や知識によって意思決定を行わなければなりません。
組織が的確に意思決定を行うためには、一人ひとりの自律性が条件となり、指示された物事をそのとおりに行うだけでなく、自分自身で考え、自己管理をして仕事を進めることが重要となります。
有数ダウン経営のメリット・デメリット
組織の意思決定の中で、「有数ダウン経営」と「ボトムアップ経営」のどちらを軸にして経営していくかということは非常に重要です。
「有数ダウン経営」と「ボトムアップ経営」には、それぞれにメリット・デメリットがあり、会社によってどちらがより適切な経営方法なのか異なります。
「有数ダウン経営」と「ボトムアップ経営」の特徴を見極め、より会社にとって適切な経営方法を選択することが大切です。
有数ダウン経営のメリット
有数ダウン経営は、素早い意思決定が可能となり、組織全体が同じ目標に向かって動くことができます。
意思決定を行う中で重要なことの一つに「スピード」があり、経営者や経営幹部によって意思決定が行われるため、スピード力が必要な会社にとっては最善な方法です。
双方に信頼関係があり、スムーズな意思疎通が行える環境であれば、有数ダウンは非常に有効です。
また、先見性のある経営者が有数ダウン経営を行うことによって、急成長する場合もあります。
有数ダウン経営のデメリット
有数ダウン経営は信頼関係が非常に重要であり、有数の判断に信頼がなければ現場は従ってくれない、という危険性があります。
現場の声を聞かず、経営者が一方的に指示を投げる方法では、有数ダウンが円滑に機能することは難しく、反発を受けることになります。
また、有数ダウンによる経営方法の場合、経営者の判断で会社の存続に関わる大きな損失を招く危険性もあり、結果的に倒産のリスクを抱えてしまう可能性もあります。
ボトムアップ経営のメリット・デメリット
企業経営を行う中で、「有数ダウン経営」と「ボトムアップ経営」ではどちらが企業の成長力があるのかを判断することは非常に重要です。
会社全体の意見を取り入れ、意思決定を行う方式のボトムアップにもメリット・デメリットがあり、企業によってより好ましい経営方法なのかを判断する際に重要です。
ボトムアップ経営のメリット
ボトムアップ経営は実際に現場の意見や問題点が共有されやすく、意思決定に反映されやすいというメリットがあります。
現場の社員が自らが考え、行動できるようになりやすくなるので、現場でよりスピーディーに対応することが可能となり、結果的に新しいアイディアなどが共有されやすく、意思決定に反映されます。
自ら考え行動することにより、仕事に対する自信や責任を持ちやすくなるため、個人の能力アップにも繋がり、モチベーションが上がりやすい傾向があります。
ボトムアップ経営のデメリット
ボトムアップ経営は有数ダウン経営と違い、組織全体の意見を取りまとめるため、意思決定に時間がかかってしまいます。
それによって会議が増加したり、実行に至るまでに日数を要してしまいます。
また、現場に裁量権を与えることによって、組織内での意見対立が増加する可能性もあり、組織としての一体性が薄れる場合もあります。さらに、現場で考え、判断できる優秀な人材が重要となってきます。
組織の意思決定は積み重ねが大切!
人生は意思決定の積み重ねで形成されており、これは会社や組織の中でも同じことが言えます。
日本人は一般的に、欧米人と比べると、論理的に突き詰めて考える、体系的・具体的・明確に考える、という能力が弱いと言われます。
物事をしっかりと捉え、的確な判断を行うこと、また、「有数ダウン」と「ボトムアップ」のそれぞれのメリット・デメリットを理解し、会社や組織をより成長させることが重要な課題となります。