出向とは
出向(しゅっこう)とは、文字どおり、会社の命令などで出向くこと、出かけること、そして、他の会社で勤務することを意味します。親会社との雇用関係はそのままで、「異動」に最も近い意味を持ちます。
出向先が子会社だと、仕事内容に根本的な違いはなく、出向する人にとっての負担は比較的軽いですが、企業間だと環境が大きく変わって、仕事の上でも人間関係の上でも負担が大きくなります。
出向帰任日とはいつか
出向すれば、帰任(きにん)があります。帰任とは、出向元に戻ることです。帰任日については、辞令を確認してください。
例えば、A会社からB会社に出向していた場合、「〇月〇日付けでA会社勤務を命ずる」と記されている日付、つまりA会社に戻った日が帰任日となります。
出向と帰任について知っておきたいポイント8つ
出向は、元在籍していた会社に籍を置いたまま、子会社やあるいは他の企業で業務に従事することで、複数の会社をまたいでの雇用形態となるため、出向元の会社と出向先の会社間でさまざまな協定を締結しておく必要があります。
その他にも出向させる側と出向する人とでの細かな法的取り決めを確認したり、また出向する人の心の持ちようについても一考が必要です。
ここでは、出向と帰任について知っておきたいポイントをお伝えします。
出向と帰任について知っておきたいポイント1:出向と派遣の違い
出向と派遣は双方とも職務の命令権は実際に勤務している会社にあるという点で共通していますが、最も大きな違いは、どこと労働契約を結んでいるかという点です。
出向は出向先の企業とも労働契約を結んでいるのに対し、派遣は派遣元の企業のみと労働契約を結んでいます。そのため派遣には帰任がありません。
また、左遷(させん)とは、噂のレベルで人々が使う言葉であって、会社の組織変更の際に使われる言葉ではありません。
出向と帰任について知っておきたいポイント2:出向と転籍の関係
出向には、在籍出向と転籍出向があります。前者は出向元に籍を残したまま出向先で勤務することであり、出向者は両方の企業と労働契約を結ぶため、出向元との労働契約は継続しています。
一方、転籍出向は籍を移転して出向することを言います。出向元の企業との間の労働契約は終了して、いったん白紙に戻ります。そのため、取り決めが特記されていない限り帰任時に出向元に帰任できる保証がなくなります。
出向と帰任について知っておきたいポイント3:帰任時の取り決め
企業側と出向者の間では、帰任時の取り決めをしっかり確認しておかないと、双方の認識の違いから後々裁判沙汰に発展するケースも実際にあるので注意が必要です。
企業側は自社の従業員を出向させる際、帰任日の通達、あるいはそもそも帰任があるのかどうかなどについてきちんと伝えます。出向する者は仮に通達がなければ必ず確認し、文書化されたものを要求しましょう。
出向と帰任について知っておきたいポイント4:労働条件
会社から出向を命じられたら、帰任時の取り決めをすると同時に、確認すべきいくつかの項目があります。会社側と出向者の意思の確認がないまま出向してしまうと、これも後々トラブルのもとになりやすくなります。
最低でも確認すべき事項は、期間、仕事内容、出向中の地位、帰任した際の地位、退職金、手当などを含む賃金について、その他処遇についてです。
出向と帰任について知っておきたいポイント5:帰任後の心構え
出向という言葉を肯定的に捉えられない人もいますが、実際には、出向元よりも出向先での役職が高かったり、新しい環境で新しい視点を養って、仕事内容も充実しているケースがたくさんあります。
特に出向先が海外だったりすると、この傾向は高くなります。いろんな経験を積み、一回りも二回りも大きくなって帰任したところ、職場が様変わりしていたり、経験がすぐに仕事に繋がらなかったりして虚しさを味わう人も少なくありません。
出向と帰任について知っておきたいポイント6:労働者の承認
出向は業務命令なので、基本的に拒否することはできませんが、民法では、出向には労働者の承認が必要と定められており、次のような場合は拒否することが可能です。
・出向命令が突然で、生活の激変が予想され、しかも就業規則や雇用契約書に出向を命じる根拠規定がない場合
・会社の嫌がらせや退職に追い込みたいがための「島流し」的な要素を含む出向の場合
・出向により、労働条件が常識的範囲を超えて大きく悪くなる場合
出向と帰任について知っておきたいポイント7:出向命令権
ポイント6に関連して、企業側は出向命令権は持ちますが、その濫用は認められていません。例えば退職勧奨を断った社員を出向扱いにさせたり、私生活に支障を与えるものは濫用とみなされるケースが多く存在しています。
出向命令権が濫用であるかどうかは、出向の必要性、出向者の人数、人選、出向目的などが判断基準となります。
出向と帰任について知っておきたいポイント8:帰任命令
出向元は、出向時に帰任がないという条件で両者が合意している場合を除き、出向者に対し帰任命令を下すことができます。
帰任命令については出向者の同意がなくても有効です。
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出向のメリット5つ
ここまで出向と派遣、または左遷の違いをお伝えしてきましたが、現実に出向を命じられたら自分は会社に必要がないと思われているのかと落ち込んでしまう人もいるでしょう。
しかし、出向は悪いことばかりではありません。肯定的にとらえた時に、出向には次のようなメリットがあります。
出向のメリット1:親会社のメリット
子会社や取引先との交流を深め、関係の円滑化を図るという政略的な意味合いで社員を出向させることがあります。
社員が出向先で信頼関係を築くことで、出向者が帰任した後もパイプ役として働いてもらい、相手企業とのコミュニケーションが取りやすくなります。
また、雇用調整が必要という時に社員を出向させることがあります。社員を解雇することは簡単にはできないので、その回避手段として使われます。
出向のメリット2:出向先のメリット
では、受け入れる側にはどんなメリットがあるでしょうか。子会社を立ち上げて、成長させるのが目的である場合、出向元からは有能でリーダー的な素質のある社員が送られてきます。
業務を一から試行錯誤しながら始めるよりも、指導に当たってくれる人材がいたほうが出向先とすれば大きな助けになります。
このような意味合いがあるので、出向者は出向元よりも業績の劣る子会社に出向されたと考える必要はありません。
出向のメリット3:出向した本人のメリット
出向する人からすれば、新しい環境で働くことで視野を広め、経験を積むことができます。特に20代、30代の若いうちなら、出向先での人生経験はたとえ辛いことがあったとしても、後の人生の肥しとなるでしょう。
そして社員が出向元に戻って業務に励めば、出向元でその利益を還元することができます。本人は元より、出向元の会社にとっても投資に莫大なお金を使わずに社員の人材育成ができます。
出向のメリット4:出向した本人のメリットその2
地方から都市部への出向もないわけではありませんが、それだと出世や昇格に近いイメージになります。出向といえば、圧倒的に都市部から地方へというケースが多いです。
社員の中には、都会で毎朝満員電車に揺られながら通勤し、自宅と会社を行き来するだけで虚しさを感じている人もいます。田舎でのんびりした環境で過ごしたいと考えている人にとっては地方への出向は大きなメリットと言えます。
出向のメリット5:出向した本人のメリットその3
出向することで、出向元の会社から受ける待遇が良くなることがあります。例えば海外への出向の場合は、生活が大きく変わり、また物価も日本とは異なるため、家賃や生活費などを補助してくれることがあります。
出向と帰任について詳しく知っておこう
出向、帰任について見てきましたが、必ずしも出向にはネガティブな意味合いを含むとは限らないことがおわかりいただけたのではないでしょうか。
出向を命じる側も受ける側も、通知書、労働条件をよく確認し、出向の目的を正しく理解して、両者の了承のもと行ってください。そして、帰任時にはお互いが笑顔で再会できるような素晴らしい出向にしてください。